イサム・ノグチ(上)――宿命の越境者 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062736909

作品紹介・あらすじ

母の国、アメリカ、父の国、日本。二つの国のはざまでアイデンティティを引き裂かれ、歴史の激流に翻弄されながら、少年の苛酷な旅がはじまる。父との葛藤、華麗な恋愛遍歴、戦争…。「ミケランジェロの再来」と謳われた巨匠の波瀾に富んだ生涯を描ききった傑作。第22回講談社ノンフィクション賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 講談社ノンフィクション賞

  • 図書室で借りる。でも図書室には下巻がない。
    最初の100ページにドラマがありすぎて、しかも文章が美しくて、ノンフィクション作品ってこんなに面白いの?と感動してしまった。
    レオニーの言葉が格言のように降り注いでくるので、「うん、うん」とうなずきながら読んだ。

  • 図書館で。
    そろそろ返却期限だし読むかあ…と手に取ったら面白くてそこからは一気読み。名前だけは知っていたアーティストですがこんな数奇な人生を送られたのだなぁと思うと…色々考えさせられました。

    取りあえずお父さんが酷い。色々と。確かにこれは生のきっかけの種を撒いただけ、と言われても仕方がない。それにしても戦前、戦中、戦後にかけて米国に在住する日本人も、日本に在住する米国人も大変な思いをされたんだな、としみじみ思いました。戦争はイヤですね。
    そして原爆記念碑の件を読むと日本ってイヤな国だなあ…とつくづく思わされます。個人では良い人は多いのですが団体になるとどうしてこう意固地で、排他的で、責任を取らない組織になってしまうんだろう。今も昔も変わらないなあ…。

    そのうち牟礼にも、札幌にも行ってみたいな、と思いました。圧倒されるスケールの人物だなあとつくづく思いました。

  • 上巻の三分の一は、父ヨネ・ノグチについて書かれています。
    詩人ヨネ・ノグチ〈本名野口米次郎〉という人を、寡聞にして今まで知りませんでした。

    明治の8年生まれで、幼い頃から利発だった彼は15歳の時に英和辞典を持って上京し、兄の下で一年予備校に通った後慶応義塾に入学します。
    しかしすぐに学業についていけなくなった彼は、なんと2年後にアメリカに向かいます。
    学校へ行くのは嫌だ。試験は恐ろしい→アメリカ面白そう。
    何かいろいろととばしているような気がしますが、とにかく彼は行動します。

    渡航費は何とかしたものの、滞在費の持ち合わせのなかった米次郎は新聞配達や家事手伝いをしながら英詩に惹かれていきます。
    当時の仲間は彼のことをこう言っています。
    「彼は夢想家なのです。そう、彼はいつも甘い夢を見ています、故郷へ帰る日を賭けての夢をです」
    米次郎の夢とはこうです。
    「心ゆくまで一冊の本を読みながら、ゆっくりと休みたい。軽い労働の代償としてそうさせてくれるところがどこかにないだろうか」

    実に都合のいい夢ですが、それを叶えるために米次郎は詩人ウォーキン・ミラーを訪ね、実際にそういう生活をなしとげます。
    そしてそういう生活の中から詩を作り出すのですが、如何せん彼には英語力がありません。
    なので、添削してくれる人を探します。
    そうやって知り合ったのが、イサムの母レオニー・ギルモアです。

    ビジネスのパートナーとしてレオニーに多くのことを頼りながら、ほかの女性たちとこっそり恋愛関係になっている米次郎。かなりいけ好かないひとです。

    日露戦争が勃発して半年、米次郎は単身帰国します。
    日本では「アメリカで成功した国際派の詩人」として歓迎を受けます。
    が、日本で詩人としては成功できませんでした。
    詩人というにはあまりにも日本語が不自由だったからです。
    結局日本からアメリカに向けて英語の詩を発表するしかないことになり、レオニーとイサムを日本に呼び寄せるのですが、ほとんど一緒には暮らせません。
    米次郎は日本人女性と結婚して、子どもがちょうど生まれる頃だったからです。
    ほんと、いけ好かないひとです。

    日本人の血をひき、日本で暮らしていても、戸籍上はアメリカ人女性の私生児でしかないイサム。
    米次郎の仕事を手伝うだけでは暮らしていけないので、英語の家庭教師などの仕事をいくつも抱え、慣れない異国で一人子育てをするレオニー。
    名士として活躍しながらも、イサム達の生活を一切援助しない父。
    しかし父の死のほとんどは、相変わらず母が添削し、アメリカに売り込んでいるのです。
    そんな両親の姿をじっと見つめるイサム。
    イサムの屈託はここから始まります。

    とにかくイサムを芸術家にしたかった母。
    気性は荒いが繊細な心を持ち、手先の器用なイサム。

    どう頑張っても日本人として完全に受け入れられることのないイサムは、アメリカ行きを熱望するようになります。
    アメリカ国内は、日露戦争に勝った日本に対して危機感を感じ、排日の動きも日々激しくなっているときで、母としては日本で日本人として育てたかったのでしょうが、どんなに環境を変えても周囲になじむことのできないイサムを見て、ひとりアメリカに送り出します。

    紆余曲折ありますが、イサムはアメリカで成功します。
    しかし、アメリカでもイサムは自分の居場所を感じることができなかったのです。

    日本人として日本にいながら、日本の文壇との間に距離を感じる父米次郎もつらいとは思いますが、イサムの場合は、アメリカで生まれアメリカ国籍であるにも関わらず東洋人として扱われ、日本にいれば外国人と扱われ、その孤独は計り知れないと思います。

    が、しかし、助けてくれる人たちが常にそばにいました。
    イサムが子どものころ近所に住んで何かと交流があったのが、岩倉具視の嫡孫岩倉少尉だったり、小泉八雲の未亡人セツだったり、少年時代の獅子文六だったりです。
    イサムがアメリカに行ってからは父の知り合いである野口英世や舞踏家伊藤道郎(演出家千田是也のお兄さん)、インドの詩人タゴールやアイルランドの詩人イエーツなど、積極的にツテを頼っていきます。実に父は大物だったんですね。

    イサム自身も画家の藤田嗣治、彫刻家アルベルト・ジャコメッティ、作曲家ジョージ・ガーシュイン、建築家バックミンスタ―・フラー等など、数え切れないほどの時代を代表する人たちと交流を深めていきます。

    そして思うのは、自分は何ものであるのか。
    そして、芸術とは〈彫刻とは〉どのようにあるべきなのか。

    札幌市にはイサム・ノグチがデザインした公園、モエレ沼公園があります。
    観光名所というよりは、市民公園寄り。
    なぜ彫刻家が講演を作るのか。ずっと不思議ではありました。

    モエレ沼公園にはプレイマウンテンという遊び山があります。この遊び山は、イサムが「彫刻をもっと日常体験と直接的にかかわりあうものにしたいと熱望した」すえのアイディアであり、公園造りのもととなっているのだと思います。
    「未来の彫刻は地球そのものに刻み込まれる」
    「人と空間の関連に根ざす彫刻」

    上巻はイサム40歳。
    インドの芸術、巨石の魅力に目覚めるところで終わります。

  • 下巻に記載

  • 見たことのある作品のイメージとは違って生まれ育った環境に因るところが大きいんだけど、すごい屈折していて、なかなかとっつきにくそうな感じのノグチの性格。

    でも彼の作品に多くのひとが魅了され、彼という個人を愛するひともいた。

    自分らしく生きようとすることは決して自分にとっても楽なことではないのかもしれないけど、でも誰かの心に何かを残すことができるんだな。

    彼の人生にはお母さんの存在が大きいから映画「レオニー」みたいなと思った。

  • アメリカと日本というふたつの国に挟まれ、苦悩しながら名を成した芸術家イサム・ノグチの評伝。
    イサム・ノグチの作品展などに足を運んだことはあっても、詳しい生い立ちについては知らなかったため、驚きの連続だった。
    自分を認知せず母親に偽りを告げて日本に帰ってしまった父親のこと、母親の苦労と妹のこと、また、日米開戦による辛苦、イサム自身の奔放な恋愛遍歴など、ドラマティックとしか言いようのない生涯だ。彷徨し続ける彼が後半生をどのように生きるのか、下巻も楽しみ。

  • 下巻の方に感想をまとめたけれども、上巻が特に面白かったので感想をこちらに追記。

    彼の本質を見抜いた毋レオニーによって導かれた芸術の道、そして彼を認知しなかった詩人野口米次郎という父の影は、後に芸術家として歩み始めた彼の追い風にもなり、洋の東西を越える彫刻家が誕生したわけなんだけれども、我が子の将来を最終的にアメリカに託した毋の苦渋の決断とそこに至るまでの厳しい日々、広大なアメリカに独り放り出された13歳の少年の危うさは、読んでいてあまりにも壮絶で胸を締めつけられた。彼の強靭な生命力とアイルランド系アメリカ人の毋レオニー・ギルモアの芯の強さが、荒々しい海を泳ぎきる彼らのその描写と重なって印象深い。

  • 混血児としての苦悩が痛々しい。

  • 彫刻家の伝記

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