架空通貨 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 259
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062736794

作品紹介・あらすじ

女子高生・麻紀の父が経営する会社が破綻した-。かつて商社マンだった社会科教師の辛島は、その真相を確かめるべく麻紀とともに動き出した。やがて、二人がたどり着いたのは、「円」以上に力を持った闇のカネによって、人や企業、銀行までもが支配された街だった。江戸川乱歩賞受賞第一作『M1』を改題。

感想・レビュー・書評

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  • ●池井戸さんは元銀行マンだけあって、マネーを扱ったストーリーが得意だ。本書も、私募債や田神札という地域振興券が人や企業、銀行までを支配してしまう構図が複雑に展開し、面白い。辛島・真紀という主人公が登場するものの金の動きに奔走させられる人間模様という感じです。
    ●また、書中で気になったのは、①“悪貨は良貨を駆逐する”。だが本当に駆逐されるものは、金ではなく、その金を持つ人の生活であり人生であり、ときに良心である ②金を中心とした価値観、経済観念が人々の心にこれほど深く寝付いてしまっている現代社会の歪み ③ビジネスの原則を無視した金は、必ずその指からすり抜けてく・・・、等である。言わずもがな、お金は重要と思うが、ひとの価値判断のモノサシにはならないと思う。
    ●私は、人に対する思い遣り、感動、共鳴できる心、・・・等を大切にする人に敬意を表したい。そういう社会でありたいと思います。

  • お金とは何か。
    会社とは何か。
    色々考えて勉強になる作品でした。
    普段使わない専門用語も池井戸さんの作品では、自然と分かりやすく説明を入れてくれるので流石です。

  • めちゃ面白い設定。
    高校生の黒沢麻紀が突然転校するとの連絡が...。

    前日、クラスの副担任を受け持つ辛島武史は麻紀から前職についてあれこれ聞かれたのを思い出す。辛島の前職は商社。気になった辛島は他の先生に転校の理由を聞いてみると父が経営する黒沢金属工業が第一回目の不渡りを出したというのだ。前日の麻紀の訪問は自分にSOSを出していたのではないかと気づいた辛島は前職の知識を生かしてなんとか助けようと調査を開始する。

    そこで浮上した田神亜鉛株式会社。そこに貸した社債7千万を期前償還してもらえれば黒沢金属工業は助かるのではないか...。そう思った辛島と麻紀は交渉のため会社がある田神町へ向かうことになるのだが...そこは地獄の入り口であった。

    ほぼ田神亜鉛株式会社の力だけで支えられている小さな町に蔓延る謎の通貨。負のスパイラル。どんどん話は膨らんでいき辛島、麻紀もそれに巻き込まれていく。果たして辛島は麻紀を救えるのか?

    設定も良かったし、どんどん話が大きくなっていくのもスリリングで良かった。もう個人の手には負えないんじゃない!?ってところまで。やべーよやべーよ、と思いながらもページをめくる手は止まらず。そしてこの辛島先生、会社を辞めて再就職しようと思っていたあてが外れ、ついでに妻にも逃げられ散々な人生、不承不承高校教師になったという経歴でちょっと冴えない感じのキャラに見えたのに、麻紀を助けるために動き始めたら超優秀キャラに変身。数字だけの資料から次々と手がかりを見つけ出し、闇を炙り出していく。かっこいいよ。
    ネタバレになるから書かないけど他にも魅力的なキャラや、この田神町を舞台にした大仕掛け、それぞれの思惑も混然となっていくのでそこも楽しめると思います。


  • ひと言で表すなら、空恐ろしい…。
    今でこそ、仮想通貨なる物が私たち一般市民にもおおかたの概要、イメージとして周知の事実となった時代ではありますが、これを20年も前(2003年)にフィクションとしてここまで仕上げて見せてくれた池井戸潤氏が凄い!

    2003年に読んでいたとしても、凡人の私の頭では、ポカーン必須でフィクションの域を超えなかったと思うけれど、今なら架空通貨の恐ろしさを身近に感じることができる。

    大きな組織から下へ下へと流れる謎の紙幣。
    下請けの弱みに漬け込むように、押しつけられるそれは、最終的には個人商店へと貯まって…否、溜まってゆく。
    1万円の対価と支払われたとしても、銀行でそれが1万円になることはない。小さいながらも店を経営するものとして心底ゾッとする。

    父の会社を救おうと翻弄する高校生の麻紀と高校教師の辛嶋が、謎の紙幣の真相を追う長編ミステリー。
    細かい数字のマジックとトリックは複雑で、正直付いて行けてないのですが(笑)終始、緊迫感ありで十分に楽しめます。

    今年の17冊目
    2021.11.17

  • 池井戸潤氏の小説は『果つる底なき』に次いで初期の作品の方が好きだ。銀行ミステリーでありハードボイルドタッチで主人公がストイックでかっこいい。中盤から少し小難しい商取引の記述が多くなるが、これも勉強になると思えばおもしろい。半沢直樹シリーズとは違った池井戸潤氏の作品の魅力だ。

  • 池井戸潤の初期の頃の作品で江戸川乱歩賞の「果つる底なき」の後に2000年に発表された作品ですが、池井戸潤の作品を読むのは11作目です。後に発表された作品「空飛ぶタイヤ」や「下町ロケット」のようなワクワク感や勧善懲悪のスカッとする感動はないのですが、悪を追い詰めて破綻させるまでの過程にはグッと引き込まれます。でも誰も救われない暗いストーリー展開にはやはりスカッとしないのです。
    元商社マンで企業信用調査のプロだったのが、事情で退職して高校教師になっている辛島武史36歳が主人公。クラスの女子生徒の黒沢麻紀が父親の会社黒沢金属工業が不渡りを出したことで行方が判らなくなったことから物語は始まる。
    取引先の田神亜鉛が牛耳る田神町、典型的な企業城下町で取引先とその下請け零細企業が集まる町である。そしてその町だけに流通している架空通貨を巡り、辛島武史と黒沢麻紀がその暗部にせまる。
    暴力団組織のマネーロンダリングや別の復讐劇が絡んで結構興味を惹かれる途中展開なのですが、最後の結末がすっきりしないのです。それとも私が知らないだけで、続編があるのでしょうか?

  • ●前半はよし、特に取引の複雑さがどんどん明かされていくストーリーはハラハラで面白い。
    ●その分、後半のあっさり感はいただけない。まあ、仕方がないんだろうけど、もうちょっと他になかったかな…
    ●最初はなんだこれって思った女子高生がめっちゃいい味出してる。ドラマ化するべき。
    ●地域通貨が出来上がっているカラクリはお見事。よく思いつくなあと感心する。

  • 最高に面白い!

  • 初期の作品なので、難しく入り込めませんでした。下町ロケットや半沢直樹を読んでからは、正直厳しいですね。こんなことが、起きないように祈るばかりです。

  • 金融や経済に関しての用語なんかをきちんと理解したうえで読むともっと面白かったかも。ビジネスも金も、結局はそれを動かす「人」次第なのだ。

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著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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