ウロボロスの偽書 下 講談社文庫 た 27-3

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062734592

作品紹介・あらすじ

竹本が創作したはずの登場人物は現実世界に存在していた!竹本のファンを名乗る少女の正体は?綾辻たちの身辺に現れる黒ずくめの男は?もはや小説は作者の手を離れ、カオスの世界へと落ち込んでいく。さらに現実の竹本のまわりでも次々と事件が起き始めていた。そして妻が消え、また新たな殺人が…。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻はプロットの巧さとミステリ的展開、殺人鬼の告白×実在する作家たちの日常×個性豊かな芸者サスペンスというおもしろさがあったが、下巻になると複雑かつ風呂敷を広げすぎ、また不要な登場人物も増えたためどっちらけ。途中まで最高だっただけにもったいない。文学破壊的アンチミステリにする必要はあったのだろうか。

  • 上下巻の感想。

    ふつうにミステリだと思って読んでたら違ったらしい。何ひとつ明らかにはならない。もう一回読まないとわからないなーと思いながら読んでいたけど、最後までいったら…ま、そのうちでいいか、と思ってしまう。

    最初にパラドックスのはなしが出てきて、途中これか!なるほど!と思う場面がありつつも、結局ぜんぶ覆される。

    そこはそれ

    ってことでいいのかしらね…

  • かなり入りにくい、最後まで読んでも理解しにくかったなー。

  • 竹本健治が連載を始めた本格推理に,いつのまにか埼玉で起こった女性連続殺人事件の犯人を名乗る男の手記が紛れ込んでいた。現実と虚構の境界線は曖昧になり,事件は思わぬ展開に。 竹本健治が創作したはずの登場人物が現実世界に存在していた!?竹本のファンを名乗る少女の正体は?
     綾辻たちの身辺に現れる黒ずくめの男の正体は?もはや小説は作者の手を離れ,カオスの世界へと落ち込んでいく。現実の竹本の周りでも事件が起こり始め…妻が消え,新たな殺人事件が!
     私たちが暮らすこの世界もどこまでが現実なのか次第にあやふやになっていく超ミステリ。

    ★ 作中に記載されている,読者への忠告状
    作者は謹んで読者に忠告する。この作品は疑似推理小説である。したがって,読者は意外な真相,膝を打つ解決,驚嘆すべき大トリックなど,一切のミステリ的カタルシスを求めてはならない。この忠告に背く読者は,必ず期待を裏切られる結末が待っているだろう。幸運を祈る。

     意外性    ★☆☆☆☆   
     熱中度    ★★★★☆
     読後感    ★★☆☆☆
     印象深さ   ★★★☆☆  
     キャラクター ★★★★☆
     入手困難   ★★★★☆
     トータル   ★★★★☆

     この作品は,竹本健治とその身の周りの出来事,殺人鬼の手記,トリック芸者のミステリの3つの話があり,この3つの話が融合する形で進む。特に,殺人鬼の手記は,途中で殺人鬼が殺されたという記述があり,その後は,殺人鬼が竹本健治のフリをして作品を書いていったという体裁になる。果たして,どの部分が竹本健治の作品か,殺人鬼の作品か・・・という点が混乱していくことが,ウリになっている。
     作中では,友成が,殺人鬼の一人(もう一人は,杉田耕一)で,竹本健治の奥さんとシャム双生児であり,シャム双生児であるという秘密を知った人間を殺害していくというもの。小野不由美もその事実を知ったために殺されるが,その復習として,綾辻行人が竹本健治の妻と友成を殺すという話が存在する。
     しかし,最終章になって特に論理的な理由がなく蘇っている描写がある。結局,この作品は,論理的な解決はなく,謎が謎のまま,物語が終わる。竹本健治が書きたかったのは作品が終わっても謎が残る作品だったようだ。その試みがどの程度成功したかは,読んだ人次第だろう。個人的には,最後まで引っ張っていく力と,芸者たちを始めとするキャラクターの魅力,知識欲を満たす衒学的記述など,かなり好きな作品のひとつである。   
     手に入りにくさもあるし,処分せずに本棚にずっと置いておきたい作品である。

    ★ 殺人鬼の手記(殺人鬼:杉田耕一?)
     ○ 香織という女性の殺人(志木の殺人)
     ○ 藤木玲奈(新座の殺人)
     ○ 船山弓子(和光の殺人)
     ○ 竹本健治の家に盗聴器をしかける。
     ○ 佐伯千尋が,殺人鬼杉田を殺す。
    ★ 竹本健治パート
     ○ 乾敦 コンピュータープログラマー
     ○ 御厨(旧姓) 竹本健治の妻。作中で死亡する。
     ○ 友成純一 ホラー作家。作中で死亡する。
     ○ 末武安光 漫画家
     ○ 綾辻行人 ミステリ作家
     ○ 巽正章 ミステリ評論家。弁護士。
     ○ 新保 ミステリ評論家
     ○ 昆野里美 竹本健治のファン,猪口奴?
     ○ 島田荘二 ミステリ作家
     ○ 小野不由美 作家 作中で火に包まれて死亡する。
    ★ 芸者ミステリ
     ○ 舞づる おかしな芸ばかり手を出す芸者
     ○ まり数 数字のことしか頭にない芸者
     ○ 力丸 空手やボディビルばかりに熱中する芸者
     ○ 酉つ九 芸者ミステリの主人公。本名,市原織江?杉田朋江?
     ○ 猪口奴 芸者。カリンという別名あり。昆野里美?木戸真冬?
    ★ トリック芸者シリーズ(作中作)
     △ 部屋中血まみれの殺人(謎の獣)
       →トリックは,櫛を使って酉つ九がかみ殺したというもの
     △ 死体消失
       →トリックは,熱湯の中に巨大な豆腐を入れるというもの。被害者は暑さから豆腐に逃げ込む。豆腐を利用して死体を消失させる。
     △ 霧山直樹が殺される
      →死体消失。トリックは死体を肩車して脱出していた。

    ★ その他
     ○ 巌鉄 芸者
     ○ 猿飛 芸者
     ○ 玉櫛 芸者。両性具有。布浦雅子?綾辻?
     ○ 高田道江 スポーツクラブで坤笑子や猪口奴と知り合った女性
     ○ 朝霧の殺人 被害者,坤笑子
     ○ 蕨の殺人 被害者,酒井夏倫(昆野里美の友人)

  • 島田荘司とか綾辻行人とか、この時代の人たちがでてきて、ちょっと懐かしい。でもやっぱ島田荘司には遠慮してるよなー、なんて思ったり。しかし初めて島田荘司の画像を調べてみたら、なんかいっちゃってるオッサンでびびった。

  • 面白いか面白くないか。そう言われれば面白いかもしれない。衒学的な小説を素直に受け入れることができる人ならば、愉しく読むことが出来るかもしれない。
    ただね。どうも鼻持ちならぬ。と感じてしまう。
    お前らみたいな血の巡りの悪い人間に教えてやっている。
    そんな作者の不遜な思考がぐだーっと流れ込んできて、胃がむかむかするような状況で本に向かってオエーとか吐き出してしまいそう。この複雑な論理で構成されている本書を理解してみろ。そんな風に言われても、『しらねーよ』とか不遜な態度で応じてしまうような反抗的態度。
    ほら、馬鹿の壁とか読んで(よまねーけど)、素直に書かれていることを受け入れてしまう純粋な人間ならば気にならないことなんだろうけど、目の前に提示されたテキストに対して懐疑的に読んでしまう私のような人間――きっと自分が最高って思っているような自意識の高い人間。そんな人にとっては、だったら何?とか文句をつけたくなるような小説である。
    簡単なことを難しく書くのは本質的に間違っている。そこまで言うつもりはないが、難しくかつ混乱するような書き方をしておいて、理解してみろ馬鹿とまで言われてまで理解しようなどと考えない人間なので、どうしても節々から発散されるオーラにも似た言葉で言い表すのが難しい感覚に目じりをヒクヒクと痙攣させてしまう。
    私があと五年くらい成長すれば、素直に受け入れられる部分もあるかもしれないが、現時点では内容がどうこうというより感性的な部分で反発が強くて駄目だ。
    読み終えてからそんなことをグダグダと考えてしまう土曜日の夜であった。

  • ミステリ好事家のための瀟洒な本。
    竹本ミステリの真骨頂。
    実名登場人物の残響。
    現実と虚構の区別。
    超ミステリの代名詞。
    なるほど、おもしろい。
    ここまで複雑で混乱するものは初めて。
    だれか実写化しないかな。

  • だいぶ混乱しましたがなんとか読了。オチも納得できたというわけじゃないですが意外と楽しめました。

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著者プロフィール

竹本健治:
一九五四年兵庫県生れ。佐賀県在住。中井英夫の推薦を受け、大学在学中に『匣の中の失楽』を探偵小説専門誌「幻影城」上で連載。デビュー作となった同書は三大奇書になぞらえ「第四の奇書」と呼ばれた。
ミステリ・SF・ホラーと作風は幅広く、代表作には『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』の「ゲーム三部作」をはじめとする天才囲碁棋士・牧場智久を探偵役としたシリーズや、自身を含む実在の作家たちが登場するメタ小説「ウロボロス」シリーズなどがある。近著に大作『闇に用いる力学』。

「2022年 『竹本健治・選 変格ミステリ傑作選【戦後篇Ⅰ】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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