13階段 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062748384

感想・レビュー・書評

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  • かなり久しぶりに再読。昔読んだ時に非常におもしろかった記憶があったが、やっぱりおもしろかった。
    死刑囚や刑務官が登場人物として出てくる話のため、普通に生活していては中々知ることのできない事も知れて興味をそそられる。
    人間の色んな感情が交差して物語が作り上げられており、最終的に一気に回収されて気持ちがいい。
    ただ、決して明るい話ではなく深く考えさせられる部分もあり、心に重く沈む渾身作。

  • 高野和明さんはジェノサイドに続いて2作目。
    死刑囚の冤罪を晴らすために、元刑務官と仮釈放の元受刑者のコンビが事件を追う。
    伏線がとても見事に回収されていく様は素晴らしかったが、やはり知識量の多さにビックリ!
    ジェノサイドの時は、コンゴの内部情勢、有機化学の知識をインタビューや資料から取得していたが、本作でも死刑制度に関して20以上の書籍を参考に書き上げている。
    その徹底的なリサーチ力が垣間見られたのが、南郷の過去の2件の死刑執行。
    あまりに生々しくて、読んでいて表情が歪んでしまったのが自分でも分かったが、それほど詳しく調べ上げた成果なのだろう。
    伏線の回収と知識量。
    解説が宮部みゆきさんだったが、宮部みゆきの「火車」に近しいものが感じられた。結末は全く予想だにしないものだったから、もしかするとそれ以上かも。

  • 終盤は緊張感に溢れていて、読み応えがありました。また、主人公の人間臭さには現実感があり、物語にすぐに入り込むことができました。

  • 江戸川乱歩賞を受賞した作品が全体的に好みだと気付いて(遅すぎる)ちょこちょこ読んでいっております。
    原作者の高野さんは脚本家としてもご活躍なされていたそうで、非常に納得しました。
    キャラクターの動かし方、個性の付け方、話の構成が非常にお上手!!

    死刑制度に関する法の正義とは、真実とは、を全体的に通して問いかける作品ですので映画の『デッドマンズウォーキング』等を思い出しますが、ミステリー、エンタメとしても楽しめました。

    主人公の南郷と2年の刑期を終えて出所して来た純一君のバディ感がほっこりさせてくれるので、重たいテーマにも関わらずするすると読ませてくれます。

    終盤に訪れる怒涛の展開に、えぇ?!えぇ?!なんで?!と頭の中でずっと叫びながら迎えたラスト。
    純一の告白とそれに対する南郷の一言に、あぁー…。と天を仰ぎました(久々のお家芸)

    この時の乱歩賞は呉さんの『道徳の時間』と違って満場一致でこちらの作品に決まったそうです。
    まあ、分かるなあ…。
    でも私は『道徳の時間』最高だと思いますよ(繰り返しますがステマではありません)

    高野さんの2作目の『グレイヴディッカー』がより好みそうなので読みたいです。
    こうしてまた読みたい本がどんどんと…精神と時の部屋はどこにありますか?

  • とにかく面白かった。
    展開が早く、どんどんストーリーに引き込まれていった。
    犯人は誰なのか、ドキドキのスリルを感じられるだけでなく、死刑囚の心情や処遇、死刑執行にあたる刑務官の心情、今まで知ることのなかったことがリアルに描かれていた。人が人を裁くということ、死刑という制度の下人が人を殺すこと、死刑という制度についても色々と考えさせられた。

  • 2020年5月15日、読み始め。
    2020年5月17日、読了。

    髙野和明さんの作品を読むのは、初めて。
    この作品を手にした時は、恩赦、跪いた、自己憐憫、など、硬い漢字が多く、果たして最後まで読めるのかなと思った。
    結果は、最後まで読めた。

    この作品は、ストーリーの面白さだけではなく、死刑囚や死刑制度に関する様々な考え方がちりばめられており、中々、読み応えがある出来映えになっている。

    ウィキペディアによると、

    高野 和明(たかの かずあき、1964年10月26日 -)は、日本の小説家・脚本家。東京都生まれ。ロサンゼルス・シティー・カレッジ映画科中退。日本推理作家協会会員。


    ●2023年6月4日、追記。

    本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。二人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。

    ---引用終了

  • この本はミステリー小説を超え司法に問題提起を投げかける、司法をも巻き込んだミステリーです。

    目的刑思想、犯罪者を教育改善し、社会的脅威を取り除く
    日本がなぜ応酬刑思想を強く現す「管理行刑」を取り入れているのか。
    なぜ法治国家である我が国は、法律よりも通達の方を優先するのか。
    法治国家として破綻してる理由は、国民の意思表示と政治家の建前と本音の狭間なのかもしれません。
    「法で罪を裁くには人間はあまりにも多様すぎる」この言葉が今の法治国家が陥っている問題なのだろうと気づくことが出来ました
    特に死刑制度の執行までの期間を定めた法を国側が訓示的と解釈をするほど法律はまだ不完成で不透明な存在なのだと知ることが出来ました。

    私は不動明王を法律と作者は表現したかったのでは無いかと思いました。
    「あらゆる仏敵を殲滅せんと身構えていた。
    もとは異教の最高神でありながら、その圧倒的な破壊力とともに仏教の守護神として生まれ変わった武神の姿。
    釈迦如来の作る浄土=法を犯す者に一撃を」
    後に主人公が不動明王に惹かれる理由は、
    仏教は優しい慈悲を施すだけでは救うことのできない愚かな衆生のためこの破壊神を用意したという由来からだと証言をしています。
    不動明王の像を壊してるところを見ると法律改正をすべきだとしか見えませんでした。法律が不完全であるがため恨みの連鎖が後を絶たない。法律に救われる人が増えることを願うばかりです。
    宮部みゆきさんの解説では
    著者は「社会に対して何らかの負債を持つ人間が、それを背負いつつも社会の(または他人の)ために生きることは出来るか」の問いかけだと解釈したと書かれていました。
    作者は目的刑思想の法律で人が人を救うのを見たいのではないかと感じました。
    私もこの本を読むことで法律が人を助ける所を見てみたいと強く感じました。

    • かなさん
      りんさん、おはようございます。
      フォローしていただきありがとうございます。
      遅くなりましたが、
      こちらからもフォローさせていただきます...
      りんさん、おはようございます。
      フォローしていただきありがとうございます。
      遅くなりましたが、
      こちらからもフォローさせていただきますので
      どうぞよろしくお願いします。

      この作品、私も読みましたが
      名作ですよね!!
      出版はだいぶ前なのに
      古さを感じさせないすごい作品だと思ってます。
      2023/10/26
  • 反抗時刻の記憶を失った死刑囚。
    冤罪をはらすべく刑務官・南郷と、前科持ちの青年・三上の調査が始まる。
    手がかりは、死刑囚の記憶『階段』のみ。

    果たして、冤罪は晴らせるのか?
    刻一刻と死刑執行が近づくなか、切り札となる証拠は見つかるのか?

    ハラハラドキドキの展開ですね。
    最後、少し後味の悪いところ(真犯人の末路)もありましたが、希望が見える形になり、良かったです。

  • 高野和明著書の「13階段」は、内容とはいっさい関係ないことで申し訳ないのですが、本の表紙デザインからくる視覚的なイメージが個人的にはとても古くさく感じてしまい、苦手意識があり手に取るのを躊躇っていた作品でした。
    事実20年以上前の著書なので、確かに古い作品ではありますが、、、しかし読み始めると内容と視覚的なイメージは全くのミスマッチ。古くささも感じることなく、スゥーと話に入り込むことができました。とても上手くできたミステリーで、ブクログ評価の高さにも納得の良作。
    表紙のデザインで読むのを躊躇うのはいけませんね。

  • 死刑制度と冤罪をテーマに飽きさせないストーリーと臨場感が秀逸。

    どれが本物かわからないように3つのボタンがある事は知っていたが、そこに至るまでの行程や役割分担まで詳しく知らなかったので、生々しい描写に唖然とした。
    死刑執行最終結審の印を押すだけの法務大臣が最大の権力を握っており、実際に命を絶つ役割を担う現場の刑務官達の負担が余りにも大きすぎる。
    法の名のもとに遂行される殺人は正義であるかもしれないが、その罪を背負う事になる矛盾と重くのしかかる苦悩。

    奪われた被害者の命は戻らない。
    身体を殺したら裁かれるのに、心を殺しても裁かれない。
    子供だから裁かれない。
    心神喪失だから裁かれない。
    殺人犯でも更生したと認められれば20年弱で社会に戻れる。
    それは余りにも不公平なのではないか?
    法が平等でないのなら、自らの手で罰を与える。
    しかし、復讐は復讐を生み、終わる事がない。
    落としどころは何処になるのか、今の私には答えを出せない。

    多くの事を考えさせられる一冊だった。

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著者プロフィール

1964年生まれ。2001年に『13階段』で第47回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。著書に『幽霊人命救助隊』、『夢のカルテ』(阪上仁志との共著)など。2011年、『ジェノサイド』で第2回山田風太郎賞を受賞。自著のドラマ化『6時間後に君は死ぬ』では脚本・監督も務めた。

「2012年 『グレイヴディッガー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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