ぼんくら(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 4904
レビュー : 411
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062747516

作品紹介・あらすじ

「殺し屋が来て、兄さんを殺してしまったんです」-江戸・深川の鉄瓶長屋で八百屋の太助が殺された。その後、評判の良かった差配人が姿を消し、三つの家族も次々と失踪してしまった。いったい、この長屋には何が起きているのか。ぼんくらな同心・平四郎が動き始めた。著者渾身の長編時代ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 他の読書家の皆さんと同じように、時折無性に読みたくなる宮部さんの歴史小説。宮部さんの筆致は過不足なく、時代背景や風景、人物描写等々とても分かり易い。深川のとある長屋で起こった殺人事件をきっかけに、住人それぞれの物語を短編で紡ぎ、後半は全部を包むミステリーへと繋がる。上手いなあ。主人公は我欲の少ない、でも自分をしっかり持つ同心平四郎。実に魅了的。「俺はおまえさんの信心を邪魔するようなことはしないから、お前も俺の面倒くさがりのところは放っておいてくれ」。柔らかい装幀、挿画も好みの雰囲気。

  • 井筒平四郎のぼんやりとした雰囲気がなんともいえず、いい雰囲気をだしている。弓之助はとてもいい子だし、奥さんとのかけあいも面白い。
    平四郎と同じように「なんだかなぁ」と思ってしまう所もあるけれど、嫌な気持ちだけでは終わらない。
    時間が経つとなんとなく読み返したくなる本。

  • 主人公の平四郎はタイトル通り、ぼんくらで頼りない。
    でも、鉄瓶長屋の住人とは顔なじみで距離も近く、信頼もされている。

    本来なら役人と一般人なんて距離がありそうだけれど(というか、ある。今、現在も)この平四郎のキャラクターが変に役人面したり、威張り散らしたりしないから慕われるんだと読んでいて感じた。

    物語自体は短編で幾つか収録されているけれど、少しずつ繋がっていて読めば読む程、その先が気になって気になって仕方なくなる。面白い、本当に面白い。

    普段は1つの物語の世界に浸りたいので、長編ばかり読んでいる。だから読み始める時、最後まで無事に読了できるか心配だったけれど徒労に終わった。

    果てさて、この長屋で起こった事件の数々の背景と地主の湊屋の真の目的は。。。

    下巻に続く。

  • ぼんくらシリーズ第1作。最初誰がぼんくらなのかと思った笑。江戸は深川、鉄瓶長屋で起こった一件の殺人事件を機に長屋で次々と起こる退去。一連の出来事に繋がりはあるのか、やる気のない同心井筒平四郎が鼻毛を抜き抜き解決に乗り出す、お江戸が舞台のミステリー。宮部みゆきさんのストーリーテリング、江戸の町の情景、人の立ち居振舞いの描写が見事で読むとパタパタっと頭の中に鉄瓶長屋が再現される。しかし平四郎はそこまでぼんくらじゃないよな。

  • 『小説現代』1996年3月号から2000年1月号まで計18回掲載され、2000年4月に出版された長編歴史小説。
    作者宮部みゆきはデビューから約10年、この間に山本周五郎賞、日本SF大賞、そして直木賞などを受賞し人気作家として押しも押されぬ地位を築いたことで、初期の作品に見られる書くことへの渇望のような熱意がようやく落ち着きを見せました。書きたいものを一つ一つ書けばそれぞれが必ず本になると確信したからでしょうか、あれもこれもと一つの作品に書きたいネタを全部詰め込んでいた初期に比べ、書きたいネタをじっくり膨らませて一つの作品やシリーズとして結実することが増えてきました。

    この「ぼんくら」ではその「作者が書きたい」ネタは、多くの読者がこの作品の読みどころとして思いつくとおり、井筒平四郎の人物造形でしょう。

    もともと同心株を継ぐつもりすらなかった井筒平四郎は「知らないことは知らないまま、分からないことは分からないままがよい」「大きな揉め事はどうせ自分が出張っても解決できないし、自分が出張るほどのこともない小さな揉め事は放っておいても解決する、どっちにしても自分が出張る必要はない」と、毎日ぶらぶらと見回りをしています。まさにタイトルどおり「ぼんくら」ですが、作中では(多分)「ぼんくら」という単語は使われていません。まるで『「ぼんくら」という言葉を使わずにぼんくらな人物の人となりを浮き彫りにするゲーム』を作者が楽しんでいるみたいです。

    平四郎の何よりの魅力は、その鷹揚さがいったんことが起こった際の捌き方にまで及んでいることです。事件は最終的には法ではなく庶民の感情に沿った落着を見せますし、読者は安心して読み進むことができます。

    ですから、物語は「初物語」のように、庶民の間に起こった事件を平四郎が人情味満点に捌いてみせる連作短編集…だと思って読み始めると、上巻の半ばほどから意外な展開を見せます。どうやら物語の舞台、「鉄瓶長屋」で起こった大小の事件は、全て一つの陰謀に起因しており、巻き込まれた人々は陰謀の元凶の「長い影」を踏んでいるのではないか、というのです。

    ここに至って、井筒平四郎はただのぼんくらの怠け者でない、有能さの片鱗を見せます。必要とあらば伝を辿って隠密裏にことを探り、さらにあまり付き合いたくないと思っている岡っ引きを使ってまで事件の真相に迫ろうとします。本気を出したぼんくら同心がこの後どこまで真実を明らかにすることができるのか…と、上巻はこのあたりまでです。
    (…ところで、この程度のボリュームの本を上下巻にしていいものか大いに疑問です。1冊あたりの値段をあまり高くするわけにはいかない、といった事情はあるのでしょうが、ストーリーが佳境に入ったところで上巻終わり、なんて切り方をされるとつらいです。1冊通してラストまで読みきりたいところです。)

    そして、人物造形の魅力は井筒平四郎にとどまりません。「鉄瓶長屋の心」お徳、年若い差配人の佐吉、頭がよいと評された遊び女のおくめ、初物語の主人公「回向院の茂七」親分の一の子分政五郎と「おでこ」、近眼の美少女みすず、そして超美男子の弓之助。
    自分はおくめのエピソード「ひさぐ女」が気に入りました。家賃代わりに差配さんに無料で「遊ばせ」ていたおくめは、老齢に入ってめっきり弱くなった差配さんが気詰まりだろうからと家移りを決意したというくだりから、ふとしたことでお徳の地雷を踏んでしまった平八郎を意外な一言でフォローするところまで、半笑いのまま読んで最後は「うへぇ」と恐れ入りました。

    人物といえばもう一つ、これまでところかまわず顔を出していた「超能力者」に代わって「異能者」が登場するようになりました。「超能力者」については、作者の初期の作品では、例えば「初物語」のように、それまで全く超能力と関係がなかった話にいきなり超能力者が登場して興醒めすることがありました。今作では、超能力ではなく、異様に暗記力の良い「おでこ」、そして何でも目測で正確に測量することができる弓之助の2人がいて、物語を盛り上げるアクセントとなっていると同時に、証拠やアリバイなどミステリに欠かせない要素を盛り込み難い時代物・捕物帳にこれらを持ち込むための便利な道具となっています。
    ちなみに「初物語」には「完本」に収録されたラスト1本に似顔絵を(モンタージュ写真みたいに)そっくりに書ける娘が、そして「桜ほうさら」には他人の筆跡を書いた本人にすら見分けがつかないほどそっくりに真似ることができる代書屋が登場しています。

    また、嬉しいことに「本所深川不思議草子」「初物語」で主役を張った「回向院の茂七」親分が、名前だけですが出演しています。親分が大親分になり、米寿になって隠居気味のようですが一の子分の政五郎は井筒平四郎の手足となってよく働いてみせました。稲荷寿司屋の親父が本懐を遂げたあとに茂七親分の手下になったのでは…なんて夢想をしてしまいます。

    さて、これまでの自分の振る舞いに疑問を覚え、似合わぬ探索ごとに手を染めた平四郎の行く末と、読者としてぼんやり当て推量した事件の真相を、下巻で確かめてきます。

  • 前々から気になっていた宮部みゆきさんの時代小説初読み。面白かったです!登場人物が魅力的だったし、短編集だと思って読み始めたらまさか全てが繋がっているとは!騙されました!個人的にはみすずが可愛いかった。おでこや、弓之助など子供たちもいい味してる。何より主人公の平四郎がゆるくてそこが魅力的!下巻も楽しみです。

  • 江戸の町人の人情にほっとさせられる

  • すっかりはまってしまったこの時代物。
    人情のある暮らしに憬れるねえ。

  • 時代小説だからと敬遠気味だったけど読み始めてからは早かった!堅苦しくもなく、それでいて妙に現代的だったりする矛盾も感じることなく江戸の長屋住み町人になった気持ちですらすら読ませてもらった。
    短編集かと思いきや、徐々に町全体に漂う不吉な影が濃くなって、主人公の同心と一緒に謎説きに走り廻る感覚が子供の頃の探偵小説を読んでる気分だった。
    魅力的なキャラばかりだし、シリーズで「日暮らし」「おまえさん」が出ているので楽しみによみたい!

    • hs19501112さん
      宮部さんの時代もの、面白いですね!!
      宮部さんの時代もの、面白いですね!!
      2012/02/22
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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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