日本文学盛衰史 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 428
レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (664ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062747813

作品紹介・あらすじ

「何をどう書けばいいのか?」近代日本文学の黎明期、使える文体や描くべきテーマを求めて苦悩する作家たち。そして…漱石は鴎外に「たまごっち」をねだり、啄木は伝言ダイヤルにはまり、花袋はアダルトビデオの監督になる!?近代文学史上のスーパースターが総登場する超絶長編小説。伊藤整文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 伝言ダイヤルで女子高生と援助交際しまくったあげくブルセラショップの店長になってしまう石川啄木や、自然主義文学における「露骨なる描写」を追求するあまりAV監督として試行錯誤する田山花袋など、子孫から名誉棄損で訴えられそうなくらいぶっとんだパラレル文豪エピソード満載なのだけど、なんと、これが、ものすごく文学史の勉強になるお役立ち本でもあるという凄い1冊(笑)

    例えば「日本で初めて言文一致体で書かれた二葉亭四迷の『浮雲』」とか「日本の自然主義文学に革命をもたらした田山花袋の『蒲団』」だとか、テスト勉強で丸覚えした記憶はあるけれど、じゃあ言文一致とは何か、自然主義とはどういうものか、それらが近代文学にもたらしたものはなにか、と問われればそれはよく知りません、というのが恥ずかしながらただの読書好きの一般人にすぎない私の現実。でもこの本を読むと、なんとそれがわかるようになる!(気がする)

    おもな登場人物は二葉亭四迷、石川啄木、島崎藤村、北村透谷、国木田独歩、田山花袋、夏目漱石、森鴎外、樋口一葉、尾崎紅葉ら明治の文豪と伊良子清白、河井醉茗、横瀬夜雨といった同じく明治の詩人たち。正直、国語の教科書で名前は知っているけど読んだことはない、という作家も多数。なぜか胃潰瘍で入院中の高橋源一郎本人も登場して同室のベッドに同じく胃潰瘍の夏目漱石がいたり、あげく自らの胃カメラ写真をカラーで何ページも挿入・・・これも自然主義の一環なのか?(苦笑)

    本書におけるキャラクター崩壊気味の啄木の短歌や藤村の詩(もちろん捏造)を、実は穂村弘や谷川俊太郎が書き下ろしているというのもなんとも贅沢。

    夏目漱石の「こころ」で先生の遺書の中に登場する友人Kについての考察などは真面目に興味深かった。私は「こころ」があまり好きではなかったのだけれど、そういう裏事情を想像しながら読めばまた違った楽しみ方ができるかも。北村透谷と島崎藤村の友情はいっそ萌えだった。そしてどんなにふざけちらかしていても、ふと真顔に戻る瞬間のセンチメンタリズムたるや。

    たとえば二葉亭四迷がとくに面識もない森鴎外に突然会いにきて、大した話もせずに帰っていくが、二度と会うことなく亡くなる。「その時になってはじめて鴎外は気づいたのだ。あの時二葉亭は、一度も会ったことのない自分に別れを告げに来たのではなかったか。(19頁)」というくだりなど、なぜか無闇に泣きたくなる。

    文庫で650頁はかなり分厚いけれど、ひとつながりの物語ではなくいくつかの短編の集合体のような構成、しかし総じて、文豪たちの青春群像劇の印象を残す。非常にベタな感想だけれど、あらためて浮雲や蒲団その他の小説を読んでみたくなった。あと、そういえば、メジャーどころでは泉鏡花だけ全くといっていいほど出てこなかった不思議。何か理由があるのかしら?

  • 日本語の新しい表現形式を求めて悪戦苦闘する明治の文人たちを現代に蘇らせることで、彼らが何を思い、何に悩み、どう生きたかという実像に迫ろうとする著者の姿勢は、そのまま現代の小説という形式をどう捉えるかという著者の姿そのものである。

  • 明治文学の熱量が散りばめられている。
    啄木、漱石、四迷、藤村、鴎外、紅葉…それぞれのキャラクターが虚実原著過去現在織り交ぜて書かれていて引き込まれる。
    あと、「こころ」をめぐる考察は鳥肌もの。

  • 当時の文壇を今日の世界で再現した秀逸な一作。
    パロディとして楽しめるのはもちろんだが、斬新な解釈や鋭い表現に驚かされる。
    そして、投げかけられる普遍的な視野……

  • ただひたすら面白かった。文学史上に羅列されているだけに過ぎなかった名前たちも、ほんとうは、たぶんわたしたちとはそうかわらない在り方で(だからこそ過剰に現代の風俗にまみれて)、生きていたのだなあ、と改めて。

  • 「小説とは」、「文学とは」ということを明治の文豪達とともに高橋さん共々読者も考える作品。作家たちが時代の条件の中で、何を感じ、行動したのか、資料と高橋さんの想像を交えながら描かれる。斬新な手法に最初はびっくりだったが、現代に置き換えることで、当時の彼らの立ち位置がよりわかりやすく理解できたように思う。大逆事件に対するそれぞれの反応、「こころ」のKを啄木とする説は特に興味を惹かれた。

  • 明治期の文学の、特に自然主義文学の流れを丹念に追う。

    明治時代というと大昔だし、古くさいし、お堅いんだろうな、と僕はつい距離を置いてしまう。著者による数々の現代的なモチーフ(伝言ダイヤル、AV、たまごっちなど)の挿入 は一見ふざけているようだが、読者と明治文学との距離を近づけさせるための渾身の工夫と思える。

    僕はこの本を読まなければ、石川啄木が現代でいえば援助交際のようなことに金を使い込みながら詩を書いたということを考えもしなかっただろう。

    芸術は大河ドラマのように多分に美化された、かっこつけた場所だけではなく、俗っぽく垢にまみれた混沌でも生まれるという当たり前といえば当たり前の事実に気づいた。

  • ☆10個付けてもいいと思う。
    明治の文学者達の小説でありながら作者自身が倒れた話(何故か胃カメラの写真付き)、テレクラに嵌りブルセラショップ店長になる石川啄木、チャットで話題になる斉藤緑雨、AVを撮る田山花袋、バブリーな北村透谷や島村藤村に樋口一葉、作者と育児談義を交わす森鴎外、「こころ」のKは誰だったのかなど縦横無尽で前代未聞の内容である。
    しかしその根底には、二葉亭四迷や山田美妙らによって作られた「言文一致」を使って文学を生み出そう、生み出せるのか、いやもしかしたらそもそも文学など不可能ではないのかと苦しむ文学者達の群像が描かれている。「読み手」としては楽しめたが、素人ながら「書き手」である「私」はかなりゾッとさせられた。

  •  平田オリザの「青年団」がお芝居にしているそうで、見たいのだけれど、東京は遠い。町田康は読めないけど、高橋源一郎にはハマったという若い人の意見を聞いて、首を傾げたりしている。まあ、町田と高橋は違うけど。でも、そういう人は初めの頃の高橋君も読んでみるといいと思う。ひょっとしたら・・・・。
    考えていたら、なんか気分が変になってきた。この小説を面白く読みながら、つくづく、高橋君も年をとったんだと、ぼくは思ったけど。
     どこまで行っても、彼が書こうとしている「小説」とやらの正体がわからないのは、つづくのかな。そんなふうにも感じたりした。そりゃあ、胃潰瘍にもなるよな。

  • 時空が入り乱れたカットアップ一大巨編。入り乱れすぎてクラクラしてくるが、オーラスは火の鳥未来編のラストページ感じさす。
    日本社会って今も昔も変わらない。変わらないから花袋がAV監督したってノープロ。
    最近出た続編を読みたい!文庫化まで待てないと思う。

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著者プロフィール

高橋源一郎(たかはし げんいちろう)
1951年、広島県生まれの作家、評論家。明治学院大学国際学部教授。1981年『さようなら、ギャングたち』で群像新人賞優秀作を受賞しデビュー。『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞、『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞、『さよならクリストファー・ロビン』で第48回谷崎潤一郎賞を受賞。

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