ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749053

作品紹介・あらすじ

失われた心の震えを回復するために、「僕」は様々な喪失と絶望の世界を通り抜けていく。渋谷の雑踏からホノルルのダウンタウンまで-。そこではあらゆることが起こりうる。羊男、美少女、娼婦、片腕の詩人、映画スター、そして幾つかの殺人が-。デビュー十年、新しい成熟に向かうムラカミ・ワールド。

感想・レビュー・書評

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  • 個人的には、上下巻を通しドラスティックな展開の少ない作品だと思った。
    ただ、作品の主題自体が“ステップ”する事であり、耐える事、ただ生きる事と自分は解釈。それに沿えば静に寄った物語になるのも納得ではある。
    作者得意の女性とのピュアなコミュニケーションに独自の運命論を取り入れた、シリーズ終着点にも関わらず個別でも楽しめる不思議な作品だった。

  • 上下巻一気に、あっという間に読了。

    上巻の伏線が綺麗にきっちり回収されなさ加減が村上春樹ぽくていいなぁと思った。

    次につながるようなラストがとても良かった。

    村上春樹の本の主人公はいつも本当に誠実。
    毎回いろいろ教えられる事が多い。人との接し方、物の考え方とか。今回もハッとさせられるような言葉がいくつもあった。

    そして相変わらずのサンドイッチ。ダンキン•ドーナツでドーナツを食べながらのコーヒー。食の描写でも楽しませてもらった。

    日々いろいろあるけど、、、
    立ち止まらず、上手にステップを踏めるように、踊りつづけていこうと思わせる素敵な本でした。

  • 震えるほど心が躍らされました。まさに、ダンス・ダンス・ダンス。この言葉が浮かびました。羊シリーズ(鼠シリーズ)の4作目で、シリーズの最終章になります。「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」、シリーズを通して感じたのが、「理解するのではなく、感じること。」村上作品を読む上で大事なのが、この言葉だと思います。ぜひ読んで感じてみてください。

    • sinsekaiさん
      この初期の4部作はおもしろいですよね!
      自分は「羊をめぐる冒険」が1番好きです。

      確かに理解するんじゃなく、感じる…
      これこそが村上春樹の...
      この初期の4部作はおもしろいですよね!
      自分は「羊をめぐる冒険」が1番好きです。

      確かに理解するんじゃなく、感じる…
      これこそが村上春樹の世界観に浸ることのできる極意かもしれませんね
      また、読み返したくなりました。
      2021/12/14
  • 上下巻の感想です。
    羊をめぐる冒険から数年後の物語です。
    主人公の感性の鋭さと深さや人格的なバランスに更に磨きがかかっています。
    今回は殺人事件というショッキングな出来事に巻き込まれてしまいます。ストーリー展開も面白くてグイグイ引き込まれます。そしてまた操られているかのように不思議な人々、出会わなければならない人々との交流が始まります。ワクワク・ドキドキしっぱなしです。
    ユキという少女はとても魅力的で、彼女のその後が知りたいです。五反田君もとても印象深いキャラクターです。彼の心の闇は本人がああいう形で止めるしかなかったように感じます。
    主人公とユキは音楽好きという共通点があり、たくさんの音楽(主にロック)が流れますが一緒に聴きたくなるオールディーズです。
    ラストはなんだか幻想的でした。
    主人公の旅がようやく終わって、とどまるべき人・場所へ辿り着けてよかったなとほっとするような気持ちになりました。

  • 今から2、30年前に一度読破しました。登場人物も魅力的でしたが、そこに出てくるカクテルやサングラスなどに憧れました。既にストーリーはうる覚えです。当時身動きが止まってしまった私にとり、題目の通りダンスすることイコール動き続けることが、生きて行くうえで必要なのだと思いました。もう一度、上・下巻を読んでみたいです。果たして今の自分は、ダンス出来ているのかを読み感じたいと思います。

  • 「ダンスするように生きる」
    アドラー心理学で学んだ言葉が浮かんだ。
    立ち止まらずに、上手にステップを踏まないと。

    不思議な読書体験だ。だった。
    なぜか不思議と実感が強い。こんなにも夢のような、頭痛のするような話だとしても。

    のんびりしているようで、足元が揺らぐようで、丁寧なようで乱暴で。読みながら飲んでいるコーヒーが妙に美味しく感じるのがなんだか楽しい。

  • 20代のころに感じた「喪失」の感覚を懐かしく思い出した。

  • 夢とも現実ともつかない出来事が僕のまわりをとりまく。
    繋がっているように見えて、繰り返される孤独と喪失感。
    たとえ自分のやっていることが、「文化的雪かき」だとしても、生きていること、この世に存在することにすべて意味があるのではないかと思う。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    『羊をめぐる冒険』から四年、激しく雪の降りしきる札幌の街から「僕」の新しい冒険が始まる。奇妙で複雑なダンス・ステップを踏みながら「僕」はその暗く危険な運命の迷路をすり抜けていく。

    失われた心の震えを回復するために、「僕」は様々な喪失と絶望の世界を通り抜けていく。渋谷の雑踏からホノルルのダウンタウンまで―。そこではあらゆることが起こりうる。羊男、美少女、娼婦、片腕の詩人、映画スター、そして幾つかの殺人が―。デビュー十年、新しい成熟に向かうムラカミ・ワールド。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    さてここで質問です。
    この二人はこのあとどうなったでしょうか?

    学生の頃読んだ時に感じた「なんじゃこりゃ」感は正直これだったんだな。
    たくさんの伏線があるけれど、全部は回収されない、
    そのもどかしさが私を村上春樹から遠ざけた。

    そして今も、本当はすっきりしないところも残る。
    メイも、キキも、本当は...?
    そしてディック・ノースは...?
    五反田君の存在価値は...?
    ユキとアメはその後どうなったの...?
    そして羊男は...?

    でもきっとこれはハッピーエンド。
    愛する人と最後に結ばれて、彼女を取り戻すために
    初めて「僕」が必死になる姿を見ることが出来ます。

    ああ、この人たんたんとうまく踊っていたけど
    リアルに生きていたんだな、と初めて感じた部分ですw

    最後の必死ぶり(1Pもないけど)が「ダンス・ダンス・ダンス」だった。
    私の中では(・∀・)

    羊男は、と書いたけれども、羊男からの解放、なんだろう。
    それはつまり過去からの解放。
    だから羊男が姿を消すのは、ここでは当然のことなんだろうな。

    いや~でもすごいね。
    ミステリーと言ってもいいくらい人が死ぬしね。
    (ミステリーとしてはバッドエンディングだね)

    素人も含めて評論家がたくさん生まれるの分かるわ~。
    本当村上春樹の解説本が何冊もあるのも全然不思議じゃないw

    なぜかあれこれ語りたくなるねw

    「僕」の高等遊民ぶりには垂涎でした。
    一生けん命稼いだからこそなんだろうけど。
    私も人のお金でハワイでのんびりしたーいw

    前作でも書いたけれど、この人の比喩力本当にすごい。
    思いもかけない表現で、でもなぜかぴったりはまる。
    日頃から感性を研ぎ澄ましていないと出てこないよね。
    いや本当、教科書に載せていいくらいだわ。
    テストに出していいくらいだわ。

    それを探すだけでも読む価値があります。

    そして登場人物が魅力的。
    五反田君の存在なんてすごくリアルに感じられます。
    自殺した二枚目俳優さんなんかを思い浮かべたりして...

    ただ、この中で一番かわいそうなのは、
    わずか15歳の「ユキ」。

    彼女がキーパーソン(ダンスのパートナー)となって
    彼にいろんなことを気づかせてくれるのですが、
    きっとその人生はつらいだろうな、と。

    時に人は鈍すぎる方が幸せだったりするしね。
    (鈍感力とかありましたね)

    でも彼女が大人になって、あの感覚をなくしてしまうとしたら、それはそれでもったいない...
    けれど、ユキには幸せになってほしいなぁ...

    そんな中ではユミヨシさんが一番いけ好かない登場人物だったw

    壮大で、哀しくて、東京で、ハワイで、札幌で、
    片腕で、ゲイで、娼婦で、俳優で、ホテルの精で、
    洋楽で、ピナコラーダで、パスタでサンドイッチで、
    デビット・ボウイで、スバルで、マセラッティで、

    もうもういろんな要素が含まれた最高の
    エンターテインメントだったと思います。

    やっぱりノーベル賞候補は違いますね...
    羊を巡った後に、ぜひ^^

  • 上下巻読了で。

    何だろうなぁ。主人公のくたびれた感が、今の私にジャストヒット、といったところでしょうか。

    踊るんだと。それも上手に。意味など考えずに。


    人によって、色んな解釈があるんだと思います。
    でも、そのくたびれた感に共鳴してしまった私は、

    「自分の持つ暗い闇の部分と、現実での自分、両方とうまくやんなさいよ。」

    というメッセージに変えてその「踊る」を受け止めてしまいました。


    最近。新しいクラスの担任になり、新しいクラスの感じに馴染めないでいる。

    教員やって9年目。もうそろそろ限界かなぁ、なんて思ったり。

    難しい年齢なのは分かってる。でもむやみに反抗されたり、勝手な行動をとり、注意を受け勝手に怒ってる子どもたちを見て、

    正直どうでもいいやぁ、と思う今日この頃。

    子どもをどうこうしようとか、わたし、本当にどうでもいいと思ってるんじゃないかと思う今日この頃。

    疲れに疲れがたまっている今日この頃。


    学校が苦手でした。学校なんてどうでもいいと思ってた。

    それでも学校には行かなくてはいけなかった。

    そんなところに、小さな居場所を作ってあげることができたらと、そう思ってきた気がします。



    でも、もう、限界かなぁ。わたしはあまり、求められていないようだ。

    「悪意の総量は変わらない。」
    「世の中には、いわれのない悪意を向けられることがある。」

     人は、とても汚いものなのだと思い知らされます。

     でもその言葉で、他人を責めるわけにはいきません。
    汚いと感じる私もまた、汚い人間なのです。分かる部分があるからこそ、嫌だと思う。しかしながら、その悪意を一心に向けられたら、いったいどうしたらいいんでしょう。

     やるべきことは、一つしかない。その悪意を受け止め、他に影響を及ぼさないようにすることです。

     ただ、その処理の仕方が分からない。受け止めきれなかったものを、私は「悪意に見えない悪意」に変えて、人に向けているのではないかと、自分を責めます。そもそも謂れのない悪意とは言うけれど、謂れのないというのは本当かと、自分を顧みて、また責めます。向けられた悪意に傷つきながら。


    受け流すことは、許されることなのでしょうか。許されるとしてもわたしは受け流し方が下手、もしくは受け流すことができない気がする。

    真っ向から悪意を受け止めたら、自分が壊れてしまう。今、そのギリギリのところで、私は耐えている。

    壊れませんように。もう少し、耐えられますように。あと少し、人の善意に賭けられる自分でありますように。

    また、頑張ろう。あと、どれくらい?わからないや。頑張れるだけ。あと、少しだけ。頑張ろう。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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