最悪 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062735346

作品紹介・あらすじ

不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢(あつれき)や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。無縁だった3人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。比類なき犯罪小説、待望の文庫化! (講談社文庫)


お先まっ暗、出口なし それでも続く人生か

小さなつまずきが地獄の入り口。転がりおちる男女の行きつく先は?

不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢(あつれき)や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。
無縁だった3人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。
比類なき犯罪小説、待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 普通に真面目にしていた方なのに、何の因果か悪い方へと向かってしまう、ひどい目に遭わされる、逃げたいけど結局は逃げきれず、つましいながらも腐らずに前に進んでいく。

    奥田英朗さんファンです。

  • 小さな町工場を営む川谷信次郎、かもめ銀行北横浜支店で窓口業務をする藤崎みどり、定職もなくパチンコやカツアゲでその日暮しをする野村和也

    三人の人生がまるでボールが坂道を転がるように悪い方へ悪い方へ狂い始める
    物事が悪い方に転がり出すと、こうも続くのか
    泣きっ面に蜂どころの騒ぎではない

    読んでいて、気の毒で、かわいそうで、こちらまで辛くなってきた

    そして、三人とも心に問いかけるのだ
    なんでこうなるのか
    何が悪いのだろう
    どうしてこうなったのだろうと

    ここまでは、三人の狂い始めた人生が並行して進行するのだが、ひょんなことからかもめ銀行北横浜支店で出会うことになる
    一人はもちろん行員として、一人は定期預金を下ろしにきた客として、一人は銀行強盗として

    今まであまりにも悪いことの連続で読むことさえ重苦しかったのが、ここから俄然おもしろくなる
    恩田陸さんの『ドミノ』ばりの急展開だった

    そしてやっとボールの動きが止まり、三人の生活が落ち着く所に落ち着いていく
    やれやれ、一件落着

  • 表題『最悪』が示すように読中も読後も読み心地は「最悪」である。
    途中で止めようかと何度か思ったが、中盤から展開がスピードを上げて最後きっちりひとつの作品として纏まりきる。
    奥田さん上手だなあ。

    3人の全く関わりのない人間の群像劇。
    生い立ちに恵まれずパチンコやカツアゲでその日暮らしをする若者。
    「ものづくり」の3次4次請けを自覚しながらも自ら立ち上げた町工場でこつこつと受注した作業に向き合う中年男性。
    再婚した母が創る家庭のなかでどこか居場所を見つけられずにさしずめ目の前の暮らしのために銀行の窓口業務を担当する女性。

    立場異なれど三人三様で何か寄る辺なさや現状への居心地の悪さを日常の些事に紛れこませ、やり過ごす。

    「こうしたい」「こうありたい」よりも日常の流れの中で「こうするしかない」という選択肢を無意識のなかに優先してしまう人間の哀しさ。

    果たしてその選択が正しかったのか、否か。

    3人の「こうするしかない」というその場の舵の切り方は物事を予想以上に悪化させ、道を転がり落ちるような顛末に繋がる。

    登場人物たちが次第に追い込まれ、他人に助けを求めることもできず視野狭窄で苦悩する様は、読み手をもその閉鎖空間に追いやる。奥田さんの巧みな筆致の技。

    教訓やハッピーエンドによる満足感とは無縁。ジェットコースターのような展開に振り回され、「最悪」の気分になれる一流のエンタメ作品でした。

  • 初めて読んだ奥田英朗作品。
    最初からサクサクと進む三者三様の群像劇は、あれよあれよと悪い方へ流れていく。そして最後はわちゃわちゃして終着。結末は、まだ少し明るい兆しが見え、最悪ではなかったから良かったかな。
    ただ、中盤くらいからジリジリと追い込まれていく様は(特に川谷社長)まさに最悪で、逆にそれが心地よくなってしまい、最後まで目が離せなかった。なかなかの本の厚さだったが、一気読みできたし最悪感も味わえて楽しかった。

  • メインキャストは3人。町の小さな鉄工所を経営する中年男性、銀行に勤める若い女、無職でパチンコばかりする若い男。この3人はそれぞれ悩みを抱えていました。経営に苦しむ、セクハラされ悩み続ける、やくざに追われる。

    鉄工所の男性と銀行に勤める女性の背景や舞地二の出来事はなぜかひきつけられるものがあり、読むスピードが早くなっていました。自分だったり、自分の周りで起こっていてもおかしくないような日常の一コマがストーリーとなっているからかもしれません。こういう一コマだったり、男性、女性の苦しむ心の中の描写が自分にとっては興味津々という感じで読み進められました。読み進めながら、本当にこの無関係な3人が交差する点があるのだろうかとハラハラしていました。

    残り4分の1くらいになって交差する点に出くわしたのですが、そこから急展開し、あっという間に終わってしまいました。交差してからより、交差する前のストーリーのほうが面白かったように思えました。

  • 600Pを越える長編です。
    3人の群像劇。
    長い小説ですがとても面白く、ドキドキしながら読みすすんでしまいます。
    ちょっと暴力シーンがきついので、その辺は・・・
    登場人物をすごく丁寧に描いているので、作品に深みがありました。
    映画にもなっているようですが、解説ではあまりいい出来ではなかったようで、小説の有利性が書かれていました。

  • 奥田英朗さんの超長編。
    ながーい小説が読みたくなってこの本にしました。
    まったく関係ない、関係のしようもない3人の境遇が、まあ予想通りに終盤からみあうようになります。とてつもなく意外というわけでもなく、そーくるかーってびっくりするような感じでもなく、自然と違和感なくからみあいます。
    どうやったらこんな風に小説が書けるんでしょうか。一つ一つの話しでけでも1刷の小説になりそうな、登場人物と出来事。内容的にはわかりやすく派手なので、映画には向くでしょうね。映画見てないけど。

  • 文庫の解説に載っていましたが、こういうの“群集劇”っていうんですね。この小説では3人での群集劇ですが。勉強になりました。

    読み続けるのが辛くなるほど「最悪」に向かっていくのに何だかちょっと笑けてしまうところもあって…何というか…本当に痛快です。

  • 下町にある工場の社長、無職の少年、銀行勤務のOLの3人を主人公にした犯罪小説。

    ある日を境にそれぞれの人生が“最悪”な方向へと転げ落ちてゆき物語の終盤で交錯します。

    ここまで落ちるか、というほど救いようのない状態に陥るストーリーは読み手の気持ちを暗くさせます。
    特に工場の社長、川谷の気持ちは手に取るように描かれていて、こちらの気持ちも焦燥に駆られます。

    全てが悪い方に向かってゆくときの絶望感、何とか立て直そうとする焦り、八方塞で何から手をつけていいのか分からず目まぐるしく変化する考え。

    それでも思いやりという気持ちが残っていて再生するラストに救われたような気持ちです。

    それにしても、文庫化にあたってどうして上下に分けなかったのかと出版社を責めたくなるほど、分厚く長いお話でした。
    あまりに暗いので、一気に読まないと途中で投げ出したくなるからかな。

  • 奥田英朗さんとはインザプールが初めての出会いでした。
    この人の長編はどんなことを書くのかと期待して手に取りました。
    すごくリアル。
    インザプール等とはまったくの別物に驚き。
    でも、よくできてるな~。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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