取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと (講談社+α新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062729727

作品紹介・あらすじ

日本の教育、特に大学は世界に取り残され、国際順位も下落する一方です。アジアの中でも、すでにトップクラスではありません。
 ところが、いまだに東大信仰は根強く、国際的にも、またビジネスにおいても役に立たない暗記型の受験競争を続ける日本。このままでは、子どもたちは「世界の後進国の教育」に埋もれて未来を失ってしまいます。
 本企画では、国内外の教育の実情を調査し続ける尾木直樹氏に、新時代を生き残るために必須の能力とされる「キー・コンピテンシー」とは何か、また、教育の力で国力を増大させている国はどこが違うのか、日本は、また日本人は具体的に何ができて、何を為すべきかを、縦横無尽に語っていただきます。
 ペーパーテストの点数ではなく、「状況を分析し、他人に論理的に説明し、情報を批判的に捉える能力、さまざまな分野の知識をつなぎ合わせて、問題を解決に導いていく能力」が求められていると、OECD教育スキル局長が指し示す方向性は明確です。それを身につけられる教育こそ、「本物の学力」を育む教育といえます。
 日本人の教育観を根底から問い直し、「アクティブ・ラーニング」時代にわが子の未来を切り開く、すべて親必読の1冊です。

感想・レビュー・書評

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  •  日本の優秀な人材は、課外活動・部活・稽古事・バンド活動(椎名林檎などは中学生からバンド活動)などで育つのかも知れません。ある塾関係者は「できる子はほっといてもできる」と言ったそうですが、国の宝であるそうした天才を埋もれさせないようにしたいものです。

  • その通りなんだろうけど、私には手がつけられない問題かな‥。できることは自分の家庭をしっかりすることかな‥

  • この本以外にも他専門家の視点を知り、子供にとって最善となりうる選択をしていきたい
    自身が育ったイギリス、アメリカと、日本の帰国後に感じた授業の違和感をまるで昨日のことのように思い出したことが自分では驚いた
    この頃の(特に小学校)の経験が後の価値観や判断基準の形成に大いに影響していると思う

  • 特に真新しいことは書かれていないけども、ごもっともなことが書かれている。2020年は教育の転換期って書かれてて、それでコロナが来て状況が一変してしまったなぁと思いながら読んでた。

  • 今の学校教育について、世界と比較して問題点を示している。特にフィンランドやオランダなどの教育理念などが興味深い。ゆとり教育の再評価も含め、目先の評価ではなく長い目での人的資源を育てることの重要性を語る。グラフ、表など資料も多く分かりやすかった。

  • 日本の教育問題を、他国の例も取り上げながら、広い視点から取り上げていて、非常に勉強になった。ただ、筆者の考え方が些か偏っているのでは、そのような主張をするにはエビデンスが足りないのでは、と思う部分もあった。また、そこまで長くない文量でかなり様々な内容を取り上げているので、読んでいて色々な方向に話が飛んで行った印象はある。しかし、大人が教育問題を考えるきっかけになるにはとても良い本であると思うし、教師経験者であり教育評論家である筆者の意見は非常に興味深い。
    文章自体はわかりやすく読みやすく書かれているが、内容が濃く一度サッと読んだだけではまだ消化しきれない部分もあるので、また読みたい。


  • 「真の学力」とはいかなるものか

    受験で勝つために駆使している単純計算力や暗記力は海外では評価されない。

    実生活にどれだけ活用できるか
    速さや量ではなく、生活への活用力を学力としている。

    優れた文章を読んで内容を理解し、鑑賞するという、国語本来の「学び」の基本

    社会で求められている人材は、豊かな発想力を持ち、思考力に長け、自己表現力に優れていて、なおかつ他者と協働できる人

    競争神話に取り憑かれている
    学業不振が10代の自殺理由トップ

    競争原理が生むのは「格差」だけ

    国連から受験競争を是正するように勧告されている

    習熟度別クラス編成授業をやめたフィンランド→競争型教育からの脱却

    基礎教育中には、通知表がない。代わりに年一回評価レポートが手渡される。
    7歳から16歳まで総合学校で9年間学び基礎教育を実施している。
    教育や学びの主体は子ども自身。

    日本の教育が過度な競争主義に洗脳されている。日本の教育は、「入り口重視」のシステム。学校教育のシステムは、常に学校(親)が主体で子どもが従属する姿勢が強いのが特徴。

    受験が競争であるために受験に向けた教育も競争にならざるをえなくなっている。

    25人規模で完全なる個人指導のフィンランド。大きく日本の教育と異なるのは、「競争がない」「徹底した“個”の尊重」

    子どもの教育を担うのは、国の役割であり、責任であるという考え方が世界の主流。

    学力=国力
    “人”という資本に投資する。

    個に寄り添う指導による本当の意味での“平等性”が必要。奨学金破産という言葉。

    貧しくても、せめて教育だけは子どもに授けたいと苦しい家計から工面して教育費を捻出する教育熱心な国民性が災いした。国が教育に力を入れずに済んできたともいえるから。

    教育力の低下→国全体の衰退

    キー・コンピテンシー
    1. 相互作用的に道具を用いる
    2. 異質な集団で交流する
    3. 自律的に活動する

    情報や知識、言葉やテクノロジーなどを“ツール”と捉え、うまく活用する
    他者と円滑にコミュニケーションを取り、協力し、問題解決を図る
    大きな展望を持って活動し、自ら実行する

    2030年 社会で求められる能力
    1. グローバル化し複雑化する社会において、多様な協力関係を結び、それらを管理する能力
    2. 問題の細かな要素を結びつけ、価値を生み出す能力
    3. 情報を整理する能力
    4. 専門家としての深い知識と、ゼネラリストとしての知識の幅広さを併せ持つこと

    フィンランド・メソッド
    日本ではこれまで「批判的思考力」「論理的思考力」「表現力」を身につける教育に力を入れてこなかったことが指摘できる。

    ーー
    クリティカルシンキング
    ー なぜ?、本当?、バイアス
    ロジカルシンキング
    ー 分解、分類、データ
    プレゼンテーション
    ー ロゴス、パトス、エートス
    ディベート(サークル)
    ーー

    ヨーロッパで盛んなオルタナティブ教育の一つであるイエナプラン教育

    複数領域を横断的・総合的に学ぶ課題学習・体験学習

    ーー
    サーキットトレーニング
    → プレゼンテーション
    ーー

    「ゆとり」は間違いではなかった
    自ら考え、自ら行動し、自ら表現するという「学び」の結実。柱となっていたのは、知識の量を増やす教育ではなく、知識の活用力をつける教育への転換でした。

    アクティブ・ラーニング
    アメリカの1960年代の教育改革から生まれた

    ◆ 平均学習定着率
    * 講義 5%
    * 読書 10%
    * 視聴覚 20%
    * デモンストレーション 30%
    * グループ討論 50%
    * 自ら体験する 75%
    * 他の人に教える 90%

    文明の利器も使い方を誤ると、そのメリットを生かすことができなくなります。
    電子黒板、タブレット端末によるICT教育

    SNSのいじめ
    →リテラシー教育が不可欠。

    日本の教育を変えるには、大学入試制度を変えることが肝心です。
    国際バカロレア

    大学で学ぶ意味「真理の探究」
    今日においては、さらに「この混迷の時代をいかに自由に生き抜くのか」という課題と向き合い、確かな「実践知」を身につけること、磨き上げることです。

    日本以上の学歴社会で、受験戦争の激化が問題視されている韓国。

    学び直しができる教育環境を
    子どもだけでなく、大人も。

    リカレント教育
    生涯学び続けることを重要視(北欧)

    教師と生徒との間の“心の距離”

    教育委員会→学校
    ーー
    下請けの企業の仕組みに似ている
    ーー

    教師を萎縮させる成果主義
    教育委員会の意に沿った学校運営をし、
    いじめなどの問題を生じさせない教師は、校長から高く評価されるという図式。

    評価は数値で測れるものに限られている。
    どの国においても、重要なのはシステムの質より教師の質です。

    同僚性(パートナーシップ)
    子ども応援委員会

    日本の教育は管理的で不自由
    →教師や学校の裁量が認められれば、教育はもっと豊かで深みのあるものになる可能性がある。

    大人と同じように自分の意見を持ち、考えを述べます。

    ドイツの政治的中立性の確保
    1. 圧倒の禁止の原則
    2. 論争性の原則
    3. 生徒志向の原則

    学校は「民主主義の練習の場」
    民主的な意思決定の方法や仲間と対立したときの解決法、社会(学校)に対する責任意思決定、多様な意見や考え方の受容などについて学びます。

    ヨーロッパ(特にオランダ)では、民主主義とは何かを教える「市民教育」シチズンシップ教育に力を入れている。

    自分たちが選んだ本を読まれなかった少数派をどう取り扱うか。

    一人ひとりの意見が尊重されるのが本当の「民主主義」であるはず。

    多数派原理は民主主義ではない。

    教育の主役は“子ども”
    大人が最善と思うものを子どもに一方的に押しつけているだけ。
    →子どもの視点を取り入れる

    教育を受ける立場の子どもたちにしかわからないことが、おそらくあるから。また、大人が与えるだけになると、教育を与える側の都合に偏りすぎて、受ける立場の不都合に気づいていない恐れもあるから。

    子どもの自主性に委ねると、大人がまるで予想していなかった大きな成果を出してきます。

    地域社会に対しても、もっと子どもの参加を増やしていくべき。「小さな仲間市民」

    教育は日本の未来を変える。
    国家を支えているのは、他ならない一人ひとりの国民自身だから。

    フィンランド
    教える教育→学び支援する教育

    「知識偏重型」学力観は、とうの昔に時代遅れになっている。

    自己の目標にどれだけ近づけたか、自己実現がどれだけできたかという達成感と充実感が本来の学習の目的。

    教育の主体、学びの主体は子どもです。

    広義のインクルーシブ教育
    自分とは異なる能力や個性に刺激され、人格の形成や人間理解力、コミュニケーション力などを同時に高めることもできる。

    クラスが少人数化されても、多種多様な子どもの集まりにしておくことを忘れてはなりません。

    日本型キー・コンピテンシーの実践。

    憲法第26条
    「能力に応じた教育を受ける権利の保障」

    ーー
    武道では、受け身の取り方から教える
    スキー/スノボーでは、転び方から教える
    ーー

    いじめはいつ、誰にでも起こり得るという認識を教師が生徒持つことは大前提です。

    教育を取り戻す「6つの処方箋」
    1. 国際的な学力観、子ども観への転換を
    2. 競争主義から脱却しよう
    3. 教育の手法としての「子ども参加」
    4. 個に寄り添う教育へ
    5. 国の責務として、子どもの学力保証を実現する
    6. 子どもの命と安全を大切にする学校へ

  • 保護者向けの本という感じではないけど。日本の教育のどこが間違っているのかがわかりやすい。
    今、教育現場では「アクティブ・ラーニング/主体的、対話的で深い学び」の必要性が叫ばれている。私が教員になった20年前から、従来の講義形式を見直し、「課題解決型」学習をさせようと試行錯誤してきたが、それが少しずつ形をかえてこのような表現に至ったという印象。私は自分自身がじっとだまって先生の話を聞く授業しか受けてこなかったから、時代が変わって、子どもたちに課題解決型の主体的な学びをさせようと思ってもなかなかうまくいかず、苦労し続けたが、この頃の生徒たちは小さい頃からそれが訓練されているので、わりと意見を交流したり、自分の考えをみんなの前で発表したり、プレゼンを作って表現したりすることもできるようになってきた。私もICTを活用したり、様々な工夫を重ねて、できる限りアクティブに授業を進める努力をしている。
    でも、やはり根本的な解決に至るには現場の教員の努力だけでは無理だと思うことが多々ある。まず、そんな学びを求められているのに1クラスに40人いること自体おかしい。1コマ50分の授業、生徒40人、多様性も認めなきゃいけなくて、発達障害などきめ細やかな援助が必要な生徒がどのクラスにも1割程度存在する。評価の観点は(毎時間すべての項目について評価するわけではないが)4つある。物理的に無理である。誰が考えてもわかる。
    そして入試の制度。自分で課題を見つけ、掘り下げ、対話しながら疑問を解決して深い学びにつなげていたら、入試に間に合わないんだよね、現実的に、日本の場合。
    アクティブラーニングの重要性は私にもよーーーーーくわかるから、誰か、どうにかしてほしい。本当に。
    こういう教育関係の本を読むと、つくづく自分の無力感を感じるし、フラストレーションがたまる。

  • 日本の教育について、警鐘を鳴らしている本ですが、ツッコミどころ満載の本です。
    学力の低下と経済成長力の低下を関連付けていますがなぜ関連するのか証拠が明示されていません。
    北欧の教育制度を褒めていますが、北欧では無駄な学力競争をしないと言っておきながら、大学入学時に厳しい学力試験があります。言っている内容に矛盾があると思います。
    学力ランキング上位の大学にアメリカの大学が複数ありますが、アメリカの教育に関する記載が一切ありません。
    北欧の教育制度を褒めていますが学力ランキング上位の大学に北欧の大学はありません。

    日本の教育について、危機感を持ち、なんとかしなければいけないという熱意は感じますが、
    偏った思想を持っているように感じました。
    教育レベルについて、国が責任を持つべきという考え方は賛同します。

  • 教育は、素人でも自分の考えで、尤もらしく語れることができる分野である。だからこそ、教育学者や教育者の研究、エビデンスや現場の意見をベースにした政策がなされるべきであると考える。
    その意味で、本書は日本式の教育の問題点をさまざまな角度から指摘し、一方で今後の教育改革の方向性も示しており、最新の知見に触れることができることから良書と言えるのではないか。

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著者プロフィール

教育評論家、法政大学教職課程センター長・教授、臨床教育研究所「虹」所長。
1947年滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、海城高校や公立中学校などで教師として22年間、ユニークな教育実践を展開。現在、「尾木ママ」の愛称で親しまれる。
著書『いじめ問題とどう向き合うか』『子どもの危機をどう見るか』(以上、岩波書店)『新・学歴社会がはじまる』『日本人はどこまでバカになるのか』『子どもが自立する学校』(編著、以上、青灯社)『尾木ママの「叱らない」子育て論』(主婦と生活社)『尾木ママの子どもの気持ちが「わかる」すごいコツ』(日本図書センター)ほか多数。

「2013年 『おぎ・もぎ対談 「個」育て論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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