最悪 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (664ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062735346

作品紹介・あらすじ

不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢(あつれき)や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。無縁だった3人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。比類なき犯罪小説、待望の文庫化! (講談社文庫)


お先まっ暗、出口なし それでも続く人生か

小さなつまずきが地獄の入り口。転がりおちる男女の行きつく先は?

不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢(あつれき)や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。
無縁だった3人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。
比類なき犯罪小説、待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 普通に真面目にしていた方なのに、何の因果か悪い方へと向かってしまう、ひどい目に遭わされる、逃げたいけど結局は逃げきれず、つましいながらも腐らずに前に進んでいく。

    奥田英朗さんファンです。

  • 小さな町工場を営む川谷信次郎、かもめ銀行北横浜支店で窓口業務をする藤崎みどり、定職もなくパチンコやカツアゲでその日暮しをする野村和也

    三人の人生がまるでボールが坂道を転がるように悪い方へ悪い方へ狂い始める
    物事が悪い方に転がり出すと、こうも続くのか
    泣きっ面に蜂どころの騒ぎではない

    読んでいて、気の毒で、かわいそうで、こちらまで辛くなってきた

    そして、三人とも心に問いかけるのだ
    なんでこうなるのか
    何が悪いのだろう
    どうしてこうなったのだろうと

    ここまでは、三人の狂い始めた人生が並行して進行するのだが、ひょんなことからかもめ銀行北横浜支店で出会うことになる
    一人はもちろん行員として、一人は定期預金を下ろしにきた客として、一人は銀行強盗として

    今まであまりにも悪いことの連続で読むことさえ重苦しかったのが、ここから俄然おもしろくなる
    恩田陸さんの『ドミノ』ばりの急展開だった

    そしてやっとボールの動きが止まり、三人の生活が落ち着く所に落ち着いていく
    やれやれ、一件落着

  • 川崎市郊外で、零細企業の経営に悶える鉄工所社長(川谷信次郎)、妹と継母の家庭問題、上司のセクハラに悩む都市銀行の行員(藤崎みどり)、パチンコ仲間のチンピラと組んだトルエン強奪を巡って、ヤクザから暴行と恐喝で追われる、半グレ男(野村和也)。この無縁だった三人が、運命の歯車が回転を始め、予想だにしなかった、凶悪犯罪の渦の中に呑み込まれていく・・・。<奥田英朗>さん畢生のエンタテイメント長編小説。社会から転落していく者たちの、起死回生に向けた緊迫のクライマックスまで息つく間もなく読み耽った、比類なき暗黒小説。

  • 最悪にも程があると思ってしまうほどに最悪。よくもまあここまで最悪にもなるものかと背筋がゾッとする。かなり長編なのに読み進めるにしたがって一気に読みたくなる。
    奥田さんの作品は以前読んだインザプールなどのシリーズでコメディー系で本当に面白く、好きな作家さんの一人なのだけれど、この最悪は3人の群像劇で犯罪小説。
    追い込まれていく3人の心情が細かく表現されていて、読んでいくにつれどんどん気持ちが3人と一緒に落ちていく。
    最後は最悪から抜け出せて安堵している3人と共にあーよかったと思っている自分がいた。

  • 表題『最悪』が示すように読中も読後も読み心地は「最悪」である。
    途中で止めようかと何度か思ったが、中盤から展開がスピードを上げて最後きっちりひとつの作品として纏まりきる。
    奥田さん上手だなあ。

    3人の全く関わりのない人間の群像劇。
    生い立ちに恵まれずパチンコやカツアゲでその日暮らしをする若者。
    「ものづくり」の3次4次請けを自覚しながらも自ら立ち上げた町工場でこつこつと受注した作業に向き合う中年男性。
    再婚した母が創る家庭のなかでどこか居場所を見つけられずにさしずめ目の前の暮らしのために銀行の窓口業務を担当する女性。

    立場異なれど三人三様で何か寄る辺なさや現状への居心地の悪さを日常の些事に紛れこませ、やり過ごす。

    「こうしたい」「こうありたい」よりも日常の流れの中で「こうするしかない」という選択肢を無意識のなかに優先してしまう人間の哀しさ。

    果たしてその選択が正しかったのか、否か。

    3人の「こうするしかない」というその場の舵の切り方は物事を予想以上に悪化させ、道を転がり落ちるような顛末に繋がる。

    登場人物たちが次第に追い込まれ、他人に助けを求めることもできず視野狭窄で苦悩する様は、読み手をもその閉鎖空間に追いやる。奥田さんの巧みな筆致の技。

    教訓やハッピーエンドによる満足感とは無縁。ジェットコースターのような展開に振り回され、「最悪」の気分になれる一流のエンタメ作品でした。

  • 読んでいて、胃が痛くなりそうなくらい登場人物が最悪な状況に追い込まれていく…
    展開が早くて続きが気になるので、かなりの長編ながら一気読みした。
    みんな崖っぷちだけど、川谷さんが1番気の毒というか切なかった。

  • 初めて読んだ奥田英朗作品。
    最初からサクサクと進む三者三様の群像劇は、あれよあれよと悪い方へ流れていく。そして最後はわちゃわちゃして終着。結末は、まだ少し明るい兆しが見え、最悪ではなかったから良かったかな。
    ただ、中盤くらいからジリジリと追い込まれていく様は(特に川谷社長)まさに最悪で、逆にそれが心地よくなってしまい、最後まで目が離せなかった。なかなかの本の厚さだったが、一気読みできたし最悪感も味わえて楽しかった。

  • 奥田英朗さんは3冊目。
    と言っても、『インザプール』、『空中ブランコ』からの3冊目なので、実質2冊目、

    上記の2冊がしっかりコメディだったのに対し、こちらはしっかり絶望感を食らわせてくる長編。
    まさに最悪。

    かなり分厚い本だが、読みやすさ抜群のため内容とは裏腹にグイグイ進む。
    そして救われなすぎてグイグイ凹む。

    いや、これはなかなかの後味悪い系のやつだな。
    ねっとりした感じではなく、すっきり後味悪いやつ。
    すっきり?w

    いつの時代も1番怖いのは人間なんだよな…。

    有意義な読書タイムをありがとうございました
    この読後感を噛み締めつつ

    にしても誰かを守る力ってのは凄いんだな。
    俺にもそんなポテンシャルがあるのだろうか…。

  • 600Pを越える長編です。
    3人の群像劇。
    長い小説ですがとても面白く、ドキドキしながら読みすすんでしまいます。
    ちょっと暴力シーンがきついので、その辺は・・・
    登場人物をすごく丁寧に描いているので、作品に深みがありました。
    映画にもなっているようですが、解説ではあまりいい出来ではなかったようで、小説の有利性が書かれていました。

  • メインキャストは3人。町の小さな鉄工所を経営する中年男性、銀行に勤める若い女、無職でパチンコばかりする若い男。この3人はそれぞれ悩みを抱えていました。経営に苦しむ、セクハラされ悩み続ける、やくざに追われる。

    鉄工所の男性と銀行に勤める女性の背景や舞地二の出来事はなぜかひきつけられるものがあり、読むスピードが早くなっていました。自分だったり、自分の周りで起こっていてもおかしくないような日常の一コマがストーリーとなっているからかもしれません。こういう一コマだったり、男性、女性の苦しむ心の中の描写が自分にとっては興味津々という感じで読み進められました。読み進めながら、本当にこの無関係な3人が交差する点があるのだろうかとハラハラしていました。

    残り4分の1くらいになって交差する点に出くわしたのですが、そこから急展開し、あっという間に終わってしまいました。交差してからより、交差する前のストーリーのほうが面白かったように思えました。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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