Pの密室 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 920
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062736619

作品紹介・あらすじ

完全な密室で発見された残虐な刺殺体。周囲のぬかるみに足跡も残さず消えた犯人。そして現場の床に整然と敷き詰められた赤い紙の謎。幾重にも重なる奇怪な状況に警察は立ち往生するが、小二の御手洗少年は真相を看破する。表題作ほか名探偵・御手洗潔の幼少期を描いた「鈴蘭事件」収録。ファン垂涎の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 通勤電車で読んでいたのですが最後に涙してしまいました。貧しく衝動的な殺人は、同情せざるを得ない背景があっても虚しく裁かれます。悲しすぎる。。。
    一方で潤沢な資金と家柄と計画があればのうのうと暮らしていけます。この対比が凄かったです。

  • 正直云って、島田荘司氏は迷走してます。皆が云うように島田信望者に祭り上げられて浮かれていたんではないだろうか?そう思わざるを得ない今回の作品集。
    なんせ御手洗潔が幼稚園児のときと小学2年生に既に刑事事件を解決していたというお話である。特に御手洗潔が幼稚園児のときの話「鈴蘭事件」では、幼稚園児にして明察な頭脳と観察力を持っていたという設定で、もはや小説中の人物でしかありえないスーパーマンぶりにがっかりした(なんせ幼稚園児の時点でモーツァルトを弾き、因数分解をしていたというから驚きだ)。
    もう何でもいいや、何が来ても驚かないぞという感じがした。

    里美の大学に幼少時代の御手洗の写真と彼を語った文章が記された資料があるとの知らせから始まる「鈴蘭事件」は当時御手洗を好いていた女の子、鈴木えり子の父親が事故死した寸前、彼女の家のお店であるバーの透明グラスのみがことごとく割られているという事件を扱っている。

    ここでは事件に御手洗の伯母が関わっていたという衝撃の事実が明かされ、御手洗の孤高ぶりが既に幼稚園時代で確立されているというエピソードが語られている。この事件でトリックとして扱われる鈴蘭に毒が含まれているという真相は先の「IgE」にも似ており、この頃は化学的なトリックに凝っていたのかもしれない。

    御手洗潔小学2年生の時の事件は表題作「Pの密室」。
    横浜市長賞という小・中学生を対象に毎年開かれる絵のコンクールの審査員をしている画家、土田富太郎が自宅で殺されるという事件が起きた。しかも現場は密室で愛人と噂されていた弟子の天城恭子とともにめった刺しにされ、絶命していたという。しかも奇妙な事に室内にはびっしりとコンクールの応募作が敷き詰められ、それら全てが真っ赤に染められていたというのだった。

    小学2年生の時点で御手洗潔が事件の全容を最初から掴んで、刑事達を煙に巻いている、しかも刑事の中には協力的なものもいる、この現実性の無さというか、ご都合主義に呆れた。
    もしこれが「鈴蘭事件」同様のただの本格推理小説ならば、今回は2ツ星だったろう。しかし、またしても島田氏のストーリー・テラーの才能にやられた。犯人である被害者の妻と息子の境遇にガツンと打ちのめされたのだ。
    土田少年が大きな模造紙でカブトを折るその理由にショックを受け、最後の結末に涙がにじんだ。これがあるから島田氏は見捨てられないのだ。
    題名の「Pの密室」の意味はパズラー純度100%だが、犯人の事情はまたしても私の心に残るだろう。よって+1ツ星の3ツ星としよう。

  • 「鈴蘭事件」と「Pの密室」が収録されています。

    鈴蘭事件は御手洗が女嫌いの理由がわかる話でした。

    Pの密室はトリックよりも犯人の動機と最後の切ない終わり方が印象的でした。

  • 小さい頃の御手洗さんの事件。周りにある事、ひとつひとつ観察して、よく考えて、利用していたんだなぁ。
    『鈴蘭事件』と『Pの密室』。Pはピタゴラスだったんだね。なるほどね。

  • 御手洗潔5歳と小学2年の時の事件。幼馴染の橘えり子さんとひょんなことで知り合った石岡君が聞き書きしたというお話二本。御手洗の生い立ち、その人格の基礎となるような出来事などが分かるような内容ながらミステリとしてもきっちり構成された二作。とても面白かった。ただ、石岡君、鈴蘭事件の発表の仕方といい、なんというか関係者に何の了解もなくどんどん書いちゃってるの大丈夫なの……と思ってしまった。御手洗もスウェーデンでびっくりなのでは。まあ、そんな細かいことは気にしないのかな、彼……。
    あと、鈴蘭事件の出だし、里美のボーイフレンド?の刑事との関係にやたらとこだわる石岡君、相当アレでは。君たち、キスとかしたの?とか、もう、セクハラオヤジもいいとこだよ。美人好きで結構生臭いタイプの人間だとは思っていたけど、30近く年下の女の子にそういう話するのはどうなのー……。

    「鈴蘭事件」 御手洗5歳の事件。ミステリの肝としては、昭和30年という時代の状況でわかったのかな。今ミステリけっこう読む読者であれば、結構基礎知識的なところでもある気はした。「龍臥亭事件」のときに津山三十人殺しを知らなかったのもそうだけど、石岡君の設定、ちょっとずれてきてないですか……占星術の時はあんなにホームズを熱く語っていたのに。
    ただ、御手洗の生い立ち、おじさんとの会話、おばさんの考え方、その完全犯罪の成立など考えると、本当にしんみりした。最後、えり子の話をきいて考え込む石岡君に、じーんとした。御手洗に寄りかかっていたけれど、御手洗こそが孤独であり、彼も石岡君と一緒にいることできっと救われていたのだろうと、そう自分を取り戻すきっかけになるといいね、と思った。

    「Pの密室」 なるほど、「P」ね。面白かった。このトリックはいかにも島田荘司という感じもあり、求めている御手洗ものだ!という感動もあった。
    でも、最後の母子のシーンにも、誰かを救おうとすると他の誰かがつらくなる、告発すべきかどうか迷うキヨシ少年にも泣けてしまった。

    今の御手洗潔や、異邦の騎士での彼がどうして生まれたのか、このような人格の持ち主になったのかが良くわかるし、物語としても、「数字錠」を読んだ時のような感動があって、すごくよかった。「占星術」や「斜め屋敷」「暗闇坂」などの、最初のころのすごいトリックの話もいいんだけど、こういう物語性の高いものもとてもいいなと思った。今まで読んだ島田作品の中でも、私の中ではかなり好きな作品だった。

  • 御手洗さんの子供時代が描かれているという御手洗さんシリーズのファンにはときめきもののお話です。
    石岡君と里美ちゃんもかわいいですが、里美ちゃんと仲の良い男の人に嫉妬するのはちょっと気持ち悪いと思いました。
    御手洗さんの優しさが表現されていてほんわかしました。

  • 11月の2冊目。今年の188冊目。

    御手洗潔の幼少時代が描かれた作品。しかし、本当に幼稚園児や小学生か?って思った。まぁ名探偵が小学生のころから活躍するのって言うのはわかるし、その後の御手洗潔の頭のよさを立証するような事実が挙がっているので、まぁ説得力はあるが・・・。やっぱりすこし違和感を感じざるを得ない。内容は、面白いです。なるほどなーと思うような本格ぶりでした。

  • ミステリーとしても面白いし、「泣き」の要素も素晴らしい。

  • これまた石岡、里美コンビの短編集。
    今回は御手洗の幼少期の話。
    本編もさることながら、御手洗自身もなぞ多き人物。
    徐々にあきらかになってゆく。
    御手洗シリーズの伏線のような中篇作品集

    Pno密室のPとはいったい。
    後は本編をみよ!

  • 御手洗少年、頭良すぎナリ。
    短編といっても2編なので、"物足りなさ"は無いナリ。
    (普段は短編は読み応えが無いと思ってるナリ。)

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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