おーいでてこーい―ショートショート傑作選 (講談社青い鳥文庫―SLシリーズ)

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  • 講談社 (2004年3月2日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062747141

おーいでてこーい―ショートショート傑作選 (講談社青い鳥文庫―SLシリーズ)の感想・レビュー・書評

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  • 軽く読めるのに、後味は軽くないのがたまらない!!

  • 今年中にすべて書き写ししたいと思ってます。

  • 行間を読む

     文,特に小説類を読むときは,「行間を読む」ことが大切だ,とよく言われています。

     以前は,何のことかよく分かりませんでした。きちんと説明してもらえなかったのではないかと思います。

     しかし,教える立場に立つようになって,分かってきました。

     ぼくもこれまでの読書経験によって,自然に行間を読むことができるようになっていたのです。

     子どもたちに読書をさせると,行間を読んでいないことが分かるのです。ぼくが読むとっていることを子どもたちは読み切れていない。


     子どもたちも大好きな星新一の「ボッコちゃん」を紹介しましょう。これはいいですよ。つぎはぎです。(中略)を入れると読みにくいと思うので,入れません。またつなぎのために少々変更も加えています。
     「おーい でてこーい」におさめられています。


     ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  


     そのロボットは,うまくできていた。女のロボットだった。完全な美人ができあがった。しかし,頭はからっぽに近かった。
     マスターは,それができあがるとバーにおいた。
     美人で若くて,つんとしていて,答えがそっけない。お客は聞き伝えでこの店に集まった。ボッコちゃんを相手に話をし,酒を飲み,ボッコちゃんにも飲ませた。マスターは時どきしゃがんで,足の方のプラスチック管から酒を回収し,お客に飲ませた。
     お客のなかに,ひとりの青年がいた。ボッコちゃんに熱をあげ,通いつめた。そのため,勘定がたまって家の金を持ち出そうとして,父親にこっぴどく怒られてしまったのだ。
     「もう二度と行くな。この金で払ってこい」
     彼は支払いに来た。
     「きみぐらい冷たい人はいないね」
     「あたしぐらい冷たい人はいないの」
     「殺してやろうか。」
     「殺してちょうだい。」
     彼はポケットから薬の包みを出して,グラスに入れ,ボッコちゃんの前に押しやった。
     ボッコちゃんは飲んだ。
     マスターは青年がドアから出ると,残ったお客に声をかけた。
     「これから,わたしがおごりますから,みなさん大いに飲んで下さい」
     おごりますといっても,プラスチックの管から出した酒を飲ませるお客が,もう来そうもないからだった。
     お客も店の子も,乾杯しあった。マスターもカウンターのなかで,グラスを上げてほした。
     その夜,バーは遅くまで灯りがついていた。しかし,だれひとりも帰りもしないのに,人声だけは絶えていた。



     ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  


     3色ボールペン式で読ませます。
     ぼくは,
     「彼はポケットから薬の包みを出して,グラスに入れ,ボッコちゃんの前に押しやった。」
     と 
     「おごりますといっても,プラスチックの管から出した酒を飲ませるお客が,もう来そうもないからだった。」
     に赤線を引いていないと,×にします。
     すると,×になった生徒は,間違い直しにやってきます。ぼくは訪ねます。
     「登場人物は,ボッコちゃん,青年,マスター,お客だね」
     「うん」
     「では,最後にお客やマスターはどうなったの?」
     100%の子が「んんんん?」ですね。
     「店に泊まって寝ている」
     「タクシーで帰っていった」
     「お店で飲んでいる」
     などなど,適当な答え。

     ボッコちゃんが飲んだお酒はどうなるの?
     青年は何をした?
     そして,マスターはどうした?

     などと質問して,答えさせるうちに,

     「あっ,死んだんだ」と気付くのです。目を大きくして,驚きを表す子が多いです。

     「死んだ」ということは,書いてありません。しかし,それは読みとることができるはずです。材料はすべてそろえて示してある。あとはちょっとした想像で考えてください。すると,お客は死んでなければいけないではないですか。

     ということです。

     つまり「行間を読む」とは,書いてあることから,書いてないことを推し量ることです。
     でも,それは読者の勝手に読んでいいものではありません。作者は読者がこのように読むことを期待して書いているのです。そして,それが読みとれない場合は,筆者の書き方が悪いか,読者の読み方が悪いかです。

     小説文の場合は,書いてないことを推し量らせようとします。だから有る意味で分かりにくいです。そこを書いてしまってはおもしろくない。小説の場合には,この「おもしろさ」というのが大切なのです。

     しかし,説明文,(論文など)は,おもしろさよりも,書き手のいいたいことが読み手に伝わるかどうかが大切。だから,重要なことは繰り返し繰り返しでてきます。おもしろくなくていいから,分かってくれよ,というところでしょうね。

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