八月のマルクス (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062734615

作品紹介・あらすじ

レイプ・スキャンダルで引退したお笑い芸人・笠原雄二。今は孤独に生きる彼を、元相方の立川誠が五年ぶりに訪ねてくる。だが直後、立川は失踪、かつてスキャンダルを書き立てた記者が殺された。いわれなき殺人容疑を晴らすため、笠原は自らの過去に立ち向かう。TV・芸能界を舞台に描く江戸川乱歩賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 第45回江戸川乱歩賞受賞作(1999年)

    冒頭───

    猫は眼だけを動かし、視線をよこした。
    白目もないくせに小癪なまねをする。私は猫がいすわるドアのステップに片足をかけた。ここのところ三回に一回は見かける。斜めから射すスポットライトが温いのだろう。師走ももう間近だった。


    会話文のぎこちなさがどうも気になって仕方ない。
    ですます調で話していたかと思えば、急にため口になったりする。
    特に何の理由もなくだ。
    若いお笑い芸人とのやりとり。
    事情聴取にきた刑事とのやりとり。
    などなどで、そういう会話が多々見られる。
    敢えて意図的にやる理由もないはずだから、違和感を覚えることこの上ない。
    デビュー作なので、まだ蒼い部分が残っているということだろうか。

    一時期は一世を風靡した元お笑い芸人の笠原雄二。
    五年前のとある事件がきっかけで芸能界から離れていた。
    行きつけのバーにいた笠原の前に突然昔の相方、立川が現れる。
    立川は癌で残り少ない命であることを笠原に告げ、去っていった。
    その後、笠原が失踪し、昔の笠原の事件の時に重大な役割を果たした
    週刊誌記者片倉が殺される。
    二つの事件の関係は? 立川の行方は?

    芸能プロダクションとお笑い界の裏事情などを背景に展開される物語。
    ラスト60Pの謎解きが少し端折り過ぎかなあ、という印象。
    悪くはないが、犯人の殺人に至る動機のリアリティがやや薄い。

    しかし、乱歩賞でデビューした新野剛志が、その後「あぽやん」のような作品を書くとは、当時誰も想像しなかっただろう。

  • TV芸能界…こんな事もあるかも。

    若手芸人をベテランがイジって、それに必死に?応える感じも一つ間違えたらこんな事件に繋がることも否定できない?
    全ての元凶は一つの事故からつながっていて、結果各々が全て(と言えるのでは)失ってしまった。

    ラストの笠原と奈津子の会話が救いだった。

  • 2013.1.20
    1999年江戸川乱歩賞受賞作。
    レイプスキャンダルで引退したお笑い芸人の元に元相方が訪ねてくる。
    その数日後相方は失踪、レイプスキャンダルを記事にした記者が殺害される。
    言われなき殺人容疑を晴らすべく笠原は立ち上がる。


    オチは、
    立川〈元相方〉とディレクターがある若手芸人をバツとしてある番組の罰ゲームで吊るし上げて
    たまたま海に落ちて心臓麻痺を起こして死んでしまう。
    その若手芸人の父親とファンが復讐として殺したって話。

    面白かったけど、なんというか読みにくかった。
    その一言に尽きる。

  • 昔読んだ本

  • 江戸川乱歩賞ということで結構前に購入。

    表紙の人物は、かっこよく決まってますが、元お笑い芸人。それとは裏腹にハードボイルド系っぽい物語という設定が面白かったです。結構前に読みましたが、唯一覚えているのが、事件の発端となった事故は、たしかお笑いウルトラクイズで出ていた○○だったことで今も記憶に残っています。
    当時、もしもテレビドラマ化するなら、主人公は宮迫さんかなと思いながら、読んでいたのを思い出します。

  • 八月のマルクス/新野剛志:第45回大賞受賞。1999年。
    冤罪レイプ事件でお笑い芸人生活をつぶされた男。元相方が訪ねてきた。ガンだと言い、姿を消した。
    マルクスっていうから、あのマルクスかと思えば、外国のお笑いのマルクス兄弟。
    元お笑い芸人は、頭にくるとすぐ暴力ふるう。ハードボイルド的なのか?
    冤罪レイプ事件の首謀者の当時女子高生とか、事故死した若手芸人がでてくる。
    読み終わって1週間後に書いていて、あまり覚えていない。

  • まぁ、普通に面白かったけど。
    マルクスって、表紙の絵と相まって、経済小説かなんかかと思って(アンダーグラウンド市場とかさ)、ちょっと仕事マインドが高まっていた時に買ったんだけど。
    いや、お笑いって(笑)。
    って感じでした。
    別に、小説だから、面白けりゃいいんですけどね。

    でも、なんていうか、いきなり、レイプに仕立て上げられたスキャンダル始まるし、なんか、そういうのあるよね、っていう負の部分ばかりすごい強調されて、ちょっと、辛かったかな。全体的に。
    最後には、少しポジティブな話も出てくるんだけど、それも、ネガティブな中での再起、という感じだから、現実まぁそんなもんとは言え、そこまで晴れ晴れもしないし。
    とりあえず、この主人公の、のんびりしつつ熱血で、それでいて社会を斜めに見ている感じは、あぽゃんに通ずるかな、と思いました!

  • おもしろかった、次を期待しよう

  • タイトルのマルクスは、「万国の労働者よ、団結せよ!」とちょしょを結ぶカール・マルクスではなく、喜劇のマルクス3兄弟に由来するものであった。

  • 冒頭の酒場の場面からハードボイルドに拘る文章やセリフの連続に思わずにやりとさせられる。主人公の引退したお笑い芸人がいささかかっこ良すぎるが、そんなハードボイルドとは縁がなさそうな男が元相方の失踪から意外な事件に巻き込まれていく。芸能界の裏事情もうまく織り込まれ、犯罪に及ぶ心理描写の弱さや終盤の饒舌な説明的台詞などを差し引いても飽きさせない。一見ミステリアスに伝わるが人を食ったようなタイトルもうまい。

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著者プロフィール

しんの・たけし。1965年東京都生まれ。立教大学社会学部卒業。旅行会社勤務を経て、99年『八月のマルクス』で第45回江戸川乱歩賞を受賞。直木賞候補となった『あぽやん』は、その続編『恋する空港 あぽやん2』とともに、テレビドラマ化され話題に。同シリーズは『あぽわずらい あぽやん3』で完結。著書は他に、『中野トリップスター』『カクメイ』など。

「2022年 『明日はきっと お仕事小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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