アメリカの夜 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 716
レビュー : 82
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062730570

作品紹介・あらすじ

映画学校を卒業し、アルバイト生活を続ける中山唯生。芸術を志す多くの若者と同じく、彼も自分がより「特別な存在」でありたいと願っていた。そのために唯生はひたすら体を鍛え、思索にふける。閉塞感を強めるこの社会の中で本当に目指すべき存在とは何か?新時代の文学を切り拓く群像新人文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。著者のデビュー作。気色悪い人物描写は既に紛れもないアベカズたらしめております。おちょくっているのか真剣なのか、紙一重の計算高さが厭らしいったらありゃしない。素直に著者への愛を認めたくない、そんなわたしの偏屈な一面をあらわにしてくれる特別な存在でございます。ええ、いずれまた読みますとも。

  • 初めて阿部和重作品を読んだ。ある男性(唯生)についての話。語り口調。一文が長くて改行が少なく、前の文章に引きづられて話がよく脱線するため、慣れるまでは少し読みにくい。話が進むにつれて、唯生の言動、挙動がどんどん面白くなっていく。後半は何度も笑った。

  • 84点。特別な存在でありたいと願う主人公は、ひたすらに体を鍛え、思索にふける。主人公と語り手は同一人物なんだけど分裂し、ひたすらに自己言及しまくる。タイトルはトリュフォーの映画そのままだが、主人公が至るところはこの映画、もっといえばヨーロッパ映画的な主題に通低するもの。現実の虚構化、日常の演劇化、みたいな。

    映画や小説を「泣けたわ」「笑えたわ」とシンプルな感想を吐くだけの一娯楽として、あるいはコミュニケーションのネタとして消費する昨今の潮流に逆らい、批判的精神を常にもちメッセージを見い出すべき、みたいな一昔前の教養主義的なお寒い考えで映画鑑賞や読書にひねもす明け暮れながらも、目的があるわけでもないので、当然仕事なぞするわけもなく、のんべんだらりとした生活を送っているか、そうありたいと心から思っているタイプには強く共感できる内容。
    なんと気恥ずかしくもピュアな青春小説だと思うに違いない。

  • どっかで見たことある文体だとおもったら、蓮實重彦だった。

    この主人公なんか知ってるとおもったら、ああ、これ、自分か、って気になった。もちろん、こんなふうに自己言及はできないんだけど、読んでいて、始終いたたまれない気持ちになったのは、「唯夫」の考え方だとか、行動だとかが、いかにも、わたしの好きそうな、やりそうなことだったせいだと思わざるをえないんだぜ。

  • この小説の語り口には何だか親近感がわいてしまいました。すごく可笑しい…。真剣だからこそ可笑しくて、もちろんそこは意図して書いてるんだろうけど、実際に自分で自分を追究する時の滑稽さは客観視するとそんな風なんだろうと思うし、その真剣さもよくわかるな。自分のことのように恥ずかしく、また、それでいいか、とも思う。

  • 阿部和重はこれで三作目だが、いわゆるテクスト論的な眼を嘲笑うかのような露骨さと自己言及が相変らずで、ここに描かれるどうしようもない自意識は滑稽であるけれどもああわかるなあとも思う。

  • 自己の存在理由及び価値を過去の人々に求める。
    誕生日が一緒だとか、誕生日の日にちの持つ意味に求めたり。自分の存在が特別であるという思いを確実にしたい為に、目や耳にした拠り所に縋る思いは若いから?それとも芸術系だから?身に覚えがある感覚ではある。

    途切れのない文体や、意味がない様な内容の羅列が最後にタイトルに繋がる所は面白かった。

  • 「特別」でありたいと願い、「春分のひと」であることに「特別」を見出して、Sホールでアルバイトをする美大生の中山唯生。「春分」と「ドン・キホーテ」と「ブルースリー」のモチーフがちょくちょく出てくる。
    前半が難しく、というか論文調だけど語彙が噛み合わないのかリズムが悪いのか、ぎこちなくなんとも読みにくかった。後半の特訓の話、映画撮影のドタバタになるとするする読めるようになり、唯生の有り余った自意識過剰さが「哀れ」で面白かった。「春分の日」たる「小春日和」の理論はいまいち謎。

  • 読み終わってしばらく酔っ払っているかのような、一発キメテいるかのような浮遊感。
    パンチの効いた一冊。

  • クライマックスで爆笑した。不条理でまるで空気を読まない暴力にウンコの姿を思い出す。

  • いきなり「ブルース・リーが」で始まる冒頭は唐突であった。唯生の造詣は面白い。脇役たちもいい味出している。唐突な印象は各所にみられたが、こういう文学もアリとなんか感じるものがあった。タイトルもいい。

  • これがデビュー作。けっして嫌いではないけど、わかるようなわからんような。「表現したい」衝動がいずれかの時点で「伝えたい」覚悟、みたいなものに変わる、それを経た作家は美しいし強いなあと思いました。

  • 阿部和重「アメリカの夜」http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062730570 … 読んだ。おもしろかった。持て余す自意識に自分が振り回されるコメディ。特別な存在、変人、と認められたい何者かであるべき何者でもない自分。特殊で目立つことがアイデンティティに直結する各種作家稼業は大変だ

    語り手わたしは途中で主人公の唯生は自分だと言いさらに現実の名は重和(作家の名前の逆転)だと言いもする。入れ子のフィクション。エピソードの描写は映像が浮かぶし、急な場面転換は映画のよう。モチーフもシラバスも既存の映画や小説を借りまくっていておもしろい。そもそもタイトルがね(おわり

  • 気違いの役を欲しいと、主人公が迫る部分が好き。文章は少しまどろっこしいけど。

  • この小説は中山唯生の延々と続く独白のような、自己紹介のような構成。 阿部和重のビートに乗せられてしまった。

  • 阿部和重、クセになる。
    こう「うあーおもしれー」って感じではないんだけど、淡々とこみ上げてくる感じ。
    アメリカの夜。映画をみようかな

  • 「ニッポニア・ニッポン」同様、もう自意識がぐちゃぐちゃだ。サブカル自意識。自意識まみれの同類への批判も、自覚したうえで乗っかることも、これは封じ込めようとする。閉塞感の先にありそうな狂気すらパロディ化する。逃れる術をすべて塞がれてしまった。つまりあらゆることを自意識の名のもとに自ら縛り上げるような厳しさを持っていて、突き詰めればこうなってしまうのは必然ですが、しかし、こうまでして縛り上げてどうするのか。ここまでせざるを得ないのが自意識というものだと言われたらそれまでだけど。こんなに気持ち悪く自分について考えて誇大妄想を抱いてて、サブカル的にくすんだ青春で、なのになんか愛おしい。デビュー作だからか。青臭さが刺さる。ひとりの文化系女子として共感するところがいっぱいあったし、徹底的に自分を客観視しようとする姿勢が重要なのはまちがいないです。そして客観視しようとしてもどうにもできないっていう、本質的な客観視の不可能性がありありと見えてしまうところがすばらしいです。あとは批評用語もパロディになってしまうのを見ていると、もう小説ってほんとうにすごくて、わくわくしてしまう。いろんなことができるんだなあって。

  • 自分には読み辛かったですね・・・

    自分という1人の人物を、2人として捉えているという
    なんとも不思議な文体。

    阿部和重さん、初めて読みましたが
    異常なほどに多い心の動きの描写が、
    (というよりもう一人の自分との対話?)
    難しい言葉に埋め尽くされているので若輩者の私には
    頭が痛くなってしまいました。

  • 玉ねぎを剥いていくような読書体験であった。
    剥ききった果てには当然何もない。しかしその何もないということが、我々を落胆させることはないでしょう。
    その虚無に何を感じられるだろうか。

  • 阿部和重の最初の小説であり、群像新人賞を受賞した作品です。中二病の主人公の滑稽な振る舞いを、主観と客観を織り交ぜたような独特の文体で描く小説です。

    巻末の批評家・佐々木敦氏による解説には"映画をつくることの困難と、小説を、ことばを書くことの困難と、この世に生きて在ることの困難とが、少しずつブレながらも三重映しになっているような(P.193)"とあります。わたしは映画にはあまり関心がないので、冒頭から映画オタク的なうっとうしさを感じ、最初は抵抗を感じながら読んでいました。

    しかし、佐々木氏の解説にある残り2つのテーマ、すなわち"小説を、ことばを書くことの困難と、この世に生きて在ることの困難"に焦点を当てながら読み進めるうちに、理解が進んでいきました。

    そもそも、この自意識過剰な主人公はわたしのメンタルに非常に近いものをもっています。そのため親近感を抱かないではいられない。そして特有のテンポをもつ文章が繰り出される中で、その小気味よさにどんどんハマっていきました。以下に「阿部和重節」が全開の、本書で一番好きな文章を引用させて頂きます。

    (P.142~)"喜代三の話をとりあえず信用してみると、武藤という男は、雪ちゃんにたいして劣等感を抱く程度には鈍感ではないらしく、だがそんな心情を喜代三に悟られてしまうほど彼の言動は余裕を欠いているようであり、そうだとすれば相手の雪ちゃんもいくらかは武藤の心理を見抜いているかもしれず、したがって、「和気あいあい」とした平和な撮影現場に見えるが水面下ではみな「バカにしあってる」という喜代三の判断はいちおう妥当であるとも考えられ、そのような場合、つまり映画の撮影という集団作業においてスタッフ間の信頼関係が良好でない場合、それはたいてい撮影進行の妨げとなり、それぞれの創作意欲もしだいに下降してゆくであろうから、現在、武藤の映画撮影はうまくいってない、もしくは今後、うまくゆかなくなるだろう、というように唯生は推理してみたわけだ"

    ある種とっつきにくい作品(あるいは文体)かもしれませんが、デビュー作ゆえのドロッとした才気が横溢している、というふうに捉えて読み進めると、思わぬ楽しさが見つかるかもしれません。傑作です

  • 2013/10/7読了。
    「好きだな、この本」というのが、一番の感想。
    最初の方は、少しペースが掴みづらく、退屈な気もしたけれど、だんだん「うん、わかる、わかる。」と引き込まれて行った。

    私は誕生日からして、「春分の日」のひとだけれど、何故か気持ち的には、「秋分の日」の人だなぁ。そういえば、私の周りにはこのどちらかの人たちが多くて、夏生まれの人や真冬日生まれの人とは、あまり仲良くなれない。などなど…いろいろと考えることが出来て、幾らか「謎」が溶けた気がする。

    「インディヴィジュアル・プロジェクション」も、読んでみようか。

  • ひさびさの阿部和重。
    これは著者のデビュー作であり、自分が学生の頃に読んだものを改めて読み直してみた。小説の組み立て方が映画的でありつつ、映画的にならないように試行錯誤している気がして、視点の目まぐるしさを楽しみながら読めた。

  • 主人公の青年、阿部和重が、自分は特別であるということを証明するために、様々な論理的アプローチをする長編小説。卒業した映画学校で出来た知りあいとのやりとりと、自分の内部での葛藤との2つの軸が走っていく。中山唯生という別の人格を作ったり、自分の誕生日である秋分の日に関する仮説を立てたり、ドンキホーテよろしく物語の主人公になりきったり、ブルースリーのように体を鍛えたりする。彼は世間から徐々にずれていき、周囲とトラブルを起こして関係を断ち切る。最後には、本来の自分はバイトを続け、唯生がフランスへ行き、映画の手法、アメリカの夜を用いて、昼の風景を夜に変えた映像を取りへ行ってしまう。

  • 初・阿部和重。現代文学の旗手という世間的イメージで読んでみた。読むほどにノってくる文体のリズムが面白い。描いているのは自意識に悩む青年の、解放へと向かう物語、というイマドキ特有の内容だった。こういった、現実をえぐるリアリティ小説は得意ではないが(得意ではないだけに)、心に深く残る感覚がある。

  • 特別でありたいと願えば願うほど、「『きちがいになりたい』ひと」「シネフィル」という『型』にはまってしまう若者がジレンマともがく姿を、小説という枠を何処までも自由に使ってあらわした作品。唐突に思想談義があったり、あらすじはあってないようなものだし、主人公は著者と話し始めるし、シリアスシーンも左右白黒に塗り分けた主人公のせいで台無しだし笑、すべてがめちゃくちゃ。しかし、その滅茶苦茶が著者の言いたい話の流れに従って並べられているから、読むうちにこころが引っ張られていってしまう。青さ、だけでは片づけられない一冊。

  • テーマは、ありがちな若者の自分探しの物語だか、主人公は作者の分裂であり、分裂した自己との対話で本書は成り立っている。
    誰よりも「特別な自分」であることを証明するために主人公。結局は「特別な存在」にはとうていなれないという虚しさを募らすだけと知りながらせっせと「特別な自分」の証明を試み続ける主人公。
    日常生活の中での仮構を突き崩す、暑苦しくぶっきらぼうな暴力性を認識しながらも、なお書かねば落ち着かないという、書き手にとっての悲痛さを主人公に投影し、主人公と作者が対話をする。伏線も多く難解だが、面白い。

  • 青春メタ小説。

  • 阿部さん、うますぎ。シネフィルの阿部さんらしいパスティーシュな作品ですが、非常に洗練されてます。

    笑いながら一気に読めてしまいました。

  • 冒頭からもう、所謂文学好き映画好きはこんなことをねちねちと考え考えおまけにこうして言葉にして表明したがるのですよこんな文章書いちゃうんですよ、と言われているようで、ほんとうに読んでいて恥ずかしくって、つらかった。わざわざ迂回しながらくどくどと続く語りのうざったさも、我々の過剰な自意識を嘲笑っているようで、おかしいのだけれど不安にさせられる。厭な饒舌。
    なのに、伏線回収の鮮やかさも相まってすっきりとした読後感! すごい!すごかった。

  • 頭良さそうさを意識的にねらった稚拙な文章でいらいらさせられる。でも絶対わざと。
    この人天才だと思います。

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著者プロフィール

1968年生まれ。『アメリカの夜』で第37回群像新人賞を受賞し作家デビュー。’99年『無情の世界』で第21回野間文芸新人賞、2004年に『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞・第58回毎日出版文化賞、’05年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞、’10年本作で第46回谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞。他の著書『クエーサーと13番目の柱』『IP/NN 阿部和重傑作集』『ミステリアスセッティング』ABC 阿部和重初期作品集』対談集『和子の部屋』他多数。

「2013年 『ピストルズ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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