スラム化する日本経済 4分極化する労働者たち (講談社+α新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062725637

作品紹介・あらすじ

「グローバル恐慌」後の破滅的未来像とかすかな希望!金融破綻、雇用喪失、次に訪れる統制社会!人類を待ち受けるのは資本主義の暴走か新たな社会主義が支配する世界か。

感想・レビュー・書評

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  • ユニクロでジーンズの裾上げを待つ時間潰しに書店で立ち読み。
    一言でいえば反グローバリズム論だが、そもそもグローバリズムの根源を日本の経済政策における長期に渡る低金利に求めているという視点が新鮮だった。
    同時に世界のプラットフォーム化がシンクロナイズしたことにより、企業の競争枠が拡大され、コスト削減の道が人件費に収束されることになり、結果、労働力は正規労働者、非正規労働者、外国人労働者、そしてそのどれにもならない者の4つに分化しつつある。
    これに対向するための公共政策にも各国に共通したグローバリズムがある。ただそれはかつての自国の影響力及び視野を拡大するものではなく、まさにフラット化するものだ。
    著者はそこに地球的規模での社会主義、全体主義の到来を危惧している。
    立ち読みで済ませたのが申し訳ないくらい面白く充実した内用だった。

  • いつの話?と思ったら,震災前・今から4年半前~グローバル恐慌前夜の状況を説明。日本のバブル崩壊が,サブプライムローン問題を起こし,それが10年後の日本に襲いかかっている。インフレがデフレを起こし,労働者が分極する。擬似資本と擬似経営者が出現し,効率を求めて,賃金の下方柔軟性をもたらす。グローバル・ジャングルの中,世界はフラット化するが,縦方向の階層化も進展。早い者勝ち,弱肉強食で共存共栄を探らず,自分だけが良ければ良いという風潮が広がる~NHKで特集をやっていた政府系ファンドの話も出てくる。この頃はアメリカのオバマに期待する向きが強かった。今や議会が対立して,予算が組めずに政府機関がストップする有様。安倍さんの政策に今の彼女は,どうコメントしているのだろうか?

  • (「BOOK」データベースより)
    「グローバル恐慌」後の破滅的未来像とかすかな希望!金融破綻、雇用喪失、次に訪れる統制社会!人類を待ち受けるのは資本主義の暴走か新たな社会主義が支配する世界か。

  • 日本発グローバル恐慌。自分さえ良ければ病。BRICs。グローバル時代のインフレ・デフレ。フラット化。グラミン銀行。そして表題の4極化の労働者。切り口鋭いキーワードで歯切れよく解説。現下の経済状況が明快に示されるとともに処方箋とまではいかないが明日への希望も抱かせてくれる。

  • (「BOOK」データベースより)
    「グローバル恐慌」後の破滅的未来像とかすかな希望!金融破綻、雇用喪失、次に訪れる統制社会!人類を待ち受けるのは資本主義の暴走か新たな社会主義が支配する世界か。

  • 「自分だけよければ病」、まさに今の経済状況を表す言葉であるように思う。また、「フラット化する世界」を引き合いに出し、横並びが発生すると同時にそれに耐えられなくなったものが、今度は縦並びになっていく。これにより、格差がより広がるという。

    賃金だけが下方硬直性を維持せず、下方柔軟性に陥っていくことで、「モノの値段は上がるが、ヒトの値段は下がる」という最悪な状況になってしまう。そしてこの状況を続けていると、市場にカネが回らなくなる。

    グローバル化の悪い面が顕在化した状況である。
    そして、次世代を担うヒーロー像として、スーパーマンではなく、ドン・キホーテをあげていた。
    偶然にも、何冊後かに読む予定なので驚いてしまった。

  • 名前を知っていたので期待して読んでみたが肩すかしをくらった。
    内容が薄い。同じ内容を同じ言葉で繰り返すので実質はかなり少ない。
    はじめにと終章をパラっと読むだけで事足りる程度。
    内容もニュースの断片をつなぎ合わせれば素人でもわかるような内容しか書いてなく物足りない。

  • 読んだ。

  • ローマ帝国の時代、大航海時代、といままで2つのグローバル化があったが、
    現在は第三次グローバル化の時代を迎えている。
    ただ、いままでは地球が大きくなるグローバル化であったのが
    今回のグローバル化が「地球を小さくする」グローバル化だということである。


    最近の日本経済の状況については非常にわかりやすく説明されて
    大変勉強になったが、結局のところわれわれはどうすべきかについては
    かかれて入るのだが、あまり意味がわからなかったのが残念。

    ----------------------------------------------------

    恐慌前夜の地球経済は本当にスタグフレーションの再来だったのか、さにあらずである。
    1970年代が「景気が悪いのに物価が上がる」時代だったとすれば、
    グローバル恐慌前夜の地球経済を覆っていたのは、「物価が上がるから景気が悪くなる」だ!

    資本主義を変えた「擬似資本家」

    経営者という第三の存在(「資本」対「労働」に加え)に加え、第四の存在「擬似資本家」が出現した。
    いわゆる投資ファンドたちである。彼らは同時に擬似経営者でもありながらいわば「雇われ者」集団である。
    したがって、時として危うさを承知で危険な投資に手を出してしまう。

    四分極化する労働者たち

    資本主義の構図は「資本」と「労働」を基本骨格としていたが、いまや「労働」と「労働」が対立する
    新しい二元構図の世界へと向かいつつある。(「正規労働者」と「非正規労働者」)
    さらに加え、「外国人労働者」、「労働難民化する人々」を加えた四元対立の世界となっている。

  • ●読書録未記入

    ★p.111 【「4分極化する労働者たち 」:1.正規 2.非正規 3.外国人 4.労働難民(ネットカフェ難民など。住所不定ゆえ雇用機会を得られない)〜「グローバル化した新・資本主義のやっかいな構造」】↓

    ★p.119 【「経済の蟹工船化」・「豊かさのなかの貧困」】
    《グローバル化の中で出現した新・資本主義は奴隷商人スタイルのビジネスまで生み出した。もはやこれは資本守護と言うべきものではないのかもしれない。グローバル・ジャングルに放り出されたお陰で、我々は資本主義以前の世界に逆戻りしてしまったのだろうか。グローバル化は人類史を後退させる力学なのか。
    *「豊かさのなかの貧困」:本来であれば職に就いているべき人々が、労働難民化する。そのような状況が何時までも続いていいはずは無い。地球経済は、ヒト・モノ・カネの新しい関わり方を、新しい調和の構図を発見する事が、求められているのだと考えられる。
    新しい時代には新しい知恵の体系が必要だ。新・資本主義の出現も、そのような知恵を生み出す事を我々に催促する天の誘いであるかも知れない。それにどう応えていくか。》

    ★p.160〜161 【「互恵主義」(ごけい主義)⇔「相互主義」】
    両者は似ているようで大いに違う。
    *「相互主義」は「互いに相手が譲歩したらそれと同じ程度にだけは譲歩する」→『相手が譲歩した以上の譲歩はしない』。
    *「互恵主義」は『互いに最大限の恩恵を施しあう』。相手が施してくれた恩恵に、同じ程度の恩恵をもって報いると言う事となる。貿易の世界にこの発想を持込む事で、互いにより豊かな恩恵を享受できると考え、それを目指し、『皆で市場を開放し合おう』となる。
    《「私が率先して市場を開放しましょう」という発想も。》

    ★p.173 【「グローバル時代が求めるヒーロー」:スーパーマンではなくドンキホーテでは?】
    《ドンキホーテに若狭は無い。筋力も無い。《中略》だが、彼の勇気は優しさに満ちている。彼の知性は理想の高さにおいてとどまるところを知らない。この若武者ならぬ老雄の魂は、謙虚な騎士道精神で一杯だ。無謀にも、純真にも、風車に向かって命知らずの闘いを挑む。この人物ならば、統制経済への誘いや「自分さえよければ病」を乗り越えられるはずだ。》



    p.46 【「インフレ」タイプ×3】
    《1.「引っ張り上げ型」(ディマンド・プル):需要が供給を上回る。
     2.「押上げ型」(コスト・プッシュ):生産コスト(原材料費・賃金など)上昇に上押しされて価格が上昇する。
     3.「カネ余り型」(過剰流動性型):「カネ」が世の中に出回りすぎることで起こる。
      (「カネ」が出回りすぎる原因)
       ?中央銀行が意図的に金融を緩和して通貨を増発
       ?海外から大量に資金が流入
       ?経済がバブル化して投機的な取引のなかで人々の資産規模が膨張
       ?政府がばら撒き政治を展開して財政資金を世の中に大盤振る舞いしている場合

    p. 50【「二つのインフレが世界を切り刻む」】
    《「育ち盛り経済」(中国などの経済発展)による「二つのインフレ」(1.「引き上げ型」・2.「押上げ型」)で〈材料費コスト〉が上昇しても、製品価格にそのまま反映させては売れなくなってしまう為、企業は「自力でコントロールできるコスト」として徹底的に押さえ込んだのが〈人件費コスト〉であったが、非正規・派遣と言う「ワーキングプア」の増加は格差社会の深化・「豊かさの中の貧困問題」を生み出した。→「製品」を買える収入を持つ人の減少が不況からの立ち直りを困難にすると言うデス・スパイラルに。

    p.66 【◎「フラット化する世界」(上)・(下)(トーマス・フリードマン/日本経済新聞社(2006-05-25)】
    《「フラット化」:「IT技術の発展などにより、中国やインドがグローバルな競争力を強め、先進国の労働者から職を奪っていく現象」を著者フリードマンが「フラット化」と名づけた。
    *経済が地球化し、競争の土俵が広がるほど、人々は丸い地球の向こう側にいる競争相手と競い合わなければならなくなり、『人々の「賃金」は国境を越えて「平準化」する。』
    *ヒト(賃金の安い外国人労働者)は外から入ってくるが、仕事は外に出て行ってしまう。(コールセンターやソフトウェア開発会社が英語が準公用語で賃金の安いインドに設置されるなど)】

    p.72 【「貧困の仲の貧困」】
    ◎「最底辺の10億人  最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?」(ポール・コリアー/日経BP社(2008-06-26)
    〜アフリカの最貧困諸国に焦点を当てた著作。
    *「アフリカ詣で」:先進国がアフリカに都合の良い『資源供給基地』の役割を果たして貰い続ける為、
    「支援」の名の下に彼らを囲い込み、自分たちの都合に合わない発展経路に踏み込む事を阻もうとする。》

    p.76 【「なぜワーキングプアが必要なのか」】
    《p. 50の《人件費コスト》削減(原料コスト上昇対策)のほかの要因:
    *金融がグローバル化し、投資機会を求めるカネが国境を越えて飛び交う中では、企業は常に買収対象となる可能性を意識していなければならない。収益力が落ちれば株価も落ち、買収されてしまう。
    *「豊かさの中の貧困」:ワーキングプアの『蟹工船』状態は経済の先細りにつながることは企業にも分かっているが、当面の自己防衛のためにはコスト削減の手を緩められない。こうして恐慌前夜に現れていた格差と貧困の風景はますます荒涼化していく。》

    p. 98【「ミッション・ドリフト」:「ミッション」(本来的使命)から「ドリフト」(遊離・遠ざかる)し、本末転倒となること。】

    p.106 【「擬似資本家」・「擬似経営者」=「投資ファンド」。結果が全ての為、当面の収益確保の為、ハイリスクに目を瞑ってでもハイリターンを目指し、資金の引き上げを防ごうとする→「ファンド資本主義」。(投資ファンドは資本化の資金をあずかり、投資や経営を代わりに請け負うが、収益が上がらなければ「クビ」になる「雇われ」のため将来への影響を考慮した行動をとることは難しい。】↓

    p.108〜109 【目先の収益責任重視の擬似資本家たちの行動が恐慌をもってしなければ調整不能な経済的ゆがみの深化に一役かった。
    一方で、本源的な資本家(オーナー)の考え方も擬似資本家の出現によって変質した。
    本源的な資本家だけで生産手段を独占するやり方は、次第に限界が見えてきた。しかも、グローバルなスケールでビジネスを展開しようとすれば、オーナー経営ではとても目が行き届かない。
    そこに生まれたのが、苦労して一喜一憂するよりは『人に任せた方が楽』と言う発想だ。
    自力での会社経営ではリスクが大きいし、資本の回収までに時間が必要だ。ところが投資ファンドを使えば、お任せで、しかも直ちに収益が上がる。かくして、かつての資本家たちは、間接投資家としての味を覚えてしまうことになったのである。
    擬似資本化郡の出現によって、いわゆる機関投資家たちの行動も変わった。年金基金の場合がその典型である。《中略》ファンドの行動を監視する彼らの目は厳しく、収益責任だけでなく倫理面でも無茶をしないように見守っているが、それでも資産管理はやはり間接的にならざるを得ない。】
    その限りではやはり危うさが伴う。
    *効した資本のいわば二重構造化は、結局のところ経営の集団無責任かにつながっていく。経営に関する最終責任を負うのは、本当のところ誰なのか。それがどんどん曖昧になって来ている。
    労働組合は、一体誰を相手に賃金交渉をすればいいのか。擬似経営者でもある擬似資本家なのか。彼らに操られる既存の経営者達なのか。はたまた、投資ファンドに資金をつぎ込んでいる投資家達なのか。
    *資本家であって資本家でなく、経営者であって経営者で無い人々が、それぞれ勝手な論理で自分にとって最適な解を追い求めていく。
    そのような状況の中では、結局のところ、誰にとても最適ではない結果に立ち至ってしまうかもしれない。最適どころか、最悪の事態に知らず知らずのうちに陥っていく事もあるだろう。集団無責任化した経営の怖さである。】

    p.122【SWF:「政府系ファンド」(p.126 ソブリン・ウェルス・ファンド:Sovreign Wealth Fund:SWF)】
       《UAE:「アラブ首長国連邦」
        ADIA:「アブダビ投資庁」
        DIC:「ドバイ・インターナショナル・キャピタル」
        CIC:「中国投資有限責任公司」
        RNWF:「ロシア国富ファンド」(p.144) 

       他の投資庁:サウジアラビア投資庁・カタール投資庁・クウェート投資庁など。2009年現在で世界に40を超える政府系ファンドが存在すると見られている。政府系ファンドの存在そのものが目新しいわけでは無いが、それが注目されるようになった一因は中国(外貨準備高(世界一)1兆ドル)がファンドの設定に乗り出したからである。》

    p.124 【「外貨準備」:為替危機などの有事に備えて、現金に近い形にしておくのが普通。多くの国々がアメリカの財務省証券の形で持っている。(すぐに換金できる為)だが、中国の様に外貨準備高が1兆ドル分もあれば、この様に膨大な金額を、何も全額、準現金スタイルで持っていることは無い為、中国も政府系ファンド(CIC:中国投資有限責任公司)を作る事にした。
    *1990年代においては、ヘッジファンドが『世紀末の妖怪」と呼ばれ恐れられていた。そのヘッジファンドの現在の預かり資産は、全世界で1兆6000億ドルだと言われる。それに対して、世界の政府系ファンドの総資産は2010年までに5兆ドルを超え、2015年までには、12兆ドルにまで膨れ上がるだろうと言う推計がある。「国家版のハゲタカ」とも呼ばれる世界の政府系ファンドが銀行や大手小売業の株主化し、しかもその中で最も金持ちなのが、共産党一党独裁体制化の中国(「赤いハゲタカ」)なのである。(ロシアについても、資源大国として蓄積した富を駆使して世界制覇を狙ってくるのではないか?)】

    p.129〜131 【「SWFはハゲタカか救世主か」】
    《2007年12月には、アラブ首長国連邦のアブダビ通貨庁が、アメリカのシティグループに対して約75億ドルを出資し『救世主』役を演じた。
    その理由は、〈中東湾岸の産油国たちは、『湾岸協力会議』(GCC:Gulf Cooperation Council=「ペルシャ湾岸産油国の金持ちクラブ」)を構成して、ドル建てで膨大な石油収入を保有している。
    また、クウェート以外(バーレン、オマーン、カタール、サウジ、アラブ首長国連邦)は自国通貨をドルに連動させている為いずれの観点からもドルの暴落は避けなければならない。従って、アメリカで金融異変が生じれば(大手金融機関が窮地に陥るなど)救済に乗り出さない訳には行かない。
    中国もまた大部分の外貨準備高をドル建てで保有している為、同様に救済に乗り出す必要があった。→つながり過ぎていて潰せない。》

    p.132〜135 【「日本に政府系ファンドは必要か」〜そうではないのでは?】
    **政府系ファンドによる資産運用というやり方は、基本的に特殊事情を抱たえ国々による国富形成の為の、いわば苦肉の策である。
      (日本には『特殊事情』が無い国なのではないか?)**

    《政府系ファンドというものは、極めて特殊な事情や環境条件の下に置かれた国々によって、その中で自国の富を保全し、拡充する為に作り出されてきたやり方である。
    大手の政府系ファンドを持つ国々の顔ぶれを見れば、それは明らかである。
    中東の産油国には膨大な石油資金がある。だが、厳しくて特異な自然環境の下で、なかなか生産的な投資機会を十分には作り出せない。
    北海の国、ノルウェー、小さな金融大国、シンガポールも同様である。
    いずれも、国内だけで資金を回していたのでは、国富の蓄積におのずと限界がある。政府系ファンドは、そのような国々が生み出した、国家基盤形成の為の特殊な手法である。》
    *政府系ファンドによる資産運用というやり方は、基本的に特殊事情を抱たえ国々による国富形成の為の、いわば苦肉の策である。
    日本は自国の政府系ファンド設定に乗り出さず、他国の政府系ファンドの呼び込みに積極的になっている。(2009年、日本政府は海外政府系ファンドの対日投資について、国債や預金に関する利子所得を非課税扱いとする方針を打ち出した。特に中東産油国からの資金取り込みを狙っての措置であるらしい。日本にとって、書亜外国の政府系ファンドたちは、どうもハゲタカから転じて、確実に救世主の色彩を濃くしつつある模様であり、自前の政府系ファンドを作ると言った状況では無さそうである。

    p.145〜148 【「誰もいなくなる」世界の恐怖】
    《『我欲3点セット』:「独り占め」・「早い者勝ち」・「弱肉強食」
    2008年7月の「洞爺湖サミット」。形骸化・年中行事化したサミット(「またやるの?なぜやるの?」)の度に、『精神に戻ろう』式のことが言われる。(1975年第1回ランブイエ(フランス)サミット。世界不況会費に向けて主要六カ国(当時)の首脳が一堂に会した)
    とうやこさみっとは、「グローバル時代の早すぎる終焉を以下に回避するか」をテーマにすべきだった。
    *《『我欲3点セット』:「独り占め」・「早い者勝ち」・「弱肉強食」において勝者になる事を各自が追求すると、結局は誰もサバイバルできなくなり、『誰もいなくなる』事になってしまう。

    p.149 【◎「資本主義と自由 」(日経BPクラシックス)(ミルトン・フリードマン/日経BP社(2008-04-10)】
        《著者フリードマンはノーベル賞経済学者。1962初版。「資本主義こそ、社会的不平等解消の特効薬」と主張する内容。世界が社会主義化することへの恐れと焦りが、著者を極端な資本主義礼賛論へと追いやったが現在(2009年)では、まさにその逆の方向に力が働きそうになっているように見える。「社会主義と自由」と言う本をそのうち誰かが書くかもしれない。まさか「全体主義と自由」(全体主義〜統制・監視)はないだろうが、そうならないように努力しないと、さみっとは「またやるの」どころか、「もうやれない」分断と統制の世界の到来となってしまう。
    *最悪の事態がきても、それが恐ろしいあまりに統制経済化と『自分さえよければ』主義による囲い込み、そして「引きこもり」の方向に向かう事の内容、意識の共有を図っておくべきである。》

    p.151 【「籠城に向かう地球経済」】
    《2008年の「電気」・「おコメ」・「おカネ」を巡る「引きこもり」経済〜「外貨導入」といいつつ、肝心なところでは国益優先の「引きこもり」。
    「電気」:「J-POWER」(1952年に特殊法人として設立・現在は完全な民営企業の日本の『電源開発』。この「電気屋さん」に対し外資(投資ファンドの「TCI」(ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド)が「J-POWER」株を買い増そうとしたが、日本政府が外為法に基づく買い増し中止勧告を出した。
    日本も欧州諸国も、お互いに相手のエネルギー事業にのっとり攻勢をかけながら、相手の参入は総力で跳ね除けようとするのが実態。》

    p.153 【「暴走する分断と排除の論理」】
    《「おコメ」:2008年の深刻な穀物市場パニック(中国などの経済発展による穀物消費増大・バイオエネルギーによる穀物高騰・投資資金の大流入)
    →農産物輸出諸国(ベトナム、インド、中国、エジプトなど)が「コメ」の輸出に規制。国々は、自給体制に引きこもるためのにわかごしらえに余念がなくなり、『外貨は要らない。米の方が大事』と言う心理に輸出国がなってしまい、世界中がパニックに陥って、可能な限りの食料を抱え込んで引きこもろうとする。そのような展開になれば、地球経済は完全に分断の世界に踏み込んでしまう。》

    p.155 【「小さくなっていく地球」】
    《グローバル化(IT・金融の国際化〜タイムラグの消失)により、カネ・モノ・ヒトの順に動くスピードが早くなり、国境・地平線は「消失」。
    地球は「瞬時に何処とでもコミュニケーションが取れる」ようになったことにより、「広がった」のではなく、「狭く」なってしまった。地球がどんどん小さくなっていく時代においては、地平線が玄関先にまで迫り、『自分さえよければ』の論理では、誰も生き残れなくなってしまう。
    これからの時代を生きる人間は、地平線を分かち合わなければいけない。そして、今ほど人間の善意、寛容さや視線の高さという物が、試されているときは無い。》

    p.158 【「ドーハ・ラウンドの決裂の真相とは」】
    《2008年7月「ドーハ・ラウンド」(WTO:世界貿易機関)〜正式名称「ドーハ開発アジェンダ」。「ラウンド」は「交渉」の意味合いを持つが、「アジェンダ」は「計画」や「検討課題」の意味を持つ。ドーハ・ラウンドの主要テーマは、脳三部卯や工業製品に関する関税の引き下げ、またサービス貿易の自由化などとなる。しかし貿易自由化交渉を進めるに当たっても、発展途上国の利害を特別に考慮するのが前提となっており、そのために『交渉』では無く『計画』や『検討課題』となる。
    ドーハ・ラウンド決裂の表面上の理由は、インドとアメリカ《共に農業輸出こく》の意見が折り合わなかったことにあるとされているが、問題の本質は別のところにある。対立の図式はインド対アメリカでは無く、インドを代表とする新興国集団と、アメリカがその一部をなす成熟諸国集団と言うもで、要は、世代間で衝突が起きているのである。表向きは『途上国の為に」等といいいながらも、成熟諸国の本音は自国の利益を守ることでしかない。それが、共に農業国であるがために利害が衝突し、そこにスポットが当たったがゆえに、アメリカとインドの対決の如く見えている。
    しかし、もう一歩踏み込んで考えると、問題の本質が見えてくる。それはWTO(世界貿易機関)の理念の喪失であり、WTOが「紛争処理機関」に成り下がってしまったところに、最大の問題がある。
    本来、WTOは「多角的な貿易自由化」「多角的で互恵的(ごけいてき)な貿易の守り手」と言う、ある意味、素晴しい役割を担っていた。WTOの前身GATT(関税貿易一般協定)の基本理念は「互恵主義」であり、この理念は、そのままWTOに引き継がれてしかるべきである。また、GATTからWTOに変わったときの一つの大きな側面として、紛争処理手続きが確立され、そこで紛争を仲介・裁定し、しかるべき理由があれば改善措置を命令出来る事になった。それ自体は悪い事では無いが、これによってWTOは「切った張った」の世界、勝敗を決する世界と化したのである。↓

    p.162 【WTOはなまじ紛争処理能力を持ってしまったために、紛争を前提にした交渉の対処に多忙となってしまった。
    こうして】「調停に持ち込まなければ損」と言った状況に陥り、互恵主義でお互いに豊かになれる市場を提供しようと言う理念は置き去りにされ、「ゴネ得」で訴えた者が勝ちと言う、本末転倒の姿となってしまった。もちろん『言うべき事を言う』ことは決して悪いことではない。しかし通商政策の担い手たちが『自由・無差別・互恵」という、「貿易の三原則」を見失い、最も忌避すべき「自分さえ良ければ」と言う病に冒されていることに、問題は内包されているのではないだろうか。】

    p.176 【「わずかに残された希望」】
    《オバマ大統領の就任演説のメッセージ:
    1.「いまや、我々は子どもだった頃の振る舞いを捨てなければならない。」(聖書:「聖パウロのコリント人への手紙」よりの引用)
    2.「今や、富が一握りの人々の手に集中する時代は終わった。豊かさはより多くの人々によって共有されなければならない。」
    〜「一人勝ちの論理」から「共存の論理」へ。

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著者プロフィール

1952年生まれ。同志社大学大学院ビジネス研究科教授。
主著=『新・国富論――グローバル経済の教科書』(文春新書、2012年)、
『老楽国家論――反アベノミクス的生き方のススメ』(新潮社、2013年)。

「2014年 『徹底解剖国家戦略特区』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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