国境 (講談社文庫)

  • 講談社 (2003年10月18日発売)
4.14
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本棚登録 : 630
感想 : 75
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  • 本 ・本 (848ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062738606

感想・レビュー・書評

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  • 2001年初版。疫病神シリーズは過去に2冊読んでいます。本作以外ですがドラマ・映画も観ました。解説も入れると850ページになろうとする長編。イメージとしてはスポーツ新聞に連載されているような若干下衆で暴力的な作品ではありますが、イケイケのヤクザ桑原と如何わしい建設コンサルタント二宮の悪を悪が裁くストーリー展開が面白く、テンポのいい大阪弁(ガラはよろしくないですが)に、ドンドンと読み進めます。北朝鮮の現状を描くシーンには、気持ちが重くなります。読後に心に残るものは少ないんですが、スカッとさせてくれる娯楽作です。北村一輝さんと濱田岳さんコンビでの映像化を希望します。ただ、北朝鮮が絡む作品だから難しいでしょうね。

  • 感想
    文庫本で800ページを超える大作。

    まず、どうやって北朝鮮のことを調べたのだろう?やけにリアルに描かれている。

    人民の階層性やタクシーもなく、移動は徒歩。電話連絡もままならない。常時監視下。

    前半は、物語より潜入取材の色の方が強いし、そちらの内容の方がショックで印象に残る。後半からやっと小説らしくなってきた感じ。

    二宮もヘタレながらヤクザの桑原に減らず口を叩く関係が面白い。


    あらすじ
    建設コンサルタント二宮とヤクザの桑原は、趙という男を追いかけて金正日政権の北朝鮮へと来ていた。

    そこで目の当たりにしたのは北朝鮮の驚くべき実態だった。

    電話もできない。タクシーもいない。車も自転車もほとんど走っていない。

    政府幹部に賄賂を渡し続けないと、食糧配給の少ない地方に飛ばされる。

    土地は痩せて農業もままならない。3層51成分からなる階級性から抜け出せない。

    街には安全員が常に目を光らせている。

    追っていた趙は北の羅津・先鋒に逃げたことが分かり、一度日本に引き返す。

    羅津に行く方法を探したが、見つからず、国境破りをすることに。

    李という日本語が話せるガイドと共に、中国の行商人として二宮と桑原は羅津に入る。李はタバコを賄賂に巧みに役人に取り入る。

    飢餓に苦しむ人民や浮浪児などたくさんいる。

    二宮と桑原は、政府幹部の徐を締め上げて趙の行き先を聞き出す。趙は会寧に逃げていた。すぐに会寧に向かい、趙を発見し、締め上げたところ、日本にいる詐欺師の石井が全ての絵図を書いていたと吐く。

    二宮と桑原とガイドの李は豆満江から密出国を図るが、国境警備隊に見つかり、二宮のみ対岸の中国へたどり着く。

    その後、二宮はなんとかガイドの柳井と連絡を取るが、桑原と李らしき死体が上がり、大急ぎで吉林を離れ、日本に戻る。

    二宮は、石井を追うべく色々捜査するが、大江組のフロント企業に捕まる。そこに死んだと思っていた桑原が現れ、助けられる。

    そこから石井、竹村にたどり着き、金を回収していく。詐欺の金主はヒルパークスのホテルオーナーの飛島だという。

    石井をネタに、飛島を脅して小切手を手に入れるも、桑原が所属するヤクザの本家筋に全て没収される。結果的にはちょっぴり儲かったくらい。

  • イケイケやくざ桑原さんの男気を
    どーーしても、息子に知って欲しい私は、
    「なぁ~~、読んでみぃって!←(読後はしばらく関西弁が抜けない…。)
    絶対、惚れてまうええ男がおるんやて!」
    と、
    しつこく薦めたのだが
    普段、本なぞ読まぬ彼には、
    「誰がっ、そんな辞書みたいに分厚い本読むかっ!」
    と、見向きもされなかった。

    くぅ~~っ!!
    なんてもったいない。
    こんなにええ男、滅多におらへんのにぃ~っ。

    と、嘆きつつ、ふと気がついた。
    私は図書館でこの本を目にした時、
    (わぁっ♪こんな長い間、桑原さんと一緒におれるんか。
    こら、読書中は世界一の幸せもんやな。)
    と、夢見心地であった。
    ちっさい地球儀の様な本の中心で暴れまくる桑原さんさえいれば、
    どんな世界も面白いだろう、という確信があったからだ。

    …がっ。
    今回彼らが赴いた地は、本当に恐ろしい国であった。
    二蝶会(桑原所属の組)の若頭をハメた詐欺師を追って
    (今回も偶々、共通の敵を追う羽目になった主人公二宮と共に)北朝鮮へと渡った二人。

    あのイケイケ桑原さんの道理なぞ、全く通らぬ不自由の国、北朝鮮の現状は想像を絶するほど恐ろしく、
    だが、
    それでも
    「きっちり役目を果たすまで帰れるかいっ!!」
    と、
    まるで生死の境目であるような国境を越え、
    死の国へと突入しながらも
    男気、という長刀を眩いばかりに発光させて、
    「生」への道を迷わず爆走!

    ほんとに、ほんとに、リアルに惚れ惚れしてしまう男の姿は、
    胸を打つラストを読み終えた後も、しばらく目に焼きついて離れない。

    映像、として記憶にきっちり残ってしまう稀な小説であった。

    • takanatsuさん
      MOTOさん、こんにちは。
      レビュからMOTOさんの桑原さんへの並々ならぬ愛が伝わってきました!
      ここまで愛される桑原さんとはいったいど...
      MOTOさん、こんにちは。
      レビュからMOTOさんの桑原さんへの並々ならぬ愛が伝わってきました!
      ここまで愛される桑原さんとはいったいどんな男性なのか…き、気になります。
      息子さんの「誰がっ、そんな辞書みたいに分厚い本読むかっ!」のツッコミもツボでしたが(笑)
      厚さに負けずにMOTOさんの惚れた男気に私も惚れ惚れしてみたいです!
      2014/08/13
    • MOTOさん
      takanatsuさんへ

      いやぁ~♪
      逢うていない時も、(本を読んでいない時も)ぽわぁ~ん…と、いまだに夢心地ですねんっ♪(関西弁も...
      takanatsuさんへ

      いやぁ~♪
      逢うていない時も、(本を読んでいない時も)ぽわぁ~ん…と、いまだに夢心地ですねんっ♪(関西弁も消えない…^^;)

      やくざ、なだけに普段は口も素行も悪いけど、いざという時は男を見せますっ!
      死んでも仲間を見捨てない、
      大事なもんを守り抜く姿が、もう~♪目に焼きついてしまって…(^^#

      『国境』
      確かに頁数はあったけど、大好きな人と逢うてる時間…と、思えばあっという間だったのぉ~♪
      なんて、コメントがすっかり恋バナと化しちゃいましたね。ごめん、ごめん。
      takanatsuさんなら、桑原さんをどう思うかなぁ?
      映像化されるとしたら誰が適役か?なんて話しもしてみたいな~(^^♪
      2014/08/14
  • 抜群に面白かった!
    北朝鮮から日本、そしてまた北朝鮮へ。
    国が国なので身構えて読みましたが、疫病神シリーズの面白さ全開です。その国の事情を描いていないわけじゃない。しっかり描きつつ、でも暗くない。
    このシリーズのちょっとコミカルな雰囲気が好きです。ハードボイルドな固茹でだけど中から黄身じゃなくて鶏が出てきそうな。シリアスなシーンもシリアスになりきれない。そこがいいのです。
    分厚い本でしたがあっという間でした。

  • 疫病神シリーズの第二弾という事で買った一冊。

    分厚いく読むのが一瞬戸惑う外見だが、読み始めたら分厚さをあまり感じずスラスラ読めてしまった。

    20年くらい前の内容だから今の北朝鮮とは国内の事情は違うかもしれないが、酷い国だと改めて知ることができた。

    疫病神コンビはやっぱり面白い。
    やりとりが最高だ!

    中国や北朝鮮の地名や人の名前がいまちい頭に入ってこないのと、読み難かった。

    疫病神シリーズが楽しみになった小説であり、
    北朝鮮は本当に酷い国とよくわかった小説でもありました。

  • 疫病神シリーズは全部面白いけど、その中でもこの「国境」が一番好き。傑作!
    金への執着と執念が凄すぎる二宮と桑原が最高。
    未読なら是非読んでみてほしい。

  • 「疫病神」コンビの第2作。金絡みの腐れ縁と嘯きつつ底流にある2人の友情と矜持の物語は今作でより爽快感が増す。なぜなら下手をうてば一生日本の土地を踏めなくなるリアル魔境金正日政権下の北朝鮮に、逃亡した詐欺師を追いかけ潜入する本当に命がけのシノギだからだ。平壌、豆満江と2回の北朝鮮の描写が圧巻で、これまでも大阪の街を、ルートをどこをどう通ってと緻密に描写してきた筆者独自のスタイルが踏襲されている。照明のない闇につつまれた北朝鮮の都市、郊外、中国との国境の村などなどの描写は、いったいどれだけの取材をしたのだろうかと思うくらいの圧巻のリアリティである。北朝鮮という独裁国家における国民への管理と格差の社会の現実に直面し、極道で欲の権化のような主人公桑原が、そのあまりの酷さに憤りを露わにする場面には、作者自身の憤りも滲んでいるのだろう。北朝鮮帰国後の、詐欺師、敵対する2組の暴力団、マル暴刑事、議員秘書などが、三つ巴、四つ巴になって争うクライマックスは一気呵成の面白さである。「疫病神シリーズ」として再編された文春文庫版は上下2巻だが、830ページをしても上下巻に割らないのはさすが講談社文庫である笑。

  • 黒川博行さんの作品は面白い。

    過去ログ。

  • 衝撃だった。ここまで悲惨な状況だとは思ってもみなかった。それでもなお、この国は〝地上の楽園〟なのか。建設コンサルタント業の二宮と暴力団幹部・桑原の「疫病神コンビ」が、詐欺師を追って潜入した国・北朝鮮で目にしたものは、まるで想像を絶する世界だった――。読み出したら止まらないサスペンス超大作。
    (2001年)

  • 読み出したら止まらない。
    これだけ長い小説を一気に読ませる筆力に感服。
    桑原と二宮の掛け合いが良い清涼剤になってる。

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著者プロフィール

黒川博行
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、会社員、府立高校の美術教師として勤務するが、83年「二度のお別れ」でサントリミステリー大賞佳作を受賞し、翌年、同作でデビュー。86年「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞、96年『カウント・プラン』で推理作家協会賞を、2014年『破門』で直木賞、20年ミステリー文学大賞を受賞した。

「2022年 『連鎖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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