- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062748681
作品紹介・あらすじ
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は一九六九年、もうすぐ二十歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
感想・レビュー・書評
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著者、村上春樹さん(1949~)の作品、ブクログ登録は2冊目。
本作の内容は、BOOKデータベースによると、次のとおり。
---引用開始
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は一九六九年、もうすぐ二十歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
---引用終了
そして、本作の書き出しは、次のとおり。
---引用開始
僕は三十七歳で、そのときボーイング747のシートに座っていた。その巨大な飛行機はぶ厚い雨雲をくぐり抜けて降下し、ハンブルク空港に着陸しようとしているところだった。十一月の冷ややかな雨が大地を暗く染め、雨合羽を着た整備工たちや、のっぺりとした空港ビルの上に立った旗や、BMWの広告板やそんな何もかもをフランドル派の陰うつな絵の背景のように見せていた。やれやれ、またドイツか、と僕は思った。
---引用終了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今までで一番繰り返し読んだ本かもしれない。この本にまつわる思い出も色々ある。学生の頃いつもお金に困っていて、お財布に残ったわずかな小銭でうどん玉を買うか『ノルウェイの森(下)』を買うか、大学近くの古本屋で昼中悩んだことなんかをよく覚えている。うどんは家にある小麦粉で作ればいいやと考え、その日は古本を買った。結局うどんを作れるほど小麦粉も残っていなくて、すいとんを作って食べながら、徹夜で古本を読んだ。今となっては結構良い思い出な気がする。
自分も作品世界の中に入り込んで、登場人物達と一体化したかのような感覚で読む。そうした素晴らしい読書体験ができたのは、作家の力、物語の力、そして当時の自分の若さもあったのかもしれない。そんな青春の一冊を、今回はAudibleで。
生きている人たちが放つ魅力。死んだ人たち、死の傍に立つ人たちの引力。ワタナベ君や緑ちゃん、レイコさんと一緒に、読んでいる私も両者の狭間で揺れる。
若い頃はクスッと笑って読んでいた突撃隊くんのエピソードも、今読むと重たかった。なかなか融通のきかない四角四面な性格の長男と重ねてしまっていたかもしれない。
そんなに昔じゃないはずなのに、今みたいに携帯電話やスマホで簡単には連絡を取り合えなかった頃がものすごく遠い時代に感じる。登場人物達は電話をかけ、電話を待ち、約束をし、待ちぼうけをくらい、たくさん手紙を書き、返事を待つ。食事をし、本を読み、音楽を聴き、一晩中語らい、恋をし、好きな人と抱きしめ合ったり、好きでもない相手と寝たりする。腹を立てたり、困り果てたり。失敗もしたり、逃避したり、たくさんの無駄な時間も過ごす。なんて豊かなことだろう。
そして、読んでいて思ったけど、どんなにテクノロジーが発達しても、身近に便利なツールが溢れかえっても、本当に会いたい人や大好きな人たちには今だって結局なかなか会えない。不思議ですね。
このまま下巻にGO! -
初めて村上春樹を読んだが、想像してたよりも読みやすく、面白かった。とても暗いのだが、決して不快になることはなく、むしろ村上ワールドに入っていくような感じでどんどん引き込まれた。自分と等身大の大学生が主人公というのも良かった。きっと、中学生くらいにこの本に出会っていたら難しくて読み切れなかったと思う。それぞれの登場人物が抱えている背景は重たいが、それ以外は普通の恋愛小説として楽しめた。性描写が美しく描かれていた。外国文学や外国音楽がいくつも出てきて、興味を持った。
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面白い本が読みたかったので、初村上春樹。
やはり面白い。
多感な学生時代の出来事を、自分と向き合って丁寧に描いているという印象。そこに歌だったり歌手だったり、本だったりの固有名詞が加わる事により、よりその時代を生きているという彩りが添えられる。あそこまで自分と丁寧に向き合い、分析できれば、さぞ満足だろう。で、誰と居ても他人事な印象。
ここでは時間がゆっくりと流れている。なかなか生活に追われ、流されて生きている者には感じ難い心情では?
直子の不安定さは今後どうなっていくのだろう -
上を読み終えて感じたことのメモ
草原の中を直子と二人で歩くシーンが印象的で、落とし穴みたいに現れる野井戸はなにかのメタファーだろうなと思った。ワタナベは絶対に落ちることはないと言い切った直子の言葉は何を意味しているのか考えさせられる。
キヅキの死から学んだ「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」という考えがなかなか自分の中で噛み砕くことができなかった。誰もが死を抱えながら生きているという意味だろうか。
直子の誕生日後、直子と会えなくなった時のワタナベの「その小さな光はいつも僕の指のほんの少し先にあった。」という言葉がすごく印象的だった。その手につかんだと思った直子がいなくなった時の喪失感は容易に想像できる。
京都の療養所への訪問に頭の中でとてもきれいな景色を想像した。山の牧場で直子と二人で歩くところが冒頭の場面だ。直子は姉の自殺の話をしたが、身近で2人も自殺した人がいることが彼女にどんな影響を与えているのか想像が及ばなかった。忘れないでといった直子はどんな思いだったのだろう。彼女はずっと死者と共に、止まった時の中を生きているのだろうと想像した。 -
実家で静養していると、懐かしい本に手が伸びがち。
我ながら胎教にいいとはとても思えない本ばかり読んでいる。
でも指南本とか絵本とか、あまり読む気になれない…(読んでもログするきはないが)
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通読は3度目のはずだが、今回がいちばん面白く読めた。
というか、初めて面白く読めた。
性描写と女遊び、外国作家や洋楽の固有名詞の羅列が鼻について仕方なかったのが、今回はあまり引っかからずに読めた。
ワタナベというキャラに、初めて好感を持てた。
女をまったく必要としない、趣味命の現代の独身男よりまったく健全に思えた。
よくしゃべる緑が、いいアクセント。 -
過去に読んだことがある作品である。Beatlesを聴きながら読んでいた記憶が蘇る。
大阪万博やBeatlesの来日やどことなく日本経済の隆起の原点を感じる。大阪万博やBeatlesがなぜ日本経済発展と結びつく代表格なのかというと、私の中では国際社会との関わりが本格化したからだと思うのである。
更に、友人キズキの自死とその彼女である直子と渡辺の関係が、内容は異なるが設定的には夏目漱石を想起させられる。友人がKというだけではない・・・。
明治の文豪たちの作品は三角関係や不倫が場面設定されていることが多いと感じる。恋愛が文学的な叙述として大衆に受けたのであろう。しかし、この作品は、日本経済と同様に、小説を複雑な人間関係や生と死の領域を広げるきっかけになった作品のようにさえ思える。
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映画の映像よりもずっと純粋で内面が見えるから小説は面白い。中座していたノルウェイの森。
ビートルズナンバーやジャズピアノ、ブラームスのピアノ協奏曲2番(ベーム&バックハウス)がBGMで流れているとさらに深みが増す気がしてくる。
下巻が楽しみ。 -
んなーー〜〜っは。
村上春樹は『ハードボイルド〜』に続きまだ2作目だけど、やっぱりね。と心の中でボヤいてしまう。
何かが待っていると信じて下巻へ。
Audible朗読は妻夫木聡くん。俳優さんのナレーションは倍速を上げると聞きづらいことが多いけど、妻夫木くんはモノトーンな語り口なのに滑舌がいい。
途中からは個性も消えて、作品に入り込むことができた。
カッコいいのにずるいや。。 -
村上春樹先生の作品を読むのは初めてでした。
すごく良かったです。
本の世界観に引き込まれていきました。美しくて切なくて儚い、届きそうで届かない、そんな世界観です。
登場人物がみんな魅力的です。個人的には緑ちゃんが特に好き。
展開が早くて読んでいて楽しかったです。
早く続きが読みたい!