蒼穹の昴(4) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062748940

作品紹介・あらすじ

人間の力をもってしても変えられぬ宿命など、あってたまるものか-紫禁城に渦巻く権力への野望、憂国の熱き想いはついに臨界点を超えた。天下を覆さんとする策謀が、春児を、文秀を、そして中華四億の命すべてを翻弄する。この道の行方を知るものは、天命のみしるし"龍玉"のみ。感動巨編ここに完結。

感想・レビュー・書評

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  • 4冊のうちこのお話が1番面白かった!シリーズ読んでみて、今まで全く知らなかった中国の歴史に興味を持ちました。架空の人物も多いけど、実際にいた人たちもいて調べてみると面白い。

    特にタンストンと玲玲のとこは泣けた。でも玲玲って文秀のこと好きなのかと思う描写もあって、タンストンなんだか可哀想だった。だけどそれでも最後まで愛し抜いたタンストンはかっこよかった。男の中の男だ!

    あと文秀達の脱出劇も面白かった。作戦が素晴らしいけど、バレるんじゃないかとどきどきした!

    毛沢東が出てきたり、ついに春児が偉くなったり、歴史が大きく動いたりとこれからまた面白くなりそうな予感。義母からシリーズたくさんお借りしてるのでゆっくり読んでいこう。

  • 風前の灯の清王朝クライマックス!
    登場人物達の運命に驚いたり怒ったり悲しんだりと感情がジェットコースターだった。
    続編の[珍妃の井戸]へ!

  • 〝日本公使館に匿われ、生ける屍になっていた僕はいま、黄海を南下する日本客船の一等船室でこの手紙を書いている...衷心から実現しようと希求してきた清王朝の変法政治(改革)が、決して民衆に理解されることもなく潰えてしまった理由を、僕ははっきりと知った...憾むべくは西太后の専横でも栄禄ら守旧派の奸計でも、袁世凱の狡知でもない。敵は常に僕らのうちにあった...命ながらえる限り、たとえ異国の厄介者になろうとも、弁髪を切り、異人の姿になり果てようとも、僕は選良たる者の矜りにかけて、最善の努力をする。その努力こそが遥かなる科挙制度の遺産、ひいては偉大なる中華の叡智だと、固く信じるからである〟・・・紫禁城に渦巻く策謀、憂国の熱き闘争、中華四億の命すべてを翻弄する歴史の道標を知るのは “蒼穹の昴” を目指す者たちであった。

  • 全4巻読了。

    続編としてタイトルを変えた別シリーズが存在する(らしい)という事前知識があるためか、今巻で完結なのにも関わらず、物語が終わった気が全くしない。全く。(苦笑)。

    もちろん、それが不満なわけではなく!

    刊行時にリアルタイムで読んだなら十二分に納得がいくし、
    今地点でも「ーーの昴」としての完結に異論は無い。

    ただ、続編(らしきシリーズ)の存在を知ってしまったからには、

    (巻末、終盤になって幼少時の毛沢東とか出されちゃったし)

    壮大な物語の序章的な位置付けと捉えて、「次」を読むのが楽しみになった。

    ★4つ、8ポイント。
    2020.10.28.新。

  • 4巻のみ、ではなく全4巻としてのレビュー。

    登場人物がどの人も魅力的。
    中でも西太后。
    本当の人物像がどうだったかは別として、この物語に出てくる西太后は驚くくらいいろんな顔を見せる。
    皇帝、母親、少女・・・
    そしてそのどれもが報われずに切ない。
    あまりにも切ないので「んもー、おじいちゃんのせいだ!」なんて心の中でチャチャをいれてみたり。

    ラストでは号泣。
    あまりにも切ないので「名前、ながっ」とチャチャをいれてみたけど、涙止まらず(笑)

    他の人のエピソードでは譚嗣同&玲玲。
    不器用で優しい譚嗣同の玲玲に対する想いと最期が悲しい。

    浅田次郎は映像化されたものをいくつか観たけれど、どれもいまひとつ合わず読みたいと思えなかった。
    これもドラマが先だったけれど、初めておもしろいと思い原作も読みたいと思った。
    地の文というか世界(時代)感と会話文が違いすぎて多少気になったものの、この長さを一気に読ます読みやすさの一助になっているのかな。

    「珍妃の井戸」は続けて読了。
    「中原の虹」の存在は最近まで知らず。そのうち読みたい。

  • 蒼穹の昴①~④を読んで

     時代は他国から侵略され続け、過酷な状況を抱えた清国。西太后が実質の政権を握っていた。

    「春児、汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう。」
    「文秀、汝は学問をみがき知をひろめ、もって天下の政を司ることになろう。」

     占い師(白太太)のお告げを信じ、その道へ向かってひた走る文秀と春児。その真っすぐな気持ちと勇敢な姿に応援したくなる気持ちがこみ上げてきた。 

     春児は健気で愛くるしく、様々な人々から愛され、ついには西太后の目に留まる。
    しかし、そのお告げは真実ではなく、夢であると本人は分かっていた。

     文秀は、試験に合格し皇上にお仕えする立場まで上り詰めたが、自分の過ちに死をもって償おうと心に決めた。彼を思いとどませたのは、他でもない春児の存在であった。「お告げは嘘だって分かってた。運命は頑張ればいくらだって変えられるんだ。だから生きてくれよ。」と説得した。
    この場面が一番心に響いた。自らの手で去勢し、夢を現実に変えた勇気と数々の努力。彼を尊敬せずにはいられない。

     浅田次郎はエッセイの中で、国家の実情、歴史、思想、習慣、詩歌、特異な文化を有する中国を宇宙だと表現している。本書を読んで、中国は学びの泉であると痛感させられた。
     約千三百年も続いた科挙制度(省、中央の試験を突破し進士となることができる仕組み)の存在を詳しく知ることができた。学校ではなく、家庭教師をつけて学ばせる時代がこんなに長期に及んだとは。信じがたい事実であった。食べること、学ぶ機会に恵まれない子供の方が多かったことが悲しくてたまらない。
     宦官の制度(王朝の宮廷で皇帝や後宮に仕える去勢された男性)についても、深く学べた。背筋が凍る思いで読み進めた。どれだけの覚悟と苦しみを背負って人々は生きていったのだろう。胸が詰まる思いだった。

     この国をもっと学びたいと思わせてくれた著書に感謝。

  • 中国清朝末期を描いた歴史小説の最終巻。貧しい少年と、誰からも期待されていなかった名家の青年。それぞれの個人の成り上がりの物語から始まり、そこから少しずつ世界を揺るがす歴史のうねりの物語へと変わっていく。

    スケールの大きさにも引き込まれたし、国内外の様々な思惑が入り乱れる政治ドラマ、権力闘争の模様にも引き込まれました。当時の歴史的背景についての予備知識はまったくなかったけど、それでもどんどん読み進めていけたのは、歴史の流れだけでなく登場人物の行動や言動、思惑でストーリーを引っ張っていく語り口のうまさがあったように思います。

    時の大帝、西太后に仕え女王個人の立場や王宮内部の人々をおもんばかりながら、事態を見守る春児。役人となり国や将来への憂いから行動を起こす文秀。
    そういった個人の視点だけでなく、西太后や光緒帝といった権力者側の視点や、日本の新聞記者をはじめとした各国のジャーナリストたちに伊藤博文も登場するなど、国内外問わず、身分や立場も問わず多くの登場人物が登場します。しかしそれに負けない物語の吸引力がありました。
    時代背景に詳しければ、史実通り登場する人物たちの書きっぷりをより楽しめたのかな、と思いますが、分からなくても十二分にストーリーに引き込まれました。

    最終巻は特に歴史の大きなうねりが、物語を読んでいる自分の体中に響いているように思いました。西太后の襲撃事件から始まり、改革派によるクーデター。そこから一気に結末まで話は突き進む。

    様々な登場人物たちの思いを飲み込むおおいなるうねりに、歴史の残酷さや無情さを感じつつも、一方で個人の思いにも寄り添う語りや、視点の切り替えが本当に巧みでした。全4巻を読んでいると言葉にできない様々な思いが去来してきます。
    1巻の感想でも書いたけど、少年マンガのような展開やキャラの魅力がありつつも、一方で国内外の権力闘争を色濃く描き、そして歴史のうねりも描ききる。本当に濃密な読書体験ができたと思います!

  • 列強諸国に蹂躙される間際の斜陽の清朝時代の中国で、抗いがたい大きな時代の流れになすがままにはされるまいと踏ん張った人々の物語。糞拾いの春児は万に一つも裕福になる可能性のない運命を自らの手で掴みとった。文秀は皇帝を、ひいては中国という国全体を正しい道に導くために全力で奔走した。結果として2人が迎えた結末は、2人が目指した白太太のお告げのそのままとはいかなかったかもしれない。しかしそこには天命なんてものを凌駕する人間の力というものが働いていたと思う。また、個人的にもう一人の主人公だと思っていたジュゼッペ・カスティリオーネが偉大なるヴェネチアンという身分を捨て、郎世寧として西洋のバロックの芸術家も到達し得なかった「青」に到達したことが、誇らしかった。貧しい人々や苦しい人々の心を救う絵を描きたいと言って中国へと渡ったカスティリオーネの描いた絵画や、生み出したガラス工芸が何百年の時を経て、蒼穹の昴として春児や西太后をはじめとした中国の人々の心を救ったとき、人間の力は天の力をも超えるのだと思えた。岡やトムをはじめとする諸外国の記者団や、変法のために自らの命を捨てた順桂なども、その一人一人の働きは微々たるものかもしれない。しかし、作中で岡が演説したように、彼ら一人一人の行為は何ひとつ歴史を変えることが出来ないかもしれないが、彼らは確実に、あの時あの瞬間に歴史に「参加」していた。ただ時代の激流に流され、清朝が倒れていく様を傍観しているのではなく、自らの頭で考え、自らの足で行動を起こした。そうした積み重ねが未来を変えるのだと、今の私たちにとっても、身につまされるようなメッセージを受け取った。

  • ようやく毛沢東がでてきた!
    壮大なお話でした。あの時代の見方が変わりました。西太后や伊藤博文、あまり知らなかった李鴻章が格好良かった。
    科挙と宦官を日本は取り入れなかった、なるほど。科挙が行われてたら歴史はどう変わっていたのだろうか。ボチボチとシリーズを読みたいと思います。

  • 最終巻。行きつ戻りつして1か月くらいかけて4冊読了しました。
    クーデターに失敗した守旧派の面々は捕らえられ、文秀が日本に亡命したところで蒼穹の物語は幕を閉じます。続きは続編で。

    運命を自らの手で切り拓いた春児。最後、幼い頃に戻ったような口調で文秀にすがるシーンに胸が痛くなった。
    文秀と春児以外の登場人物も、誰にスポットを当てても物語の主人公になりそうなくらい濃い。個人的には王逸サイドのストーリーを見てみたいと思った。最後に毛沢東と出会うところもなんだか希望のあるラストで好きです。
    あとミセス・チャンの正体にはびっくり。いい仕事する!!
    また、物語の本編とは直接関係はないけど、会津人として日本国内で蔑視されて来た岡が、外国でも有色人種というだけで白眼視されることに気付いて涙するシーンにもらい泣きしてしまった。
    ひとつ気になったのは春児の妹の玲玲。兄と生き別れ、婚約者の処刑を目の当たりにし、文秀には理不尽に折檻され、何もいいことなかったな…玲玲のおかげで文秀は大切なことに気づかされたわけだけど。続編で報われてくれたらいいんだけど。

    一回ざっと読んだだけではそれぞれの思想や思惑を完全に理解することは難しかったけど、壮大な歴史ドラマを読み切ったという達成感でいっぱいです。宝塚版を見た後にまた読み返したい。どんなふうに舞台化するのか楽しみです。あとドラマも見てみたいな。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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