回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749060

作品紹介・あらすじ

現代の奇妙な空間-都会。そこで暮らす人々の人生をたとえるなら、それはメリー・ゴーラウンド。人はメリー・ゴーラウンドに乗って、日々デッド・ヒートを繰りひろげる。人生に疲れた人、何かに立ち向かっている人…、さまざまな人間群像を描いたスケッチ・ブックの中に、あなたに似た人はいませんか。

感想・レビュー・書評

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  • 人の話を聞くことが好きだという村上氏が、人から様々な話を聞きそれを文章にした(仮にそれをスケッチと呼ぶ)。スケッチたちは話してもらいたがっている、と。
    これらスケッチのことを、どこにも行き場がなくて体の中に「おりのようにたまってきた」もの、と表現している。
    この入り方に興味をそそられ、前のめりになってさらりと読めた。一日経って思い出してみる、どんな話だったか。といえば、人生の中のほんの出来事、強烈ではないが妙に説得力がある話。誰かに打ち明けたいことってある、身近な人でなく違うカテゴリーの人に。こんなこと誰かにしゃべるのはじめてなんですって話だから面白い(その人にとっては人生において深刻な告白でもあるのだが)。道に迷っているとき、話す(誰かにヒントを与えてもらう、聞いてもらう)機会を誰も待っているのではないか。
    対談を見ている気分にもなった。
    好みは、タクシーに乗った男、プールサイドと雨やどり、他も好き。面白い短編だった。

  • お勧めされて一気に読みました。
    読み終わって、まず感じたのは、村上春樹という人の魅力を感じてファンになってしまった、ということでした。
    全ての文章に無駄がなく、文章がとても綺麗です。
    8話(8人が主人公の物語)の短編集で、村上氏自身が彼・彼女らと会話し話を聞く様子を描いています。
    主人公達と村上氏との会話形式で、たまに村上氏が感じたことなどが描かれていますが、それが聡明で真っ直ぐだと感じました。

    別に容疑者でも何でもなくて最後何か罪を自白するわけでは全くないのですが…、昔あった古畑任三郎のテレビドラマを見ているようでした。
    登場する8人は、それぞれがそれぞれの世界で生きており、別に村上氏へ強要したり自慢したりするわけではなく、ただ自分のことを語るのですが、人間臭いというか、人生って。。みたいな深みを感じます。そして村上氏の寄り添い方が良いです。
    もし10代の頃にこの作品を読んでいたら、さらっと読み終わっただけだったかもしれませんが、大人になってある程度の年を重ねたあとに読むと色々なものを感じる作品だと思います。

  • 村上春樹の熱心なファンの人達はハルキストと呼ばれることをどう思ってるのだろう?

  • 不思議な実話が村上春樹調になって一層魅力的になってる

  • 子供の頃、(不思議だなぁ)と驚いた。
    それは、グラスの中の水が
    <本当の>水として描かれている絵を初めて観た時のこと。

    私の絵の具箱にある「水色」じゃ、あの透明な絵は描けない。うすーく塗っても、白と混ぜてもダメだった。
    あれはきっと、大人の人が買える値段の高い『透明色』の絵の具。
    欲しいなぁ。透明色の絵の具でいつか絵を描いてみたいなぁ。

    読書中、今も手に入れられずにいるあの絵の具の事を思い出してしまったのは、
    全て事実だ、と言う9編のエピソードがいつの間にか屈折し始めていたから。
    著者の視点と読者の視点の間に隙間は無く、この目で水底まで見える美しい流れを見ていたつもりになっていたのに、
    小石が揺れる。
    魚が歪む。
    落ち葉で目が散る。
    透明の正体は<色>にあらず。

    本当を、人も気付かぬほどちょっとだけ歪ませて
    もうひとつの本当に見せていただけ。
    動きがある透明に絡まれた(本当)のほうが私は好み♪

  • この本に収められている作品は、人から聞いた話をもとに文章にしたものだそうです。
    実際あった話と、小説との境目は見た目にはわからないが、「嘔吐1979」や「雨やどり」は、とても村上春樹らしいテイストで面白かった。

    「はじめに・回転木馬のデッド・ヒート」もあわせて、これから他の村上作品を読むうえで、とても貴重なものを読んだような気がする。

  • 「男のひとって、村上春樹とか好きそうですね。少々理屈っぽいところとか・・・」。
    本屋のアルバイトを辞めて、同じ職場に来た女性はそう言った。

    僕は女性ファンの方が多いんじゃないかなと思っていた。
    何の根拠も無いけど。

    レダーホーゼン(ドイツ人が好んで着用する吊り紐付半ズボン)。
    父親がそれをおみやげに欲しがったために離婚する話。
    母と娘がその感情を理解し合う事が出来たのは、
    半ズボンがポイントだと言う。

    女性を理解するには人生は短すぎる。
    少なくとも僕はそう考えている。

  • 作者の小説への考え方に触れられておもしろかった

  • https://open.spotify.com/track/3Rx9Grnjc4InZdEyZ1nAhW

    Lootaというラッパーが曲のタイトルとして引用していて依然から気になっていた。本著は小説ではなく本人曰く小説のウォーミングアップとしてのスケッチ集。大筋は事実だけども多少脚色しているとのこと。タイトル作は冒頭でいきなり書かれていて、人生に対するこのアナロジーがすべてな気がする。

    ー引用ー
    我々は我々自身をはめこむことのできる我々の人生という運行システムを所有しているが、そのシステムは同時にまた我々自身をも規定している。それはメリーゴーラウンドによく似ている。それは定まった速度で巡回しているだけのことなのだ。どこにも行かないし、降りることも乗りかえることもできない。誰をも抜かないし、誰にも抜かれない。しかしそれでも我々は回転木馬の上で仮想の敵に向けて熾烈なデッドヒートをくりひろげているように見える。

    他の話は居酒屋で聞く友人の不思議な話という感じ。80年代に本著がどのような認識で迎えられたか分からないけれど、今読むと日常にふと訪れる歪さを許容できるのかどうか、そういう感覚になった。
    僕が好きだったのは「タクシーに乗った男」「今は亡き王女のための」「雨やどり」とくに「今は亡き王女のための」はお得意の生死&性の話でオモシロかった。この人の書くセックスにまつわる独特の乾いた感じって何なんだろうかと毎回思う。「雨やどり」も売春の話なんだけど人間の対価という話に落とし込んでいてセックスの話であることを忘れさせられる。内容はソフトだけど男根主義がそこはかとなく香る。これを「香る」と思うのか、「臭う」と思うのかで評価が分かれるのだろう。

  • 生暖かさを感じた小説でした。
    お洒落な生き方をすればお洒落な人に出会いこんなしゃれた話、雰囲気に遭遇できるのかなあ。
    友達と話してるよりよっぽど小説なのに生暖かく、面白かったー。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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