美濃牛 (講談社文庫)

  • 講談社 (2003年4月18日発売)
3.49
  • (51)
  • (102)
  • (206)
  • (12)
  • (4)
本棚登録 : 1110
感想 : 99
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (776ページ) / ISBN・EAN: 9784062737203

みんなの感想まとめ

独特の雰囲気と魅力的なキャラクターが織りなす物語が展開され、読者を引き込む。自然に囲まれた田舎の村を舞台に、不思議な泉や怪しい住人たちが絡む中で、村にまつわる歌と連続殺人事件が展開される。分厚い文庫本...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 牛歩みたいにゆっくり4ヶ月かけて読了。分かりやすい構成なので暫く間が空いても続きからすんなり入り込める。

  • 分厚いと思いながらも読み始めると、すらすら読めた。
    俳句と手の込んだ家庭料理の描写が良かった。

  • 文庫本で700ページ超の大作だが、文章も読みやすくおもしろかった。

    取材で訪れた自然に囲まれた田舎の村、不思議な力があるという泉と、怪しい住人たち。雰囲気はドラマのTR●CKのような…。この雰囲気だけでわくわくする。さらに村にまつわる歌になぞらえておこる連続殺人事件。
    取材に訪れたフリーライターをはじめ、石動や羅堂一族、村人、コミューンのメンバーなど、キャラクターもとても印象的。

    果たしてこの作品の着地点は、オカルトなのか、ミステリーなのか?と思いながら読んだ。もちろんミステリーとして成立している。しかし、科学でわりきれないオカルト要素もあり、それがこの本の世界観を作り上げていると思う。

  •  文庫本にして750ページを超える大作。首なし死体が登場するまで190ページ程度かかりブロンズの牛の角に腹を突き刺された二人目の死体が登場するのまで,430ページ程度かかる。非常にゆっくりした展開の作品である。
     登場人物も非常に多く,大きく分けると羅堂家の人々,コンミューンの人々,暮枝村の村人達,雑誌から取材に来ているフリーライターとカメラマンと,複数のグループが登場し,それぞれの思惑で動き,物語がかき回される。美濃牛の面白さは,それぞれの登場人物が,殺人事件とは別の思惑で動く姿がいきいきと描かれている点にある。
     犯人である羅堂陣一郎=鋤屋和人は,俳句を愛する老人として描かれている。陣一郎が開く句会の様子が描かれているが,ここでフリーライターの天城が詠んだ「秋風や牛舎の牛の白い角」という句が,羅堂真一殺害の重要な目撃証言になってしまい,最終的に天城が狙われる原因となる伏線として描かれている。登場人物のキャラクターが魅力的なこともあり,句会が事件に関係がないシーンとして描かれていると思って読んでいたので,感心してしまった。
     ミステリとしては全体として冗長であり,横溝正史作品へのオマージュとするのであれば,登場人物を少し減らしたり,出羽や藍下(=村長),灰田についての描写を減らすなどして,もう少しすっきりした作品にした方がよさそう。しかし,美濃牛は単なる横溝正史作品へのオマージュではなく,横溝正史が描きそうな世界へのオマージュであるように思われ,一見無駄のように思われる部分にも愛着を感じてしまう。
     ミステリとしてのこの作品のポイントは,羅堂陣一郎(=鋤屋和人)が,羅堂一族との奇妙な共存関係の終焉を避けるために,自殺した羅堂哲史の首から上を切断したことにである。自殺を猟奇的な殺人と見せかけることで,猟奇的な連続殺人事件が生じてもおかしくないと思わせ,羅堂美雄が,金のために,便乗して羅堂真一を殺害するであろうことを予測していたという点。
     実行犯になれる何者かが裏に存在し,連続殺人をプロデュースするという構造は,Yの悲劇に通じるものがある。羅堂陣一郎(=鋤屋和人)のお手伝いであるお栄さんが,羅堂哲史の首を切断したというのはシュールだが,お栄さんの行動がやや不自然であること,お栄さんと羅堂陣一郎(=鋤屋和人)の関係など,伏線もあり,納得できないほどではない。
     とはいえ,何人ものキャラクターが登場し,いくつものエピソードが並立した形で描かれているので,要約がしずらく,記憶に残りにくい作品となっている。このような作品は嫌いではないが,しばらくたつと,大体の構成は思い出せても,何人死んで,実行犯が誰だったかなど思い出すのが困難そうな作品ではある。
     全体の構成,文章の読みやすさ,キャラクターの魅力など,かなり好みの作品なのだが,印象の残りにくさも含め,あと一歩足りない印象がある。際,羅堂陣一郎が鋤屋和人であろうということは,ミステリ慣れしていると読めてしまう。サプライズを狙っているわけではないのだろうけど,ミステリを読んでいるので,サプライズがほしいのも事実。その点の割引もあって…★4で。

  • オーソドックスな本格ミステリなのに、読みやすい。
    キャラが個性的で面白い。
    本格の要素も、ホラー的な面も、申し分なくラストの収まりもいい。
    大傑作とは言えないまでも、際立ってよい作品でした。

  • とても面白い。分厚さが気にならない軽快な文体、寄り道のない真っすぐなストーリー、ふんわりと漂う不気味さ!

  • 長いけど、ひとまとまりが程よい長さで次々続いていくから、あまり長さを感じさせない。
    石動戯作が脳内でメルカトル鮎と混同されて読みながら脳内ごった煮状態。
    凄惨さはないけど、なるほどなるほどの捻りが効いていて面白い。

  • 「いますよ。もともと大金持ちなのに、もっと大金持ちになろうとして、破産しちゃう人とかね。ぼくは資産家の家に生まれたら、意味のないことは絶対にしない自信があるな。馬鹿息子で一生を終えたい」

    石動が言った言葉なのだが、殊能将之のセンスが光る文章だと思った。
    馬鹿息子で一生を終えたいなんて、なかなか書けない。
    すごくいい。

    殊能将之の文章は独特なリアリティーがある。
    相続税を回避するために生身の人間の脊髄を傷つけて、歩けなくさせる。
    1ヶ月かけて衰弱させて、下半身不随の老人を作り出すなんて、浮世離れしている。

    だが、殊能将之の文章に組み込まれると違和感がない。
    現実感のないアイデアが現実味を帯びる。

    冒頭にすべては著者の想像の産物とあるが、奇跡の泉も本当にあるのではないか?と思ってしまう。

    不思議だ。

  • のんびりとした村で起こるどんでん返しな事件。
    村の雰囲気も好きだし、奇跡の泉の逸話もいい味。
    残酷な人間の所業が隠されていて、表面的には平和に見える世界。
    江戸川乱歩と横溝正史さんの雰囲気を持ちつつ、主人公と取り巻く人々のおかげで楽天的に進むのが良かった。
    殊能将之さんもニヒリストなのか?と気になります。
    ミノタウロス、アリアドネ、歌の話、言葉遊びが多くて、まるで俳句なのかなあと。もっと大人になったら更に味わえる小説かもしれない。

  • すっかり内容を忘れたので再読。

    事件が起きるまでが長いと、だらけてしまったり、飽きてしまったりするのだけど、苦にならない。各節が短いせいか、長く感じなかったのかと思ったけれど、石動はじめ登場人物が妙に魅力的?だったからかな?
    出羽と藍下との掛け合いも良かった。

    トリックや鍾乳洞の分岐のヒントも、読んでいて、どういうこと??ともならず、あ〜なるほど!と納得できたのも良い。こねくりまわしたり、難しすぎて無理やり納得したわけでもないので、すっきり。
    ゆっくりしたペースで話が進んだ後での、さくさく進む解決編、そして「何してる人なんだ?」の石動の正体が判明する場面もすっきり。

    ただ、ラストの窓音と天瀬の場面が背筋が薄ら寒くなった。逆説に満ちた村。
    “ふたりは仲良く手をつなぎ。夕暮れの迫る動物園をあとにした。”
    考えることを放棄して、愛することだけに専念すれば天瀬は幸せになれるかもしれないね。

  • この作者の作品を読むのは「ハサミ男」以来の二作目。「ハサミ男」があれほどの出来だったのでこちらの小説はどんなもんかなーと期待半分で読み始めたが良い意味で裏切られた。横溝正史ばりの舞台設定に毒と洒落を混ぜ込んだような話だった。探偵役の石動戯作のキャラ設定はちょっと薄味だったけれどそれも気にならないほどの文章力。作中に所々ある違和感を拾っていけば犯人はなんとなくわかりはしたものの細部までは詰めれず。いやー、この小説も「ハサミ男」なみに有名になってもいいんじゃないか?

  • 2018.09.11

    奇跡の泉 リゾート開発 首なし死体からの連続事件 飛騨牛

    長かった。ハサミ男や鏡の中は日曜日と比較するとインパクトは弱い。
    古今東西の作品のオマージュが散りばめられてるらしいけど全然わかりませんでした。

  • 古今東西の物語の意匠と作家へのオマージュがちりばめられた、精密で豊潤な傑作推理小説。
    うーん、面白かった。各節の冒頭に様々な引用が用いられ、それが本当にしっくり馴染む。
    読みやすい文章、人物像も嫌いじゃないし展開も好み。超長編をものともせず読みました。
    殊能氏はこんなにも博識だったのですね、感心しきりです。続編もゆっくり楽しみたい。

  • 作者の本を読むのはこれで二作目。
    以前読んだハサミ男も最高でしたが、これもすごく面白かった!
    最初、うわ分厚いなぁ…と思ったもののすごく読みやすくて話も先が気になるのでサクサク読めた。

    山奥の村の奇跡の泉とかわらべ唄とかワクワクする要素や、他の作品へのオマージュも多くて読んでて楽しかった。

    こんがらがった事情も多かったのに謎解きは複雑ではなくスッと理解できるものでなんかもう本当凄い。

    最後に出てきたアントニオの出番は少なかったもののインパクトはでかい…。

    以降の作品を読むのも楽しみ〜!

  • 長い助走、狂言回しがみごとです

  • 石動シリーズ1作目。
    不治の病をも治す"奇跡の泉"、地域開発調査に派遣される石動、泉の洞を封鎖する羅堂家、牛舎と美濃牛の像、俳句を嗜む隠居老人、他所者の古民家に出入りする美青年、閉鎖的な村の中で次々消える赤毛一族の命。
    視点は主に取材にかりだされたフリーライター天瀬のものだし、石動でシリーズになっているとは知らず読み始めたのもあり、序盤から探偵の怪しさが尋常じゃなかった笑
    登場人物が多いけれどそれぞれ個性と価値観がわかりやすく、『ハサミ男』から感じる皮肉屋っぽい洞察も好調でくせになる。
    事件の真相や真犯人については、なんとなく怪しい怪しいと思うところであったから意外性というほどではなかったけど、しっくりまとまっているとても楽しめるミステリ。俳句を練る風景がとても風流で好きだし、伏線として回収されたも素敵だった。
    章毎の引用文が多岐に渡っていて、著者の知識量に慄く。散りばめられているはずのオマージュについて半分も拾えていないだろう自分が残念。

  • 再読。ピラミッドのアヌビスの次は迷宮の奥のミノタウロスで。
    3歳の子どもはもっと話せるだろとか栄さん年のわりに老けすぎじゃないかとかその辺がひっかかりました。アントニオ出てくるのあれだけだったっけ?いやまあ黒い仏で大活躍だしいいか...。

  • 殊能さんの著書は思い出深いハサミ男に続き2作目。読みごたえのある長編だが、登場人物が個性豊かで楽しく読めた。序盤の親子の対比がよかった。何よりも引用の数が半端じゃない。すごくいろいろなものを読み漁っていたんだなと感心した。ご冥福をお祈りします。

  • 横溝正史好きにはオススメとあったので読んでみました。
    なるほど。
    金田一耕助があの時代じゃなかったらこうなるのです。
    どこにでも顔を出しペラペラお話する探偵役って変人すぎるでしょ?
    村人のほとんどが忘れているわらべうたに則っとって事件を犯すなんてことある?
    村の人達一人一人のクセの強いことよ。
    そして田舎イコール穏やかなサンクチュアリというわけではない、と。
    でもなんだかんだ言って、鬼隠洞歌というわらべうたが洞窟のルートの暗号だったり、その世界観にしっかりはまれたので読み終わって満足感のある一冊でした。
    ただ作者が書きたいことを詰め込んだせいかとっ散らかって収集ついてないかなという印象も持ちました。

    石動戯作のことは好きになったので次作も読もうかと思いましたが、私はエラリー・クイーンはエジプト十字架の謎を1回読んだ程度だし、叙述ミステリはあまり好みではないのでやめにしておきます。

  • 横溝正史の世界観を持った現代ミステリ。
    病が治る効果があるという泉の取材で、正体不明な案内人石動戯作に導かれ、岐阜県の暮枝村を訪れたフリージャーナリストの天瀬。
    泉のある洞窟の所有者である、羅堂家は、洞窟への立入を禁じている。
    やがて,飛騨牛の飼育をしている羅堂啓介が、神社の境内で首なし死体で発見され…

    文庫で750ページを超える大作だけど、他の方も書いている通り、様々な人の視点で描かれる展開が早く、長さを感じさせません。

    真相は意外な物ですが、ちょっとムリがあるかな、という感じ。
    各節の見出しとなる引用文の使い方はお見事でした。

全85件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1964年、福井県生まれ。名古屋大学理学部中退。1999年、『ハサミ男』で第13回メフィスト賞を受賞しデビュー。著書に『美濃牛』『黒い仏』『鏡の中は日曜日』『キマイラの新しい城』(いずれも講談社文庫)がある。 2013年2月、逝去。

「2022年 『殊能将之 未発表短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

殊能将之の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×