中国経済「1100兆円破綻」の衝撃 (講談社+α新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062729185

作品紹介・あらすじ

「中国経済は、いったいどうなってしまうのか?」
 実はこうした質問に対する「回答」を、2015年の「国慶節」(10月1日の建国記念日)の直前に、中国政府自身が作っている。中国国務院(中央官庁)で財政分野と投資分野をそれぞれ統括する、財政部と国家発展改革委員会の官僚たちが、共同でまとめたとされる〈中国経済の近未来予測〉なるものの内容が漏れ伝わってきている。それは一言で言えば、悲観的な未来予測だった。
 まず短期的には、生産過剰、(不動産や株式などの)資産価格バブルの崩壊、地方政府債務の増大という「三大要因」によって、中国経済がかなり深刻な状態に陥るだろうと予測している。
 この危機的状況から脱却する最も望ましい方策は、中国経済を牽引する「三頭馬車」と言われる輸出、投資、消費のうち、消費を伸ばすことである。実際、2014年のGDPにおける消費が占める割合は、51・9%と過半数を超えた。だが経済の悪化に伴い、国民の消費は、今後頭打ちになると見込まれる。また輸出も、世界同時不況の様相を呈してきているため、急回復は望めない。そうなると中国経済は結局、政府主導の投資に頼らざるを得ない。
しかしながら、経済は下降傾向にあり、資産価格バブルは崩壊し、利率は高く、政府が全国に下達する各種通達は矛盾に満ちている。これらがすべて、投資を抑制する要素として働くため、投資を増大させることもまた、困難だとしている。実際、2015年上半期の固定資産投資は、前年同期比で11・4%増加しているものの、その前年の15・7%増に比べて増加の幅は後退している。その結果、中国経済はこの先、かなりのレベルまで下降していくだろうというのが、中国政府の見立てなのだ。
さらに、経済の悪化が雇用の悪化を招く。2015年7月には、中国全土で749万人もの大学生が卒業したため、いまでさえ雇用は大変厳しい状況だ。
そのため、2016年-2020年の「国民経済と社会発展の第13次5ヵ年計画」では、GDPの目標については言及しないだろうとする見方が、中国政府内部で広がっている。高い目標を掲げても、単なる絵に描いた餅になる可能性が高いからだ。
(本文 まえがき「中国政府が自ら予測する『最悪の近未来』」より一部省略)

感想・レビュー・書評

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  • AIIB設立の背景、中国共産党における権力闘争、株価暴落の真相、統計の嘘。今や世界GDP第2位であり、日本への影響も大きな中国。その中国における政策の興味深い所を凝縮した一冊。

    しかし、習近平の現在のやりようは、よく言われる事ながら、文化大革命を彷彿させる。利権争いを勝ち抜き、一体どうなりたいのか。既に現状で自らにおける欲望のほとんどを叶えられるのでは。そう考えると、彼らさえも構造上致し方ない闘争に自ら身を置き、置いた身を休ませられない事情にある事がわかる。選ぶ、選ばれるという次元とは異なり、もはや生き方を指定されるような。職業的良心の中で、我々は生きているようで、皆生かされているのだろう。

  • 中国の株式市場は、天安門事件がきっかけになって1990年に誕生。国民が政治の民主化を二度と求めないように金儲けの自由を与えた。
    中国の賄賂収入が57兆円。
    セブンイレブンの最低時給が380円で、スタバ吉野家の値段が日本より高いとか。

  • タイトルにある「1100兆円」とは、中国における地方の負債480兆円、不良債権36兆円と2015年夏の株価暴落による損失560兆円を足したものです。
    本書では、この「1100兆円」という損失ですら序章に過ぎないと断じています。

    その理由として挙げているのが、国家主席である習近平の政策である。
    具体的には、
    ・中国株の暴落は、習近平主席の経済政策に期待が持てないから
     しかし、共産党幹部は絶対損をしない
    ・大切なのは経済よりも権力
     そのためには、暴動を起こしかねない下層の対策が重要
     下層が暴動を起こすよりは、株価が暴落したり、富裕層を圧迫したり、経済が低迷しても構わないと考えている
    ・元の国際通貨化等の国際関係においてのし上がることが夢
    という点である。

    その他にも、そもそも、経済政策担当の李克強首相の権力はほぼ剥奪されているので、経済政策は経済オンチの習近平主席に任されているのでまったく期待できないとか、2017年秋の共産党大会が、習近平政権の折り返し地点であり、それまでに激しい権力闘争が行われることが予想されるとか、中国経済の先行きが不安になるような内容ばかりでした。

    中国経済が勝手に破綻するだけならいいのだが、日本の経済にも影響があるでの、なんとかしてほしいものである。

  • 現代ビジネスでもよくコラムを読ませていただいている同著者。以前と比べると否定的な内容がかなり増えてきた気がする。2017年7月の時点で北京に約2年ほど滞在し、その間中国関連のニュースをウォッチ、さらに様々な本を読みまくって居た身として思い出すのが、中国はいつの時代も崩壊論があるというものがあった。確かに問題は色々ありつつも、経済力を基に少しづつ求めるモノを手に入れている気がする。

  • 著者は、天安門事件以来25年余り中国報道に関わり、これまで100回以上の訪中経験もある中国通である。
    本書では、これまでの経験で培ってきた人脈(学者やメディア関係者など)から得た情報が満載であり、政府の検閲を通っていない「真実の」中国の姿を垣間見ることができる。
    本書で学べたことは、中国が、株式の暴落にみる金融市場だけでなく実態経済までも相当程度悪化していること。
    また、習近平の経済音痴、権力闘争優先、報道規制により、社会主義国家としての中国の側面が強くなり、経済低迷、社会の不安定化が心配されることである。
    今年も、投資について中国に振り回されそうである。

  • 近藤大介は「中国模式の衝撃」で よんだ。
    それは、優れた 本だと思った。
    こういう 優れた本が書けるのに
    なぜ 「1100兆円破綻」というような 
    センセーショナルな 題名にするのだろうか?
    じつに もったいない。

    中国の問題
    生産過剰、不動産や株式などの資産価格バブルの崩壊、地方政府債務の増大。

    輸出、投資、消費のうち 「消費」を伸ばすこと。
    2014年 GDPのうち 消費は 51.9% となった。
    2015年 6月15日 習近平 62歳の誕生日。その日に株が暴落した。
    2015年 749万人の大学生が卒業した。
    「第13次5ヶ年計画」(2016年−2020年)
    2017年 第19回 中国共産党大会。

    地方政府の債務 480兆円。(24兆元)
    銀行の不良債権 36兆円。(1兆8000億元)
    2015年夏の大暴落で 560兆円の消失。
    合わせて 1100兆円という計算がされる。
    ふーむ。ちょっと 安易すぎるなぁ。
    まったく次元が違うモノを組み合わせても。

    牛市 株が上昇する。
    熊市 株が下落する。

    レバレジ そして 暴落 跳楼ブーム。
    2015年6月15日 上海総合指数 5178ポイント
    2015年7月8日 上海総合指数 3507ポイント(34%下落)
    82%が 個人投資家。
    全国で 7000万人が 平均40万元損をした。
    大学生が 株をしていた。790万人。
    そのうち26%が 5万元をつぎ込む。
    2015年9月22日 証券業監督管理委員会 張育軍主席代理 拘束と解任。

    中国の株式が 1990年暮れ 「金儲けの自由」を与えた。
    それは、天安門事件があってのことだ。
    政府が胴元の 共産党幹部には インサイダー情報が入る。
    「一赢二平七输」

    3000ポイントをわれば 中小の銀行が倒産するはずなのだが、
    現状では 3000ポイントをわったままで推移している。

    2012年 対中投資 74億ドル
    2014年 対中投資 43億ドル

    消費が伸びていない原因
    1、インターネット通販の伸び
    インターネット通販 2015年 上半期 経済統計 1兆3759億元 
    全消費額の 9.7%
    2,海外での爆買い
    3、賄賂収入が減少した。

    GDP 7%の嘘について
    2015年上半期 GDP 29兆6868億元(前期比 7.0%UP)
    第2次産業GDP 12兆9648億元
    第3次産業GDP 14兆6965億元
    社会消費品     14兆1577億元(前期比 10.4%UP)
    李克強指数 電力消費量 鉄道貨物輸送量 銀行融資額。
    2015年6月末 金融機関の貸し出し残高 88兆7900億元
    電力消費量の減少は 節電技術の普及
    鉄道貨物輸送量の減少は 高速道路網の整備

    習近平が経済オンチだから 中国経済がうまくいかないのか?
    そんなレベルではないと思うが。安易な決めつけ。
    →『習近平不況』

    基幹産業のすべてを 1100社あまりの国有企業が独占。
    中国の富の60%を握っている。

    劉鶴党中央財経指導小グループ弁公室兼国家発展改革委員会副主任
    「中国経済の新常態」

    約3000万人の富裕層
    5億から6億人の中間所得層
    残りの 下層の庶民

    人民元の切り下げ問題を扱っているが 
    外貨保有高減少については 言及していない。
    IMFへの 中国のアプローチは 説明している。
    朱民が IMFの 副専務理事になるまで。

    AIIB銀行 習近平の政治的な産物。

    天津爆破事件の経緯と概要。
    張高麗批判 と 楊棟梁国家安全生産監督管理総局長の逮捕。

    周永康 1兆9000億円の不正蓄財。
    徐才厚 2兆円の不正蓄財。2015年3月15日 死去。
    郭伯雄 4兆円の不正蓄財。

    共産党員 2014年末 8779万人。

    江錦恒 が 雲南省経由で 300億元を持ち込んだ。
    それで、つり上げ売り抜いた。
    6000億円で なぜ株式の暴落が 演出できるのだろうか?
    560兆円の暴落だよ。4倍のレバレッジでも 無理がある。

    「人走茶涼」(人が去れば茶はさめる)

    ふーむ。
    ジャーナリスト は ジャーナリストの目で
    中国経済を語ろうとするので 限界があるなぁ。
    フレーム 的な理解が いると思うけど。

    衝撃 という言葉が好きだが、一体誰の衝撃なのだろうか?
    そのことが不明でもある。
    騒いでなんぼ という感じでもあるが。

  • 中国経済を見るには、電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資額の3つ。所謂「克強指数」。

  • "中国経済1100兆円破綻の衝撃

    来年の中国に対しては相当悲観的に見ていますから、

    そこに関わる本で面白そうなものは、

    どんどん読んでいます。

    この本、参考になる点が非常に多く、

    ためにもなったのですが・・・・

    残念だったのは、数字の計算上の間違いが

    何箇所かあったことですね。。

    数値のミスというのは読者がそれを勘違いすれば

    致命傷な判断ミスにもつながりかねませんから。"

  • 最近はネットで本を買うことが多くなりましたが、たまに本屋さんを覗いて新刊本のタイトルを眺めていると「破綻」という言葉は、欧州(ドイツ以外)、中国、韓国、ロシア、資源国について多く、アメリカは安泰というのが目につきます。

    日本については、両者とも見れますが、このようなドギツイタイトルをつけて興味を惹こうとしているのでしょう。

    私の場合は、その場で判断を出さなければならない仕事をしているわkではないので、読んだ内容を5年間位覚えておいて(記録しておいて)後で検証することができます。そうやって、追いかける人とそうでない人を見分けていますが、この本の著者である、近藤氏の本は初めて読みました。

    最新の中国情報が盛り込まれて、それを基に中国の将来を予測しています。五年後まで覚えていて、どうなったかを振り返るのが楽しみな本でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・中国株の保有時価総額の実に82%が「股民」、株取引を実際にしているのは休眠口座を除外すると、1.7億人。外国からの投資は厳しく制限している、外国からの投資は2%以下。7割以上を外国の機関投資家が占めている東京市場と大きく異なる(p18)

    ・2014年夏頃から、習政権はレバレッジを後押しするようになった。株式口座を開設して2年、過去1年以内に株取引を行っていれば可能(p23)

    ・中国の都市部の会社員は、「五険一金」と言われる社会保険体系に入る必要あり、養老(年金)保険、医療保険、失業保険、工傷(傷害)保険、生育(出産子育て)保険、および、一金の「住宅積立金」、社員の年棒の28%となる(p44)

    ・いまでは深圳市場は民営企業が中心だが、上海市場は国有企業が中心で、株式の一部を市場に出している(p48)

    ・唯一の例外である官僚のみが、、6月15日の、第六次習暴落の前に売り抜けていた(p51)

    ・中国の各種債務の合計は3000兆円(2014末)のうち最も深刻なのは、480兆円の地方政府の債務だろう(p56)

    ・上海総合指数が再び3000を割ったときが、分水嶺となるだろう(p59)

    ・個人の収入全体に占める灰色収入の割合は、高所得層は62%、中所得層は5%、低所得層はゼロ(p75)
    ・中国の経済統計で信用できるのは、電力消費量・鉄道貨物輸送量・銀行融資額、である(p79)

    ・李克強は、安徽省の農民出身で、艱難辛苦の末に自力で北京大学法学部に入学して博士号までとった秀才、しかし現在は権限を剥奪されて手も足も出ない(p92)

    ・中国では、基幹産業のすべてを、1100社あまりの国有企業が独占していており、この1100社で中国の富の6割強を握っている。これらの負債額が、GDPの2倍以上に膨れ上がった(p94)

    ・国民一人当たり年間平均5000ドルを超えると、工場労働者の賃金アップ、原材料費の高騰によって、結果的には、経済発展モデルを変える必要がある。2011年に中国は5428ドルとなった(p107)

    ・社会主義の核心的価値観の標語、富強・民主・文明・和諧・自由・平等・公正・法治・愛国・敬業・誠信・友善、の24文字(p110)

    ・いまの中国には3つの層の国民がいる、約3000万人の富裕層、5-6億人の中間所得者層、7-8億人の下層庶民(p117)

    ・2013年の統計によれば、外国為替市場における取引高は、43.5%米ドル、16.7%ユーロ、英ポンド5.9%、日本円11.5%、人民元は9位の1.1%(p132)

    ・人民元が国際通貨として認められていないのは、1)兌換の自由、2)為替の自由、3)中央銀行の政府からの独立、がなされていない(p151)

    ・15年6月29日に北京の人民大会堂で、AIIBの設立協定署名式が挙行されたが、フィリピン、デンマーク、クウェート、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、タイの7カ国が署名を見送った(p166)

    ・天津の爆発事故により、トヨタも4700台の車がペシャンコ、2週間の工場稼働停止、94億円(車分のみ)以上の損失(p178)

    ・現在のトップ7の顔ぶれを見ると、二位:李克強は胡錦濤、3,5,7位は江沢民、4位は半分江沢民派、習が信用できるのは、序列6位の王岐山のみ(p192)

    ・北戴河会議の特徴は、中国共産党の最高意思決定機関である党中央政治局常務委員(トップ7)に加えて、長老(過去の常務委員経験者)達も同等の発言権がある(p200)

    ・現在7つある軍管区は、東北・西北・東南・西南の4大軍管区に整備し直して、30万人を削減して200万人体制にする(p202)
    ・習氏が、次々に「小グループ」を作る理由は、常務委員会が信用できないから、採決したら否決されるので(p204)

    ・習氏の肝いりで、天津市は2015年4月に、上海市に続く自由う貿易試験区に指定された、ここが決定的な打撃を受けた。事故の起きた翌日の8月13-15日は、北京では軍事パレードの予行演習があり、天津の人民解放軍、武装警察、公安部、国家安全部の要因はほとんど北京に移動していた(p208)

    ・抗日戦争戦勝70周年記念軍事パレードは、費用は4300億円(2009の建国60周年の時は、120億円)であった(p210)

    2016年1月3日作成

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記はこちらに書きました。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=6662

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著者プロフィール

1965年生まれ。埼玉県出身。東京大学卒業。国際情報学修士。講談社入社後、中国、朝鮮半島を中心とする東アジア取材をライフワークとする。講談社(北京)文化有限公司副社長を経て、現在、『週刊現代』編集次長(特別編集委員)。Webメディア『現代ビジネス』コラムニスト。『現代ビジネス』に連載中の「北京のランダム・ウォーカー」は日本で最も読まれる中国関連ニュースとして知られる。2008年より明治大学講師(東アジア論)も兼任。2019年に『ファーウェイと米中5G戦争』(講談社+α新書)で岡倉天心記念賞を受賞。他に『アジア燃ゆ』(MdN新書)『パックス・チャイナ 中華帝国の野望』『ファクトで読む米中新冷戦とアフター・コロナ』(以上、講談社現代新書)など著書多数。

「2023年 『日本人が知らない!中国・ロシアの秘めた野望』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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