イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言 (講談社+α新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062728706

作品紹介・あらすじ

元ゴールドマンサックスのカリスマアナリストとして日本の金融再編に多大な影響力を与えながら、日本の国宝・重要文化財を守る江戸時代より続く老舗企業の経営者へと転身したデービッド・アトキンソン氏が、オックスフォードの日本学とゴールドマンサックスの財務分析を駆使し、「日本」の経済と文化を深く考察。日本人だけが知らない「日本の弱みと強み」をわかりやすく解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 本書の発刊は2014年6月であるが、その1年後の2015年6月発刊の『新・観光立国論』を先に読んでいたため、内容の重複も多かった。
    日本のGDP全体に占める観光産業は2%であるが、世界平均は9%である。
    したがって観光産業はまだまだ伸びしろがあり、そのためにはきちんと日本文化を伝えるサービスを提供するべきである。
    京都には約200万人の外国人観光客が来るが、大英博物館は年間420万人が訪れる。京都でさえまだまだ伸びしろがあるのだ。
    日本の文化財保護は単に保護することを目的としてきた。
    客を楽しませる観光資源であるという発想がなかったのだ。
    しかも、観光産業は女性の比率が高いため、観光産業が元気になれば、女性の雇用が生まれる。また、シルバーガイドなどを活用して、高齢者にも雇用を生む可能性がある。
    日本優先のプロダクトアウトのおもてなしはダメだ。客人に合わせ、客人に仕える気持ちで、外国人観光客に楽しんでもらうための仕掛けを埋め込む必要がある。

  • 「モノよりコト」の意味を日本人は分かっていないのかもしれない。「コトのためのモノ」に対する投資が必要ということへの理解は特に薄いかも。この著者、日本はワーカーは優れているがマネジメントがショボくて活かしきれていない、奇跡の高度成長も人口爆発の賜物、と切って捨てているけど、至極納得。

  • 日本の高度経済成長は、爆発的な人口増加があったから。松下幸之助や本田総一郎のようなすばらしい経営者が居て、メイドインジャパンの自動車や家電が世界を石鹸した、日本人の職人手金あものづくりが大きな原動力になって日本を牽引したというのは、妄想に過ぎない。 
    GDPで技術大国ドイツを抜いたから、日本の技術の方が優れているというような考え方が当たり前のように語られているが、一人当たりのGDPでは、日本が1881ドルに対して、ドイツは2989ドルと、明らかにドイツの方が高い。日本の技術がドイツに勝ったというのは、数字として証明できない。
    OECDのドル基準実質GDPの購買力平価換算で、日本は1939年、戦前すでに世界第6位だった。 終戦を迎えた時点でおよそ7200万人の人口だった日本は、そこから爆発的に人口が増えていく。戦前すでに先進国としての経済基盤を確立していたうえ、戦後復興に向けて建築やインフラ整備が急がれ、山ほど仕事があった。人口も増えて仕事もある。これでGDPが急成長しないほうがおかしい。
    14億の中国のGDPがアメリカを追い抜いて世界一になるのは時間の問題。日本の高度経済成長が、技術立国の「日本でしか起きなかった奇跡」と語る人が多いが、妄想に過ぎない。
    効率の悪さ。IMFにより一人当たりの購買力平価(PPP)でみた国民一人当たりの生産性では、日本は25位。ドイツは17位、アメリカ10位である。
    日本の男性就業率が80%なのに対して、女性の就業率は62%。ウーマノミクスを実行して女性の就業率が男性並みになれば、日本は最大12%GDPを増やせる。しかし、女性就業率が70%を超えている国は無い。実際のウーマノミクスの効果は、それほどではない。

    輸出入に機会がある。日本の輸出はGDPで15%。輸入は12%である。そのうえ、輸出は自動車産業に偏っている。これで貿易大国というには無理がある。輸出を増やした場合、可能な限り輸出入均衡を保つというのが国際社会の暗黙のルール。日本はこれまで守ってこなかった。輸出入によっていろいろな交流が生まれ、国内の刺激になる。

    観光業に機会。観光業は世界的に9%であるのに、日本は2%。観光業は国内を消費してもらうという考え方で、輸出にカウントされる。

    スケーラビリティ。 農業というが、GDPの1%しかない産業で経済成長が果たせるとは到底思えない。500兆円のGDPを成長させるというのは容易ではない。世界を見渡してもこのような経済規模の国は少ない。ものすごく巨大な船。シンガポールに学べというが、シンガポールは東京23区ほどの面積に人口も日本4%、500万人で、GDPが30兆。シンガポールでカジノがで効果があったからといって、日本がまねをしてカジノをやっても効果は小さい。 1億円企業がやれば利益が倍増するのを真似て1兆円企業が期待できることはない。日本がシンガポールから学べるものは少ない。

  • 耳が痛いし、カチンと来る所も無いではないが傾聴すべき点は多い。大企業であるほど、偉くなるほど無能になる(というか、無能な人間が多くはびこっている)、根っからのフォロワー気質でリーダー資質の無い日本人像。まるでWGIPのようだが、多くの優れたリーダーの必要な現代に国としてリーダーを育てられない仕組みは亡国的とさえ言えるだろう。
    観光立国ありき、のような後半には疑問も残るが、観光立国とかオ・モ・テ・ナ・シを題目にすると金儲け根性が出てしまうので、若者の雇用の受け皿としての「職人」の市場を拡大するという見方にすると俄然期待感が増す。

  • なんと言うか、違和感があるのは否めない。ちゃんとした人なのだろうが。日本人に対して媚びへつらうことなく物を言う姿勢はよいと思う。

  • イギリス人が日本をディスる本。。と書くと著者には他の日本人と同じような反応をしていると思われてしまうだろうか。著者御自身もおっしゃっているが、ディスることが目的ではなく、よくなって欲しいから耳が痛いことを率直に述べて居るのだろうと思う。全てに対して同意をするわけではないが、大半は非常に的を得て居ると思う。イギリスとの比較で劣ってる優っていると指摘するのはいいが、もう少し比較対象を広く見てもよかったのでは?また日本食ブームと思われている事象を海外の日本食屋の数と日本国内の洋食屋の数の比較や、日本人が思う海外で受けた理由と外国人が思う日本食が好きな理由等の差異に外食としての日本食屋と作り手としての日本食が混ざっているようで違和感を受けた。あとサッチャーに興味がでてきた。

    P.34 終戦を迎えた時点でおよそ七二〇〇万人の人口だった日本は、そこから爆発的に人口が増えていきます。
    このように人口が急激に増えたことにくわえ、日本は空襲を受けて大都市は軒並み焼け野原になったということも関係します。戦前において、すでに先進国としての経済基盤を確立していたうえ、「復興」に向けて建築物やインフラ整備が急がれ山ほど仕事がありました人口も増えて、仕事もある。これでGDPが急成長しないほうがおかしいのです。

    P.50 世界銀行のデータによると、女性就業率と男性就業率が同じ国というのは、世界でも四カ国しかないのです。しかも、その四カ国はすべてアフリカにある。ゴールドマン・サックスの分析でもOECDの分析でも、日本より女性就業率の高い先進国は少なくないものの、数千万人以上の人口の国で女性就業率が七〇パーセントを超えている国はひとつもありません。

    P.60 そんな苦労の甲斐もあってなんとなく私なりに日本人の「効率の悪さ」というもの正体がぼんやりと見えてきました。
    それは「数字に基づいた分析と、細かい改善をしない」ということです。

    P.79 日本の経営者は「サイエンス」が足りない

    P.106 その一方で、日本の経営者には会社への愛情が強いという特徴があります。会社に愛情を注ぐのは悪いことではありませんが、やはりなかには度を超えてしまい、「親バカ」と呼んでも差し支えないように困った方もあらわれてしまいます。
    我が子(会社)がとんでもない悪さをしているというのに、それを指摘した教師(アナリストなど)に対して「うちの子に限って」と逆ギレして猛烈なクレームを入れる。何兆円という不良債権を抱えているにもかかわらず、その現実をレポートで指摘した私にたいして「書き直せ!」と怒り狂ったメガバンクの幹部などはそんな”モンスターペアレンツ”の典型でしょう。

    P.107 (マーガレット・サッチャーについて)
    彼女は非常に有名なこのような言葉を残して居ます。
    「私はコンセンサスというものは、さほど重要なものであるとは思いません。あれは時間の浪費の原因のようなものですから」

    P.110 ビクトリア時代の人々はすでに、現在われわれが再発見している事柄について語っていたのだ。それは、”援助に値する“貧困と”援助に値しない”貧困の区別である。ともに救済してしかるべきである。しかし公費の支出が依存文化を強化するだけにならないためには、両者への援助はずいぶん違った種類のもでなければならない。われわれの福祉国家で生じる問題は、ある程度は不可避的なものなのかもしれないが、本当に困難に陥り、そこから脱出するまでなにがしかの援助を必要とする場合と、単に勤労と自己改善への意志や習慣を失ってしまっている場合との峻別を忘れてしまい、両者に同じ“援助“を施してきたことにあるのだ。援助の目的はただ単に人々に半端な人生を送ることを許すことにあるのではなく、自らの規律を回復させ自尊心をも取り戻させることにあるのだ。(M・サッチャー『サッチャー回顧録』下、石塚雅彦訳、日本経済新聞社、一九九三年)

    P.148
    ・「おもてなし」ができているかどうかということは、自分が決めるものではなく相手が決めること
    ・「客」よりも「供給者」の都合が優先されすぎてしまう傾向があるので、考え直して調整をしたほうが良い
    ・一部の高い評価を、すべての評価にこじつけてしまうと、見直さなくてはいけない問題が見えなくなる

    P.166 文化財修理の仕事というのは基本的に最先端技術よりも伝統的技術を用います。材料も道具も大量生産のものをつかいません。いわば非常に非効率な仕事と言えます。これは日本の職人を思い浮かべていただければわかると思います。神社を修復する宮大工は、伝統的な道具や技術をたよりに、技術と人力で作業をおこなっています。このように”手間“がかかるというのが、文化財修理の特徴といえます。その”手間”を少しでも省くためには、人を大量に雇わなくてはいけません。つまり非常に良い雇用効果を生むというわけです。さらに効果の中身に目を向ければ、低所得者対策になることは明らかです。職人という技術の仕事に学歴はあまり関係ありません。有名大学を出た、なんてことよりも、身体で技術を覚えていく。そういう意味では、製造業から溢れてしまった若い低所得者の”受け皿“として機能しているのです。

  • 2015.5記。

    日本の文化に魅せられた金融プロフェッショナルが世を儚んで茶道に没頭し、京都の古民家に隠遁していたところ、請われて文化財修復会社の社長に。その奮闘記。

    えーと、本のタイトルから受けるイメージと実際の内容にかなりのギャップあり。僕としては門外漢ならではの鮮烈な日本文化へのまなざし、みたいなものを想定していたが、中身はあくまで日本経済論、すなわち過去の本業(銀行アナリスト)の思い出話、及びそれをベースとした日本企業の体質論。

    国宝、はどこに出てくるんだという感じだが、「日本経済はここが問題、とくにこのままでは『観光業』は立ち行かない、文化行政にもっと予算を」というのが主たるメッセージ。

    こうなると往々にして「結局は金目当てか」と怒り出す人が出てくるが、「日本の文化財行政はなってない。うちの会社にカネを落とせばずっとかっこよくしてやるぜ」という主張は分かる(英国の文化財保護との比較部分はやや虫がよいが)。本書は、「理屈でなく情緒で」非効率を温存してきた日本に警鐘を鳴らし、しかしだからこそポテンシャルも莫大であることを訴える本、ということができそうだ。

  • 美術
    社会
    歴史

  • 面白かった

  • http://naokis.doorblog.jp/archives/cultural_assets_preservation.html【書評】『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言』〜観光業は日本の成長産業

    <目次>
    はじめに
    第一章 外国人が理解できない「ミステリアスジャパニーズ現象」
    第二章 日本の「効率の悪さ」を改善する方法
    第三章 日本の経営者には「サイエンス」が足りない
    第四章 日本は本当に「おもてなし」が得意なのか
    第五章 「文化財保護」で日本はまだまだ成長できる
    第六章 「観光立国」日本が真の経済復活を果たす
    おわりに

    日本と英国との文化財補修費の比較
    保存修理予算   81.5億円     約500億円
    GDP        478兆円     276兆円
    GDP比率      0.0017%     0.18%
    人口       1億2713万人   6411人
    1人当り      64円       780円
    観光客      1036万人     3117万人
    雇用       187万人     310万人
    文化財訪問率   23.5%      80%以上
    指定文化財建造物 2630件(4895棟)  約12500棟

    2014.10.19 新書巡回で見つける。アトキンソン氏は小西美術工藝社の社長。
    2014.11.26 読書開始
    2014.11.28 読了

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著者プロフィール

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社社長
小西美術工藝社社長。三田証券社外取締役。元ゴールドマン・サックス金融調査室長。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年に共同出資者となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年に同会長兼社長に就任。日本の伝統文化を守りつつ、旧習の縮図である伝統文化財をめぐる行政や業界への提言を続ける。2015年から対外経済政策研究会委員、2016年から明日の日本を支える観光ビジョン構想会議委員、2017年から日本政府観光局特別顧問などを務める。2016年に財界「経営者賞」、2017年に「日英協会賞」受賞。『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞受賞)『国宝消滅』『新・所得倍増論』『世界一訪れたい日本のつくりかた』(いずれも東洋経済新報社)等著書多数。

「2018年 『デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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