- 講談社 (2004年4月15日発売)
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感想 : 205件
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784062739962
作品紹介・あらすじ
アパートの一室での毒殺、黄色の部屋の密室トリック――素人探偵・奈々村久生(ななむらひさお)と婚約者・牟礼田俊夫(むれたとしお)らが推理を重ねる。誕生石の色、五色の不動尊、薔薇、内外の探偵小説など、蘊蓄(うんちく)も披露、巧みに仕掛けたワナと見事に構成された「ワンダランド」に、中井英夫の「反推理小説」の真髄を見る究極のミステリー! (講談社文庫)
「アンチ・ミステリー」な推理小説の金字塔 氷沼家の周辺で次々と起こる謎の事件、くり返される密室殺人、謎解きのためのキーワードの数々、多彩な仕掛け――最後に明かされる犯人の意外な真実とその重み。
AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
多層的な謎が織り成す、独特の世界観が魅力の作品です。1950年代を舞台に、密室殺人や奇妙な事件が続発し、登場人物たちがそれぞれの視点から推理を展開します。読者は次々に現れる容疑者やトリックに翻弄されな...
感想・レビュー・書評
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アンチミステリの世界
これは…
なるほど。
『ドグラマグラ』とも『黒死館殺人事件』とも違う。奇書と構えて読むからか、胸に遺物が残る読後感。
1955年が舞台。
1年前に起きた洞爺丸沈没事故により両親を亡くした氷沼蒼司、紅司、藍司。
ある晩、藍司はアイヌの格好をした不審者を目撃し、紅司は、アイヌの呪いや洞爺湖の蛇神の祟りだと怯える。
藍司が働くゲイバーの客であり、蒼司の友人、光田亜利夫は氷沼家と仲を深めるが、そこで謎の密室殺人事件が起きてしまい、巻き込まれてゆく。
家系・密室系のミステリーです。
ノックスの十戒はもちろんだが、江戸川乱歩や不思議の国アリスの話などがポンポン出てくる。
複数人による推理合戦が繰り広げられ、読んでいる方は次々に湧いて出る容疑者やトリックに惑わされてしまう。
それぞれの人が独自の見解で犯人を推理しているので、まるでゲームのエンディングが幾つもあるような錯覚に陥るが、ちゃんと真相は1つなので安心して下さい^ ^
奇妙な推理合戦も魅力ですが、最後まで読んでこの作品の本当の魅力が分かります。
読後は『暗黒館の殺人』と同じようなモヤが心にかかります。
(暗黒館の殺人が大好きなので、すぐ基準にしますが、深い意味はありませんw)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久生の婚約者、牟礼田敏雄(本名は俊夫だけどルレタビーユに因んで)が登場、名推理を披露するのか?と思いきや…事件は続き、久生やアリョーシャは頭を捻り、やはりミステリやサイエンスや1950年代の東京都内などのピースが散りばめられ、作中作に目を眩まされ、どうなっちゃうのか分からなくなりそうでした。
でも、ラスト(真犯人の心情吐露)まで来て、牟礼田がとった態度、そしてこの作品が「反推理小説」と呼ばれる理由が、私なりに納得できました。
それにしても、この登場人物たちは裕福ですね。お洒落だし、生活苦も無さげだし。私は親から戦後の物資の乏しさを、中学の制服の布が買えなくて祖父の着物を染め直して仕立てた話とかを聞いていましたので。 -
推理小説だと思って読み始めたので二転三転…何転したか分からない展開はかなり疲れたし、最後まで読んでもスッキリ解決したとは言いがたい内容だった。
ただ下巻最後の久生のセリフ「ページ外の読者に向かって"あなたが犯人だ"って指差さす、そんな小説にしたい 。(中略)この一九五四年から五五年にかけて、責任ある大人だった日本人なら全部犯人の資格がある筈だから」は現代社会に生きる自分達にも当てはまる指摘だと思うし常日頃感じていることだけに共感出来た。
社会問題に無関心で安穏と生きることを糾弾した問題作、と捉えておこう。
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ビビって数年積んでた日本三大奇書の1つに挑戦。作家の恩田陸さんはこの本を小6で読んだとか。
氷沼家を巡って起こる連続殺人事件。氷沼家の知人達、素人探偵によって推理合戦が繰り広げられるのだが、推理は現実離れしたものが多く、特に女探偵久生の推理は的外れすぎて、その推理を披露してしまうのか・・・と久生が登場するたびに勝手に恥ずかしくなってしまった。
終章で犯人は分かるのだが、何が真実なのか?全部作り話だったのか?あやふやな点も残り、もやもやとした読後感。謎解き重視の本格ミステリーではないけど、国内外の色んな古典ミステリー小説が登場するところは好き。作者のミステリーへの愛が溢れていると思う。
うーん、頑張って読み終えたけど難解だったな。時間を置いてまた再読してみたい。
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再読。ミステリーというジャンルが持つ不謹慎さをあえて押し出すことでアンチ・ミステリの極北となった小説。事件かどうかもわからない段階から探偵気取りが変死の謎を解こうとしたり、実際に何らかの事件が起きたら嬉々として推理合戦を繰り広げたり、ミステリー小説やミステリー作家の言葉を引用して遊ぶように謎解きしてみたり、殺人事件をエンタメとして扱うミステリーというジャンルの不謹慎で不真面目で不用意な部分をあえて押し出すようにして話が進んでいく。
それらすべては真犯人が語るテーゼに繋がっており、都合の良いように事象を解釈し、勝手な意味づけを行い、あまつさえそれを楽しんでさえいる探偵、さらにはそれを物語として消費している読者をも巻き込み、その罪を告発する。
三代奇書の中では犯人像にしても探偵たちにしても割とマイルドで、文章も読みやすいのでとっつきやすい。途中の推理合戦は冗長に感じるけれど、ところどころにある爽やかで人情味を醸す場面は好き。ミステリーの教養と登場人物たちへの愛着次第で評価が上がりそうな気もするのだが、しかし飲み込みやすいぶんインパクトの弱さは否めない。 -
スッキリしないというのが率直な感想。かなり作り込まれているので読み込んだ時に分かるだろうけど。なので再読して感想をあげ直す予定。
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周りの人間の推理合戦がうるさい。
本筋と関係ない適当な推理がてんこ盛りで話がややこしい。と思ってイライラしていたけど、それ自体が作者が仕込んだテーマだった様です。
殺人事件という不幸な出来事をエンタメとして楽しむ周囲(読者含む)の不謹慎さ。
周囲の存在がミステリー作品を求めてまた架空の殺人事件が作られる!よく無い!
って事らしい。
でもでもだってしょうがないよ!みんな人間関係の噂話が大好きで、殺人って人間関係の終極地点なんだから。そりゃ興味津々で聞きたくもなるよ。 -
不幸が相次ぐ氷沼家の事件の謎を自称探偵達が推理する話。上下巻なんやけど、上の推理が割とぶっ飛んでてこの先どうする気や、と思ったら下巻で繋がってくるの凄い。下巻がまじでどう転ぶのか楽しみすぎて一気に面白くなった。最後の批判は現代にこそ刺さる。
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再読。
久しぶりの中井英夫文体に実家のような安心感をおぼえた。解説の出口裕弘は美文の度がすぎると思っていたようだが、シンプルではないにせよハッキリとしたスタイルを持つ文章はそれだけで読むストレスが少ない。
探偵気取りのキャラが何人もでてきて、推理を披露するや「いやいや…」と否定され失敗していくタイプのミステリーが好きだと最近自覚したんだけど、その源流は『虚無への供物』だったんだなと。この形式の面白さは「一つの事件につき幾つもの解釈法を読ませてもらえるお得感」だと思う。けれど、この〈推理ゲーム〉がゲームであること自体に意味を持たせているのがこの作品のすごさ。推理小説が殺人事件を創り出し、探偵による秩序の回復をエンターテイメントに変える虚構の謂だと知っていれば、真犯人の動機と小説の構成が織りなすテーマの見事さにクラクラすることだろう。 -
「虚無への供物」を初めて読んだのは、確か中学生の頃で、母方の伯母が読みさしを譲ってくれた、蜜柑箱一杯の文庫本の中に、講談社文庫版が混じっていたのだ。とはいえ、一読、そのすごさ、おもしろさに驚倒して夜を徹し、と言うなら自慢もできるが、ミステリは横溝正史氏あたりを読み始めばかりの中学生のこと、途中までは面白かったが、最後は支離滅裂、なにが四大奇書だよ、てな感想しか抱けなかったのではどうにもならない。それ以来の再読だが、中学生の俺、レベル低かったなと正直に思う。そのくせ、お話のディテール、例えば、最初の推理合戦で久夫が的外れは推理を延々披露したあげく、藍ちゃんに一蹴される辺り、ほぼ完璧に覚えていたから、さすが十代の記憶力と言うべきか。
止まれ。
四大奇書だの、アンチ・ミステリの金字塔だのの惹句を前にすると、尻込みもしたくなるが、実物の筆致は拍子抜けするほどに軽やか。さらさらと流れるようでありながら、表層よりはずっと手強い文体はともかく、自称探偵群以下の賑々しい顔ぶれを眺めれば、まるで今のラノベを先取りしたかのような、立ったキャラが揃っている。彼らが丁々発止を繰り広げる、推理合戦の面白さは言うまでもなく(身内で人死が出たのにこんなことやってていいのか的なことは思わないでもないが、これは伏線だから)、続々と起こる怪事、これでもかと繰り出される、的外れとも言い切れない、密室の謎解き。これほど愉しいミステリも少ない。「虚無への供物」を呼んだと言えば、自慢できるし、まずは読むべし。 -
先入観というものは恐ろしい。本書をミステリの傑作として読めばそのアンチ・ミステリな仕掛けに一杯食わされるし、三大奇書という触れ込みで手を伸ばせば純ミステリ的手法に肩すかしを受けるだろうから。そして本書を純粋な娯楽として楽しもうとすればするほど、千人以上の死者を記録した戦後最大の海難事故、洞爺丸事故の悲劇が印象から薄れてしまうのだ。結局の所、書物が紡ぐ物語というのは私たちがそれとどのようにして出会うのかという点から切り離して考えることは不可能なのだろう。ただ一つ、「読む」という行為のみが現実として残される。
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日本三大奇書のひとつであり、アンチ・ミステリの金字塔とも言える作品。
探偵達の永遠に続く推理合戦に、現実と虚構が混ざり合い、一気にワンダランドへ連れてかれました。
犯人の独白が痺れたしミステリファンには刺さるんじゃ無いかなぁ -
黒死館殺人事件と比べて読み易いけど好き嫌いが別れそうな所は一緒
・小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、夢野久作『ドグラ・マグラ』と並び日本探偵小説の三大奇書と呼ばれてます。
・いきなり作中作が挿入されてきたり、謎解きで脈絡の無いキーワードがごちゃごちゃ入り込んできたり、推理の内容がこじつけだらけだったり、犯人の動機が意味不明だったりと、推理小説として違和感ありまくり、かつ、納得いかない点がありまくり。ミステリーをころころ弄んでいるとしか思えない所が、アンチ・ミステリーと呼ばれる所以でしょうか
・好き嫌いが分かれそうな作品であり、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』は主人公のペダンティックさ(自分がどれだけの専門家であるかをひけらかす嫌味さ)に読んでいてイライラしますが、本作は脈絡の無さとか殺人事件に対して無責任にキャッキャッして推理合戦している所にイライラします。 -
三大奇書、2冊目読了。こんなに、いろいろな知識を出しながら推理を繰り返す小説は他にあまり知りません。そして、その推理がことごとく違う。最終的には犯人の動機もあまり良く理解できませんでしたが、キャラはたっており、興味深く読めました。
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下巻はアパートでの毒殺死、五色不動の謎、まだ起きていない第四密室殺人事件の素人探偵推理、犯人の告白編。気の毒にぐらいしか考えていない物見高い御見物衆達は現代にも通ずる。推理小説ではなくアンチミステリーらしい。
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2021-12-12
なるほど。反推理小説とはこういう意味だったか。語り継がれるにはそれだけの意味があるという事。もちろん、コレを出発点としてさらに進化して今のものがある訳だが。
何よりも、ただ面白いというのが第一にあるわけだ。
さて、後は黒死館殺人事件読めば三大奇書制覇だな。 -
日本三大奇書の一つ。なんだかんだで初読み。存在自体はだいぶ前から知ってはいたが「アンチミステリ?それよりも正統派の本格ミステリが読みたいやい!」といった感じで中々手が出せなかった。しかしいざ読んでみるとその読後感は正統派の上等な本格ミステリを読んだ時とさほども変わらず。むしろ違うベクトルで本格ミステリを追い抜いているといったところ。真犯人の動機は確かに高尚すぎるだろうが、それでもその犯人の言葉は今現在を暗喩しているような気がしてならない。
著者プロフィール
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