盤上の敵 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062735636

作品紹介・あらすじ

我が家に猟銃を持った殺人犯が立てこもり、妻・友貴子が人質にされた。警察とワイドショーのカメラに包囲され、「公然の密室」と化したマイホーム!末永純一は妻を無事に救出するため、警察を出し抜き犯人と交渉を始める。はたして純一は犯人に王手をかけることができるのか?誰もが驚く北村マジック。

感想・レビュー・書評

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  • 自宅に立てこもった犯人と直接交渉し、愛する妻を救出するために奔走する物語。人の惨たらしさや卑怯な描写が見事で、読み手のストレスをいい意味で高めてくれます。

    トリックや真相が秀逸で、あっと驚く展開が素晴らしい。また登場人物のゲス感が良く表現できていて、主人公たちに強い感情移入をしてしまいました。

    ただ申し訳ないが、本作は仕掛けを中心に物語を組み立てた感じがしてしまい、全体的に話に深みが感じられません。主人公の職業の無理矢理感や、妻の抱えた不幸も何故そんな目に合ってきたか納得性が低いです。また妻の独白の文章も、芸術性が高いのか、はたまた自分の国語力不足なのか、単に理解がしづらいだけでした。

    作者の優しい気持ちは理解できますが、変に読者に気をつかわずに、思い切りイヤミスを盛り込んだ表現をしてくれたほうが、作品に深みがでたのではないかと思いました。

  • いやぁ、凄い本を読んでしまった。ミステリであったり、どんでん返しを期待して本書を読んだが、この作品には、人間の悪意であったり、怒りが実に見事に描かれている。
    殺していい人間なんていないと思っていたが、この作品に登場する兵頭三季や石割はこの作品に入り込んで殺してやりたいと本気で思ってしまった。

    何気ない日常に突如として現れる悪意。ミステリとしても一級品だし、あっと驚くどんでん返しが用意されているが、心に残るのはそうした悪意や、やるせなさ。
    ラストもその後のことを考えると、あまりにも辛い。素晴らしい作品だとは思うが、辛い本なので☆4つ。

  • 男の語りと女の語りが交互に展開される
    男の語りのほうでは自宅に殺人犯が妻を人質に立てこもり
    女の語りは自分の過去の物語
    このふたつの物語はどうつながるのか
    殺人犯の行方は?と読み進まずにはいられない展開でした
    終盤には二度の「え?」な展開もあり楽しめました

  • 叙述トリックの名作との評判を聞いていたが、個人的にはこれを叙述トリックとは呼びたくない。
    自分の中では、あくまでも叙述トリックは文章だけで騙すものなのだ。
    本書では、犯人が末永家にいた女を末永の妻だと勘違いし、末永もそれに乗っかることで兵藤の死体を処分しようとした、ということである。
    つまりこれは"文章で"騙しているということではなく、警察やメディアが騙されているのと同じように読者も騙されているというだけだ。

    まぁといっても本書が叙述トリックの作品かどうかは評価には一切関係ない。が、どうしても勝手に期待を裏切れた気になってしまう。

    だが、車の中の瓶、などの伏線は見事だし、何よりこの内容を"一見綺麗な物語"に仕立てているのがすごい。やはり何も悪意がない友貴子の存在が大きいのだろう。

  • 期待して購入したミステリー小説でした。話の内容も、あらすじから、ちょっと期待できそうな展開があって、どんでん返しで犯人が捕まるのかも?と思っていました。

    読後は・・・期待とは違った内容のものでした。面白くないわけではなかったのですが、期待しただけにという部分がありました。

    登場人物を、チェスのクイーンやキングに例えるのはお洒落で作家の色が出ているのかなと思いました。

  • 兵頭がなぜあんなにも酷いことをするのかいまいち理解できず、妻が可哀想になるばかりでモヤモヤ。
    物語ラストに驚きポイントがあるが、伏線が少ない気が…
    妻の回想と交互に語られる構成は面白く、どういう風に事件と繋がるのかわくわくしながら読んでいたが、スッキリ繋がらなかった印象。

  • 私を含め北村薫氏の女性読者を戸惑わせた一冊。
    ハードカバー発売当初に買ったものの
    私は途中から読めなくなり21年積んであった。

    テレビ局勤務の末永純一の家に
    逃走途中に銃を奪った脱走犯が
    立てこもる。その家には妻が人質と
    なっていて家は「公然の密室」となる。
    純一は妻・友貴子を助け出せるのか?
    というのが話の大きな流れ。

    手に取ったのは20代でそのときには
    もっと凄惨な話を読んでいたのになぜ
    こんなに積んでいたのか、というと
    やはり、ヒロインの妻・友貴子の
    モノローグシーンが物語の多くを占め
    彼女の成長がしっかり描かれているからだろう。
    彼女の心や行動が綺麗な、むしろ綺麗すぎる
    言葉で紡がれている。犬のごはんは一日一回と
    いうことも知らなかったその少女が中学に入り、
    同じ年齢の黒い悪意に蹂躙されていく様は
    読んでいてこちらもじりじりと追い詰められていく。

    読者である私も年齢を重ねやっと手に付ける
    ことができた。人生の道に置かれていた
    石を取り除けた気分。

    ※手元にあるのはハードカバーですが
    登録が文庫でしかできない。。
    文庫には読む前に注意書きがあるんですね。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    我が家に猟銃を持った殺人犯が立てこもり、妻・友貴子が人質にされた。警察とワイドショーのカメラに包囲され、「公然の密室」と化したマイホーム!末永純一は妻を無事に救出するため、警察を出し抜き犯人と交渉を始める。はたして純一は犯人に王手をかけることができるのか?誰もが驚く北村マジック。

    最後の最後だけを読まる為の叙述ミステリーとは一線を画します。人間ドラマをたっぷり内包した素晴らしい作品です。びっくりもしますが、それまでに至る部分も文句なしに染み入ります。

  • テレビ局勤務の主人公の自宅に、猟銃を持った逃亡犯が立てこもる。犯人との電話で、妻を人質に取っていると聞かされた彼は、警察を頼らず犯人と直接駆け引きし、妻を救おうとする。
    ある女性が過去を回想する。中学時代に出会った同級生から受けた様々な酷い仕打ち……。

    物語は上記二つのエピソードが交互に進む。その二つがまさかこう繋がるとは思いもよらず、ラスト近辺はノンストップで読み進めた。
    トリックに驚いただけではなく、「この世で最も残酷なのは人間だ」と私が常々思っていることが主題の一つになっていることで、忘れられない作品になりそうだ。

  • 〇 トータル 
     いじめをテーマにした作品は,自分自身が過去にいじめられた経験もあって,非常に心に残る。しかし,この作品は,どうにも好きになれない。いじめが胸糞悪いという点もある。こういういじめより,どこにでもありそうなささいないじめの方が感情移入ができるというか…。さらに,末永友貴子のキャラクターが好きになれない。話全体が救いがない上に,ラストもなんとも言えない。いっそ,もっと救いがないラストにした方がよかったのではなかと思える。玄人筋の評価が高い作品だが,個人的には好きではない作品。評価も絡め。

    〇 事件の概要
     末永友貴子は,学生時代から自分をいじめていた兵頭三季を殺害してしまう。友貴子の夫,末永純一は,友貴子から兵頭三貴を殺害したことを知らされ,どのように死体を始末するかを考え,友貴子の身をホテルに移し職場であるテレビ局から帰宅すると…自宅が殺人犯,石割強治が自宅に立てこもり,妻と誤解している兵頭三季の死体を人質にしているという。
     末永は,石割と取引きをし,石割を逃がすことに協力し,兵頭の死体を始末すると同時に,石割を毒殺する。

    〇 サプライズ ★★☆☆☆
     石割による末永家の立てこもりについての章と,友貴子による過去のつらい思い出の告白の章が入れ替わりに記述されており,分かりにくくなっているが,人質になっている友貴子だと思われていた人物が,兵頭の死体という点がサプライズ。この部分は叙述トリックというか,あえて詳細を書かないようにし,読者の誤解を促している。確かにこの真相は見抜けにくいが,特にこれといった伏線もなく,明かし方も驚かそうという雰囲気ではないので,サプライズはそれほどでもない。よくできているなと思う感じ。

    〇 熱中度 ★★☆☆☆
     北村薫の作品らしく,人物もきちんと描かれており,文章もしっかりしているのだが,文体があまり肌に合わない。章ごとに視点が変わるのも,物語への没入を阻害する。あまり熱中できなかった。

    〇 キャラクター ★★☆☆☆
     主人公の末永純一,その妻でヒロインの友貴子,兵頭三季,石割強治など人間はしっかり描かれており,キャラクターは立っている。とはいえ,いずれも好みのキャラクターという感じではなく,あまり魅力を感じなかった。

    〇 読後感 ★☆☆☆☆
     読後感はよくない。まえがきに「読んで,傷ついた」というお便りを頂いたと書いているし,作者自ら「物がたいを読んで慰めを得たり,安らかな心を得たいという方には,このお話は不向きです」と書いているし,解説も同様の記載がある。物語の途中の兵頭三季によるいじめの描写は胸糞わるいし,最後は,純一が石割を殺害するわけだ。人間が描けているだけに,妙に印象に残ってしまい,読後感の悪さが残る。

    〇 インパクト ★★★★☆
     兵頭三季の胸糞わるくなるいじめシーンや,どうにも好きになれない友貴子の内面描写,たてこもり事件をテレビ中継するというストーリーなど,インパクトは十分。忘れにくい作品である。

    〇 希少価値 ☆☆☆☆☆
     直木賞作家である北村薫の代表作の一つ。北村薫ファンが好きな作風ではないだろうが,手に入りにくくはない。古本屋でもたくさんおいてある。希少価値はない。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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