マークスの山(上) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062734912

作品紹介・あらすじ

「俺は今日からマークスだ!マークス!いい名前だろう!」-精神に「暗い山」を抱える殺人者マークス。南アルプスで播かれた犯罪の種子は16年後発芽し、東京で連続殺人事件として開花した。被害者たちにつながりはあるのか?姿なき殺人犯を警視庁捜査第一課七係の合田雄一郎刑事が追う。直木賞受賞作品。

感想・レビュー・書評

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  • 合田雄一郎シリーズ第一弾。『冷血』は先に読了済み。
    初期の合田と『冷血』の時の合田では、違いがあるのでそれもおもしろい。『冷血』は犯人の心を覗く合田であったが、今回は事件を追う合田である。

    これまた読者の方も胃がキリキリしてしまいそうな人間関係。警察内部の歪んだ人間模様が生々しく見えてくる。こんな職場無理だ(笑)
    正義やプライド、誠実や疑念が渦巻く内容。
    そんな人間味ドロドロの物語の中心は、やはり謎の多い事件だ。合田が関わった過去の事件にどう繋がってくるのだろうか。真相はまだ見えてこない。水沢裕之はマークスと名乗る人格を持つ。被害者それぞれの関係や如何に。

    続いて下巻へ。

    以下、ネタバレ有り(備忘録)。

    ・水島博之
    山本夫妻の経営する豆腐屋の息子(養子)。岩田の無実を証明し、損害賠償を得るなどと妄想している。重度な健忘症を患っている。
    もう一つの人格であるマークスが殺人犯。どうやら金が目的。だだし、それだけではなさそう。合田がどこまで近づけるか。

    ・野村久志
    南アルプスで発見された遺体。岩田の時計も同時に発見される。

    ・岩田
    山小屋に住んでいた岩田。過去に結婚に二度失敗。酒を飲んでいた夜に、訪問者(野村)があった。過去の妻の幻覚に襲われ訪問者をスコップで殺害。そのスコップについて謎が残る。殺人容疑で岩田逮捕。山中の別の場所で白骨遺体発見。近くから岩田の腕時計が発見される。岩田に記憶は無し。その後、再審請求。
    ※訪問者がなぜ夜中に危険を冒して山小屋まで下山してきたのか謎が多い。何かに追われていたのか。

    高木真知子:看護婦。水沢少年の看病をしながら、自らの性癖も満たしていた。離れたあと再開。一緒に住む。
    巻末に水島のポケットから『十三日。六時。上野。電話。袋』と書かれたメモを見つける。同時に、『金があったら、真知子は何がしたいか』というメモを見て感動している。

    ・畠山宏
    水島に殺された元ヤクザ。謎の金を持っていた。

    ・松井浩司
    法務省刑事局刑事課長。水島に殺された。山登りをする。

  • 直木賞受賞作品。
    東京で発生した連続殺人事件。この事件を警視庁捜査第一課七係の合田刑事が事件を追う。
    過去北岳で発生した殺人事件と、現在の殺人事件が交錯していく。
    関連していない数々の場面が、だんだんと鮮明になっていく。息を飲む展開。

  • 重厚な警察小説。
    文章の端々までに緊張感が漲っている。それが息詰る物語の展開とリアルさを創り出している。様々な伏線が絡み合う物語の構成はさすが。
    丹念な人物描写と心理描写。警察内部での政治的駆け引き。殺人事件の背後に蠢くエスタブリッシュメントの不気味さ。
    ただ、結末に納得がいかない。犯人の動機をしっかり描いて欲しい。
    その点が惜しい。

  • 最初は少し読みにくかったが途中からどんどん引き込まれる

  • 書棚整理の途中に見つけ、一気に読みました。
    おかげで片づけは中途半端のまま。
    さて、なぜこれほどのめりこんだかというと、
    昭和の終わりから平成の初めにかけての
    懐かしいにおいに引き寄せられたからです。
    まだ携帯電話も防犯カメラも一般化していない時代。
    公衆電話にテレフォンカードを差し込み、
    大きく膨らんだ手帳を開いてメモを取り、
    コンビニからファクスを送る。
    あと、張り込み中に一杯ひっかけたりもして。
    刑事のアナログ的泥臭さがものすごくかっこいいんです。
    地を這う人間たちの息遣いが重苦しくなりました。
    若い人たちにとっては古典的な感覚かもしれないけれど、
    合田と同年代の私にとってはつい昨日見た夢のよう。

    警察側の精緻で冷徹な感じを受ける描写とは対照的に、
    「若い男」の目から見た世界は、きわめて感覚的です。
    この正反対の二者が対峙する時がいつになるのか、
    読者は今か今かと待ち望んでいるのですが…

    帯には「警察小説の金字塔 全面改稿」とあります。
    ならば改稿前の物語とはかなり違っているのでしょうか。
    ぜひ前の物語も読んでみたいものです。

  • マークスの山(講談社文庫)
    著作者:高村薫
    発行者:講談社
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    facecollabo home Booklog
    https://facecollabo.jimdofree.com/
    著作者の代表作にして、大ベストセラー。

  • 直木賞受賞作、非常に重厚で密度の高い作品でした。一気読みしたいのになかなか進まず
    内容と相まって息苦しさ焦燥感が半端ない。真綿でじわじわ首を締められるかのようです。
    個人的には後半の林原との対峙がいまいち。ペコ刑事の(名前が一緒でひっそり笑った)
    どす黒い面を期待していたし『彼』がどうなったか、そっちの方が気になって…長いわ、と。
    ラストはもう「早く、間に合って、間に合って!」それしか出てきませんでした( ノД`)゚。

  • サスペンスか警察小説か微妙だが、下巻の紹介文に警察小説と書かれていたのでそちらに分類。同種の凶器による連続殺人の裏に見え隠れする昭和57年の殺人と心中事件、謎の圧力によって間々ならぬ捜査、その中で次第に事件の全体像が浮かんでくる様は、上巻だけでもかなり引き込まれるものがある。事件の発端は、野村の殺人なのか?とか、平成元年の事件の真相は?とか、この時点でもいろいろと想像できるので、想像と比べつつ下巻を読むのも楽しそう。

  • マークスはかわいそうだ。悲しい。
    高村さんの小説で一番好き。
    北岳のエピソードにじんとくる。富士山と昇る朝日を見たかったんだ。その後の状況も病気もどうにもならなかったとしても、よい状態の時に見せてあげたかった。

    文庫でしか読んだことがない。ハードカバーと読み比べたいと思いながら、うかうかしてるうちにハードカバーは図書館でも見かけなくなった。

  • マークスの山に取り憑かれた哀しい少年。
    かって、何が起こったのか…
    初期の代表作の1つ。
    刑事物として、迫力があります。

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著者プロフィール

●高村薫……1953年、大阪に生まれ。国際基督教大学を卒業。商社勤務をへて、1990年『黄金を抱いて翔べ』で第3回日本推理サスペンス大賞を受賞。93年『リヴィエラを撃て』(新潮文庫)で日本推理作家協会賞、『マークスの山』(講談社文庫)で直木賞を受賞。著書に『レディ・ジョーカー』『神の火』『照柿』(以上、新潮文庫)などがある。

「2014年 『日本人の度量 3・11で「生まれ直す」ための覚悟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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