ラストエンペラーと近代中国 (中国の歴史)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 57
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062740609

作品紹介・あらすじ

二度のアヘン戦争で叩きのめされ、日清戦争の敗北によって亡国の危機にさらされた清朝末期の中国。だが南からの風が瀕死の中国を癒す。太平天国・辛亥革命・国民革命および改革者たちという風。ラストエンペラー溥儀の数奇な運命と、中国史上はじめて南から吹き寄せた新しい時代の風が生み出す中華再生のドラマを描く。

感想・レビュー・書評

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  • 複雑な清松から中華民国の軍閥構想から国民党の北伐までの流れがよくわかる。近代中国が「中国」という括りで国民統合されることが非常に難しく、清が滅びてから常に仲間観で共同と対立の繰り返しであったこと、抗日戦線でようやく国家の統合が進んだことがわかる。また、各軍閥や党派の裏には列強の影があり、それが対立を助長していたこともわかる。日本と中国の関係では、中国に対して利権を常に伺う人々、中国の国民国家建設に協力する人々、欧米各国の動きをみて協力したり見捨てたりする人々などが紹介されており、日中関係とは呼べない重層的な関係が同時に走っていたこともわかる。抗日戦線でようやく果たされた統一も、終戦後国共内戦に再突入し、その後共産党がようやく統一の夢を果たした。数多くの国民を抱える中国は常に分裂・内部抗争の危険性をはらんでおり、共産党の毛沢東や鄧小平が「中央統制」を重んじる考えが理解できる。

  • 孫文、袁世凱、魯迅、張学良、蒋介石など、この時代の中国を知るには入門としてはとても良い本だと思いますが、詳しく知りたいと思った向きには、表層的でかなり消化不良が残る内容です

  • 太平天国から日中戦争期までの中国近代を扱っているので、同シリーズの中でもとりわけ密度が濃いです。内容はほとんどが政治史。孫文や国民党の独裁体質を指摘したり、魯迅と近代中国の関係を取り上げているので、考察やアプローチはオリジナリティーがあって面白かったです。 過酷な時代ではありましたが、こうした環境の中で蒋介石や毛沢東といった巨龍が台頭したと思うと、やはり中国の歴史はダイナミズムに富んでいますね。

  • 一気に読んだ。
    清末からの中国近代史の怒濤の展開は、小説家が簡単に創作できるような代物ではないな という印象。

    この本と次の巻で扱っている「清末~民国~現代中国」の激しい歴史の展開、個性的な登場人物群は、巷で人気の「三国志」を凌駕するのではないか。さらに、「時間的に現代に近い」という点で、内容をより身近に感じることができる。我々が生きる「現代の東アジア」に直接つながる歴史的事実・事件の数々が、そしてそれらの背景となった人々の思いが平易な言葉で語られる。東アジアの現代を理解する上で必読の書。

  • 洪秀全の太平天国から張学良の西安事変まで。
    列国の不当な支配から国民はナショナリズムに目覚め、孫文、毛沢東、蒋介石等々様々な革命家が祖国の独立を目指して活躍する。
    その影で当然日本も自国の利権のために暗躍してます。
    経済的にも軍事的にも台頭してきた現在の中国。
    その出発点ともいえる時代のお話。
    近代化を目指しながらも、ここ一番で詰めが甘くて破綻している様を見ていると、現在の極端な繁栄もちょっと危なっかしい気がします。

  • 洪秀全や孫文などを辺境からの改革者と位置づけ、「南からの風」として近代中国の歴史を書いた所に特徴があります。太平天国から西安事変までを扱い、「失敗の英雄」孫文の独裁的な面や、ストロングマンとしての袁世凱や、国共合作を維持しようとした蒋介石など、評価も多面的です。もちろん、日本の行った謀略も詳細にふれています。また、日本の第二次山東出兵のころ、北伐軍に同行していた日本軍の情報将校、佐々木到一の中国認識を批判した部分は、たいへんためになります。相手の国の一面だけを見て、勝手にいれこんだり、失望したりして、結局、自分たちの「正義」を押しつける。満州国にもいえることですが、これは異文化にきちんと向き合う態度ではないと指摘しています。現在、ブログや2チャンネルに溢れている、反中感情に思いを致せば、きちんとふまえるべき指摘だと思います。魯迅がこれだけは日本から学ぶべきだといった、日本人の「真面目さ」は現在なくなりつつありますね。毛沢東と蒋介石はどちらも国民運動ではなく、武力に依存したという指摘もなかなか興味深いもので、総合的に良質の歴史書であると思われます。

  • 講談社の『中国の歴史』シリーズの第10巻で清末から日中戦争前夜までを扱っています。本書は「南からの風」をテーマに太平天国、孫文、蒋介石、魯迅、毛沢東などこの時期を彩る様々な”南風”から、当時の中国を紹介しています。中身は概説書としては非常に読みやすく、また読み応えもありこの時代を知る上でまず最初に手にするべき本ではないかと思います。巻末には重要単語と人物、年表や参考文献も充実しており、一般読者からこれから本格的に中国近代史を勉強しようとする人まで幅広いニーズに対応しています。やっぱり概説書はこうでないといけない、そう思える本でした。さらに、これまでの近現代史を扱った書物というのは何かしらその著者の政治的立場が見え隠れしていたのですが、この本ではあまりそういうのを感じませんでした。平たくいえば「原寸大の人間」像を扱っているということです。大陸・台湾両面で「国父」と敬される孫文を、実は中国の伝統的な専制主義的傾向をもつ革命家であるととらえているのがその証左でしょう。孫文についてこのような側面があったことに目から鱗が落ちるようでした。今まで、幾多の概説書が出版されてますが、政治的イデオロギーから脱却しつつある今現在、新たな概説書が必要なのかもしれませんね。

  • 展示期間終了後の配架場所は、開架図書(3階) 請求記号 222.01//C62//10

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