羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫 む 6-30)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749138

作品紹介・あらすじ

美しい耳の彼女と共に、星形の斑紋を背中に持っているという一頭の羊と"鼠"の行方を追って、北海道奥地の牧場にたどりついた僕を、恐ろしい事実が待ち受けていた。一九八二年秋、僕たちの旅は終わる。すべてを失った僕の、ラスト・アドベンチャー。村上春樹の青春三部作完結編。野間文芸新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  •  ポーカーフェイスな語り口で詩的な表現がつづく小説。
     羊というのは、何か大きなメタファーだと思っていたらそれだけではなかった。村上氏は北海道のある奥地の村の開拓史と日本の緬羊の歴史についてかなり綿密に調べられたらしい。先人たちが血の涙を流して畑を作り、やがてその土地が緬羊に向いていることが分かった。その頃、日清戦争を始めるに当たって国産の羊毛を生産しようとしていた政府にとって好都合であったため、政府の後押しがあって、その村で緬羊が始められた。そしてその村の若者達は、日清戦争に徴用され、自分たちが作った羊毛で作られたコートを着て戦士していった。これらのほぼ実話を“僕”の読んでいた「十二滝町の歴史」という本を通じて知った。その村のモデルは実際にあるらしい。シュールな雰囲気の中で、リアルに歴史の中の取るに足らない普通の人々と魂が行き交うようなこの感じがたまらない。
     ある裏社会の大ボスの中に入り込んでボスを導き続けていた、背中に星マークのある“羊”を探せと言われ、“僕”はその羊と友達の“鼠”の両方を探すために北海道に来るのだが、目的地に行くまでに“いるかホテル”に泊まったり、羊博士に会ったり、どこか可笑しな出会いがある。やっと目的の牧草地を探し当て、そこで出会った“羊男”、そして“鼠”。見捨てられたような土地に執着して生きる彼らはどこか哀しく愛おしい。
     結局この「羊をめぐる冒険」で“僕”が見つけたものは?
     冒険を終えた“僕”は故郷の埋め立てられた海を見ながら泣いた。故郷といっても事情があって実家には寄れない。ジェイという、“鼠”と“僕”との共通の友人である男が経営するジェイズ・バーが拠り所である。
     この小説は「風の歌を聴け」から始まった三部作の三番目であったらしい。前の二作も順序は逆になるが読むべきだな。
     ハルキストの気持ちが分かった読後感だ。
     

  • 鼠三部作3作目の下巻。
    僕は全てを失ってしまうも全うし、進んでいく。
    羊に魅せられた人々と僕の話。
    謎が沢山残った。
    思想は受け継がれ、どこまでも続くものなのか。
    一人の死によって終わってしまうものなのか。
    女性は案内役。

  • 春樹氏、青春3部作、35年超えの再読終了。
    下巻で物語は大きく走り出す。

    鼠から送られてきた写真の羊の謎。
    右翼大組織「先生」の黒服の秘書から脅されてスタートした、羊をめぐる冒険が本格化していく。

    春樹氏との出会いは本書からだった。。。

    主人公「僕」の青春も終わりを告げる。3作品全てに漂う喪失感には、ただ流されていくしかないのだ。一緒になって、なくしたものを数えた。

  • 上巻はあれだけ時間かかったのに下巻は一気読み!
    あぁ三部作終わっちゃった…と今は寂しさが残る。
    と共にようやく村上春樹さんの原点である鼠三部作を読み終えた喜びもあり。

    しかしすごかった。前の二作品、そして上巻からは全く想像もしていなかった世界、そして展開だった。(いや、彼の作品はいつもか笑)

    しかし登場人物の誰にも名前がないのにここまでハマっちゃうってすごいな、春樹さん。
    名前ってかなり重要なポイントだと思うのに…ってその名前がないのも一つのこの作品の大事な要素でもあるのか。(あ、直子は出てきたか。ノルウェーと関係ある!?)

    「羊」とはそういう事だったのか。全く想像していなかった。(いや、だからいつも)
    ちょっぴりミステリーもファンタジーもフィロソフィーもメタファーも全部まるっと心地よく美しい文章に表現されていて、それでいてすごくリアル。やっぱり好きです村上さん。

    むしろ今のこの世の中をまさに表しているような。「羊」というキーワード。

    自分の頭では何も考えられなくて、そこら辺の誰かが言ってた言葉をまるで自分の意見だと信じ込み(グサっ…痛)、右向け右ってみんなが右向いたら何となく自分も右向いていて…頭の中は「羊」が入っているときのように空洞で「自分」なんてなくて(うっ…涙)。英語のスラングで「Sheeple」って言われてたりするやつ。

    自分のことを稀にみる弱い人間だという鼠はむしろものすごく強い人に私には見える。「羊」に自分を奪われるくらいなら…って道連れにできる強さ。自分としっかり向き合い、その弱さを受け入れ愛せる強さ。ものすごく惹かれる。自分も鼠のようでありたいと思う。

    鼠を失った僕…どこか人間的な何かが足りなかった僕。本当の喪失感を彼は初めて味わったように思う。彼はここから人間としてかなり成長することになるのだろう。

    と、いつもながら村上春樹さんの作品のレビューはいつも以上に支離滅裂で書いてて恥ずかしい笑 
    まるでわかってなくて見当違いの事を書いているようで、感想なんて書けるかー!ってなりながらも、読み終わった直後の素直な感想を残してみる…

    とにかく今回も村上春樹ワールドを思う存分堪能しました。また読み返したい。

  • 台詞に、思想に、ハッとさせられながらも、どこか全てに薄く靄のかかっているようで、私は半分眠っているかのような不思議な感覚のまま物語は進んでいった。

    実は、村上作品を読むのはこれが初めてだ。タイトルはもちろん、ともすればお話のあらすじまで各所で紹介されていしまいそうなほど有名な作品たち、そして作家でありながら、どこか避けていた。なんだか不思議な話を書くのだろう、などというあやふやな見識で自分の理解力の無さを包み隠していたのだと思う。読んで難しい、理解できないと分かるのが怖かったのかもしれない。可哀そうな自尊心だ。

    読み始めると、思いのほかお話は理解できた。(正しい意味の理解かどうかは定かではない)調子よく読み進んではいくが、前述の通り、どこか靄のかかったような、不思議な感覚のまま。

    しかし突然に痛みが走った。

    「そうだよ」と鼠は静かに言った。
    「救われたよ」と鼠は静かに言った。

    一般論の国では王様になれる僕と弱さや夏の光や僕と飲むビールがすきな鼠。

    届いた手紙と写真と小説、ブランデーとチーズ・サンドウィッチ。

    きっと作者の言いたいことは分かっていない。それでもこれは私にとっては悲しい物語なのには違いなかった。最後まで読んだ後、何度も何度もいろいろな部分を読み返している。

    上手く言葉にできない。昨日の夜から喪失感が消えない。
    そういえば、私は今ちょうど鼠と同じ歳だ。

  • 上下巻の感想です。
    最初から最後まで全く飽きることなく楽しめました。
    わたしにとっては、羊シリーズの中で最初に読んだ作品です。
    (お勧めされて、羊→ダンス→風の歌→ピンボールの順で読みました。これが大正解でした!!おかげで4作品全て楽しめました!)

    ストーリーはひと言で言うと題名そのまま、"羊をめぐる冒険"なのですが、都会で孤独に暮らす主人公と、旅の中で出会う人たちがとても魅力的です。
    そしてその出会いはすべて引き合わされたものであり、不思議な世界・謎解き・恐怖・愛情・友情にワクワクドキドキしながら進みます。
    人間を操ることができる羊は夢に出てきそうなくらい恐ろしい存在ですが、耳が素敵なガールフレンドとお互いを想い支え合いながら旅をしたり、ドルフィンホテルのオーナーや羊男など、どこか憎めない可愛らしいキャラクターも出てきます。
    もちろん最後はちゃんと真相に辿り着き、不思議な冒険を終わらせることができます。
    帰りの汽車に乗っていると、さっきまでいた山の方から爆発音が聞こえてきて、窓から煙を見ているラストシーンは、ようやく長旅が終わり、解放されてハッピーとは言えない、旅の終わりの疲労感、旅で失ってしまった数々のものへの哀愁を主人公と一緒に感じました。
    本当に主人公と一緒に冒険をさせてくれる本です。
    そして、こちらを読んだらそのまますぐにダンス・ダンス・ダンスを読むことを強くお勧めします!

  • 遂に3部作を読み終えた。
    実際「羊をめぐる冒険(上)」までは世界観しか感じ取れず面白いとはあまり思えていなかったが、せっかく手を出した作品なのだから3部作読もうと思い最後まで読み進めた。

    だが、この作品でこれまでの話がまるでラストへの準備だったかのように、いや準備だったのだろう、動き出した気がした。
    多分自分はこの作品について7割も理解できていないだろうが、最後の20ページ程で実は鼠が死んでいたこと、黒服の男は全てを知っていたが「僕」にはそれを伝えてしまっては何にもならない為伝えなかった事など、とても面白かった。
    また自分が成長したら読んでみようと思った。

  • 何度目かの再読。
    物語に緩急があって、冒険の進展には高揚感がある。どんな話かと聞かれると、説明できない。
    僕が言ったとおり、「端折ると意味がなくなっちゃうんだ」

  • 奥が深すぎて、よかった、としか言いようがない。
    この本に関してあれこれ説明をつけるのは、もったいないような気がする。ずっとこの世界に浸っていたい。
    羊男、いいなぁ。

  • 面白かった。
    人生2度目の読了でしたが、年齢を重ねてから読んでも読み終わったあとの気持ちは変わらなかった。

    少し不思議な物語と、オシャレな言い回しが村上春樹春樹の特徴とも言えるが、それは昔も変わらずな感じだった。

    若い頃に読んだ村上作品をこの歳でもう一度読み返してみたいという気分になった。

    • 柳下正次郎さん
      こんばんは
      コメントありがとうございます。

      若い頃から村上春樹さんが好きで読んでいます。
      (全部はよんでいませんが)

      今度ゆっくりりまの...
      こんばんは
      コメントありがとうございます。

      若い頃から村上春樹さんが好きで読んでいます。
      (全部はよんでいませんが)

      今度ゆっくりりまのさんの本棚をのぞかさてもらいます。次に読む本の参考にさせてもらいます!
      2021/07/25
    • りまのさん
      柳下政次郎さん

      そ、それは少し、恥ずかしいような、、、
      一年程前から、ブクログ参加させてもらってますが、数カ月前の感想など、自分でもとても...
      柳下政次郎さん

      そ、それは少し、恥ずかしいような、、、
      一年程前から、ブクログ参加させてもらってますが、数カ月前の感想など、自分でもとても恥ずかしいものなので……。変な感想が多いですが、どうか大目に見てください☆
      2021/07/25
    • 柳下正次郎さん
      いえいえ、

      参考にさせて戴きます。
      人の本棚は自分の知らない世界があるので見ていて飽きないです。

      また、よろしくお願いしますね。
      いえいえ、

      参考にさせて戴きます。
      人の本棚は自分の知らない世界があるので見ていて飽きないです。

      また、よろしくお願いしますね。
      2021/07/25
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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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