イサム・ノグチ〈下〉―宿命の越境者

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  • 講談社
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レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062736916

感想・レビュー・書評

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  • イサムノグチ万事!あ〜。またNYに行きたい。。。笑

  • 人生の最後の最後まで、創造への情熱を持ち続け、評価されることを熱望したイサム・ノグチ。

    “長距離ランナーでありながら、まるで百メートル走者の瞬発力で走り通した、八十四年四十三日の人生であった。”と、「ニューヨーク・タイムス」に書かれたその人生は、濃くて熱くて哀しくて長いものだった。

    第二次世界大戦後、敗戦によりすべての自信を失った日本は、日本らしさを捨てて西洋至上主義に陥っていた。
    そんな時にアメリカから帰ってきたイサムが、日本の良さを知らしめてくれる。
    日本に歓迎され、日本に滞在して、日本文化への理解をさらに深めるイサム。

    女優・山口淑子と結婚していたことがあるというのはうっすら知っていたが、その同じころ、日本での住まいは北大路魯山人の家の離れであったということは知らなかった。
    北大路魯山人評伝を読んだはずなのに、全くその部分を読んだ記憶がないというのは、どうしたことか。

    あの、激しい気性の魯山人と、同じくらい気性が激しいイサム。
    この二人が同じ敷地に住まっていて、全く諍いを起こしたことがないという。
    真摯に芸術に向きあう二人は、互いを尊敬することはあっても、ぶつかることはなかったそうなのだ。

    ただ、魯山人は自分と芸術が対峙して完結しているのに対して、イサムは常に他人の評価を必要としていた気がする。
    それはやはり、親の愛情を心ゆくまで与えられなかったことからくるのではないだろうか。

    イサムの存在をなかなか認めようとしなかった父と違って、母は最初から最後まで無償の愛情をイサムに注いでいたのだが、十代の初めにたったひとりで日本からアメリカの学校へ追いやられたとイサムが思っていることでもわかるとおり、イサムは母の愛にも飢えていたのだ。

    もし愛情に満ち満ちた人生を送ってきたのならば、もう少し周りの意見を聞く耳を持っただろうし、アメリカ美術界の巨匠として高い評価を得る戦略をたてることもできたのだろう。
    それがなかったばかりに、大きな賞を逃したことも、事実ある。

    しかし、「もっと愛を」「もっと評価を」そんなイサムの狂おしい思いが、彼を芸術に駆りたててきた。
    芸術では日本文化の影響を多く受け、評価はアメリカのものを欲しがった。
    決して満足することのない、その思い。

    “建築と庭園の、庭園と彫刻の、彫刻と人の、人と集団社会の……夫々が互いに、他と密接に関連し合わねばならぬ。そこにこそ新しい美術家の倫理があるのではなかろうか”

    “《有限の空間であっても無限の広さを感じさせ》《人間が住んでいるというよりも、人間の精神が住んでいる》というのが日本の庭の持つ空間に思われた。”

    どの空間に、何が、どう置かれるか。
    イサムの芸術のあり方は、魯山人の、どんな食器に、どんな料理を、どう盛るかに似ている。
    トータルとしての在り様。

    その集大成としてのモエレ沼公園。
    雪が融けたら、ぜひまた遊びに行ってみようと思う。

  • 芸術家、彫刻家イサム・ノグチの生涯を著したもの。札幌のモエレ沼公園、大通り講演などに多数の彫刻が設置されていたのだが、実際のところどんな人物かはこれを読むまで知らなかった。戦前に日米のハーフとして生まれ、戦争を経験。自分は何国人なのかをいつも問うていたのだと思う。しかし、芸術家や大きなことを成す人は、国籍も含めどこかに縛られる事の無いほうが良いのかもしれないと感じた。でも結構つらいことだな。

  •  

  • イサム・ノグチのエゴイズム、頑迷さ、傲慢さ、女性遍歴など、
    必ずしも「善いもの」とはいえない彼の横顔が描かれている。
    簡単に理解できない難解な人間関係(夫が容認している人妻との恋愛というのはいったいどうなものだったんだろう)に、イサム・ノグチという人間の魅力の不思議さを思う。
    非常に濃密な評伝だった。

  • 天才と狂人は紙一重
    英雄色を好む

    そんな言葉が文字通り彼に当てはまる。

    彼の墓が私の住む近くにあるのは初めて知った。
    しかもなかなか分かりにくく行きづらいとこだ。

  • 生と死をテーマにした広島の平和大橋、最後の作品である札幌のモエレ沼公園等、いつか彼の足跡を訪ねてみたい。平和大橋の東側の橋は、当初の「生きる」から「つくる」に改題されたということなんだけれども、この生命を表わす「つくる」と「生きる」という二語は、石を通して真実を追究し続けたひとりの彫刻家にとっても、石の塊から魂を取り出していく創作の日々こそが、まさに生そのものだったイサム・ノグチを端的に表わす言葉でもあると思う。

    「生まれた時点から父親に拒絶され、アメリカにひとり送り返された時点で母親にも拒絶され、また戦争中はアメリカという国から拒まれ、当然ながら帰属意識が不確かになってしまった」という日系アメリカ人である彼の人生は、本書に挙げられた詳細な背景を読み進むにつれ、西洋と東洋の間で最後まで彷徨っていた旅人のように映った。振り子のように揺れる心を抱えながら、絶えず帰属願望をもって生きてきた孤独な日系彫刻家にとって、生涯にわたり彼を強烈に引きつけてきた石という素材は、大地を肌で感じとれるものであったと同時に、彼の心を癒してくれていたのではないかと思った。

  • 二つの国に翻弄されつつも、二つの国で生きたイサム・ノグチ。影響を受けた人物も分かり、興味深く読み進められた。

  • イサム・ノグチというノンフィクション

    まるで目の前にいるようだ

    こんなに心を動かされる本は何年ぶりだろう?

  • 本当によく書かれていると思う。
    日本人にもアメリカ人にもなれなかった彫刻家イサムノグチの生き方。
    これを読んでからイサムノグチという人物がとても気になって香川のイサムノグチガーデンミュージアムに足を運んだ。

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