- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062731348
感想・レビュー・書評
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出会いマッチング、個人情報保護等、まさに現代の社会問題を捉えている35年前のハイテク犯罪ミステリー
結婚相談センターに女性オペレーターとして勤める主人公。ある日、登録している兄の個人データを閲覧したいと会社に飛び込んでくる客がいた。どんな理由であっても見せられないと断るが、その物々しい雰囲気に不穏な空気を感じていた…
コンピュータ犯罪、男女のマッチングシステムをテーマに書かれたミステリー。
なにがスゴイって1986年の作品ですよ、コレ。
1986年っていったら、ファミコンで伝説のクソゲー、たけしの挑戦状が発売されたあの時代です。
にもかかわらず、今まさに現代を予見したかのようなテーマ、課題感を描けているのがマジで驚愕なんですけど。岡嶋二人先生は、いつも未来予測ぶりがスゴイんですけど、今回も強烈です。
ストーリーや展開は、若干昔風ではありますが、いまでも十分面白く読み進められます。真相もよく組み立てられていて、納得感もGOOD。ミステリーとしても上出来。
また主人公の彼女が魅力的に描けていてお見事なんです!
当時の結婚適齢期(懐かしい言い回し)の女性が持つ、仕事や恋愛に対する信条や価値観がとてもよく伝わってくるんです。
そして最後には前向きに未来に歩んでいく姿が超素敵なの。こんな女性惚れちゃう!
本作を読むと、これからの情報社会を憂いじゃいますね~
人との出会い、恋愛はどんどん合理化され、スマホアプリ1つで適正なパートナーが探せます。少子化問題から国の施策としても予算が割り当てられているくらいです。当然データベースには、大量のビッグデータが存在してるんですよ。
一方で個人情報保護法は今年も改正されています。もちろんパーソナルデータの扱いは、これからもどんどん厳しくなっていくでしょう。しかしそれを保護するシステムも維持するにはコスト増やリスク管理も重要です。
これからはさらにAIの時代で、データが支配する世の中になっていくでしょう。単に便利になったと甘えていると、我々はしっぺ返しをもらうかもしれませんね。
35年以上も前のハイテクミステリー、ちょっとレトロゲームをやっているような感覚に陥る本作。大変楽しく読めました! 特に40代50代の人にオススメの作品です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
個人情報を集約した結婚相談システムを巡るミステリー。
技術面の古臭さは否めないものの、GAFAなどによる個人情報を用いたビジネスの是非が問われる現代から遡ること約36年前にこのような作品を書いた筆者の先見の明には感服した。
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結婚相談所のデータ管理を行う夏村がデータに不信を抱いたところ、周囲でも殺人事件が起こる話。30年以上前の小説とは思えやんくらい現在とリンクする。マイナンバーとかこれっぽいやんと未来予知みたいで凄い。こういうことやってる会社がないと言い切れんのが嫌やな
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めちゃくちゃ読みやすかった。
会話文が多く、余計な描写が少ないので
どちらかと言うとティーンズ向けかもしれない。
転結がコンパクトなので、最後がシュッと終わる、好みが分かれるかもしれない。 -
相性診断によって男女を引き合わせるコンピュータ結婚相談所。オペレータの夏村絵里子は、恋人の名前を登録者リストに見つけて愕然とする。「何かがおかしい」彼のデータを見直し、不審を抱いた絵里子を、正体不明の悪意が捕らえる。相次いで身辺で起きる殺人事件は、増殖する恐怖の始まりでしかなかった。
30年前以上に書かれた小説。コンピュータで相性がいい男女を合わせてお見合いさせる。今で言うところのAIを使った機能と同じなんだろうな。そして、その情報の機密性も今と同じかんじ。今は個人情報保護法だとかいろんな規約で譲歩を流出させないように、企業は努力してる。それは、この小説の中でも同じ。30年前以上に書かれた小説なのに、なんだかすごいなと思った。
やはり当時とは違って、いろんなシステムとかそういうのは古いんだと思う。だけど、コンピュータを使った技術だとか懸念だとかそう言ったことは、今と変わらない気がする。
物語の中で、コンピュータに選んでもらうのを好まない人がいるから窓口ではコンピュータは使わずに、裏で使って、さも私が選びましたという顔で紹介するような下があった。それって今ではAIが選んでくれるとかと同じで、今の感覚だと「AIが選んでくれるなら間違いはない…?」と思ってしまうのかな。
しかし、主人公の絵里子ちゃんの元カレは本当になんだか…ってかんじの人だったな。まぁ、絵里子ちゃんが結婚を流してたようなところがあるから仕方ないけど、いざお見合いが決まり結婚が決まっても「説明させてくれ」って何を説明されるの?って思っちゃうよね。あなたは、私と付き合ってたけど他の女と結婚する。一体、他にどういう説明があるのか。そして、そんな絵里子ちゃんに「結婚式に来てほしい」なんて言う???元カノを結婚式に呼んで何の得があるの?「絵里子が僕を選ばなかったからだよ」ってことを見せつけるの??最後のシーンとかも本当にうざーってかんじ。絵里子ちゃん、吹っ切って。他にもいい男はいる!
技術的な説明のところは少し難しくて流し読みしちゃったけど、なかなか面白かった。満足満足。
2022.9.24 読了 -
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コンピュータ結婚相談所“エム・システム”のオペレータ夏村絵里子はある女性のデータを見たいという客・土井綾子の申し出を断わる。綾子の兄は、エム・システム紹介の女性と新婚旅行中、死亡したのだ。ところが、その綾子は翌日、殺された!疑問を抱いた絵里子はデータを調べるうちに、恋人市川輝雄がエム・システムの会員であることを知り衝撃をうける。さらに、データに重大な秘密が隠されていることに気づく!彼女は同僚古川信宏に相談。彼は、コンピュータに仕掛けられた何かに迫るが、殺されてしまう。謎を追う絵里子。二つの殺人事件の交錯するところにさらに大きな陰謀が…?!何重もの“罠”が読者を魅了するコンピュータ推理の傑作!鬼才の才気あふれる推理作家協会賞受賞第一作!!
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1986年の作品である。当時はおそらく最先端だったであろうコンピュータ用語や、データ処理などの用語が出てくるが、現在では別のものに取って代わられているものも多い。そして、関連会社すべてをネットワークでつなぎ、社員の個人情報をつぶさに管理するなど、現在では普通に行われていることのはじまりを覗き見たようでもあって興味深い。とは言え、人間の考えることは、昔も今もあまり変わりがないようで、ずるがしこい奴はいつの時代も狡猾な手を使って自分だけ得をしようとするものである。パソコンが一人に一台の時代でもなく、もちろんスマホなどない時代の物語だが、意外にも古びた印象はそれほどなく、ハラハラしながら先を楽しみに読むことができる一冊だった。 -
コンピューターっというか、実は裏で操る人物がいる??みたいな(笑)
岡嶋さんの作品はコンピューターが出てくることも多いので、書かれた当時は最新のコンピューターの知識だったのだろうと感じました。
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今読むと懐かしいコンピュータ用語が頻出していて時代を感じさせるが、個人情報を筆頭に書かれている内容は全く古臭くなく、著者の先見性を改めて感じた。かつプロットも申し分なく十分楽しめた。
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コンピュータを介しての殺人事件。タイトルからはコンピュータの暴走のような印象を受けるが、AIの時代でもなく、結局は人。一昔前のミステリーといった感じ。勧善懲悪一歩手前で少し物足りない気もするがそれは好みの問題。また、叙述トリック一歩手前という印象も受け、なんだかいろんなことが一歩手前だった。