文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 484
  • Amazon.co.jp ・本 (1408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062735353

感想・レビュー・書評

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  • ★5.0
    再読。「あなたが…蜘蛛だったのですね」、何度読んでも巻頭と巻末のこのセリフにゾクゾクしてしまう。そして巻末に辿り着いた後に、また巻頭の数ページを読み返してしまう。目潰し魔と視線恐怖症、絞殺魔と女学校の闇、夜這いと売買春等、出てくるテーマは多岐に渡るものの、その全てが必要不可欠でひとつでも欠けると歪になる。それは作品全体にも言えることで、中心となる犯人=蜘蛛の姿が見えないながらも、骨組=張り巡らされた巣が強固で不在感は抱かせない。彼女の笑顔があまりに悲しくあまりに辛く、ただただ居た堪れない。

  • やばいっ!!面白かった~
    「姑獲鳥の夏」から「魍魎の匣」「狂骨の夢」「鉄鼠の檻」と京極夏彦、「百鬼夜行シリーズ」を、順を追って読み進めてきた。
    毎回、驚きと感動と達成感の様なものを得てきたが、「絡新婦の理」でなぜか何かを落とされたような気持になった。そう、憑き物が落ちたという感じ。すっきりしたのだ。

    「あなたが・・・蜘蛛だったのですね」
    冒頭の、漆黒の男、京極堂こと中禅寺秋彦と桜色の女、絡新婦とのやりとりのシーンで既に胸が高鳴った。ドキドキというのかワクワクというのか、ゾクゾクというのか・・・
    そしてそれは、ラストまで裏切られることはなかった。
    全てを読み終えた直後、再度その冒頭のシーンを読み返した。
    満開の桜の木々のもとで繰り広げられる漆黒の男と桜色の女の言葉達は、艶やかな意味を持ち深く深く胸に響き渡る。

    昨夜読み終えたばかりなのに、すぐにもう一度読み返したい気持ちにもなる。。。

  • 凄すぎて茫然としてしまった。
    本当に、京極夏彦は何にも似てないなぁ…。

    前作『鉄鼠の檻』よりも更に厚みを増す書影、その割にはするすると読めてしまった気がする。
    サイトの京極夏彦のインタビュー読んだら、そういう感想が多いとのこと。関口が語り手じゃないと、読みやすいという人と読みにくいという人がいるらしい。
    私は、関口一人称か三人称かというより、今回は『鉄鼠の檻』と比べて事件が「現実」で起こった実感があったから、だと思っている。
    (振り返るとやっぱり『鉄鼠の檻』は異界だった)
    雰囲気としては『魍魎の匣』に近い。
    実際、『姑獲鳥の夏』と『魍魎の匣』の内容が絡んでくる。特に『魍魎の匣』の後日譚の性格が強い(だから必読)。
    登場人物のうち、伊佐間は『狂骨の夢』に詳述されてるし、今川と益田は『鉄鼠の檻』に出てくる人たちなので、やっぱり全部必読。

    主要人物総出演(関口を除いて)という、まるでシリーズ最終回みたいな豪華な演出である。
    最後の最後に関口出てきたけど、終盤まで、本当に関口抜きで通すつもりですか?と突っ込んでしまった。
    (京極夏彦のインタビューによれば、前宣伝で「レギュラー総出演」と謳ってしまったためなんとか関口をねじ込んだとw)
    でも、関口目線が入らない世界は全然違って見えて、これは発見だった。
    これまでは関口と京極堂がペアで、2人を中心に周囲の人が絡んでくる印象だったけど、実際は普通に京極堂と榎木津がベストコンビだった。
    というより、たまたま京極堂(古本屋)がみんなのたむろ場所になっているだけで、そもそも彼らは全員榎木津つながりの知り合いなのだった。
    榎木津の主人公感よ…。
    そういえば、関口は京極堂以外の人とは自発的に二人きりで行動しない(榎木津には無理矢理連れて行かれてる)。
    そんで、関口は事件に巻き込まれると京極堂を道連れにするけど、その逆はない。
    だから今回関口は、思い出してもらうことはあっても、誰からも声はかからない。
    なんか関口可哀想になってきた…。

    この時代ならではの社会的情勢も取り入れられた、実に巧妙に練られた事件背景には、ただただ唸るだけである。
    だけど、正直、今回は事件の全体像があまりにも大きすぎて、何度も思考停止する自分を必死で励ましながら読んだ感じ。
    まぁ、京極堂でさえ全体像が掴めないって言ってるし(彼の場合は情報が少なすぎてだけど)、私に一発で分かる訳ないか。
    とにかく、読んでいるあいだずっと「盲人撫象」って言葉を思い出していた。
    ディテールしか撫でられなくても、細部もいちいちよく出来ているのでそれはそれで充分楽しいんだけど。

    全体を覆うのは、ジェンダーの問題である。それに日本神話、七夕伝説、ユダヤ教なんかが絡んでくる。

    1度読んだだけでは事件の全体像がきちっと理解できなかった(ので3回読んだ)。
    例の京極夏彦的手法で、事件が読者に開示されるのが一部時系列ではないので、「目潰し魔」の話から唐突に「絞殺魔」という単語が出てきて、初読ではかなり混乱した。
    その上、両事件の構造が似ていることもあって、頭の中でこんがらがったみたい。

    犯人が、自ら手を下すことなく、周囲の人間の行動を誘導することで自分の思い描いた結末(誘導された人間が邪魔者を消す)を実現していく、という事件の構造は、島田荘司の『異邦の騎士』を思い出した(アレは事件はひとつだった)。
    紫や雄之介や五百子刀自を毒殺してる時点で、充分自分の手も汚してるけどね…。
    2回読んで、川野弓栄、高橋志摩子、前島八千代は茜の過去を知る人物だったから、織作家の人々は自分を縛るものだったから、本田はかつて自分を手込めにしたから殺害の対象になった、ってところまでは分かった。
    山本純子は柴田勇治の婚約者だったから殺されたんだろうか(柴田家に入るには邪魔だから)。
    麻田夕子と渡辺小夜子が殺された理由はどうしても分からなかった。麻田弁護士と渡辺氏が茜の本当の父親じゃなかったこととどう関係するのか。
    そして茜の父親は結局誰なのか。
    些末ながら五百子刀自の産んだ久代の父親も気になったけど分からなかった。

    ていうか、実は物語の本質を私はまだ理解できていないんじゃないか、と若干の不安を抱えている…。


    ※以下は、「盲人撫象」よろしく、細部でグッときたシーンを中心に書き留めています。
    ※ちょっとキャラ小説気味に読んでいる節があるので、不快な方はご遠慮ください。

    冒頭の、中禅寺と犯人(らしい)女との対決シーンで、女が中禅寺を評して「人道的」というのは(中禅寺は否定しているが)あながち間違っていないと思う。
    真実を暴くことが決して何にも勝る正義ではないことをわきまえている人。どんな立場の人にも対等に敬意を払える人。そして「綻び」は意図的だと自己分析してるけど、配慮のできる人だと思って見ている。
    関係ないけど、中禅寺が一人称に「僕」を使うの、凄く好き。

    木場修のターンは、自分は割と相性がいい。
    硬派で一途で不器用で、全然好きなタイプじゃないんだけど、物語の人物としてはとても好感が持てる。
    自分を馬鹿だ馬鹿だというけど、学がないだけで、充分理知的で、地頭(じあたま)がいい。
    特に、前島八千代殺害現場で細かい違和感を大事にして推理するシーンと、猫目洞で考察の末に多田マキがついた嘘や平野の隠れていた場所といった真相にたどり着いたシーンは、すごく読ませた。

    それにひきかえ、降旗の堕落ぶりといったら! 全く憑き物落ちてないじゃん!(笑)
    木場修と降旗の邂逅シーンは、部屋の窓から差し込んだ月の光が畳を照らし、その中に座った降旗がこちらを向く情景がありありと脳裡に浮かんで、すごく退廃的な美しさを感じた。
    そして降旗の分析、また的を射ていないし…。

    そうそう、里村医師も出てくる。
    里村も好き。「ずぶずぶずぶ」

    木場修のターンで一番ショックだったのは
    潤「あの、探偵の坊やは元気?」
    木場修「何が坊やだ。ありゃあ俺と同じ齢だぜ」
    ……え、ええ~っ!!
    じゃあ榎木津も35歳なの??
    だってだって、関口が『姑獲鳥の夏』で妻のことを自分より2歳下だから多分28か29、って言ってた! ってことは関口は30か31でしょ。私の脳内では、1級上の榎木津は32ってことになってたんだけど!
    確かに木場修だけは最初から35歳って明記されていて、幼なじみの榎木津と幼少期の3歳差は大きいよな…とは思ってたんだよ。やっぱり同級じゃないか!
    関口の胡乱!! 妻の歳くらい覚えておけ! っていうより自分の年齢くらい覚えておけ胡乱!!!

    聖ベルナール女学院での描写は、『魍魎の匣』を思い出させる。同年代の女子だから。
    はじめ、京極夏彦にとってこの年代の女子はトポス的な作用があるのかと思ったけど、あとになって必然だったことが分かる。
    杉浦が『魍魎の匣』の柚木家の近所(隣)に住んでるって設定は、なんだかご都合主義だなぁと思ったんだけど、柚木加菜子の存在がこっちの事件の発端にもなったってのを知った時は、加菜子の魔性の少女っぷりというか何というか、ゾクゾクした。
    それにしても、目の前で飛び降り自殺した友達が次の日に生きてて、死んだのは別の子だったなんて、これ以上の怪談話は無い。美由紀ちゃん、よく精神崩壊しなかったなぁ。

    伊佐間と今川は、お似合いのペアだ。両方ぼーっとしているのが、なんかいい。『鉄鼠の檻』で今川が榎木津の軍隊での部下と言ってたから、伊佐間と同じ部隊ってことだよな、と思っていたら、案の定そうだった。
    やっぱり伊佐間は主人公キャラじゃない(嫌いじゃないけど)。それが、今回今川と2人だったせいでなんだか存在感が増した。
    んで、2人はまた事件に巻き込まれるわけだ。心の中で「2度目までは許そう、でも3度は無しだぞ京極夏彦」と思った。
    今川は思慮深い人だね、ところどころで解決へのヒントになるような発言をしている。「~なのです。」って言い癖、好き。

    木場修と伊佐間との絡みは本作品が初めて、多分。伊佐間が「木場修」と呼ぶのがちょっと意外だった、京極堂のことは「中禅寺君」って君付けなのに。
    伊佐間の無駄を削ぎすぎた単語だけの発言が、木場修との絡みでとても生きた気がする。木場修が刑事の顔から悪友の顔になって事件を説明するシーン、好き。
    高橋志摩子は結局殺されちゃうけど、その前の木場修が志摩子から身の上を話聞き出すシーンは潔くまるっとカットされている(木場修の語りに集約されている)訳で、その場面があったらそれはそれでドラマチックだっただろうと夢想する。でも本はもっと分厚くなってたね…。
    茂浦の首吊り小屋から平野が飛び出してきたのはビックリな展開。どんでん返しとは違うんだけど、思っても見なかった展開を何度も見せてくれた物語だったなぁ。

    益田は、実は本作品を読む前にネットに榎木津の助手になると書いてあるのを読んでしまって、意外性を味わえず残念。
    とはいえ『鉄鼠の檻』の益田は好青年だったので、レギュラー化したのは素直に嬉しい。
    そして、私が大好き榎木津は、相変わらずの美しい容姿で、
    「知らないんだから忘れる訳がないだろう」
    「探偵とは神にも等しいものなのだよ。(略)とてもとても、僕くらいでなくちゃあ勤まらない」
    などなど、早速名言を披露してくれる。
    このシリーズをキャラ小説化しているのはひとえに榎木津の緊張感のない振る舞いだと思う。
    でも、頭の良いイケメンの変人が好きな私としては、読んでる間ずっと、榎木津役を演れる俳優は誰だろう…と妄想していた。

    弁護士増岡の登場シーンは、やだ、懐かしい…と同窓会気分になった。
    『魍魎の匣』では最後にイイヒトであることが暴かれて、その後も度々名前だけは出てきていたので、ついに出て来たね、という気持ち。
    京極堂とえらく打ち解けてるし。2人の掛け合いも好き。
    益田の持ってきた情報と増岡の情報が交錯して、杉浦という犯人像が浮かび上がる過程も、ゾクゾクした。

    京極堂の
    「あれはあれでも探偵だ。あれと意見が喰い違うと云うことは、即ち間違っていると云うことだからね」
    って台詞はグッときた。榎木津と中禅寺は「探偵」の定義を共有しているんだなと。
    2人はお互いの理解者なのだ(妄想)。

    榎木津「遅いぞ出不精」
    中禅寺「珍しく働いているな」
    ここもグッとくる。

    伊佐間「待って--た」
    中禅寺「--嘘は善くないよ」
    ここも。

    中禅寺「榎木津のねーーあの眼を躱そうと思ったらどうする?」
    本作品で最も怖かったのは、この一言だった。
    あの避けようのない能力を逆に利用してしまうほど、真犯人は聡い人間だったということに悪寒が走った。



    最後に、メモ代わりに時系列の一覧を貼っておく。
    未定稿。一部まだ腑に落ちないところがある。

    昭和25年   織作茜、是亮と結婚
    昭和26年4月 織作碧、聖ベルナール学院入学
            杉浦隆夫、三江、結婚
    同    4月 平野祐吉、信濃町に引っ越す
    同    6月 杉浦隆夫、休職。ノイローゼになる。
    昭和27年2月 杉浦美江、病んだ夫隆夫に愛想を尽かして家を出る
    同    3月 『近代婦人』3月号に前島八千代が載る
    同    春  織作是亮、柴田グループ傘下の会社を倒産させる
    同    4月 織作紫、没
    同       紫あてに川島喜市から手紙が届く
    同       川島喜市、茜に医者を斡旋してもらい平野に紹介する
    同    5月1日 平野、降旗の診察を受ける
    同    5月2日 平野、隣人の娘の目をえぐる
    同    6月 平野と川島喜市、千葉茂浦へ
    同       茜、茂浦の川島喜市に石田芳江の死因が自殺だったと伝える
    同       葵、茂浦に行き、平野に会う
    同       久遠寺家の事件
    同    夏  『猟奇実話』に川野弓栄が載る
    同    夏  『近代婦人』廃娼論アンケートに高橋志摩子が載る
    同   (時期不明)『社会と女性』に山本純子の論文が載る
    同    夏  本田幸三、様子がおかしくなる(夫婦仲が険悪になる)
    同    夏  杉浦、一週間ほど信濃町の酒井印刷所で働き、同僚の川島喜市に、柚木加菜子が首を絞められる現場を目撃したと話す
    同    夏~秋 茜、是亮の左遷先の小金井の工場で秘書を務める
    同    8月(推定) 茜、川島と会い、石田芳江の死に3人の娼婦が絡んでいることを伝える
    同    8月15日 柚木加菜子、突き落とされる
    同    8月31日 柚木加菜子、誘拐される
    同    8月末 杉浦、失踪
    同    9月 杉浦、酒井印刷所で未払いの給料を受け取り、浅草の倶楽部花園を紹介される
    同    9月 杉浦、浅草の倶楽部花園で川野弓栄と知り合う
    同    9月中旬 柴田耀弘、没
    同    9月下旬 織作是亮、聖ベルナール女学院の理事長となる
    同         杉浦、ベルナール女学院に就職
    同    9月末 平野、ベルナール学院の告解室にかくまわれる
    同    10月 碧、黒弥撒で川野弓栄を呪う
             平野、川野弓栄が売春のことで碧を脅迫していることを訊き、葵に報告
    同    10月半ば 平野、(葵から弓栄を調べるよう言われ)川野弓栄の目をえぐる
    同    10月末頃か 麻田夕子の売春が山本純子にバレる
    同    この頃? 武蔵野連続殺人事件の報告書が酒井印刷所で刷られる
    同    11月末 茜、川島と会う
    同    12月暮れ 平野、山本純子の目をえぐる
    昭和28年正月 川島喜市、印刷屋を辞め、川新のもとへ転がり込む
    昭和28年2月 箱根山連続僧侶殺人事件
    同    2月 平野、前島八千代の目をえぐる
    同       川島喜市、千葉へ遁走
    同    2月後半 杉浦、本田幸三を殺害。麻田夕子、落下死
    同       美由紀、事情聴取。織作是亮、美由紀を脅す
    同    3月 織作雄之介、没
    同       雄之介の葬儀が行われる。織作是亮、美由紀と小夜子を脅す。夜、茜、川島に会う
    同       (翌日)伊佐間、今川、織作家訪問。織作是亮、殺害。仁吉、美由紀に金を渡す
    同       (翌日)益田、榎木津に弟子入り。
                杉浦美江、榎木津に夫捜しを依頼。増岡、榎木津を訪ね、益田とともに中禅寺のもとへ行く
    同       美由紀、海棠に脅される。海棠、小夜子も脅す。
    同       (翌日)美由紀、海棠に脅される。小夜子、殺害。榎木津、杉浦を捕らえる。
    同       (同日)高橋志摩子、茂浦で平野に殺される。伊佐間も切られる
    同       (三日後) 中禅寺の憑き物落とし。碧、葵、真佐子、没

  • なんかもうなんだろうという作品群。難しすぎるのと読解力がなさすぎて的外れの事しか書いてないかも知れないけど、メモ代わりに。

    びっくりしたのが、石長比売の話と、あと、いろんな価値が世間に併存しているのは当然で、1つになった戦争の時が異常だと凄い強調されてたこと。特に、雄々しいとかは戦争に疑問なく行かせて死なせる為と繰り返し京極堂が言ってておぅ....と思った。

    最後に関口が、(自分の遺伝子がひとり歩きして別個の人格を生すのが漠然として怖い)と言ってたが、
    これでなんかもういろんな価値が並存するのは変でもなんでもないんだ、自分の子孫がどうとか由来がどうとかじゃなくて、過去の慣習は過去で、今はどう考えてもいいんだ、と救われた気がした。今までの人たちが色々囚われすぎだったからなおさら。 葵みたいに女性復権とか考える必要ないからか!この人! 考えると自分もこんな世間の呪いにかかってたのか...とか色々考えなきゃいけないし!!

    2019/8/13 読了

  • 長いッ!長すぎるぞ!また引用が榎木津の台詞だし!

    今回は基督教系の女学校の呪いと、目潰し魔と首締め魔という二人の凶悪連続殺人犯、富豪織作家の謎と、男性主義と女権拡張論、蜘蛛の巣の如く張り巡らされた罠。巣の中心にいるのは誰だ…?
    キーワードは理と偶然と必然?

    各節前に時折挟み込まれる物語は、事件の核心にまつわるものなのだが、それが終盤にフラッシュバックの如く目の前に閃く。これはもはや伏線じゃなくて演出だ。小説としてはすごいことなのではないかと思う。
    普通の小説は、匂わせて思い出させることが多い気がする。でも百鬼夜行シリーズの伏線は匂わせない。閃かせる。それこそ、榎木津の不思議な力のように、数百頁も前のどこかで読んだその光景が燐くように目の前に鮮烈に浮かび上がる。
    京極堂が謎を解き明かすとき、私達はその情景をもう見ているのだ。

    最近百鬼夜行シリーズを貪るように読んでいるのだけれど、どの小説も読むのにすごい時間かかるのに、読み終わったあとその「フラッシュバックのもと」を探しに行かなければならなくて、それがとても楽しいから困る。

  •  百鬼夜行-陽が今年の3月に発売されることを知り、読み返してから読みたいと思い順番に読み始めました。たぶん4回目くらいになります。何度読んでも程よく忘れてしまっているのでとても面白いです。この作品は大好きな関口くんはほとんどでないのですが、それでも面白いことには変わりませんでした。
     ラストはポッカリ喪失感が生まれる結末でした。死んだ人たちは、みんな、死んで欲しくなかった人ばかりでした。真犯人の気持ちを一生懸命想像してみました。でも、ぜんぜん想像できませんでした。
     犯人は他の道を選べなかったのか?これは私個人の考えですが、選べなかったのではなく、すべて自分で選んでいたと思います。だから私はこの犯人に好感を持つことがまったくできませんでした。
     次回作、この犯人が死ぬことを知っています。とても残酷な方法で殺されます。「悪」だから死ぬ、そんな単純な式にしたくないけど、私は少しも憐れに思うことができません・・・。

  • やたらと分厚い本ですが、張りまくられた伏線をきれいに回収して、「あなたが蜘蛛だったのですね」のラストまで徹夜で一気に読んでしまいました。
    個人的には京極堂シリーズの中で最高傑作だと思います。

  • 最後まで読んで、スムーズに最初のページに戻る。
    はあ〜凄いなあ...としか出てこない。圧巻。
    年末年始にじっくり読めて良かった。
    鉄鼠から大分空いてしまった。

  • 姑獲鳥で驚愕して魍魎で確信して本作はそれらを超えて、読み終えたらもうすごいのひとこと。このひとやっぱりすごい。。

  • なんか鈍器で頭殴られたみたいな目眩のする読了感でした。このシリーズは時系列に進んでいるから当然刊行順に読んだ方が「理」なんだろうけど、女学院、蜘蛛、呪術…の題目に誘われてWikipediaで人物予習を万端のうえ狭骨、鉄鼠を飛び越えて手を付けてしまった。
    登場人物が多数だけあってとにかく人が死ぬ死ぬ!天罰然りな死もあれば犠牲死(の方が多いんだけど)あれだけの壮大なスケールのシナリオを描いた“蜘蛛”…というより京極夏彦やっぱり凄すぎる。
    「あなたが蜘蛛だったのですね」真犯人を示唆する冒頭であるが、最後まで到達後再読すると桜舞い散る情景なのにゾクゾクと鳥肌が…。そして改めて読み終えた頁数を見て達成感が溢れました。
    ただ、まさかのあの事件のあの人が出てくるとは!やはり“あの人は誰!?”にならない様にフライングも程々に…という事ですかね。今回も京極堂、榎さん共に格好良かったです!

著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

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