ぼんくら(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.83
  • (508)
  • (741)
  • (785)
  • (22)
  • (7)
本棚登録 : 5639
感想 : 384
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062747523

作品紹介・あらすじ

「俺、ここでいったい何をやっているんだろう」。江戸・深川の鉄瓶長屋を舞台に店子が次々と姿を消すと、差配人の佐吉は蒼白な顔をした。親思いの娘・お露、煮売屋の未亡人・お徳ら個性的な住人たちを脅えさせる怪事件。同心の平四郎と甥の美少年・弓之助が、事件の裏に潜む陰謀に迫る「宮部ワールド」の傑作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 下巻の一冊。

    それぞれの賢さが集まって一つの真相へ向かう下巻。

    何でも計ってしまう弓之助、なんでも記憶してしまうおでこと、宮部さんの描く子供たちは魅力的だ。

    そして上巻からじわりと溜まっていた平四郎、お徳さんの魅力が下巻ではじけた。

    数々のニクい言葉が胸に沁みる。

    そう思うなら、それでいいなら、それでいい。
    という心づかい。

    わざわざ陽の光のもとに晒す必要のないという心づかい。

    これぞ宮部さんの描く人情。

    最終章のお徳さんが実に気持ちよく、きっぷよく、物語に別れを告げさせてくれた。

    鉄瓶長屋、涙と笑いの思い出をありがとう。

  • 面白かった。
    「長い影」の最後の10ページほどに、この物語で訴えたかったことが凝縮されているように思える。
    「この世の中に、どんな『本当のこと』があるのでしょうね?」というセリフが意味深だ。
    うそをうそのままにし続ければ「本当のこと」になる。
    うそをうそのままにし続ける難しさ。そのために利用され翻弄される長屋で暮らす人達。これがこの物語の肝だ。

    役人脳の平四郎と科学者脳の弓之助の会話も秀逸だし、平四郎のぎっくり腰になった理由が女房にばれているくだりもいい。

    そして、最後の「幽霊」という短編に出てくる謎の女。誰なのかは想像できる。
    どうやらシリーズ作『日暮らし』への伏線でもあるらしいので、勢いで読み進めることにしよう。

  • 宮部みゆきの時代物を長いこと敬遠してた。
    なんとばかなことをしていたのか、
    それでも「日暮らし」とか読み始め
    今回ぼんくらを読了。もちろん現代物は好きでみんな読んでるが
    なんでも食わず嫌いは良くない。
    もう少しでこんないい作品をスルーするところだった。いいなあぁ、
    凄いわ、組み立て方、持って生き方
    人物、巧みとしか言いようがない。その巧みさな嫌味がない。
    いつの世も背景は変われども善人は善人。
    しかしこの舞台を想像できる、読んでいく我らが
    分かる人が少なくなる。厠とかー
    しみじみいい作品にで
    あった、これこそ読書の醍醐味!

    凝り性の私目は、これからは片っ端から読んでいきます。「宮部みゆき時代物」
    数あるみたい。、


    余談だけど自分は黒は黒と突き詰めていく
    これとは真逆な井筒平四郎ー
    本当はこんな生き方が正しいと思う。
    あくまでも人は人を裁けない。
    本文より
    「本当のことなんてどこにあるんだよ」

    真実は幸福の三大要素と思って
    真実こそ大事と思ってる
    こんな狭い窮屈な正義感を振り回しても、誰も幸せにならない。そんなことを学んだ。
    まぁだからと言って、人の生き方なんて簡単に変わらないけどね。
    平四郎に出会うと
    肩の力が抜けて楽になる。

  • 宮部みゆきの作品は、火車、模倣犯などいくつか読んだが、少し冗長な感じがして自分には合わないと感じていたが、昨今、時代小説に傾倒しているので、彼女の時代小説ってどんなものかと手に取ってみた。あまり期待はしてなかったが、あにはからんや、自然体の人物描写とユーモアに加えて秀逸なミステリーとなっており、最後まで興味を失うことなく読了してしまった。ミステリーの伏線が張られていく上巻が5つ星、下巻の転結は少し冗長で4つ星としたが、全体では5つ星かな。
    自称ぼんくらな同心、井筒平四郎を主人公に鉄瓶長屋で起こるいろいろな事件が短編して綴られていくが、実はそれらは全て繋がりのある大きな事件へと収斂していく。長屋の人々の人物描写もみごとだし、平四郎の甥の美少年、弓之助の賢さと子供らしさがえも言われぬ味を添えている。

  • 江戸時代の長屋を舞台にしたミステリー物語だが、青空に浮かぶ雲や鳥たちの鳴き声などの描写によって怪事件であるにも関わらず江戸の底抜けに明るい風情が温かく感じてしまう。それは宮部みゆきならではのなせる技なのだろう。
    見廻り役の平四郎、長屋の煮売屋のお徳そして差配人である佐吉などキャラクター設定が抜群で逆にストーリーが霞んでしまうほどだ。

  • 深川のとある長屋を舞台に、前作では店子たちのそれぞれの事情が描かれ、本作では誰が、何のためにという謎が点から線になっていく。登場人物の人物像や設定と、その絡み合いが実に豊か。さすが宮部さん、上手いなあ。善悪だけではなく、強さも脆さも。強情さも従順さも。人間は一重でも、単純でもない。そういう人に見える、思える過去や背景の描き方に引き込まれる。宮部さんの「三島屋変調百物語」シリーズも追いかけているが、この「ぼんくら」も「日暮らし」「おまえさん」に続くとのこと。楽しみがまた一つ。

  • 家にある本の復習中。

    宮部みゆきさんはミステリーも好きだが、この平四郎シリーズも好き。
    やる気があるんだかないんだから分からない平四郎のとぼけた感じも好みなら、弓之助•おでこコンビも魅力的。また長屋の連中、政五郎親分など平四郎を取り巻く人々…愉快だなー。
    また追々続編も読むかな。

  • 「なんだかなぁ」と思っていた謎が解けたのはいいけれど、やっぱりどこか切ない雰囲気。
    ぼんやりしているようでいて意外と(!?)みている井筒平四郎と弓之助のコンビが後味を悪くしないでいてくれている気がする。

  • ◯ ただ、響きのあるいい声だった。坊主になってもよかったろう。(241p)

    ★平四郎の甥の弓之助が登場。鋭く謎に迫る様子はまるでコナン君だ。他にも、会話を丸ごと記憶してしまうおでこ、平四郎の手下で「うへえ」が口癖の小平次、頼りになる岡っ引きの政五郎、個性的なキャラが沢山出てきて楽しい。

  • 時代物は初めてだが、面白かった。平四郎の人の良さに救われる。世の中あまり見えすぎない方がいいのかもしれない。いつの時代にも人を陥れようとするものはいるし、妬みや嫉妬があるんだなぁ。

全384件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

宮部みゆきの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×