文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.92
  • (890)
  • (586)
  • (1040)
  • (20)
  • (8)
本棚登録 : 5315
レビュー : 484
  • Amazon.co.jp ・本 (1408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062735353

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 事件の数や登場人物の数が多かったが、ある程度最初に語られていたせいか読みやすく感じた。
    それでも縦横無尽に張られた伏線には混乱させられ、それが解かれる度にまた物語に引きこまれていた。

    これまでの百鬼夜行シリーズを順に読んで来たことで理解できたような部分も多かったかな。

    今作では女性が多く登場し、女性の権利についての舌戦も興味深かった。

  • 演出が見事。芝居のシナリオに沿っているような話の運びにわざとらしさを感じたが、今回の事件が自体が偶然の出来事さえコントロールする蜘蛛の手口によるものだと…はっとした。
    シリーズの他の事件すら、まだ裏があったとは。
    爽快さはなかったけれど、シリーズの面白さを更に深める一冊。

  • 題名:絡新婦の理(じょろうぐも の ことわり) 
    著者:京極夏彦(きょうごく なつひこ) 
    出版:講談社、1996年。➡講談社文庫、2002年。 

    ・私選参考図書 
    『ベーシックアトラス日本地図帳 新版』(平凡社)
    『みんなは知らない国家売春命令』(雄山閣)
    『新装版 不確定性原理』(講談社)
    『ジェンダー入門』(朝日新聞社)


    ・本書から引用。ネタバレ含む。

    ---------------------------------------------------
     そうです――杉浦は小声でそう云った。
     そして顔をあげ、初めて大声を出した。
    「そうです! その通りです! 私はずっと女になりたかった。綺麗な服が着たかった。化粧をして美しくなりたかった。でもそれらは悉く男の私に許されることではなかったし、云えば嘲笑されるだけだった。そして、女とはそう云うものだと捉えることは、女を馬鹿にした考えなんだと妻と出会って知った。女は綺麗な服を着るものと決めつけることは侮辱だ偏見だ――」
     杉浦は激情を迸[ほとばし]らせた。
    「ならば――私の中の、この捨てがたい欲求は何に根ざしていると云うのです! 妻は、女を遍[あまね]く化粧して着飾って麗しく嫋[たお]やかにしているものと規定するのは、男の視線が築いた一方的な文化だ、押しつけがましい男どもの横暴な幻想だ、女性を侮蔑するだけの差別的行為だと云う。理屈は解ります。私だってそう思う。しかし化粧して着飾って麗しく嫋やかにしていることが女性的でないのなら、劣ったことだと云うのなら、そうしたいという欲求を激しく持った男の私は如何[どう]なるのです。人として劣った欲求を抱く、劣った人間と云うことになるではありませんか!」
     黒い悪魔は身じろぎもせず云った。
    「男女の別と云うのは最早単なる性差ではありません。我々が男らしい女らしいと口にするとき、そこにはもう性別を超えた価値判断が発生している。これは反対を向いてはいるが、本来階層を為すものではありません。あなたが劣っていると考えるあなたの中の部分は特性であって劣性ではないし属性でもない。それを拒む女性がいるのは当然だし、それを拒む男性が居ても別段おかしくはありません!」
     そこで悪魔は声の調子[トーン]を下げた
    「人間は誰しも男性性と女性性の両方を持ち合わせているのです。」
    「誰しも――?」
    「そう。これは均衡[バランス]の問題で、そのどちらの度合いが強いのか、どちらが顕在化しているのか、そこで個人差が出るにすぎない。女性性の強い男性が劣っている訳もないし、男だから男らしくて当然だと云う決まりもない。男は雄々しいものだ、男らしくなければいけないというのもまた、愚かしい差別であり無根拠な偏見でしかないのです。それらは、ある特定された場所と時間――文化の中でのみ意味を持つだけです。」
    そして悪魔は再び澱みなく畳み掛ける。
    「いいですか。男は雄々しくなければならない――そして雄々しいことは女々しいことより優れている――などと云う歪な考え方が当たり前になったのは、最近のことなのです。こうした考え方は国体が戦争などと云う愚かしい行為に染まった時期に決まって現れるものです。これには、男は黙って戦争に行って黙って死んでくれなくては困るからそう思わせておけ――と云う裏がある。時代による洗脳――呪いのようなものです、」
    「私は――」
    「繰り返しますが、この世に劣った人間などいないし異常の基準などと云うものものもない。犯罪者を異常者と決めつけて一般の理解の範疇から外してしまうような社会学者こそ糾弾されるべきです。法を犯せば罰せられるが、法は社会を支える外的な規範であって、個人の内面に立ち入って尊厳を奪い去り、糾弾するものであってはならない! だから――」
     悪魔の囁きは杉浦を貫通した。
    「――あなたは殺人と云う許しがたい大罪を犯した。それは糾[ただ]されなくてはならないし厳重に罰せられるべき行為でもあるのだが、だからと云って自分は人間として劣っているなどと云う考えだけは捨てるべきです。あなたは虫でも犬でもない!」
    ----------------------------------------------
    京極夏彦(1996=2002).『絡新婦の理』(pp.1096-1099)

  • クライマックスにて「あれ?」と思っちゃうような結末でした。
    百鬼夜行シリーズは、「言葉」の重さに気づけるシリーズだと思っています。京極堂が遣う言葉(あるいは呪)が、人々に憑いた物を落とすプロセスは、シリーズのどの作品を読んでもある種の快感・爽快さがあります。
    自分も京極堂くらいに言葉を操れたらなぁ。

  • シリーズ5、ちょっと飽きた 読むの大変だった ような…

  • 裏で糸引いてるのはこいつやろうなーというのが結構初めに出てきたけど、まさか違う人だったとは。
    最後がなー。みんなってちょっとひどいかも。

  • 緻密な構成!見事!

  • シリーズ五作目。前作から挽回。

  • 漸く読み終わった。桜の季節に読み終える事になったので、自分まで蜘蛛の糸に絡め取られてる気分になった。 舞台の1つは聖ベルナール女学院。「キャー!のび太さんのエッチー!」的なシーンを期待したが残念ながら無かった。邪まな期待は裏切られたが、複雑に絡み合った内容は期待以上の面白さ。しかも以前の作品まで絡んでくる。今後は死んだ人などもメモしておこうと心に誓う。 最強の鈍器の様な物を手に入れた気分です。  

  • この総毛立つ感じ。頭がふわふわする感じ。たまらんわああ。
    京極夏彦の妖怪シリーズを読むたびに味わってきた感覚だけど『絡新婦の理』では一層顕著だった気がする。

全484件中 81 - 90件を表示

著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)のその他の作品

京極夏彦の作品

ツイートする