警視の接吻 (講談社文庫 く 32-6)

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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (623ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062731782

作品紹介・あらすじ

公園で美しい女性の死体が発見された。警視は別れた妻の子どもと過ごすはずだった週末を返上し、恋人・ジェマとともに捜査に加わることになる。被害者の足跡を辿るうち、婚約者との諍い、奔放な男性関係などが明るみに出て、捜査は難航する。さらにある不動産取引でトラブルに巻き込まれた可能性も出て-。

感想・レビュー・書評

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  • 街中の公園で発見された若く美しい女性の死体。それはまるで眠っているかのように、綺麗に整えられていた。せっかくの週末に呼 び出しを受け たキンケイド警視は、その事件の捜査に協力することになる。だが、紅茶会社の社長だったその女性は、前夜に婚約者と派手な喧嘩をして別れていたこと、そし て、婚約者以外の複数の男性と付き合っていたことが分かり・・・。◆シリーズ六作目の舞台は、天文台で有名なグリニッジの対岸にあるアイル・ オブ・ドッグ ズ。古くから港湾関係の労働者が住む下町でしたが、最近は流行りのウォーターフロントとして再開発された地域とか。そして、キンケイドがプライヴェートで 大事な問題を抱えていることもあり、ジェマは捜査の過程で知り合ったある男性に惹かれそうになり・・・。ジェマ、本当にそれで良いの?とハラ ハラしたり、 内心では嫉妬している警視に、ちゃんと言ってやれよ、と思ったり(笑) 恋愛や結婚が二人だけの問題じゃない二人だからこそ、いろいろ難しいんだなあ。

  • 警視キンケイド・シリーズ第6作。

    過去と現在を行き来することで奥行きのあるストーリーを紡ぎだすのが得意な作者。今回も本領発揮といった感じ。いつもの風光明媚な田舎ではなく、ロンドンの東にあるアイル・オブ・ドッグズが舞台。かつて船のドックが多くあった場所だ。この町の衰退と再生を背景に、さまざまな人間模様が複雑にからみ合う。ミステリとしても楽しめる内容だ。

    ところで、『警視の接吻』という邦題、いかがなものか。
    『Kissed a Sad Goodbye』という原題から接吻という言葉をつけたのだろうが、あまりに安易というか、内容にそぐわないのでは?

  •  キンケイド警視シリーズの6作目。前作で、別れた妻が殺される事件によって知らなかった自分の子供の存在を知ったキンケイド。その子供との危うい関係が、上手くアクセントになっている。事件は、公園で見つかった美しい女性の死体をめぐるものなのだが、殺された彼女の隠された生活や、その親達の大戦時の話が複雑に絡んでくる。
     ネタバレしたくないのではしょるけど、たった1人の人間の悪意によって歪められた人間関係が、何十年もたっても苦しめ続けるなんて言葉を失う。その人も何かの理由があって、歪んでしまったんだろうが、その歪みを人にぶつけることの怖さに気付かなくなる、その危険は自分にもあるのだと忘れずにいたい。
     読み応えありました。次作も期待できそうだ。

  • 公園で発見された美しい女性の死体。
    キンケイドは息子との週末を返上し捜査に当たるが…。

    という事で、今回はキンケイドが大いに悩む話。
    亡くなった元妻の子供との付き合い方に悩み、恋人でもある部下のジェマとの関係にも悩む。
    今までの話ではあれこれ悩むのはジェマの役回りだったのでなんだか新鮮。
    キンケイドの悩みが深まると共に事件も混迷を増していく。この辺が無理なく読めることに感嘆する。
    クロンビーはエピソードとキャラクターの心情をシンクロさせて描くのが本当に巧いと思う。
    事件は捜査を進めるに従ってきれいで有能な被害者像が崩れ、新たな人間関係が浮かび上がる。
    本編と交互に挿入される過去の物語が悲劇に向かって加速していくのと相まって、ラストに向かって物語りは一気に動き出す。
    やはり読み始めたら止まらない。
    惜しむらくはキンケイドとジェマに対立しそうな女性警部補が今ひとつ目立った動きをしなかったこと。登場したときは二人に対して反発しそうなキャラに思えたのに。
    そこまであれこれすると話に収拾がつかなくなるのかな。
    ラストの1節は切ない。わずかな救いがさらに切なさを増している。

  • このシリーズ、過去の話と現在の話が交互に語られて、その過去の話が現在の事件に結びついていくというのが多いけれど、それがおもしろい。過去の話もそれだけで読みごたえがあるし、どう事件とかかわってくるのか次第にわかってくるのがスリリングで。今回の「過去」は第二次世界大戦中、ロンドンの空襲をさけて疎開していた少年の話。昔のロンドンの雰囲気がわかって、なんだかノスタルジーさえ感じるような。今回の舞台は、ロンドンのテムズ川沿いの港、ドックランド。このシリーズを読んでいると、ロンドンの地図がほしくなる。旅行もしないのに変だけど今度買おうかな。

  • 美しい女性の死体が人気のない公園で発見され、警視キンケイドと恋人の巡査部長ジェマが休暇返上で捜査に当たることになります。
    人目を惹く美女は紅茶の会社を親から継いだ経営者アナベルで、エネルギッシュで有能な、周りをかすませるような存在だったことがわかってきます。
    男性の作家ならファム・ファタール的に描きそうですが、女性の視点で、恵まれているなりの苦労や自己実現しようとあがく様子が、共感的に描かれているのが新鮮でした。
    次々に登場人物の視点を変えて物語が展開し、数十年前に遡る因縁も次第に明らかになってくる構成。
    何組もの男女が登場するので、全体に恋愛要素の強い作品。そういうものが読みたい人にはうってつけ。
    肝心の警視は1に仕事、2に息子、3にやっと恋人、という状態なのでジェマの心が揺らぎます。
    どっちかというと「警視は接吻しない」という内容〜?

  • 警視キンケイド・シリーズの第六作。

    紅茶の会社の女性社長が殺された。
    公園で発見された美しい死体は眠っているようだった。
    容疑者は直前に喧嘩をした婚約者、
    別の恋人のストリート・ミュージシャン、
    さらにはその父親と、
    彼女と関係のあった男たちがせいぞろいする。

    女性の父親たちの、第二次世界大戦中の話が織り込まれていたので、
    それが動機に関係あるのだろうとは見当はついた。
    ただ、疎開していた仲良し三人組のうち、
    女の子の現在の話が出てこなかったので、
    彼女が殺されてそれが動機か?と疑っていた。
    最後には登場して、しかもちょっぴりハッピーエンドになっていて良かった。

    キンケイド警視は、前作で実の息子だとわかったキットに
    うかつにもそのことを告げてしまい、関係がこじれてしまう。
    息子として引き取りたい気持ちはわかるが、
    ただでさえ忙しい仕事なのにどうするつもりなのか、
    と少々腹が立った。
    ジェマだって、親切な大家さんの助けがなければ、
    息子を育てながら仕事を続けられないというのに。

    もしイギリスを訪れることがあったら、
    重要な場面だったグリニッシュ・トンネルには
    ぜひとも行ってみたい。

    魔女マデリンとの再会は。
    なんてことない場面だったが、良かった。

    それと、
    シドが足の上に乗って眠っていたのに、
    そっと蹴って移動させるとはひどすぎる。

  • シリーズ6作目。前回の最終盤部分からの続き。しかも第二次大戦時と現代と同時進行で、作品に厚みを増しています。被害者は紅茶会社の女性経営者。彼女の強い野望に絡まる人間関係が次第に解き明かされていきます。キンケイドとジェマの進展もさることながら、キンケイドと息子キッドとの手探り状態の関係づくりが興味深かったです。

  • ?1999

  • シリーズ6作目。少しわかりにくい部分もあるが、やっぱり好き☆

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著者プロフィール

米国テキサス州ダラス生まれ。後に英国に移り、スコットランド、イングランド各地に住む。現在は再び故郷・ダラス近郊で暮らす。代表作のダンカン・キンケイドとジェマ・ジェイムズのシリーズは、米英のほか、ドイツ・イタリア・ノルウェー・オランダ・ギリシア・トルコでも翻訳され、人気を呼んでいる。

「2023年 『警視の慟哭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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