マークスの山(下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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本棚登録 : 2614
レビュー : 238
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062734929

作品紹介・あらすじ

殺人犯を特定できない警察をあざ笑うかのように、次々と人を殺し続けるマークス。捜査情報を共有できない刑事たちが苛立つ一方、事件は地検にも及ぶ。事件を解くカギは、マークスが握る秘密にあった。凶暴で狡知に長ける殺人鬼にたどり着いた合田刑事が見たものは…。リアルな筆致で描く警察小説の最高峰。

感想・レビュー・書評

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  • 上下巻を3日間で読了。
    こんな抜群の集中力発揮は久しぶりです。
    読んだ記憶はあっても内容はすっかり忘れ、
    そのまま書棚の奥深くに放置。
    再読の機会が来るはず!と確信をもって
    捨てずにおいたことを今になって思い出します。
    さて今回の結末は忘れていても読み進むうちに
    ある程度予想がついていました。
    合田と水沢の顔合わせは、生きてはないだろうと。
    互いに引き寄せられながらも離れていく、という
    繰り返しは、物語の展開自体が「対峙」を
    拒んでいるのだと思わせます。
    両端の世界にいる2人は、ある瞬間重なって見えます。
    軽い身のこなしや、突然回転し始める頭脳、そして
    時に寡黙となる伏し目がちの姿。
    映像作品は観ていませんが、途中から二者の姿が
    はっきりと脳裏に焼き付いていきました。

    最近は、こうした、反体制を強く打ちだす作品が
    少なくなったと思います。
    読みながらこんなことを言って大丈夫なのかと心配する
    自分を感じながら、それこそが流されている姿なのだと
    思い知らされます。
    本作品が直木賞を受賞した時代背景を改めて
    振り返った次第です。

    あれから20数年。
    自分と同じだけ年を重ねた合田に会ってみたい。

  • 最後の一行で涙が滲む。

    読み終わったのが結構前なので、細部を覚えておらず、かつ色々疑問に思ったところもあったはずなんだけど、やっぱりラストシーンを思い返すと何もかも霧散するというか、それだけで「充分」って満たされる。

    正直最初から犯人わかってるし、ミステリとはまたちょっと違う気がするんだけど(それとも、合田が犯人と気づくまでの過程からミステリ扱いになるのか?犯罪があるからミステリなのか?)、いずれにしても賞に値する素晴らしい一冊だと思う。

    まだ女性が書く雰囲気が微かにあって、妙な柔らかさがあるのも好き。
    そっから照柿とかレディ・ジョーカーはなんか男性が書いているのか女性が書いているのかかなりあやふや感がある。
    というか、両性具有?むしろ無性?な感じ。でもラストにいつも女性を感じるんだよなー。まぁ、それはいいとして。

    最後は読者も合田と一緒に山に登ってるんだよね。
    頁が残り少ないし、文中にもあるし、水沢は恐らく最期を迎えてると思いながら、でもみんな必死に登る。

    合田や他の刑事がどんな心情か作者にしかわからないけれど、私は水沢を見つけた時、静かに微笑んでしまう。
    間違いなく幸せだと思うから。
    そして切なくて泣けてくる。
    真知子が与えていた愛はちゃんと昇華されていることに救いも感じる。

    心に冬山の恐ろしく冷たくて綺麗な風がふいて、そのあとたまらなく熱くさせてくれる。

    これこそ小説を読む醍醐味なのかもしれない。
    そんだけ気持ちがいい作品。

  • ずっと気になっていたのに重くて読みにくそうだなと避けていた本。何となく今なら読めそうな気がして手にとってみた。

    最近ブログとかTwitterとか誰でも発信できるツールが増えて、素人でも素晴らしい文章を書く人がたくさんいるんだなあと思っていたけど、今更ながらプロの日本語は読みやすいんんだなと思った。
    緩急のある無駄のない、それでいてしっかりと厚みのある文章、プロ中のプロの作品だった。

    後半ラスト近く、合田が山行きを決め、山ってなんなんだと考察を始めてからラストまで、登山には無縁な自分も合田とともに冬山を登るような不思議な感覚で読み進んだ。
    ラストの叙情はそれまでの硬さ冷たさを忘れさせるような温かな光がさすもので、長く暗い話を読み終えたご褒美のようにも思えた。

    水沢と真知子、合田と加納、それぞれの関係の描き方が独特で、かなり違和感というか、はてなマークいっぱいだった。
    水沢のほうは真知子の存在の大きさが最後の最後で大きく示されて、その前の真知子の取り調べと重なって泣けた。
    合田と加納の関係はこの先どうなるのだろう。

    偶然にもちょうど新作が発表されたので、この夏次作以降も読もうと思う。

  • 殺人犯を特定できない警察をあざ笑うかのように、次々と人を殺し続けるマークス。捜査情報を共有できない刑事たちが苛立つ一方、事件は地検にも及ぶ。事件を解くカギは、マークスが握る秘密にあった。凶暴で狡知に長ける殺人鬼にたどり着いた合田刑事が見たものは…。

    かつて「ミステリーを書いているつもりはない」と語って世間を驚嘆させた著者。しかしその述懐を気に留めながら読んでいくと妙に腑に落ちる。不可解な謎があり、それを推進力として引き込み、ラストで種明かしというミステリーの王道を行くような本作だが、ミステリーにしては過剰とも言える心理描写や人物たちの葛藤が随所に表れている。つまりミステリーを突き抜けて「人間」を描く小説となっているように思います。そこにミステリーとはちがった読後感、人間の「業」とは何かと問いかけられるような感慨を覚えます。

    以下、ネタバレ。
    東京の連続殺人事件は16年前の山梨・南アルプスでの事件に端を発していた。昭和51年、水沢裕之(当時10)の両親が心中したわずか数日後に、暁成大学出身の野村久志が登山中に急死。学生運動をめぐって対立していた木原郁夫:Kらは野村の遺体を山中に埋めて遺棄。山登りの仲間として自分たちをMARKSと呼んでいた彼らは、以後、事件を包み隠しながら生きることになる。
    そして16年後の東京。26歳となった水沢裕之は、窃盗により入手していた医師・浅野剛:Aの遺書をもとに、弁護士・林原雄三:Rを脅迫。水沢は自身の凶暴な人格を「マークス」と呼び、元暴力団員・畠山宏、検事・松井浩司:Mを殺害。マークスの脅威が迫る中、建設会社社長・佐伯正一:Sは自ら命を絶った。
    犯人の行方を掴めない警察を翻弄するかのように、旅行中と思われた荒川区の豆腐屋で水沢の養父母・山本勝俊・郁代夫婦が惨殺死体として発見される。
    そして、林原が隠滅しようとした浅野の遺書により、事件の背景が判明してくる。
    水沢の行動範囲が限られると読んだ合田は…。

  • 久しぶりに小説を読む。
    警察小説と簡単にくくれない話。
    アメリカの大学にある秘密クラブのような話と犯人含めた登場人物の人間の描写が細かく描かれており引き込まれる。最後のシーンは悲しみを感じた。

  • 解説の秋山氏によるとジャンルは「本格小説」らしい。なんでも本格をつければよいというものではないと思うので、ネーミングはいかがかと思うが、言いたいことは何となくわかる。
    犯人はもともと分かっていたし、動機や経緯も予想の範囲内だったが、サスペンスが作品の本懐ではないのだろう。いくら「マークス」が過去に罪を犯したとしても、水沢には何の関係もないわけで、水沢が単なる猟奇殺人犯であることには変わりはないのだけど、ラストシーンは雪山の山頂の静謐さと合わさって、なんだか切ない。真知子のメモとサンダルと、開いたままの目が、なんだか切ない。
    一気読みしてしまう面白さでした。

  • ミステリーを書く作家は、「真相」から遡っていって謎に巻き込まれる登場人物たちを描かなければならないのだが、その登場人物たちが、いつどうやって「真相」に気が付いていくのかをご都合主義にならずに書くことは難しい。それが「都合よく」にならないようにじっくりと、というよりも作者の相当な執着心によって書かれている。実際に「真相を知らない人」たちが真相に少しずつ近づいていく、その「少しずつ」感が半端ない。

  • 不気味さと狂気を感じさせる殺人犯・マークスがたどり着いたのは「彼」を生んだ山だった。
    この最後に「山」にたどり着いたところがなんとも切ないのである。
    ずっと作品全体に暗い影を落とし続けた「山 」の頂上が開けるラスト。

    これ「山」に捕らわれた人達の物語なのだ。「マークス」の5人にあった「山」は「絆」であり「過去の呪い」でありそして「郷愁」だった。そういった意味では「青春」の匂いさえ感じさせるところもあった。

    ''十三年経って過去を振り返る浅野の言葉のすみずみに、おぞましい郷愁はなかったと言えるか。
    山とは何だろう―――。''

    続きか気になって一気に読んでしまった。警察や検察や権力の攻防も描かれたけど一連の事件を通して「山」の影が背後に見え隠れして、人間の持つ闇に留まらない「暗さ」、緊張感や不気味さが作品に漂ってそれが魔力みたいにページをめくらせる。
    面白かった。

    あと某作家さんが著作で言及されていたように合田刑事と加納検事の何とも形容しがたい関係もとても気になるところ。笑
    (2016.2.7)

  • 昭和51年秋の南アルプス。それは、払いのけても払いのけても風雪のカーテンが垂れかかる、暗い山だったのか。山中で急死した仲間を身元不明となるように遺棄した、自らを《マークス》と名付けた5人の男たちの罪と秘密の種は、平成4年、実に16年の歳月をかけて東京で萌芽した。
    凶暴で狡知に長け、そして天真爛漫な子供のような殺人鬼の姿となって。
    犯人を特定できない警察のいら立ちを尻目に、次々と人を殺し続ける《マークス》。
    そして被害者たちと犯人をつなぐ線を追う警視庁捜査一課七係の刑事・合田が雪の山嶺で向かえる、誰一人救われることのないラストシーン。

    命を懸けてまで守るものとはどんなものなのか。なぜ、そんな風に愛するのか。《マークス》を名乗った青年の、静かな無情感が涙のように浸みてくる。

  • やっと読み終わった~
    ちょいと挫折しそうになりました
    第109回直木賞受賞作【マークスの山】

    非常に悲しい物語であります
    東京で起きる連続殺人事件
    被害者たちは、ある大学の山岳会で繋がったエリートたち
    この連続殺人事件の発端は、過去に南アルプスであった不可解な事件で、すでに解決したとされるもの
    この16年前の事件と犯人と被害者を繋ぐものは、なんであるのか!!という物語

    犯人の『マークス』と名乗る男
    実は、この男・・・・精神障害者であります
    幼い頃に両親を一家心中で亡くし、その時に負った一酸化中毒症の影響で重度の健忘症を患っています
    脳内で『明るい山』と『暗い山』が交互に現れ、精神を蝕まれた男
    自身が何者かも解らず、犯罪を重ねていく
    何が彼を殺人に導いていくのか・・・・・・

    しかし、この物語
    文章が
    長ーい

    主人公である警視庁捜査一課の合田の心情
    行ったり来たりする心の迷いと憤りが切々と語られていく・・・・・・
    これがこの作品の一つの醍醐味なのでしょう
    ですが、捜査側のお話はちょっとうんざり・・・

    それに比べて殺人犯・水沢裕之と看護師・高木真知子のお話は、とても悲しく・・・・・
    もう少し、水沢裕之の心の闇を覗きたかったかな

    もちろん16年前の事故、事件と現在起きる殺人事件、山岳会の係わり合いを結びつけるストーリーの緊迫感はハンパなく読者を引き付けるわけで、途中で投げ出すわけには、行かなかったのですが・・・・・
    暇つぶしにかるーく読む作品ではないと思います
    じっくり、じっくり読みたい作品です

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著者プロフィール

高村 薫(たかむら かおる)
1953年大阪市東住吉区生まれ、現在大阪府吹田市在住。国際基督教大学教養学部人文学科(フランス文学専攻)卒業。外資系商社の勤務を経て、作家活動に入る。
1990年『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞、1993年『マークスの山』で直木三十五賞、1998年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞、2016年刊行の『土の記』では大佛次郎賞、野間文芸賞、毎日芸術賞をそれぞれ受賞し、新たな代表作となった。
『レディ・ジョーカー』を境として、重厚な社会派ミステリーから純文学に転向。織田作之助賞選考委員を務める。

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