文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (1376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062732475

感想・レビュー・書評

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  • 数えてないけど何回目かの再読。

    再読したのは昨年の年末、
    インフルエンザにかかって時間を持て余していた時。一人きりの隔離された和室で、
    ああ読みたいなー…と思ったのが
    この、鉄鼠の檻だった。
    インフルエンザで隔離…っていうのがイメージに合致したからかな笑

    最近再読した狂骨にも言えるんだけど、
    京極堂シリーズの中でもひときわ構成が美しい作品。
    あの膨大な文字数の中で、
    一貫して美しく堅牢な檻が構築されている。
    京極作品はわりとどの作品もそうなんだけど、物語そのものの計算され尽くした構成が凄すぎて毎回ため息がでる。
    何度も何度も知っている内容のものを読んでしまうのは、その凄さを何度も体験したいからなんだろうな、と自分では思っている。

    以下、内容…、
    …うーん、何度読もうが纏められる自信がないな。

    箱根の山中で発見された謎の巨刹で、不可解な死体が発見される。
    そんでなんやかんやあって、
    ラストは、
    おおっ、なるほどそういうことか‼︎…
    と巨刹の謎が解けます。←やっぱり上手に纏まらなかった笑
    長年のあいだ、閉じ込められていた、もしくは自ら閉じこもっていた、僧たちそれぞれの心理とか、動機とか、
    …言うなればものすごく説得力のあるファンタジー。
    もちろんシリーズの主要キャラクターも健在で、特に関口はたぶんシリーズの中でも1番リラックスしているんじゃないかなと思う。
    山歩きは大変そうだけど。

    それにしても幻の経蔵、
    あったら凄いのにな。

    読み終わったら最後、
    仏教に否応無しに関心を寄せてしまう作品。
    結局公案ってなんなんだ‼︎

  •  鉄鼠というのは、宗派の抗争に敗れて死んだ僧侶が恨みのあまり妖怪化したものである。この「妖怪概念」を実現化するために作者は異なる宗派の禅僧たちがともに修行している寺院というあり得ない設定を生み出す。

     ありきたりの推理小説のタイトルなら『箱根山僧侶連続殺人事件』である。
     『姑獲鳥の夏』で家族も医院もなくした久遠寺嘉親老人は箱根の山奥の旅館、仙石楼でだらだらと過ごしている。同じく逗留している古物商の今川雅澄。今川は戦時中、将棋を指す際に、いくつも勝手なルールを作ってやらせた変な上官の下にいたのだ。あ、榎木津かとすぐわかる。
     その仙石楼に、中禅寺敦子とカメラマンがわりのカストリ雑誌記者・鳥口守彦が取材にやって来る。さらに奥にある明慧寺が取材先だが、先に仙石楼入りしていた記者の飯窪季世恵の様子がおかしい。
     他方、京極堂こと中禅寺秋彦と「わたし」こと関口巽は箱根のそこからは山ひとつへだてた場所には逗留している。というのも、箱根の開発に伴って、古い書庫が発掘され、古書店を営む京極堂はその蔵書の鑑定と売却を依頼され、両人とも細君を連れて、旅行かたがた箱根入りしたのである。

     「わたし」関口が直接見聞きしていない部分は「あとから聞いた話である」と三人称で叙述されている。まず、仙石楼で奇怪な事件が起こる。逗留客たちがちょっと目を離したすきに、仙石楼の庭に座禅を組んだ僧侶の死体が出現するのだ。神奈川県警から警官がやって来る。ここで登場する益田は本作の事件でほとほと刑事が嫌になって、以後、薔薇十字探偵社で榎木津の下僕として登場することになるが、それはあとの話。
     警察の不手際に辟易した久遠寺老人は探偵を呼んでしまう。榎木津礼二郎の登場である。榎木津を何とかしなければと関口が呼ばれる。榎木津は雪の積もった中、足跡もなく座禅を組んだ姿勢の僧侶の死体が出現した謎を解くが、彼は依頼されたことしかしない。
     取材陣は京極堂も存在を知らなかったという謎の寺、明慧寺にはいるが、そこで第二、第三の殺人事件が起こっていく。そして、飯窪によって語られる15年前の箱根の殺人放火事件の謎。

     『オリエント急行殺人事件』のように、密室的な環境下での連続殺人事件。つまり、そういう環境が「檻」。犯人はこの中にいる、ってやつだが、みな坊主。本書がすぐれた禅宗入門ともなっていることは、あとがきの宗教学者のお墨付きであるが、禅の修行にまつわる坊主たちの話は刑事たちにはちんぷんかんぷんで、警察は完全に空回りする。というのも誰が犯人かはともかく、ホワイダニットが本作の肝なのだが、僧侶たちの関係性が警察にはさっぱり見えてこないのだ。京極堂は近くにいるのに動かない。言葉を使って呪う彼の憑き物落としは、言葉を越えたところにある禅には無力だからだという。さあ、どうする。

  • 明慧寺という閉鎖された空間内での坊さんたちの様々な感情が渦巻いているところや、仁秀の動機、そして
    京極堂ですら敗北を認めざるを得ない「禅」という概念に恐れを感じ、そうしたところがこの作品の雰囲気を漂わせている。
    山下が常信の言葉の意味をようやく解った気がすると言ったところはなんだかじーんとくるな。

  • 京極堂再読シリーズ4冊目。
    面白かった。
    どう言葉にしても、うまく言葉にならない気がする。
    文章も内容も読みやすいのに、
    分厚すぎて物理的に読みにくかった(笑)

    堅苦しいセリフが散りばめられているようで、
    内容はわかりやすくすっと入ってくる。
    いろんな視点からでないとわからない複雑な内容なのに、
    『あとから聞いた話である』の枕詞で関口くんが1つの視点(=読者)にしてくれていて、だから読みやすいのかと思う。
    それから雪景色やそこに浮かぶ黒い僧、映える着物の赤、炎。
    まるでそこにいるかのように色彩が浮かび上がって、
    人の嫉妬や想いが自分のことのように重なって見えた。

    これだから、すぐに次を読みたくなる。

    あと余談だけど慈行さんたまらなく耽美……
    榎木津との対峙はほんと身震いモノだった。

  • 前半を読むのに1ヶ月かかり、残りの後半をたった1晩で読んでしまった!
    前半の複雑な人間関係を理解するのにめっちゃ時間がかかり、理解してしまうと、あとはスピード感たっぷりで京極堂の解決待ちです。

    プロットも相変わらず冴えていて、真犯人も「そうきたか!」という感じ。
    そして、あえていくつかの謎は残して、いつか解決される日がくるかも?
    という期待もありました。

  • 内容は相変わらず面白い。
    特に長台詞の押し問答や掛け合いが好き。

    犯人の動機についてピンと来なかったから間違いなく私は普通の人。禅の考えにピンと来なかったから、巻末のあとがきにネタバレと書かれてもどこからどこまでがそうなのかちっともわからなかった。

    段々人間の登場人物が少なくってる気がする。
    次作はもっと置き去りにされやしないかと不安だ。

  • 「レールの先の先を読め」というようなコピーのゲームが昔あったはずだが、これは「レールの元の元の更にその元を読め」といった本であった。
    いや、ミステリーって大概そういう物なのかもしれぬが。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    忽然と出現した修行僧の屍、山中駆ける振袖の童女、埋没した「経蔵」…。箱根に起きる奇怪な事象に魅入られた者―骨董屋・今川、老医師・久遠寺、作家・関口らの眼前で仏弟子たちが次々と無惨に殺されていく。謎の巨刹=明慧寺に封じ込められた動機と妄執に、さしもの京極堂が苦闘する、シリーズ第四弾。

    ・レビュー

     相変わらずの見事な構成。しかし今回に関しては構成よりも知識面での感動のほうが大きかった。禅というテーマはかなり難しいのだけれど、しっかり理解して小説を書けばこういうミステリとして扱えるんだという感動。ストーリーはそこまで複雑ではないし、起こっていることもそこまで理解不能なものではない。「シンプルだけど不思議」という印象が終盤まで続く、終盤に入ってからはお得意の畳み掛け。一気に霧が晴れて「なるほど」と綺麗に終わるわけである。
     前3作を読んでいればある意味短編小説のような楽しみ方もできる。一つずつ事件が解決し、犯人も動機もその他の謎・不思議も最後にはすっきりと片付く。京極堂の解説と憑き物落とし、僧との会話、そして僧自身の言葉もなかなか面白かったし、いい言葉だなと思うところも多かった。今回はどうも登場人物がみなカッコ良かったなぁという感じがした。
     前作までとは違って概ね予想の付く展開ではあったと思うけれど、「~の正体はいかに」と予想するのはなかなか楽しかった。

  • 白と黒の世界に閉じ込められているような、そんな感覚に陥った。ちゃんと世界に色はあるのに、白黒で再生されている。
    この話の舞台になった寺の秘密に、そうきたかとおどろいた。今回の京極堂の蘊蓄は主に仏教、というか禅宗の話だったのだけど、なかなか興味深い話だった。理解できたかといわれれば、できてないんだろうけど。犯人の動機には理解できないところがある、ひとはいるんだろうなあ。わたしはすとんと落ちてきたのだけど。
    結界の中で生きつづけたひとたちは、ようやく結界から解放される。ただ最後の最後まで、縛られてしまうひともいた。その、執着の赤は白黒の世界の中でひときわ哀しみを放っていた。
    キャラ読みすれば榎さんがすてきすぎた。榎さんがかっこよかった。久遠寺翁とあのひとの再会シーン、ぐっときた。こう、深いところをえぐられた。

    (1376P)

  • 文庫本なのに厚さ5cm。
    重い。
    通勤途中で読んでたから、鞄が重かった。
    やっと開放される。
    意地と根性で読破!

    禅宗について
    少し詳しくなった気がする。
    坊主が何人か死ぬわけだが、そっちには
    あまり興味が沸かず
    その舞台となっている特異な寺の設定に
    脱帽。

    「不立文字」ふりゅうもんじ
    禅は文献を重んじない。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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