羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 12562
レビュー : 740
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749121

作品紹介・あらすじ

あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。その後広告コピーの仕事を通して、耳専門のモデルをしている二十一歳の女性が新しいガール・フレンドとなった。北海道に渡ったらしい"鼠"の手紙から、ある日羊をめぐる冒険行が始まる。新しい文学の扉をひらいた村上春樹の代表作長編。

感想・レビュー・書評

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  • この本を読んでわたしは村上春樹の長編小説世界はちっとも面白くないと思ってしまったのですが、中学生のわたし、なにをよんでいたの?って疑問になるくらい面白かった。風の歌〜ピンボール〜羊と改めて読んでみて、段々としかし着実に物語の土台ができてきて、どんどんきちんとしたものになっていくかんじ。代替可能性への絶望がほんとうにほんとうに涙が出るくらいにつらい。村上春樹の比喩表現の突拍子もなさがわたしはとてもすきだ。村上春樹の書く女のひともすきだし、そんな女のひとと一緒にいる男のひともすきだ。2人の閉鎖的な会話もすきだし、世界を正確な言葉で概観していくその姿勢もすきだ。なんかもう全部がほんとうに大切で困る。

  • 冬に読むのがおすすめと言われていたけど、どうしてももう読みたくなって読んでしまった。
    僕、大人になったなー。もう30歳か。
    ガールフレンドを高級レストランに連れて行ってワインを飲むシーンの凝縮された食費の味がした。って表現は本当にツボすぎて噴き出した。
    この淡々と真面目に冗談を言う感じがなんとも好みです。
    内容はちょっとミステリチックでとても面白かった。
    ただ会話の中に形而上学的な話やら互換性やら複雑な仮説やら、少し難解だった。
    冒険に出ようと決めてからのガールフレンドとのやりとりがとても印象に残った。
    彼女の行動力と決断力素敵。
    今が今だとはどうしても思えない感じ、わかるなあ。
    私も北海道行きたーい!

  • 現実離れしてるストーリーなのにすごくリアル感を感じる。謎だらけで、気になって、どんどん読み進めてしまう。描写・表現が細かくてその場で見ているような体験しているような感じがする。たまによく分からない表現がありどういう事だと読み返す。部屋に置かれた棚の重厚感を伝えるのも床に釘が打たれたようなとかいう例えが好き。

  • 何回、読んだだろう。
    読むたびに20歳の自分を思い出す。

  • ある日僕が手がけた広告が差し止めされ、その被害を帳消しにする代わりに、その広告に使われた写真に写っているある羊を探すよう脅迫され、しぶしぶながらも出かける話。

    もっと漠然と訳の分からない理由で無理矢理羊探しに行かされてたような気がしてたし、もっと早い段階で羊男がチラチラと出てきてた気がしていたが上巻には出てこなかった。。

    なかなか物語に集中出来なくて時間がかかってしまったけれど、鼠からの手紙辺りから一気に読めました。

    なんとなくイメージ出来る比喩と、全然分かんない比喩とがあるけれど、やはり独特の文章で面白いです。
    僕の投げやり感がよく分かる、比喩が多い割にはさっぱりした文章という印象でした。

    続けて下巻に進みます。

  • 羊を探しに行くまでで上終わってしまった

  • 245

    誰かが言っているように、手間さえ惜しまなければ大抵のことはわかるものなのだ。



    彼女はいつも同じ席に座り、テーブルに肘をついて本を読み耽っていた。歯列矯正器のような眼鏡をかけて骨ばった手をしていたが、彼女にはどことなく親しめるところがあった。彼女のコーヒーはいつも冷めて、灰皿はいつも吸殻でいっぱいになっていた。本の題名だけが違っていた。ある時にはそれはミッキー・スピレインであり、ある時には大江健三郎であり、ある時には「ギンズバーグ詩集」であった。要するに本でさえあればなんでもいいのだ。店に出入りする学生たちが彼女に本を貸し与え、彼女はそれをとうもろこしでも齧るみたいに片っ端から読んでいった。



    街について話そう。
    我々の生まれた街ではなく、べつのいろんな街だ。
    世界には実に様々な街がある。それぞれの街にはそれぞれのわけのわからないものがあって、それが僕をひきつけるんだ。そんな風にして、僕はこの何年ものあいだにずいぶん多くの街を通り抜けてきた。
    いきあたりばったりに駅を下りると小さなロータリーがあって、街の案内図があり、商店街がある。どこだってこれは同じだ。犬の顔つきまで同じだ。街をとりあえずぐるりと一周してから不動産屋に入って安い下宿を紹介してもらう。




    こういう生活が自分にぴったりしたものかどうかは、まだよくわからない。放浪的な性格というものが普遍的に存在するものかどうかもわからない。誰かが書いていたように、長い放浪生活に必要なものは三つの性向のうちのひとつであるのかもしれない。つまり宗教的な性向か、芸術的な性向か、精神的な性向かだ。そのどれかがなければ、長い放浪は存在しないということだ。でも僕がその三つのうちのどれかに適合すると思えない。





    このあたりはさっきも言ったようにおそろしく静かだ。他に何もすることがないから毎日本を読んで(ここには十年かけても読みきれないほどの本がある)、FMラジオの音楽番組やらレコードやら(ここにはずいぶん多くのレコードもある)を聴いている。こんなにまとめて音楽を聴いたのは実に十年振りだな。ローリング・ストーンズやビーチボーイズがいまだに活躍しつづけているなんて驚くほかはない。時間というものはどうしようもなくつながっているものなんだね。我々は自分のサイズにあわせて習慣的に時間を切り取ってしまうから、つい錯覚してしまいそうになるけれど、時間というのはたしかにつながっているんだ。
    ここには自分のサイズというものがない。自分のサイズにあわせて他人のサイズ誉めたりけなしたりするような連中もいない。時間は透明な川のように、あるがままに流れている。ここにいると時々、自分の原形質までが解放されてしまったような気がするんだ。つまり僕はふと自動車に目をやるんだが、それが自動車であると認識するまでに数秒かかることがある。もちろんある種の本質的な認識はあるんだけれど、それが経験的な認識とうまく交わらないんだね。そういうことが最近すこしずつ多くなってきた。たぶん長いあいだ一人ぼっちで暮らしているためだろう。




    「もちろんあります。苛立ったり、不快になったりすることもあります。特に急いでいる時などはどうしてもそうなりますね。しかし全ては我々に課せられた試錬であると考えるようにしてるんです。つまり苛立つことは自らの敗北です」
    「ずいぶん宗教的な交通渋滞の解釈みたいに聞こえるけれど」



    ゆっくりビールを飲み、ゆっくり夜景を眺め、灰皿の上でゆっくりと爪を切り、もう一度夜景を眺め、爪にやすりをかけた。そのようにして夜は更けていった。僕は都会における時間のつぶし方にかけてはベテランの域に達しつつあ



    そして電話が切れた。あと味の悪い電話の切れ方だった。僕はあと味の悪さを消すために腕立て伏せを三十回と腹筋を二十回やってから食器を洗い、三日ぶんの洗濯をした。それで気分はほぼもとどおりになった。気持の良い九月の日曜日だ。夏はもううまく思い出せなくなった古い記憶みたいにどこかに消え失せていた。






    *******

    む、むらかみはるき、おもしろい…!と気づいてしまった一冊。
    DFで発見、メヒコで読む

    高校の授業でむらかみはるきはあるこどくやさみしさをもった人が惹かれる作品である(うろ覚え)みたいなことを読んで、だったらむらかみをおもしろいと思えないわたしラッキーくらいになんならおもっていたのに(中学のときにねじまきで挫折、高校でエッセイはいいよね、でも小説はね、とか思ってた)のに、のに、のに
    いまではとてつもなくすきな作家になってしまった
    いまの生活速度ともあってるんだろーなぁ

  • 80年代、大ベストセラーとなった『ノルウェイの森』が合わなかった僕に後輩が推薦してくれた作品であり、その後、村上春樹作品を僕が読み継ぐきっかけとなった作品。

  • 現実的に凡庸で考え過ぎる人は、苦しみが多い。ゆえに、よほど強くないと、落ちて(堕ちて)いく可能性も高い。
    下手な「考え好き」は身を滅ぼす?

    ところで、相変わらず主人公は、非現実的に凡庸で、現実的に頭が切れる人でした。

  • 青春三部作の完結編。
    だけど前作とちがって、謎解きのようなスリルも味わえて楽しい。
    下巻が楽しみ。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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