お江戸日本は世界最高のワンダーランド (講談社+α新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062727914

作品紹介・あらすじ

生涯現役でエコ生活、粋な散財を楽しむ。日本人は偉かった!財産なしで豊かに生きられる超効率・リサイクル都市を実現。「江戸人の知恵」に今こそ学べ。

感想・レビュー・書評

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  • 【概略】
     実は高齢化社会となっていた江戸、実はエネルギー効率が非常に高い江戸、実はSDGsマインドが浸透していた江戸・・・日本人のマインドの根底に流れているのは、実は江戸時代に培われたものだった?食文化・風俗、様々な角度から江戸の生活を切り、江戸時代の人々のマインドを楽しんでみる。

    2022年04月06日 読了
    【書評】
     今年は通訳案内士合格を目指すことにして。そのため読書量が激減・・・したのだけれど、仕事の関係で、「江戸」「江戸時代」というキーワードで色々と掘り下げていかないといけなくなって。そこで真っ先に思い出した一冊が、積み読状態となっていたこの本。
     著者は歴史家ではなく、経済畑の方、経歴を見るととんでもない方、そんなアナリスト目線から見た江戸の様子が興味深く描かれているのだよね。アナリストさんならではだなぁ~と思ったのは、常に「現在、我々の目の前に横たわっている現実・問題を解決するために、なにかヒントがあるのでは?」という意識が行間にあったこと。なんというか、トップで走ってる方達って、ジャンル関係なく、こういった「温故知新」マインド・・・というか、問題意識の高い方、多いと思う。学ぶ対象も、別にアカデミックなものでなくなって、そんな意識がどこかにあるような気がする。
     江戸が江戸として円滑にまわっていったのは、すごく乱暴で誤解を招く言い方になっちゃうけれど、「平準化」「職人化」「自発的な社会主義」な気がした。「講」というシステムについての紹介があるのね。本書では、伊勢参りをするのに仲間でお金を積み立てして、仲間が交代で伊勢参りをするというもの。競争ではなく、食い合いではなく、歩調を合わせる・・・職人が形成するものも、食べられない時代をちゃんと乗り越えさせるためのクッションを準備する・・・そんなマインドが色々なレイヤーに存在していて、現代の日本人にも残っているような気がする。そこに合わない人は、外に飛び出す。そして、この「講マインド」は、外からの変化には、弱い。外「圧」って表現されてるぐらいだもの。海をはじめとして、色々なものに守られてきたのだなぁ。
     2022年、自分にとっての江戸時代の始まり。この一冊、2023年にもう一度読み返したら、新たな発見があるのかな。楽しみ。

  • レビュー省略

  • この本は年末(2017)大掃除で部屋の隅っこに、読みかけ本として発掘されたものです。殆ど読み終えていたので、最後まで読み通しました。この本の著者である、増田氏の本は今まで何冊か読んできて面白かったので、この本も私の期待に応えてくれました。

    以下は気になったポイントです。

    ・世界最先端を行く高齢化社会を築いた江戸時代の日本の庶民は、同時に徹底してモノを大切に使いこなすライフスタイルを作り上げた。その一方で、同じ江戸の庶民たちが、人間関係には豪勢な散財を競い合った、この落差がなんともすさまじい(p5)

    ・高い地位で仕事をしたいと思う者は、ある程度の年になったら奏者番という高級官僚への登竜門のような仕事についていないとむずかしい(p13)

    ・江戸時代の警察機構は極端に規模が小さく、たいていのことは地域住民の自警団組織に権限を委譲していた、武家町の自警団の詰め所は辻番、町人町の詰め所は、自身番(派出所)、木戸番(駐在所)と呼ばれていた(p17)

    ・一都三県で約3560万人の居住人口を擁する東京圏は人口だけで見れば世界最大でないかもしれないが、居住人口x平均所得では世界一豊かな大都市圏である、ジャカルタ・メキシコシティ・ムンバイと比較して。鉄道が発達していてエネルギー効率が高い(p19)

    ・1)江戸という資源循環型で環境に対する負荷の小さい高密大都市を育てたこと、2)徳川幕藩体制を通じて窮乏化し続けた武士たちという、世界史を眺めても類例のない特異な支配階級を持っていたこと、が世界一豊かで環境負荷の少ない高密大都市として東京を支え続けるだろう(p20)

    ・歴史始まって以来、日本の経済の中心はつねに関西にあった、江戸が成功するまで、関東の経済力が関西を凌駕したことは一度もなかった(p26)

    ・江戸の災害対策は、地震や火事の際に後腐れなく完全に燃え尽きてしまい、破壊消防もやりやすく、ほぼ無尽蔵に再生できる、木・紙・泥を主な材料とする平屋や二階建てばかりの家屋を建てることであった、燃えた後の復興はスピーディにできた(p29)

    ・江戸時代の庶民の大半は、人を説得する言葉を身に着けて支配階級にもぐりこんだところで、今よりたいして良い暮らしができるわけではない、一方気苦労のほうは、今の何倍にもなるだろう、という極めて経済合理性の高い判断を下した、これが明治維新以降も日本にしっかりとした知識人階級が育たなかった最大の理由であろう(p34)

    ・土壌が柔らかく穀物栽培に畜力を利用した深い耕起を必要としなかった日本では、馬の利用は軍事と運搬目的に限定され、馬は土壌の掘り起こしにはほとんど使われず、日本では去勢技術も普及しなかった、従って四足動物を家畜として飼育する習慣、食べる習慣も定着しなかった(p44)

    ・物理的に胃を膨らますことなく満腹感を得られることができるのは、1)砂糖、2)油脂類、3)和食の出汁(p50)

    ・国民全体が、和洋中華エスニック、さまざまな料理を食べている日本人は例外的な存在である。欧米文明は、カロリー過剰摂取で中下層の人たちが短命化し続けるところから没落していきそうな気がする、食文化から見ると欧米が没落、中国を除く東アジアが興隆するというのが妥当な筋書きだろう(p65、66)

    ・司法関係の任務に配置された、与力・同心といった侍が、個人的にこれと見込んだ町人を「岡っ引き」と呼ばれる手先に使っていた。岡っ引きの「岡」というのは、本来の場所ではない場所という意味、岡目八目の「岡」も同じ、岡っ引きは、地回りのやくざの親分クラス、岡っ引きの手先の「下っ引き」は、過去に収監された犯罪者で密告癖のある練習が選ばれることが多かった(p79)

    ・天明7年(1787)に15歳で将軍について、天保8年(1837)、65歳で息子に家督を譲って隠居するまで、数十名の妻妾、公認だけで合わせて54人の子女を生ませた、第11代将軍家斉は、将軍在位期間としては、第二位の8代将軍吉宗21年に大差をつけた50年である(p121)

    ・日本の銀価格が国際相場よりも大幅に高かったので、海外から銀を持ち込んで金に替えて持ち出す取引が激増した、幕府は銀価格を下げることで国際相場とするあわせようとしたが、欧米列強が自国の銀貨の購買力が下がると反対したので、金価格を引き上げて国際相場とすり合わせる方針にして、金流出を約半年で収束させた(p132)

    ・大間産のマグロはほかにも三本セリにかけられていたが、キロ当たり2.8-4.3万円という常識的な価格で収まっていた、1本目のキロ70万円と比較して(p158)

    ・5つか6つやっている習い事全部持ち出しではなく、そのうち一つではお金が入ってくると良い。お金をいただいて他人に教えるということは、きちんと教えなければならないという責任感も出てくる(p177)

    2018年1月2日作成

  • 著者の専門は経済のせいか、後半は現代日本の経済と江戸の比較などもあり、多少難しく感じた。名詞の前の修飾語が長いので若干読みにくさもあるのか。しかし、一般的な江戸紹介本に比べて著者の個性が出ている点は面白い。

  • (江戸のコンビニとは?)……江戸にはありとあらゆるモノを売る行商人がこまめに巡回した。かさばるモノはいっさい持たず、必要なときだけレンタルするシステムもできていた。→流通網の整備。→鮮魚……客は皿だけ持参。捌く、下ろすは棒手振りが行う。
    (江戸しぐさはどんなもの?)……江戸の町には、どんな場合でも先回りしていざこざを未然に防ぐ作法が溢れていた。→銭湯では「冷えもんでございます」という挨拶が常套句。……「粗末なものですが……」
    (江戸はほぼ完璧なリサイクル都市?)……糞尿の肥料としての利用……西欧は街に捨てる→ハイヒールの開発、ステッキ、シルクハット、マント。古着→木綿布→雑巾→燃やす→灰(肥料)。紙や下駄の再生→燃やす→灰(肥料)。節約やリサイクルが生活習慣かしていた、もったいない!

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著者プロフィール

1949年東京都生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修了後、ジョンズ・ホプキンス大学大学院で歴史学・経済学の修士号取得、博士課程単位修得退学。ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授を経て帰国。HSBC証券、JPモルガン等の外資系証券会社で建設・住宅・不動産担当アナリストなどを務めたのち、著述業に専念。経済アナリスト・文明評論家。主著に『クルマ社会・七つの大罪』、『奇跡の日本史――花づな列島の恵みを言祝ぐ』、(ともにPHP研究所)、『デフレ救国論――本当は恐ろしいアベノミクスの正体』、『戦争とインフレが終わり激変する世界経済と日本』(ともに徳間書店)、『投資はするな! なぜ2027年まで大不況は続くのか』、『日本経済2020 恐怖の三重底から日本は異次元急上昇』、『新型コロナウイルスは世界をどう変えたか』(3冊ともビジネス社)、『米中貿易戦争 アメリカの真の狙いは日本』(コスミック出版)などがある。

「2021年 『日本人が知らないトランプ後の世界を本当に動かす人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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