ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062748681

作品紹介・あらすじ

暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は一九六九年、もうすぐ二十歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • どれどれ、これから村上春樹なるものを読んでみようではないか、という読者諸君。この本を手に取ってはならない。悪いことは言わないから、『ねじまき鳥クロニクル』あたりから始めなさい。いや、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』でも、『風の歌を聴け』でもいいけれど、『ノルウェイの森』だけはおやめなさい。
    そもそも、村上春樹ほど人によって好き嫌いの分かれる作家も珍しいが、嫌いになる人は判で押したように『ノルウェイの森』から読んでいる、というのが私の持論である。彼の小説は「喪失感」というのが重要な要素をなしているが、『ノルウェイの森』はその喪失感がハンパない。だから、相当のハルキストであっても、この本を読むと手ひどく心を痛めつけられてしまう。ましてや、初めて読むのが『ノルウェイの森』となると、痛みのあまり怒りが湧いてきて、村上春樹全体を嫌悪するようになるのである。
    そして、
    「取り立てて何のセックスアピールもない男が、なんでこうも簡単に女と寝ることができるのだ!」
    とか、
    「やれやれとか、オーケーとか、そんなセリフ吐くやついないだろ!」
    とか、
    「海外文学とかジャズとかクラシックに妙に造詣が深くてペダンティック!」
    とか、
    「持って回ったようなメタファーはなんなんだよ!」
    とか言い出すに決まっているのである。つまり、村上春樹ファンが愛してやまないすべての村上春樹的な要素が、ことごとく鼻に付くようになるのである。
    だから、もう一度言うが、『ノルウェイの森』を最初に読むのだけはおやめなさい。もっとも、あなたが「村上春樹は文学ではない!」とか「ノーベル賞貰えなくてザマアミロ!」と言ってアンチハルキストと徒党を組みたいのなら勝手である。そうではなくて、文学であるとか文学でないとか関係なく、読書する喜びを味わいたいのなら、他の本から始めなさい。

  • 初めて村上春樹を読んだが、想像してたよりも読みやすく、面白かった。とても暗いのだが、決して不快になることはなく、むしろ村上ワールドに入っていくような感じでどんどん引き込まれた。自分と等身大の大学生が主人公というのも良かった。きっと、中学生くらいにこの本に出会っていたら難しくて読み切れなかったと思う。それぞれの登場人物が抱えている背景は重たいが、それ以外は普通の恋愛小説として楽しめた。性描写が美しく描かれていた。外国文学や外国音楽がいくつも出てきて、興味を持った。

  • 面白い本が読みたかったので、初村上春樹。

    やはり面白い。
    多感な学生時代の出来事を、自分と向き合って丁寧に描いているという印象。そこに歌だったり歌手だったり、本だったりの固有名詞が加わる事により、よりその時代を生きているという彩りが添えられる。あそこまで自分と丁寧に向き合い、分析できれば、さぞ満足だろう。で、誰と居ても他人事な印象。

    ここでは時間がゆっくりと流れている。なかなか生活に追われ、流されて生きている者には感じ難い心情では?

    直子の不安定さは今後どうなっていくのだろう

  • 上を読み終えて感じたことのメモ
    草原の中を直子と二人で歩くシーンが印象的で、落とし穴みたいに現れる野井戸はなにかのメタファーだろうなと思った。ワタナベは絶対に落ちることはないと言い切った直子の言葉は何を意味しているのか考えさせられる。
    キヅキの死から学んだ「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」という考えがなかなか自分の中で噛み砕くことができなかった。誰もが死を抱えながら生きているという意味だろうか。
    直子の誕生日後、直子と会えなくなった時のワタナベの「その小さな光はいつも僕の指のほんの少し先にあった。」という言葉がすごく印象的だった。その手につかんだと思った直子がいなくなった時の喪失感は容易に想像できる。
    京都の療養所への訪問に頭の中でとてもきれいな景色を想像した。山の牧場で直子と二人で歩くところが冒頭の場面だ。直子は姉の自殺の話をしたが、身近で2人も自殺した人がいることが彼女にどんな影響を与えているのか想像が及ばなかった。忘れないでといった直子はどんな思いだったのだろう。彼女はずっと死者と共に、止まった時の中を生きているのだろうと想像した。

  • 映画の映像よりもずっと純粋で内面が見えるから小説は面白い。中座していたノルウェイの森。
    ビートルズナンバーやジャズピアノ、ブラームスのピアノ協奏曲2番(ベーム&バックハウス)がBGMで流れているとさらに深みが増す気がしてくる。
    下巻が楽しみ。

  • んなーー〜〜っは。
    村上春樹は『ハードボイルド〜』に続きまだ2作目だけど、やっぱりね。と心の中でボヤいてしまう。
    何かが待っていると信じて下巻へ。

    Audible朗読は妻夫木聡くん。俳優さんのナレーションは倍速を上げると聞きづらいことが多いけど、妻夫木くんはモノトーンな語り口なのに滑舌がいい。
    途中からは個性も消えて、作品に入り込むことができた。

    カッコいいのにずるいや。。

  • 過去に読んだことがある作品である。Beatlesを聴きながら読んでいた記憶が蘇る。
    大阪万博やBeatlesの来日やどことなく日本経済の隆起の原点を感じる。大阪万博やBeatlesがなぜ日本経済発展と結びつく代表格なのかというと、私の中では国際社会との関わりが本格化したからだと思うのである。

    更に、友人キズキの自死とその彼女である直子と渡辺の関係が、内容は異なるが設定的には夏目漱石を想起させられる。友人がKというだけではない・・・。

    明治の文豪たちの作品は三角関係や不倫が場面設定されていることが多いと感じる。恋愛が文学的な叙述として大衆に受けたのであろう。しかし、この作品は、日本経済と同様に、小説を複雑な人間関係や生と死の領域を広げるきっかけになった作品のようにさえ思える。

  • これは恋愛小説なのか知らん。

    村上春樹の小説を読んでる感じは凄くする。

    兎にも角にも後半を読んでみようと思います。

  • 有名すぎる村上春樹先生の著書を、遅ればせながら初めて読んでみた。題名から私が勝手に想像していた「ノルウェーの森」とは全く異なる情景が次から次へと展開されていく。発想が独特で、不思議な世界観を醸し出している。好みが分かれるような気がします。

  • 随分と昔に何度も読んでいた物語。20年ぶりくらいの再読になるのかも知れないけど、結構忘れちゃってて、作中次々と訪れる喪失に涙が出そうになりながら #読了
    やっぱり村上春樹さんの作品の中では1番好きかもしれない…

  • 村上春樹さんの作品を初めて読みました。
    率直に面白かったです。
    登場人物の情緒が繊細に描かれていて、物語に惹き込まれました。

  • 感想は、下巻にまとめています。

  • 再読
    北欧へ行くことになったので その機内で 読んでみることに。
    ノルウェーに向かうから、なんとなく。
    いや必然的に 連れてくなら この本ね。

     ハンブルク空港に着陸する機内のBGMで ビートルズのノルウェイの森が小さく流れて 僕が想起 混乱するところから 始まる この出だしから もう 引き込まれる。ぐいぐい。

    “それは1969 年の秋で、僕はもうすぐ二十歳になろうとしていた”

    若い頃に読んだ時よりは
    キズキの死にがっかりしたり 突拍子もない緑にビックリしたりは しなかった。そう感じる自分に対して 歳を取るって いろんなことに寛大になることなのかも と 思った。

    内容は(暗かったよな・・・)くらいにしか覚えていなかったおかげで
    再読でも新鮮に読めて 時の経過に 感謝した。

    特攻隊。
    あぁ!いた!いた!この強烈に不思議な憎めないキャラクター! と思い出し ワクワク。

    春樹さんらしい 私の好きなワード
     “井戸” “塀” “門番” “月”

    春樹さんらしい 私の好きな表現
     “男はかりの部屋だから大体はおそろしく汚ない。・・・・・・でもそれに比べると僕の部屋は死体安置所のように清潔だった”


    短編集より 春樹さんは やっぱり 長めのストーリーが いいな。
    キレイな文章。 静かな主人公。

  • ハンブルク空港に着陸する前にスピーカーから流れてくる「ノルウェイの森」を聴いたことをきっかけに思い出した18年前の記憶。ちょっと変わった話し方をする寡黙な主人公は羨ましいほどモテる。直子、緑、レイコ、それにナンパした女の子達。読み進めるうちに感情移入してなんとなく自分がモテているような気分になり、しまいには主人公の話し方まで真似をしたくなってくる。たぶんそんな話し方は出来ないのだけど。

  • 読んだのは中学生のときで、「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」こと、
    ひょいと死がこんにちはしている感じ、まさに草むらにある井戸に落ちるような、生死感に共感した。
    大人になり、レビューが低いのを見て、ふと、これは希死念慮がない人には伝わらない話しなのかな?と思った。もしそうなら、少しさみしい。

  • とにかく暗鬱とした気分になった。身近な人は簡単に消えていくし、それでも人は意外と平然と生きられるし、でも実は心の奥底に痕跡が残っている。そんな内容に感じた。
    下巻でどう回収されていくのか楽しみ半分、怖さ半分。下巻への期待を込めての星4つ。

  • 1987/10/5 第二刷 再読 すっかり忘れていたが恋愛小説だった。当時200万部とかの垂れ幕なんかが出るほど騒がれていた。美しい表現に溢れているのだから、性描写の必要性が今となってはわからない。

  • 気温が下がってくるとなんだか無性にこの本が読みたくなる。ということで3回目。今まで親の古い文庫本(装丁が文庫オリジナルのもの)を読んでいたので新しく購入。絶望的な未来しか見えないし、読んでいて決して楽しい訳じゃないのに何でこんなにも読ませるのだろう。死の影が色濃くたちこめるこの物語に於いて緑の溌剌とした生の匂いがワタナベくんを現世に引き止めてくれているように思えてならない。直子の昔の入院のエピソードって『めくらやなぎと眠る女』まんまだよなー。そしてやっぱり冒頭部分が秀逸なのよね。2011/511

  • ストーリー展開はしっかりあるものの、文体なのか登場人物のキャラなのか分からないけど、のっぺりとしてるな〜と感じた。

    文章に繰り返し表現が多いのと「〜である。」や「〜だ。」といった断定表現が少ないな〜という印象。
    これが村上春樹ワールドだ!と洗礼を受けた気持ちになった。
    とはいえ、文体の曖昧さと恋愛における人間の心理描写がマッチしていて、読んでいくにつれて心地良さもあった。

    下巻の展開が気になる…!

  • 何年か前に一度読んだけど、殆ど記憶に無かったからの再読でした。どの場面も言葉選びが丁寧で繊細で分かりやすく、するすると入り込んでしまう。たまに、字を目で追うだけで情景が浮かんでくるように「読んでいる」っていう感覚が薄らいでいく感じで没頭していて名作は名作なんだと 
    改めて感じました。

    • megmilk999さん
      主人公の目線で、思い出している気持ち、に私はなりました。
      主人公の目線で、思い出している気持ち、に私はなりました。
      2023/04/22
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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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