回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 3954
レビュー : 314
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749060

作品紹介・あらすじ

現代の奇妙な空間-都会。そこで暮らす人々の人生をたとえるなら、それはメリー・ゴーラウンド。人はメリー・ゴーラウンドに乗って、日々デッド・ヒートを繰りひろげる。人生に疲れた人、何かに立ち向かっている人…、さまざまな人間群像を描いたスケッチ・ブックの中に、あなたに似た人はいませんか。

感想・レビュー・書評

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  • 子供の頃、(不思議だなぁ)と驚いた。
    それは、グラスの中の水が
    <本当の>水として描かれている絵を初めて観た時のこと。

    私の絵の具箱にある「水色」じゃ、あの透明な絵は描けない。うすーく塗っても、白と混ぜてもダメだった。
    あれはきっと、大人の人が買える値段の高い『透明色』の絵の具。
    欲しいなぁ。透明色の絵の具でいつか絵を描いてみたいなぁ。

    読書中、今も手に入れられずにいるあの絵の具の事を思い出してしまったのは、
    全て事実だ、と言う9編のエピソードがいつの間にか屈折し始めていたから。
    著者の視点と読者の視点の間に隙間は無く、この目で水底まで見える美しい流れを見ていたつもりになっていたのに、
    小石が揺れる。
    魚が歪む。
    落ち葉で目が散る。
    透明の正体は<色>にあらず。

    本当を、人も気付かぬほどちょっとだけ歪ませて
    もうひとつの本当に見せていただけ。
    動きがある透明に絡まれた(本当)のほうが私は好み♪

  • この本に収められている作品は、人から聞いた話をもとに文章にしたものだそうです。
    実際あった話と、小説との境目は見た目にはわからないが、「嘔吐1979」や「雨やどり」は、とても村上春樹らしいテイストで面白かった。

    「はじめに・回転木馬のデッド・ヒート」もあわせて、これから他の村上作品を読むうえで、とても貴重なものを読んだような気がする。

  • 「男のひとって、村上春樹とか好きそうですね。少々理屈っぽいところとか・・・」。
    本屋のアルバイトを辞めて、同じ職場に来た女性はそう言った。

    僕は女性ファンの方が多いんじゃないかなと思っていた。
    何の根拠も無いけど。

    レダーホーゼン(ドイツ人が好んで着用する吊り紐付半ズボン)。
    父親がそれをおみやげに欲しがったために離婚する話。
    母と娘がその感情を理解し合う事が出来たのは、
    半ズボンがポイントだと言う。

    女性を理解するには人生は短すぎる。
    少なくとも僕はそう考えている。

  • 1985年に発表された村上春樹の短編集。1985年は長編である「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」が出版された年でもあるから、同じ時期に執筆が進められていたのだと思う。

    村上春樹の作品は大きく、リアリズム系とファンタジー系の2つに分類することが可能であるが、本書はリアリズム系の系譜であり、村上春樹自身が人から聞いた話を再構成して小説に仕立て上げる、という背景になっている。

    とはいえ、一見リアリズムな世界の中で、心がヒリヒリするような感情の揺らいだ瞬間が多くの作品では描かれており、その揺らぎが一線を超えた瞬間にファンタジーの世界にも通底するものを持つのかもしれない、という印象がある。

  • 習作的な作品で、かなり前の本だけど騎士団長殺しの場面につながるような話があったりする。
    久しぶりに(ほんとはそーでもないけど)村上春樹を読んだけど、一番初めの話の最後で、半ズボンじゃなきゃダメだったの?ええ半ズボンがなきゃダメね。的なやりとりがこれこれと思わせる。

  • この人は面白い小説を書く小説家なんじゃなくて
    文章を面白く描ける小説家であることがよくわかる。

  • 村上春樹さんの中では異色の”小説”
    とりたてて騒ぐほどの大事件じゃないけれども、自分史の中では何故か忘れられない出来事。
    人から聞いたそんな出来事を、著者が小説調に仕立て上げたもの。
    アイデアの源泉が村上さんではないので、ついバーで隣になった人と、小洒落たたとえ話をしているうちに寝ちゃうみたいなウルトラCな村上節は息を潜めている。だが、そこがいい。
    誰かの経験という”事実”に基づいているので、不思議な出来事も妙に説得力を持つ。

    特に理由はない。
    だけど、なんか無性にそういうことしたくなること、ない?

    そんな9つの人生の一瞬。

  • 全部それぞれ異なった色を持つ面白いお話でした。少し奇怪なところもまた、味があってよかった。
    けれども、なによりも印象に残ったのは、というより残ってしまったのは紛れもなく「野球場」でした。この話が最も「きもちわるい」話でした。どうしようもなく気持ち悪い。何か一線越えてしまっているような気持になりました。
    そんな印象であっても、でもやっぱり「野球場」が、私にとってこの小説群の突出した一番です。
    反対に鮮やかな印象だったのが「タクシーに乗った男」でしょうか。「はじめに」の文章も好感でした。

  • これは小説ではなく実際に人から聞いた話を村上春樹が流暢な文章で、小説にしてしまったような短編集。
    本当に実際にあったかどうかはかなり怪しいが、物語としては村上春樹好きの人なら楽しんで読める内容だと思う。ただ、最初に事実です。みたいな前置きがあって、それを加味して読むとちょっと気が抜けてしまった。

  • 以前読んだことがあった本だったが、ふと読みたくなったので一気に読んだ。
    短編集。

    ごく平凡な、どちらかというと日常的な話を描いているのだが、
    読んでいくうちに非日常的部分というのは常に日常的な風景のいたる所に潜んでいるにも関わらず私たちは、平凡や日常という感覚に麻痺してそれに気付く事ができないでいるんじゃないか。

    そんな風に考えさせられた本。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ、早稲田大学第一文学部演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーターキャット」を国分寺に開店していた。
1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴があるが、芥川賞は候補に留まっただけで受賞しておらず、賞に対する批判材料となっている。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年の発表時期は日本国内でニュースになっている。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。
翻訳家としての仕事も高い評価を受け、フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけてきた。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、いまなお作家として成長を続けている。
代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。

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