風花 (講談社文庫 な 43-7)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062730181

感想・レビュー・書評

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  • 外資系の勤務先をクビになった主人公が、泥酔した自分を助けてくれた風俗嬢と、突然北海道クルマ旅するロードノベル。最初は、なぜに執拗なまでに自分のちっぽけなプライドにこだわって相手を見下し続けなければいけなのか、とうんざりして放り投げそうになったけど、レモンとの対話を重ね、襟裳岬、サロベツ原野、宗谷岬、サロマ湖と旅を続けるうちに、最後にはきちんと自分を取り戻せた、と主人公が思える物語になっていて。映画も見たことあるけど、映画は別物。/「自分を認めるって、本当は凄く怖いことなのよ。たぶん、スピードを出せないことより、スピードを出せない奴なんだって認めちゃうことの方が勇気が要ると思う」「美しく生きていくためには、羞恥がなけりゃね」「おれ、北海道に来ていろいろなものを取り戻した。(略)ずっと見栄をはってた(略)最初はレモンにいい人って見られたくて、おれは嘘つきじゃないっていいたくて、来たようなものだった。でも、一番の嘘だよな。私は嘘をつきませんってのが。レモンのおかげだ。レモンに会わなければ、おれは自分を一生見つめられずに逃げ回っていたと思う」

  • 2020.6.11
    見たくないのに見てしまう、どうしようもない切なさがよかった。
    子供の為にも2人で全力で責任持って幸せになってほしい。

  •  先日観た映画版『風花』がよかったので、原作を読んでみた。

     話の骨子だけが映画と同じで、あとはまったく別物。とくに、主人公2人のダイアローグについては、原作のセリフはまったくといってよいほど映画に使われていない。

     それもそのはずで、この原作のセリフはいちいちクサイったらない。紋切り型の見本市みたいなありさまである。たとえば――。
     
    《「どこで間違ったんだろうな」廉司は天井を見上げてつぶやいた。「末は博士か大臣か、とまでは言わないけど、それなりの人間になるはずだったんだけどね」》

    《「子はかすがいっていうから、子どもがいれば、離婚しなかったかもしれないな」》

    《「お互い人生の転機ってやつですな」》

     こういう手垢にまみれた言葉が全編てんこもりなのである。
     展開もダラダラしていてテンポが悪い。もっと刈り込んで短編にしてもよいくらい。

     いい場面もあるので、駄作とまでは言わない。とくによいのは、主人公2人が出会って北海道に旅立つまでの序盤と、余韻を残したラストシーン。
     困ったことに、肝心の旅の中味部分(全編の8割くらいを占める)がいちばん退屈。

     映画のほうがはるかによい。

  • 以外にも評価が良くないけれど、私は好きな一冊。

  • 多分読むのは3回目です。とても好きな本なので正当な評価かどうかは分かりません。でも好き。


    廉司は外資系の会社で働いている。
    同期は情け容赦無く首が切られ、とうとう自分の番が来た。
    送別会で自棄になり痛飲。記憶を無くした。

    翌日、知らない部屋で目が覚めると見覚えのない女が隣に寝ている。
    脱色を繰り返した赤茶けた髪。衰えた肌。目尻のしわ。薄い体。
    自分よりも年上の様だがどれもこれも見覚えが無い。

    戸惑っていると、彼女は自分と何度も会った事が有ると言う。

    彼は気が付く。彼女は廉司が数か月に1回欲望を吐き出すために通ったピンクサロン「ジューシーフルーツ」のレモンだったのだ。

    彼は泥酔し店に行き彼女の前で潰れてしまったのだ。
    しかも彼女を北海道へ連れて行くと約束までしてしまったという。
    廉司は乗り気ではなかったが、卑怯者になりたくないが為に北海道に共に旅立った。

    北海道は広く美しかった。
    襟裳岬で終わるはずの旅だったが、別れたくない2人は旅を続ける事にした。
    ギクシャクした旅路の中時間を過ごす内、失業により傷ついた廉司の心にレモンの優しさが染み込み癒されていく。
    そしてレモンは今まで誰にも語らなかった過去を廉司に語り始めたのであった・・・。


    この話とってもとっても好きで。時折取出して読むのですがその度に胸に温かい滴を落としているような気持になります。

    レモンがとても献身的で可愛らしく、彼女は学は無いのですが、子供の頃から読書だけが楽しみで、とても色々な事を知っています。
    しかし寒々しい過去の為、自信が失われていて、やせっぽっちで体も衰え始めていて・・・。

    それなりの大学を出ているのに何も関心を持たずだらだらと生きてきた廉司は、彼女と過ごすことによって自分を取り戻して行きます。

    全く違った生き方をしてきた2人は深くお互いを必要としていくのでありました。

  • 北海道を舞台にした、生きることと愛することを思い出す男女の物語。 会社をクビになった男と、風俗嬢が北海道を旅していく。作者が住んでいるという北海道を舞台にしているだけあって、その風の音、空気の温度、匂い、全てが丁寧にリアルに描かれている。雪に閉ざされる土地であり、そして地平線が見える広大な大地であり、太陽が昇る海も沈む海もあるのは、日本では北海道だけだ。陰鬱な前半と、過去を消化し未来に向かう後半のコントラストが美しい。大人の男女の良質なラブストーリーであり、ロードムービー。

  • 再読のはずなのに全く覚えていなかった…。
    そしてどうも肌に合わないみたいです。
    主人公の廉司に全く魅力を感じないからかなあ。

    映画は評判良かった記憶があるけど、観る機会はなさそう。

  • ロードノベルが好きなので、手に取った一冊。
    舞台は北海道。
    設定的にはドストライクなんだけど、暗すぎる。
    いや、暗いのも嫌いじゃないけど、こういう湿度を含んだような暗さは苦手だ。
    今ひとつ、登場人物に感情移入できないまま終わってしまった。

  • 北海道などを舞台とした作品です。

  • 借本。
    著者の本はこれが初めて。
    映画をみるのが面倒で読んでみた。
    ちょっといい感じの再生の一冊。

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著者プロフィール

1958年北海道生まれ。’91年『ナイト・ダンサー』にて江戸川乱歩賞受賞。以後、航空小説の分野で独自の世界を描き続けつつ、警察小説、時代小説でも活躍。’18年からは池寒魚名義で時代小説を発表。作家デビュー30年、100タイトル目の新作『レジェンド・ゼロ1985』(集英社文庫)が最新刊。

「2021年 『14歳、夏。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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