回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 4321
レビュー : 338
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749060

作品紹介・あらすじ

現代の奇妙な空間-都会。そこで暮らす人々の人生をたとえるなら、それはメリー・ゴーラウンド。人はメリー・ゴーラウンドに乗って、日々デッド・ヒートを繰りひろげる。人生に疲れた人、何かに立ち向かっている人…、さまざまな人間群像を描いたスケッチ・ブックの中に、あなたに似た人はいませんか。

感想・レビュー・書評

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  • 子供の頃、(不思議だなぁ)と驚いた。
    それは、グラスの中の水が
    <本当の>水として描かれている絵を初めて観た時のこと。

    私の絵の具箱にある「水色」じゃ、あの透明な絵は描けない。うすーく塗っても、白と混ぜてもダメだった。
    あれはきっと、大人の人が買える値段の高い『透明色』の絵の具。
    欲しいなぁ。透明色の絵の具でいつか絵を描いてみたいなぁ。

    読書中、今も手に入れられずにいるあの絵の具の事を思い出してしまったのは、
    全て事実だ、と言う9編のエピソードがいつの間にか屈折し始めていたから。
    著者の視点と読者の視点の間に隙間は無く、この目で水底まで見える美しい流れを見ていたつもりになっていたのに、
    小石が揺れる。
    魚が歪む。
    落ち葉で目が散る。
    透明の正体は<色>にあらず。

    本当を、人も気付かぬほどちょっとだけ歪ませて
    もうひとつの本当に見せていただけ。
    動きがある透明に絡まれた(本当)のほうが私は好み♪

  • この本に収められている作品は、人から聞いた話をもとに文章にしたものだそうです。
    実際あった話と、小説との境目は見た目にはわからないが、「嘔吐1979」や「雨やどり」は、とても村上春樹らしいテイストで面白かった。

    「はじめに・回転木馬のデッド・ヒート」もあわせて、これから他の村上作品を読むうえで、とても貴重なものを読んだような気がする。

  • https://open.spotify.com/track/3Rx9Grnjc4InZdEyZ1nAhW

    Lootaというラッパーが曲のタイトルとして引用していて依然から気になっていた。本著は小説ではなく本人曰く小説のウォーミングアップとしてのスケッチ集。大筋は事実だけども多少脚色しているとのこと。タイトル作は冒頭でいきなり書かれていて、人生に対するこのアナロジーがすべてな気がする。

    ー引用ー
    我々は我々自身をはめこむことのできる我々の人生という運行システムを所有しているが、そのシステムは同時にまた我々自身をも規定している。それはメリーゴーラウンドによく似ている。それは定まった速度で巡回しているだけのことなのだ。どこにも行かないし、降りることも乗りかえることもできない。誰をも抜かないし、誰にも抜かれない。しかしそれでも我々は回転木馬の上で仮想の敵に向けて熾烈なデッドヒートをくりひろげているように見える。

    他の話は居酒屋で聞く友人の不思議な話という感じ。80年代に本著がどのような認識で迎えられたか分からないけれど、今読むと日常にふと訪れる歪さを許容できるのかどうか、そういう感覚になった。
    僕が好きだったのは「タクシーに乗った男」「今は亡き王女のための」「雨やどり」とくに「今は亡き王女のための」はお得意の生死&性の話でオモシロかった。この人の書くセックスにまつわる独特の乾いた感じって何なんだろうかと毎回思う。「雨やどり」も売春の話なんだけど人間の対価という話に落とし込んでいてセックスの話であることを忘れさせられる。内容はソフトだけど男根主義がそこはかとなく香る。これを「香る」と思うのか、「臭う」と思うのかで評価が分かれるのだろう。

  • お勧めされて一気に読みました。
    読み終わって、まず感じたのは、村上春樹という人の魅力を感じてファンになってしまった、ということでした。
    全ての文章に無駄がなく、文章がとても綺麗です。
    8話(8人が主人公の物語)の短編集で、村上氏自身が彼・彼女らと会話し話を聞く様子を描いています。
    主人公達と村上氏との会話形式で、たまに村上氏が感じたことなどが描かれていますが、それが聡明で真っ直ぐだと感じました。

    別に容疑者でも何でもなくて最後何か罪を自白するわけでは全くないのですが…、昔あった古畑任三郎のテレビドラマを見ているようでした。
    登場する8人は、それぞれがそれぞれの世界で生きており、別に村上氏へ強要したり自慢したりするわけではなく、ただ自分のことを語るのですが、人間臭いというか、人生って。。みたいな深みを感じます。そして村上氏の寄り添い方が良いです。
    もし10代の頃にこの作品を読んでいたら、さらっと読み終わっただけだったかもしれませんが、大人になってある程度の年を重ねたあとに読むと色々なものを感じる作品だと思います。

  • 「男のひとって、村上春樹とか好きそうですね。少々理屈っぽいところとか・・・」。
    本屋のアルバイトを辞めて、同じ職場に来た女性はそう言った。

    僕は女性ファンの方が多いんじゃないかなと思っていた。
    何の根拠も無いけど。

    レダーホーゼン(ドイツ人が好んで着用する吊り紐付半ズボン)。
    父親がそれをおみやげに欲しがったために離婚する話。
    母と娘がその感情を理解し合う事が出来たのは、
    半ズボンがポイントだと言う。

    女性を理解するには人生は短すぎる。
    少なくとも僕はそう考えている。

  • 多くの人から聞いた話を『スケッチ』した短編集。
    現実的でもあり、幻想的でもある、不思議な話。
    「タクシーに乗った男」と「雨やどり」が好き。

  • 生暖かさを感じた小説でした。
    お洒落な生き方をすればお洒落な人に出会いこんなしゃれた話、雰囲気に遭遇できるのかなあ。
    友達と話してるよりよっぽど小説なのに生暖かく、面白かったー。

  • 村上春樹さんの決めつけない物の言い方すごく好きだな
    責任を持って発言してるというか、すごく考えてるというか
    単に頭が良いのかな

    ノルウェイの森のキズキとか他作品の主人公と村上春樹さん自身をどうしても重ねてしまう

    でもここに載ってる話は全然普通の人の普通の話じゃないと思う

  • 1985年に発表された村上春樹の短編集。1985年は長編である「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」が出版された年でもあるから、同じ時期に執筆が進められていたのだと思う。

    村上春樹の作品は大きく、リアリズム系とファンタジー系の2つに分類することが可能であるが、本書はリアリズム系の系譜であり、村上春樹自身が人から聞いた話を再構成して小説に仕立て上げる、という背景になっている。

    とはいえ、一見リアリズムな世界の中で、心がヒリヒリするような感情の揺らいだ瞬間が多くの作品では描かれており、その揺らぎが一線を超えた瞬間にファンタジーの世界にも通底するものを持つのかもしれない、という印象がある。

  • 習作的な作品で、かなり前の本だけど騎士団長殺しの場面につながるような話があったりする。
    久しぶりに(ほんとはそーでもないけど)村上春樹を読んだけど、一番初めの話の最後で、半ズボンじゃなきゃダメだったの?ええ半ズボンがなきゃダメね。的なやりとりがこれこれと思わせる。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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