疾駆する草原の征服者―遼 西夏 金 元 中国の歴史 (08) (全集 中国の歴史)
- 講談社 (2005年10月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062740586
作品紹介・あらすじ
通説をくつがえす新「中国史」
キタイからモンゴルへ 中華を凌ぐ帝国の興亡
耶律阿保機、チンギス・カン、クビライ 遊牧民がユーラシア世界を席巻した
唐王朝を揺るがした「安史の乱」は、600年におよぶ大変動の序奏だった。耶律阿保機のキタイ、李存勗ひきいる沙陀、李元昊の西夏、完顔阿骨打の金。多極化と流動化のはてに、歴史の統合者たる大モンゴル国が浮上する。現代もなお生きる「巨大帝国」誕生のドラマ。
感想・レビュー・書評
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2019/3/30
知りたかった「遼」に関して今までで最も詳しく書いてあり、読み進むのが楽しかった。騎馬遊牧民の得意とする「馬」こそが、世界を征服していく上で必要不可欠だったのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
耶律徳光と述律、に触発され。キタイ、西夏、金の項だけ拾い読み。耶律阿保機の革新性、遊牧と中華を折衷などというレベルでなく、全く新しい国の形を作ろうとしていた英雄としてのべる。耶律突欲は、文化人かつ冷静沈着な為政者だったが、不運に不運が重なり、キタイ、渤海、中華をわたりあるく賑やかな人生、と語られ、耶律堯骨は良くも悪くも素直でおおらか、それ故に、中華を支配する夢が叶いそうな時に、統治に緩みがでて、猛烈な略奪に反感を買い、叶わなかったと描かれる。五代を中国の正統とする史観を鼻で嗤う描き方。特に、司馬光や欧陽脩へは容赦がない。教条主義的な正統感、華夷の区別をバッサリ斬り、特に、五代の沙陀政権の残忍野蛮ぶりを語り、こんなものが正統でも文明でもあるわけがない、キタイのほうがよっぽど正統で文明的と語りたいのだと思った。
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安禄山、耶律阿保機、チンギスといった周縁の側からの英雄たちを素材に、平将門の乱や吾妻鏡まで絡めながら壮大な東アジアの勢力の勃興をとても興味深い形で提示しています
大変面白く読めました -
多くの人が指摘してますが、キタイ(遼)にページ割きすぎです。徹底して遼・モンゴル側から、この時代を覗いていたのは良いですが、後唐の李存勗と耶律阿保機の抗争に多くを割くなど、概説書としては偏りがあるのは否めなかったです。西夏や金の記述も少なめでした。遼が好きな方は是非。
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これはまた通説をくつがえす凄い歴史書ですね。政治史と軍事史が中心で、文化史的要素は少ないので、なにか他の著作をよむべきかも。安禄山から明初までの六百年を、草原の部族を中心に書いています。中心はキタイ帝国(正式な呼称はまだ分かっていないそうです)で、約3章をさいています。彼らが中原に割拠したテュルク系沙陀族よりも、よく国家をデザインしていたこと、宋と澶淵システムをつくりあげ、平和共存していたことなどが書いてあります。文治国家として知られている宋よりも優れていた点もあるということで、いったいキタイ帝国とはどんな国だったのかと興味がわきます。西夏と金はあわせて一章です。大元ウルスについては、もちろんチンギスからときおこし、モンケにふれ、やはりクビライが大きなウェイトを占めています。とくにクビライが作った「交通=国家」の陸上=海上通商網にはくわしいです。ペルシャ語の公用、ムスリム経済官僚の派遣、地域ユニット別の支配、多種族複合国家など。資本主義とかルネッサンスとかにもモンゴルの影響があるそうですが、もう少し詳しく知りたいと思います。国家と権力の本質についても考えさせられる本です。
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展示期間終了後の配架場所は、開架図書(3階) 請求記号 222.01//C62//8