名探偵水乃サトルの大冒険 (講談社文庫 に 22-12)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062733724

感想・レビュー・書評

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  • 何が好きかって、サトル氏の行動と思考回路が。
    二階堂作品の面白みをぎゅっと濃縮した感じ。さらっと読めるのにきっちり本格派なのが心憎いところ。

  •  何か…全般的にキャラが嫌…。
     水乃さんが変人キャラていうことになってるけど、別に普通。
     それ以外の人たちのほうが、よっぽど…。
     『ビールの家の冒険』の忠夫さんとその友人とか。
     人里離れた山奥でお腹痛くなったからって、空き家の窓を割って中に侵入するとか。
     しかも冷蔵庫を開けて、勝手にビールを飲むとか。
     普通の神経じゃない。
     それに比べたら水乃さんの行動なんて、全然普通。
     今はいろんなキャラがいるから、このくらいのキャラ、まったく普通に思えちゃう。

  • 〇 概要
     旅行会社の課長代理職を務める長身で美形のオタク,水乃サトルが探偵役を務める短編ミステリ集。「ビールの家の冒険」,「「本陣殺人事件」の殺人」など,過去のミステリのパロディ的な作品も含まれる。ややミステリマニア向けの作品集である。

    〇 総合評価 ★★★☆☆
     ミステリマニア向けと思われる短編集。「ビールの家の冒険」と「「本陣殺人事件」の殺人」は,パロディ元を知っていないとあまり楽しめないだろうし,「ヘルマフロディトス」と「空より来たる怪物」も,ある程度ミステリを読んでいないと「何これ?」と思ってしまうだろう。逆に,ミステリマニアであれば,読みやすい文章も相まって,軽く読めるし,十分楽しめた。傑作と言えるような作品ではないが,「ヘルマフロディトス」は,「かとり」を「かをり」に偽装するというなかなか面白いプロットの作品だった。読む前の期待値が低かったこともあって,思った以上に楽しめた。★3で。

    〇 ビールの家の冒険 ★★★☆☆
     西澤保彦の「麦酒の家の冒険」をモチーフとした作品。トイレを借りるために不法侵入した家に,多量のビールが隠されていたのはなぜかという謎が示される。真相は,隠されていた缶ビールの缶は全て金であり,偽のビールだったというもの。銀行強盗が盗んだ金の延べ棒を溶かし,ビールの缶に偽装して隠していたのだ。荒唐無稽なシナリオのバカミス。謎はそこそこ面白いが真相は陳腐。ただ,文章は読みやすく,軽いミステリとしては十分楽しめた。

    〇 ヘルマフロディトス ★★★★☆
     「かとりさん」と「かをりさん」が,女子高生の書く手書きの文字だと偽装しやすく,「かとりさん」を「かをりさん」と偽装することで,自分の犯行を隠そうとした「鹿取ユリア」という女子高生の話。水野サトルのところに,大学の先輩で,刑事の馬田が相談をしたという設定。話全体が軽くて読みやすく,プロットも面白い。この短編集ではベストの作品かな。★4で。

    〇 「本陣殺人事件」の殺人 ★★★☆☆
     本院殺人事件のパロディ。本文庫の解説でも書いてあるが,単なるパロディというより,「本陣殺人事件」の金田一耕助の推理の矛盾を指摘し,別の推理を紹介している。これは,「本陣殺人事件」に思い入れがある人ほど面白く感じると思われる作品である。「本陣殺人事件」は読んだことがあるが,そこまで思入れがないので,この作品を読んでも「ふーん」としか思えなかった。「本陣殺人事件」をベースとした推理部分のデキはともかく,短編小説のデキとしては,やや冗長に感じてしまう。そこそこのデキか。★3で。

    〇 空より来たる怪物 ★★★☆☆
     UFOの襲撃により殺人がされたと思わせるような記述があるミステリ。警察は,水乃サトルの大学の先輩である「宇宙人侵略対策地球評議会」というサークルに入っていた二茂滋という人物を容疑者として捜査をする。真相は,「セキセイ院固教」という新興宗教が,皆神山の洞窟の兵器貯蔵庫から兵器を探し出し,その秘密を守るために火炎放射器で殺人をしていたというもの。密室のトリックは,コテージそのものががけ崩れで転がり,天井の窓を利用して外に出ることができたというバカミス的トリック。UFOについてのうんちくもあり,それなりに面白い作品。ばかばかしい作風が好きなら楽しめる。結構好き。★3かな。

  • 2013.12.21処分

    イケメンオタク水乃サトルシリーズ。
    「ビールの家の冒険」「ヘルマフロディトス」「『本陣殺人事件』の殺人」「空より来たる怪物」の4篇。
    二階堂蘭子シリーズとは全く異なる読み口で、サラッと読めた。
    トリックもサラッとしていて、な〜んだ、というか、若干腑に落ちない読後感。

  • 4+
    全然期待していなかったが、四編とも小ネタ満載、しっかり本格でなかなか面白かった。オリジナルの「麦酒〜」や「本陣〜」を既読だったことも幸いだった。

  • なかなか楽しい短編ミステリ集。

    作者が、トリックを得意としているのがよくわかる。冒頭を飾る「ビールの家の冒険」は、ミステリファンなら言わずもがな、ある名作長編ミステリのパロディだけど、パロディとばかりは言えない独自の魅力を持っている。「誰もいない家に、山ほどのビールだけがある。なぜか?」という問いに対して、オリジナルはロジックで答えを出す醍醐味を味わせてくれるのに対して、作者はトリックでうならせてくれる。その手触りの違いを楽しめると、深みがうんと増す。

    有名な「本陣殺人事件」をモチーフにし、別解釈を成立させた短編も通好みの一品。名作ミステリを分析し、作者の意図とは異なる別の犯人を指摘する離れ業は、「アクロイドを殺したのはだれか」や「名探偵に乾杯」など前例はあるが、この短編も目の付け所がシシャープでなかなかよい。ただし、肝心の解決が今ひとつ。理屈には合っているのだけど、原作の絵解きのスケールの大きさのようなものがすっかり抜けて、あえて言うなら「あら探し」っぽく感じられてしまうのは残念。

    こういう小気味の良い短編は、どうしたって二階堂蘭子には無理である。軽妙な水乃探偵はなかなか魅力的だけど、正直言ってこの作者は、こういう味で楽しませるのはそれほど得意じゃないように感じてしまう。キャラの作り方が、ちょっと煮え切らないのだ。「軽井沢」はおもしろかった記憶があるのだけど、個人的にはミステリマニアとしての「くすぐり」のみがおもしろく、独自の短編ミステリとしてはあまり魅力を感じなかった。念のため言っておくと、前者だけでも買って読んだ甲斐は十二分にあった。

  • 初めて読んだ二階堂黎人の短編集。
    感想は・・・何だか普通だなぁ。タッチも軽いし、キャラクターもものすごい普通だ。
    後書きによると、この「水乃サトルシリーズ」というのは特にその傾向が顕著らしい。
    もちろん「二階堂蘭子シリーズ」との差別化を図るためだ。
    後書きから引用してみよう。

    『だが、二階堂蘭子のシリーズと他の2つは、これが同じ作者による作品かと思えるくらい見事に異なっている。これは、重厚と軽薄、人工世界と日常性、シリアスとユーモアという対照とまとめることができるだろう。』

    うん、全くその通りだ。そしてこの「軽薄な」ノリが好きかどうかはものすごく大きく分かれる所だろう。
    私はあんまり好きじゃないかな。こういう作品だったら他の作家でいくらでも読める。
    でも水乃サトルが初めて登場した『奇跡島の不思議』は、結構しっかりした作りで楽しめたのだけど、あの時はまだ方向性が決まってなかったんだろうか?

    それにしてもこの装丁。なんだこれは。青春ライトノベルかよ。いくら内容が軽いからと言ってこれは酷い。

  • あの本陣殺人事件を金田一耕助とは異なる推理で解明してしまうなんて。
    そのあざやかさは、横溝正史自身があらかじめ別視点の推理もできるように余地を残していたのではないだろうか?と思う程でした。

  • 社会人水乃サトルの短編集。 さくさく読めます。 

  • 『ビールの家の冒険』
    サトルの大学時代の先輩忠夫が見つけたビールにうめつくされた謎の家。酒造メーカー社長の殺害事件、金の延べ棒の強盗事件。ビールの家の中のビールのメーカーにかくされた秘密。

    『ヘルマフロディトス』
    馬田権之介警部補からの依頼。家庭教師先の女子高生と無理心中を遂げたと思われた西郷。被害者である美沙子の残した日記。日記のコピーと原文にかくされた秘密。

    『「本陣殺人事件」の殺人』
    横溝正史の作品を題材にしたアミューズメントを作った白井膳之助。『本陣殺人事件』を再現した日本家屋の中で小説通りの方法で殺害された膳之助。『本陣殺人事件』の解決に疑問を持つサトルの推理。膳之助の三人の甥の関係。

    『空より来る怪物』
    UFOと宇宙人の存在を確信するサトルの先輩ブタモマケル。宇宙人に焼き殺されたという村長。サトルの先輩三島の焼死。密室の中の遺体。事件当時の豪雨と地滑りの秘密。

     2010年11月19日読了

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著者プロフィール

1959年7月19日、東京都生まれ。中央大学理工学部卒業。在学中は「手塚治虫ファンクラブ」会長を務める。1990年に第一回鮎川哲也賞で「吸血の家」が佳作入選。92年に書下ろし長編『地獄の奇術師』を講談社より上梓し、作家デビューを果たす。江戸川乱歩やJ・D・カー、横溝正史の作品を現代に再現したような作風は推理界の注目を大いに集め、全四部作の大長編『人狼城の恐怖』(1996〜99年。講談社ノベルス)では「1999年版本格ミステリ・ベスト10」第一位を獲得。アンソロジー編纂や新進作家の育成にも力を注ぎ、2000年代は合作ミステリの企画も多数行った。SFの分野にも精通し、『宇宙捜査艦《ギガンテス》』(2002年。徳間デュアル文庫)や『アイアン・レディ』(2015年。原書房)などの著書がある。近年は手塚治虫研究者として傑作選編纂や評伝「僕らが愛した手塚治虫」シリーズの刊行に力を入れている。

「2022年 『【完全版】悪霊の館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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