文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (1376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062732475

作品紹介・あらすじ

忽然と出現した修行僧の屍、山中駆ける振袖の童女、埋没した「経蔵」…。箱根に起きる奇怪な事象に魅入られた者-骨董屋・今川、老医師・久遠寺、作家・関口らの眼前で仏弟子たちが次々と無惨に殺されていく。謎の巨刹=明慧寺に封じ込められた動機と妄執に、さしもの京極堂が苦闘する、シリーズ第四弾。

感想・レビュー・書評

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  • 再読です。不可解な謎に翻弄されながらも、禅の歴史や思想を知ることができて、読み応えがありました。
    第1作に登場した人物が再登場したり、この後の作品に登場する人物が出てきたり、シリーズが1つの大きな物語としてつながっているのが楽しいですね。(^^)

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    2024/04/06-- 再読(紙本:文庫)
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    2003/05/XX-- 再読(紙本:文庫)
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    2001/04/28-- 初読(紙本:ノベルズ)
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    2000/03/20-- 初読(紙本:ノベルズ)
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  • 百鬼夜行シリーズ4作目
    物語の情景がいつもより鮮明にイメージでき、今までの作品の中で1番没頭できました。また、いつも以上に怪しげでな雰囲気が漂っている感じがして、読み心地最高でした。京極夏彦さんの物語はページ数に比例して満足度が高くなるので、ずっと読んでられます。次作も楽しみ。

  • 今回もすごい話だった
    禅宗についてだいぶ説明が入っていて、憑き物落とし物語としてだけでなく、禅宗にも興味が湧いてくる
    クライマックスはまるで映画のように頭の中にイメージが浮かんできた

    山奥の謎の寺、そこで坊さんが死んでいく殺人事件が起こる
    今回は取材班の敦子と鳥口、旅行組の関口と京極堂と別々の動きで物語が進んでいく
    古物商の今川、どこか危なげな飯窪、警察側では益田くんに山下が新たに加わり、一方でエノさんと1作目の久遠寺先生も登場
    何かと交錯していきつつ宗教の話も入り混じり、膨大な情報量でまたもや脳が焼き切れる感覚
    これがこのシリーズの醍醐味ではあるけどやはり疲れる、でもその価値があるくらい楽しい

    それにしても己というのはつくづく厄介
    言葉もまた厄介
    形になったと思ってもそれに囚われてしまう危険性があって、それでいて他者に共有するためには形にするしかない
    社会一般の仕事では、たとえば仕事を教えるとき、誰にでも分かるように目に見える形に言葉にするのが最善だけど、自分で悟ることの重要さもあると思う
    そこはやはり誰がどんな言葉で尽くしても虚しい
    己の力でしか辿り着けない
    形だけを取り入れることはたぶん誰にでもできるけど、その心までを取り入れるのは悟らなければ…

  • 坊主は箱庭に悟りを見るか

  • 宗教、特に仏教関係のあれこれ知らないと理解しづらいかも·····?
    あと本当に登場人物がごちゃごちゃするのでメモ取りながらのほうが良いかも。
    それと榎木津礼二郎は癒し。(毎回言ってる)

  • ・悟りとは何かという話だった。
    ・禅って神秘体験をしても無視して修行を続けないといけないんだ。どんな分野でも、わかった!と思っても続けているうちにまたわからなくなるという繰り返しだと思うので、悟後の修行が大事というのは少し想像できる気がする。
    ・僧侶がたくさん出てきてわからなくなるという忠告を聞いていたので、序盤は登場人物をメモしながら読んだ。名字、名前、役職、出身の寺や宗派、住んでいる建物、弟子などを整理しながら読めたので、大変有難いアドバイスだった。知事の人数を言い間違える場面が印象的で、あとから隠された元典座の存在が明かされて気持ちよかった。
    ・北宗禅と南宗禅の違いを述べた箇所は、一通り読んだものの難しいなと流していたが、がっつり真相に関わっていた。丁寧に読んでいれば初見でも真相が予測できるのだろうか……?
    ・謎が山積して重たい展開だったので、「のです」口調の今川くんや、ノリが軽い鳥口くんや、話をどんどん前に進めてくれる敦子ちゃんの存在が清涼剤だった。
    ・松宮和尚、鈴子と両親に対しては罪悪感があったようだけど、放火で殺した使用人3人についてはどう思っているんだろう。
    ・慈行和尚が、夜坐していた僧侶が常信和尚かどうか確信が持てなかった理由がわからなかった。再読する。
    ・前巻の登場人物が再登場することがありそうなので、下手に調べると次巻のネタバレを踏みそう、というところが好き。

  • 杉井光の『世界でいちばん透きとおった物語』の作中に京極夏彦が登場し、ちょうどいいと思い狂骨の夢まで読んでいた百鬼夜行シリーズを再開。
    1週間ほどかけて読み終えましたが今回も相当なエネルギーを要しました。
    内容が難しいので休憩を挟みつつ、でもやっぱり続きが気になってまた本を開いてしまう。私も京極夏彦という檻から抜け出すことができません…

  • 舞台の雰囲気も含めて面白かった。
    箱根という温泉が湧く観光地で、暖かい温泉とは対照的な雪深い山と、その中で人里離れて存在するお寺が舞台となっていて、まず舞台がかっこよすぎると思った。

    トリック(坊主を次々に殺しているのは誰か?)に、例えば飯窪が鈴子に嫉妬していたこと、脳波の実験が計画されていたことなどが絡み合い、物事が複雑になっているのがこのシリーズの面白いところ。

    本編とは関係ないけど、雪深いところで温泉に入りたいという気持ちになった。

  •  個人的な百鬼夜行シリーズ再読キャンペーン4冊目。
     シリーズ内であまり記憶に残っていない作品だったのだけど、再読して、「物語」としての記憶はあまり残っていなかったものの、「作品」としては身体に染み込んでいたことがよく分かった。この作品をきっかけに、禅というものへ傾倒しかけたのだった。「禅」そのものの衝撃があまりに大きくて、物語が霞んでしまったのかなあと今なら思う。
     あれから、禅についての知見を深めてからの再読となったので、より深くこの作品を味わえたように感じる。そして、禅が骨格となっている「物語」も、当時より印象的で面白さが増したのだろうと感じた。いやもう、抜群に面白い。途中で思わず本を置いて「面白いなあ!」と声を上げてしまった。
     再読でここまで4冊ぶっ続けに読み進むなかで、関口巽というキャラがあまりにも愚かしく描かれていて、「道具立て」としてなのかなあと思いつつ、このような人物と京極堂が長年に渡り付き合う関係性なのは流石に不自然では、と感じていたのだけど、それは違うんだなと本作で気が付いた。京極堂というのは、あまりにも「見え過ぎてしまう」人なので、関口のような「空気の読めなさ」と、一見愚かに感じさせる(実際に愚かでもあることも多い)感性に呆れながらも、だからこそ付き合い続けているのかなと。それは、庇護者としての、或いは玩具としてのそれではなくて、「いろいろなものが見えすぎてしまう」からこそ、「その時」は苛立つのかもしれないけれど、むしろ京極堂の方こそが、関口への想いが強いのかなと感じた。それはきっと、榎木津も同じなのかもしれない。根本的に善性の人であることは間違いないし。
     次はいよいよ絡新婦の理。稀代の傑作という印象と大まかな内容は覚えているものの、細部はやっぱり忘れているので、再読が本当に楽しみ。

  • 確かに世の中には「檻」が至る所に存在している。厳格に生きる人ほどあるのだと思う。
    自ら作ったものであるならまだしも、他人に囲われるのはごめんだなと思う。
    閉鎖的な田舎から上京した同級生を白い目で見るような、知らない世界を知らないから否定するような、人間の浅ましさを思い出してしまった。
    それでも良く生きようと努力する人達の道行に幸あれ、という気持ちで読了した。
    このシリーズは単純さと複雑さの絡み合いが最後までわからないのが魅力と感じている。
    早く次の作品が読みたくなる。

  • GO三浦さんから勧めてもらった京極夏彦『鉄鼠の檻』も読了した。物語・文体の奇特さと精密さ、一ページごとのページデザインにも神経が張り巡らされた、その本づくりは京極ならではなのだろう。久々に感じた「一人の作家の頭の中で、こんなに緻密な物語が構築できるのか」という感歎。10代の頃に村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を読んで以来、とまではいかないまでも、近しい、それでいてまったく異なる文学体験を味わえた。


  •  長かった!休憩挟みつつ半年以上かけて読んだけど、難しすぎて半分くらいは内容理解してないかも。今はもう体力がないので何年後かにまた読み返します。

     レギュラーメンバーのテンションに助けられつつなんとか読了。今作の榎木津はいつもよりも乱暴で独走してたような…。あのくらい荒っぽくないと自我を保てないほどの檻なのかなと思ったり。
     文庫版1318ページはぞっとした。ある真実とわかるタイミングとその描写が憎すぎる。色のない展開が続く(あるにはあったが)作中で、ここだけが毒々しいほど鮮やかで頭に焼き付いてしまった。
      「山下」「小坂」の苗字がその人の立場とリンクしてる苗字がおしゃれだった(わざとだよね?)



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    1/5くらいまで読んだ。
    同シリーズを読んだのは数年ぶりだけど、レギュラー陣がやっぱり好きだ。関口も良いキャラだな〜としみじみ。関口夫妻が旅行を決めるやりとりが素敵すぎて死んだ。
    また読み進めたら更新する。

    1/2くらいまで読んだ。
    連続殺人といいつつまだ1人しか死んでない。
    ゴールが遠い。

    3/5くらいまで読んだ。
    一件だけ落着。京極堂の講義で脳みそつかったので、そろそろ榎木津に暴れて欲しい。

    4/5くらいまで読んだ。
    期待通り榎木津が暴れてくれて嬉しいけど、榎木津の挙動の意味が今はわからない…。あとで読み返せるようにしおり挟んでおかないと。

    旅館に置き忘れて買い直したんだけど、
    文庫版の表紙変わった?なんか画像がアップになったような。

  • 百鬼夜行の檻から当分出られそうにない。私に少しでも禅や宗教の知識があれば、また違った感動があるのかもしれないと思うと読後やや悔しさが残る

  • もう少し衝撃が欲しかった
    まぁどうせ次も全部読むんだろうけど...

  • 『鵼の碑』発売決定記念に再読シリーズその4

    世俗の終わり、山中異界にて繰り返される殺人事件。至るところに”檻”があった本作だけど、実は京極堂の憑物落としもほぼ不発で事件の解明のみに力が注がれていた。まぁ世界に対する誤解を解いて再認識させるのが憑物落としの本質なので、似たプロセスを経た仏教徒に効かない…というのは納得なのだけど。

    檻というのは社会や文化や煩悩など、まぁ様々な言い方ができてしまう。例えば僕らが目にしている世界すら、脳髄を通して見る世界に過ぎない。僕らは一貫して脳髄という檻に囚われて生きている。そこから出ることは永遠に出来ない。僕たちは脳髄を通してしか世界を見ることは出来ないからだ。
    …しかし、脳髄は果たして私ではないのだろうか?それは別のものなのだろうか?
    例えば脳は、皮膚は、これを書いているキーボードは、アナタは私とはどう違うのだろう?
    そう考えていくと檻とは自分が作り上げた(定義する)ものだと気付く。「世界では全てがあるようにあり、起こるように起こる」とはある哲学者の言だけど、ある種の悟りはそのように言葉にできるのかもしれない。

    しかし”不立文字”とあるように、言葉にするのは限界がどうしてもある。美も善も悟りも、ある感覚というものは語れず示すことしかできない。それは世界の限界だが、生まれたときから知っているはず。そうでなくては美も善も悟りという言葉も生まれないからだ。まさしく、檻が作られたからこそ檻の外なんてモノが出来てしまったのだなぁ。

    あぁ、あと『姑獲鳥の夏』のキャラクターを再登場させたのは、『姑獲鳥』は脳が自己を騙すのとは反対に、『鉄鼠』は自己が世界を区分けしてしまうからだと思うよ。つまり方向性が全く逆の構造なんだ。「拙僧が殺めたのだ」はずっと真実だったってワケ。

  • まず、一回じゃ理解しきれない。
    禅と仏教がどう違うのか分からなかった。何となく分かったのが悟りを得れる禅と得れない禅があるのか、ということぐらい。一番印象に残っているのは飯窪さんの百足の話し。たくさん足のある百足にどうしたら歩けるのかと問えば分からなくなり動けなくなって死んでしまったというものだ。
    当たり前の事を考えると分からなくなる。遠くなる。あるものをあるがまま、ということだろうか。
    確かに禅は言葉で伝えられない。
    あともう一つ印象ある言葉が「時間と時間の隙間に落ちてしまったのだ」だ。こんな綺麗な表現があるだろうかと感嘆した。京極夏彦が描く女性は、どれもうつくしい。

    次作も腕を殺して読もう。

  • こんな分厚いのにずっと気になる展開。ところどころゾッとさせられる描写がスパイスとなりとまらない。後半は一夜明かしてしまうほど夢中で読んだ。再読なのに
    「神社仏閣を博物館的に楽しむのは如何なものか」というようなことを話す中禅寺。少しの罪悪感を感じつつ「まあいいか」と楽しんでいたところがあったので関口とともに自分も反省。

  • 百鬼夜行シリーズ4作目。

    真冬の箱根の山中で起こる連続殺人事件。
    断絶された異界のような寺院や僧達の存在、度々出てくる禅問答には圧倒されました。

    本作は"禅"や"悟り"という言葉では表しきれないものと、その歴史の重み、聞き慣れない言葉の多さも相まって読むのに相当な体力を使いますが、やはりおもしろいです。一面真っ白な寒々とした山奥の空気感や厳かな雰囲気は、シリーズ通しても一番好き。

    真実が明らかになると、驚きと共に"実は最初から答えは目の前にあったのだ"と気がつける、まさにこれ自体が禅そのものであるかのような作品でした。

  • やっと読み終わった。。
    前3作もなかなかの読み応えでしたが、今回はダントツでパワー使いました。1300ページ超というボリュームもさながら、今作のテーマは"禅宗"ということで登場人物に和尚がたくさん出てくるは、古語というか漢字は多いわ、そもそも禅をそう簡単に理解できるわけがない。。とかで理解不十分な箇所は正直沢山。。複雑に絡みあった仏教ミステリーでしたが、今作も京極堂が憑き物落としてくれて、読み終わった後は爽快でした。

    京極堂シリーズはこれだからやめられないですね。
    (え?次作はもっとページ数多いの。。?笑)

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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