花鳥の乱: 利休の七哲 (講談社文庫 た 77-2)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062731317

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  • 荒木村重、高山右近、蒲生氏郷、織田有楽。前田利長、細川忠興、古田織部。数え方により諸説或るなか、七哲としてこの七人をとりあげた連作短編。芝山監物や瀬田掃部の物語などもあれば読んでみたいところ。荒木村重。織田信長への謀反、裏切りと言われるが、本人としては、摂津平定に織田兵を一兵も借りておらぬ、他の属将とオレは違う、という強烈な自負があり、それゆえの行動、と語られる。その代償は一族の誅殺と己のみ生き残るという結末だったとしても。高山右近。神の道に生きた求道者、というイメージだったが、戦国武将としてそれなりに貪欲で残忍な面、主家乗っ取りなど酷薄で軽薄な面も持ち合わせていたことが語られる。棄教を勧めに来た利休に、胸を張って、棄てまする、というつもりが口が勝手に棄てません、といったあとは、まさに剛直。信仰以外はすべて棄てて進む様が描かれるが。蒲生氏郷。安部龍太郎「レオン氏郷」と違い、戦場の猛者は、時の権力に従順で、彼の正義感は自分に害の及ばない範囲においてのみ、発揮される、と皮肉な描かれ方をしている。前田利長。凡庸な二代目の皮をかぶった理性鋭い守成の人であった様が描かれる。古田織部。真似ではいけない、自らの作為こそ尊い、とした利休の教えの一番の後継者は己だ、という自負を軸に描かれる。細川忠興。これほど情に厚く、嫉妬深く、理不尽で、剛毅なもの他に非ず、といった様。俄然、興味が出てきた。

  • 文化人たち

  •  万人受けする王道路線ではないだろうし、大作でもないけれど、その故の異端の鋭利が印象に残る作品。
     戦乱の世において、文化である以上に、武将の社交と哲学であった茶の湯。
     茶頭・千利休に集った高弟たちの、権力との癒着と反抗。
     研ぎ澄まされ簡潔に削がれた文体が、彼らの闇や歪みを裁断する。
     例えば『風の武士 荒木村重』、死と破滅に纏わる冥い喜び、飼い馴らされることを拒絶した誇り高い孤独と解放感。
     例えば『雨の中の犬 細川忠興』、人間に巣食う猜疑と救い難さ、肉親の死の見事さを願う歓喜。
     正直なところ、筆者の人間観照なるものを真っ当に受け留めるには癖があり過ぎて若干の抵抗はあるし、特に女性が読み手の場合、後味の悪さや苛立ちを感じる場合もある。
     とはいえ、表層的な合戦記録物や企業人向けの情報小説、もしくは解説書の類(たぐい)に陥らずに、生々しい相克や二律背反、混沌とした愚の深淵に斬り込むには、これくらいの毒も要るのかもしれない。
     「美は復讐意識を内蔵」し、「人間が到達した美意識と、その品性が必ずしも一致するものではない」見地から、乱世の男たちの混沌たる矛盾と燃焼は鮮やかに活写される。
     単なる追従(ついしょう)に終わらない、巻末の解説も解かり易く的確。

  • 7人の武将にスポットをあてた短編集。よみやすかった。利休さんはあまり出てこないです。

  • 岳さんの描く武将が心の底から大好きです。
    利休の七哲という副題ですが、ストーリー的には利休はあまり関係無かったかな。
    時代を追いながら、7人の短編が続いてる構成です。
    とにかく好きな武将が好きな作家さんに描かれていて、私としては大満足な一冊です。

    個人的に久秀・光秀・村重が仲が良い設定なのに胸の内を暖かくしてもらいました。すてき。
    他にもすっごく素敵な描写や人物関係、心情の機微が沢山で、繰り返し読みたくなるような作品ばかりです。
    おすすめ!

  • 利休七哲(荒木村重、高山右近、織田有楽斎、蒲生氏郷、細川忠興、前田利長、古田織部)の短編集。この中では村重の話が個人的には好きです。

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