塔の断章 (講談社文庫 い 88-2)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062736541

感想・レビュー・書評

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  • 時系列がわかりにくい、登場人物が覚えられない、と最初は読みづらさを感じましたが、読むのをやめなくて良かったです。
    読んでいる時の印象よりもしっかりミステリーでしたし、騙されました。
    考察勢をも騙しにかかっているこの仕掛け方、すごいです。
    私は正直、本の最後の最後までちゃんと読まないと全ての仕掛けに気がつけなかったんですが、伏線がしっかり張られてたんだなと驚きました。
    同じ著者の『イニシエーション・ラブ』は読了済みだったので、もう少し身構えて読み始めても良かったんですが、油断していました。
    タロウ・シリーズ、他の作品も読みたいと思います。

  • 「乾くるみ」のミステリ作品『塔の断章』を読みました。

    『カラット探偵事務所の事件簿2』に続き「乾くるみ」作品です。

    -----story-------------
    堕ちていく女 驚愕の結末!

    作家「辰巳まるみ」が書いた小説『機械の森』。
    そのゲーム化をはかるスタッフ8人が湖畔の別荘に集まった。
    その夜に悲劇が起こる。
    社長令嬢の「香織」が別荘の尖塔から墜落死したのだ。
    しかも彼女は妊娠していた。
    自殺なのか、それとも?

    誰もが驚くジグソー・ミステリ、著者自身による解説を加えた「完全版」で登場!
    -----------------------

    いやぁー、見事に騙されました… 絶妙な叙述トリックが愉しめる作品でした、、、

    思ったままの感想を書くと、思い切りネタバレになるので、ちょっとだけ触れておきますね… 未読の方は、スルーされることをオススメします。

    本書は以下の3章+解説という構成になっていますが、実質はプロローグ、本編、エピローグ、著者あとがき… という内容です。

     ■塔の序章
     ■塔の断章
     ■塔の終章
     ■塔の解説

    作家「辰巳まるみ」の小説『機械の森』のゲーム化スタッフが別荘に集まった夜、社長令嬢の「香織」が別荘の塔から転落死する… しかも、彼女は妊娠していた、、、

    自殺なのか、それとも他殺か… プロローグ的な『塔の序章』では、塔から落とされる女性と、落とす男性が明確に誰かわからない仕掛けになっており、続く本編的な『塔の断章』では、「辰巳まるみ」の一人称で語られる、時間も場所もバラバラな34のシーン(断章)が次々と現れ、ジグソー・パズル的に物語が繋ぎ合わされていく、まるで走馬燈のように。

    そして、エピローグ的な『塔の終章』で、初めて真相が判明し、文庫化の際に追加された『塔の解説』により、大掛かりな叙述トリックの内容が丁寧に解説され、著者のやりたかったことや苦労や工夫、そして、読者が気付かない伏線部分までが理解できる親切な内容となっています。

    「乾くるみ」作品って、ホントに爽やかなくらい、気持ちよくミスリードさせてくれますよね、、、

    『塔の序章』で、男性により「香織」が塔から突き落とされて殺害され、

    「辰巳まるみ」の一人称の視点で描かれていることから、「辰巳まるみ」が怪しいと思い込み、

    「辰巳まるみ」というペンネームや「相馬和実」という本名は中性的な名前なので、実は男性では… と考え、
    (「乾くるみ」も女性的な名前ですもんね… )

    『塔の序章』で、「香織」を塔から突き落としたのは「辰巳まるみ」だよなぁ、簡単な真相じゃん、
    (「キイチ」とのベッドシーンまではミスリードさせるための仕掛けと信じ込んでいましたが… 終盤の初潮シーンで、さすがに考えを翻しました… )

    と推理… 思い切り騙されていました、裏の裏をかかれた感じです。

    結局、『塔の序章』と『塔の終章』は同じシーンで、『塔の断章』は落された直後・命を落とすまでに見る走馬燈を表現しているだなんて… いやぁ、やられました。


    ちなみに… 『イニシエーション・ラブ』、『リピート』、『嫉妬事件』に登場していた「天童太郎」が、本作でも重要な役割を担って、登場していましたね、、、

    著者によると本作品が「タロウ」シリーズ(英語でタロットのことをタロウと発音するらしく、タロットカードがモチーフされていることからタロット・シリーズとも呼ばれているようです)の第一弾で、「天童太郎」が活躍する16番目の事件(タロットカードの16番が塔らしい)にあたるとのこと… このシリーズはタロットカードの寓意画にあわせて全22作を目標としているようですね。

  • プロローグとエピローグの間に、時系列がバラバラになった、断片的なエピソードが多数挟み込まれるという、変わった構成になっている作品です。

    一見、読みにくいと思われるのですが、時間の流れはある程度把握出来るので、思っていたよりも読みにくさは感じられませんでした。
    ちょっと短めの長編と言えそうな分量も、この作品には丁度良さそうですね。

    更にこの文庫版では、「塔の解説」と題された作者自身による解説もあり、アンフェアにならないように伏線をどのように張るか等、作者の意図がネタバレ込みで記載されています。

    読む人によっては、この解説は言い訳めいていて格好悪いと思われるかも。でも、謎解きが苦手な私のような読者には、とても興味深いものがありました。

    万人受けはしないかもしれませんが、確かな技術に裏打ちされた、企みに満ちているミステリだと思います。

  • 時系列が前後し、断片なので起きたことを把握するのが大変でした。読み終わってもなるほど、今回はこんなトリックだったのね、と言う感想しか持てませんでした。文庫になったとき追加された著者の解説に関しては、読んで納得するというよりなんだか著者に関して痛々しい思いがしてしまいました。裏叙述トリックなんて全く気付きませんでした。天童氏のシリーズとしては彼がずっと出ていたという点で楽しめました。時系列としてあの作品よりあと、というのがあの作品のその後がわかったようで嬉しいです。しかしシリーズ22作中の16番目って…。

  • なるほどー!

  • 長編としては短い分量の中で、全体が伏線となってきれいに仕掛けが決まっている。

    ただ、○○○とはそういうものじゃないでは…、という疑問がぬぐえない。

  • 読みにくい話だな、とか思いながら読んでいたら見事にだまされました。

    相馬と走馬灯をかけてるんですかね?

  • 相変わらず、ミスリードのさせ方は見事だけれど。

    ミスリード狙っていると思いながら読むと、おもしろさ半減かなー。ww
    ってか前半10%読んでただけで何となく内容予想できたし。

    もっと違う手法で本書かないと読者に飽きられるぞ。

  • 面白かった。叙述トリックであろうことは感じられるけど特にタネに気づかされることはなく最後まで読んだ。
    何作か読んだけど乾くるみの女性一人称は酔いもせず、大袈裟てもなく、サラッとしていて読みやすいと思う。じっとりは苦手なので。天堂の存在感もちょうど良かったけど、存在意義としては、リピートかな、と。

  • 構成がとても面白い。
    物語としては淡々と進む。
    作者の解説は、作者の意図が分かるということで、個人的にはありだと思う。

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著者プロフィール

静岡県大学理学部卒業。1998年『Jの神話』で第4回メフィスト賞を受賞し作家デビュー。著者に『イニシエーション・ラブ』、『スリープ』など。

「2020年 『本格ミステリの本流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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