他力 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062730105

作品紹介・あらすじ

出口なき闇の時代、もはや有事といってよいほどの混迷を極める現代。いったい私たちはどこへ向かっていこうとしているのか。そしてどこに辿り着こうとしているのか。法然、親鸞の思想の核心をなす「他力」につき動かされた著者が、困難な時代を生きぬくための一〇〇のヒントを提示した、必読のベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • なんだか憂鬱な気分にさせられてしまった。それは、著者の五木さん自身があと老い先短いことにほっとして長い人生でないことに安心するというような、他力を説きながらも、著者自身が他力によって救われてないと本を読んでいて感じるからではないだろうか。他力によって、積極的に切り開いていくすかっとした息吹がでるというよりは、諦めて捨てるにはもったいないというギリギリの線で踏みとどまるようなニュアンスを感じるから。まさにそれが現代の閉塞感だとは思うし、実はこの本はそれをテーマに据えて書かれた本ではあるのですが。

  • 100章の短い文章から成ります。各章に書いてある内容は殆どが納得できますが、短い文のためか心に深く残るものが少なかった。勿論短いながらも、ハッとする内容も所々に見られました。タイトルである「他力」の本質が分かるのかと思ってこの本を手に取りましたが、その点では少し期待はずれでした。

  • 他人任せ、という意味合いでしか「他力」という言葉を使っていませんでしたが、そうではない意味、見方を教わりました。

    自分の力を超えた、大いなる力による影響を受け入れることも「他力」。
    生きていれば、自分ではどうすることもできない事態に見舞われることもあります。自分でも思いもよらぬような力が沸き起こって事態が好転することもあります。
    これらすべて「他力」。

    仏教の教えを織り込みながら、五木さんの死生観が語られます。
    人は誰でも死のキャリア。死ぬことだけは生まれたときから決まっています。
    でもだからといって、どうせ死ぬのだからなにをしたっていい、何の努力もしなくていい。というわけではありません。
    せっかく生まれ、せっかく生きているのだから、よりよく日々を過ごせるようにし、よりよい死を迎えられるようにしたいものだと思いました。

  • 困難な時代を生きぬくための100のヒントを提示した、必読のベストセラー!
    っていう売り文句なんですが、当日の麻原彰晃とか、酒鬼薔薇とかの時事問題を引用しつつ、駄文を書き散らしているだけなのでは?と思うものが多かった印象です。

  •  五木寛之氏の本を読むのが初めてである。五木寛之と言えば「青春の門」が真っ先にくるかもしれないが、それさえも読んでいない。この「他力」もずいぶん以前に入手しながらなかなか読まずにいた。それが先日NHK BS で五木寛之氏が仏教の旅をした番組の再放送を見かけて、この本があることを思い出した。

     「他力本願」とは「他力依存」ということではない。真の自力の確信こそ〈他力本願〉の姿だという。いかに自分の力で成し得たと思うことでも、その背後には他人の力が関わっている。そのことを自覚しないといけない。

     全体にポジティブでない印象の文章が続くので始めは違和感があったが、読み込むうちに筆者の言うことがだんだん分かるような気がしてきた。特に印象深いフレーズがある。
    「孤立した悲しみや苦痛を激励で癒やすことはできません。」

     五木氏がこれを書いたのは、ちょうどオウム真理教や神戸の酒鬼薔薇事件の直後で、世の中が殺伐とした雰囲気があった。そんな中で深い悲しみにある人を励ましてはいけないのだと悟った。

     五木は浄土真宗の蓮如について特に詳しく述べている。「白骨の御文章」など、これまで知らなかったことに、今後は少しでも目を通してみたい。

  • 「正直者はおおむねバカを見ます。努力が報われる事はほとんどありません」「坂には上りと下りがあります。風にも順風と逆風があります」諦めるの本来の意味は「明らかに究める」であり、勇気をもって現実を直視せよと。
    20年前の阪神とかオウムの話が中心で、内容的に時代性も感じるのだが、日本はこれから人口減で40~50年は下りの逆風の時代が続く。もうこれはどうにもならない。この現実を直視せずに誤った方向に進んでいる事を懸念する。しっかりと諦める事が必要である。
    ただし、そう考えない連中とのサバイバルがあるのも事実。知足をキープするだけのエゴや権利の主張は必要で、そのバランスをどうするか?「透明な存在である自分」にならない免疫力をつける必要はある。これには「自力」が必要である。

  • 自分自身をネガティブ突き進んだ上での開き直りポジティブだと思っていたり、
    人と人との作用の間で動いていたり、
    色々と、頷ける部分が大きかったです。

    同時に、阪神大震災・酒鬼薔薇事件・オウムが題材として取り扱われていますが、
    あの時期を、丁度小中学生として阪神で過ごしていた自分としては、
    遠い大人から見るとこう見えていたのか、というのは新鮮でした。

  • 「他力本願」

    他人まかせなのではなく、自分の力というものは結局は全て他者が存在したからこそ付き、発揮できる。そういう考え方をこの本から教えていただきました。

  • Nov2012BSシリーズ

  • 現実にプラス思考だけで救われない世界がある。プラス思考と対をなして、大きなマイナス思考という重要な世界がある。そのマイナス思考のどん底の中からしか本当のプラス思考はつかめない。
    あきらめるということは、じつは「明らかに究める」ということ。物事を明らかにし、その本質を究めること。勇気をもって真実を見極め、知れを認めることが、本当の諦めるということ。
    人間の心の傷を癒す言葉にはふたつある。ひとつは励ましであり、ひとつは慰め。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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