羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.74
  • (1175)
  • (1400)
  • (2157)
  • (114)
  • (17)
本棚登録 : 12888
感想 : 744
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749138

作品紹介・あらすじ

美しい耳の彼女と共に、星形の斑紋を背中に持っているという一頭の羊と"鼠"の行方を追って、北海道奥地の牧場にたどりついた僕を、恐ろしい事実が待ち受けていた。一九八二年秋、僕たちの旅は終わる。すべてを失った僕の、ラスト・アドベンチャー。村上春樹の青春三部作完結編。野間文芸新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  ポーカーフェイスな語り口で詩的な表現がつづく小説。
     羊というのは、何か大きなメタファーだと思っていたらそれだけではなかった。村上氏は北海道のある奥地の村の開拓史と日本の緬羊の歴史についてかなり綿密に調べられたらしい。先人たちが血の涙を流して畑を作り、やがてその土地が緬羊に向いていることが分かった。その頃、日清戦争を始めるに当たって国産の羊毛を生産しようとしていた政府にとって好都合であったため、政府の後押しがあって、その村で緬羊が始められた。そしてその村の若者達は、日清戦争に徴用され、自分たちが作った羊毛で作られたコートを着て戦士していった。これらのほぼ実話を“僕”の読んでいた「十二滝町の歴史」という本を通じて知った。その村のモデルは実際にあるらしい。シュールな雰囲気の中で、リアルに歴史の中の取るに足らない普通の人々と魂が行き交うようなこの感じがたまらない。
     ある裏社会の大ボスの中に入り込んでボスを導き続けていた、背中に星マークのある“羊”を探せと言われ、“僕”はその羊と友達の“鼠”の両方を探すために北海道に来るのだが、目的地に行くまでに“いるかホテル”に泊まったり、羊博士に会ったり、どこか可笑しな出会いがある。やっと目的の牧草地を探し当て、そこで出会った“羊男”、そして“鼠”。見捨てられたような土地に執着して生きる彼らはどこか哀しく愛おしい。
     結局この「羊をめぐる冒険」で“僕”が見つけたものは?
     冒険を終えた“僕”は故郷の埋め立てられた海を見ながら泣いた。故郷といっても事情があって実家には寄れない。ジェイという、“鼠”と“僕”との共通の友人である男が経営するジェイズ・バーが拠り所である。
     この小説は「風の歌を聴け」から始まった三部作の三番目であったらしい。前の二作も順序は逆になるが読むべきだな。
     ハルキストの気持ちが分かった読後感だ。
     

  • 鼠三部作3作目の下巻。
    僕は全てを失ってしまうも全うし、進んでいく。
    羊に魅せられた人々と僕の話。
    謎が沢山残った。
    思想は受け継がれ、どこまでも続くものなのか。
    一人の死によって終わってしまうものなのか。
    女性は案内役。

  • 台詞に、思想に、ハッとさせられながらも、どこか全てに薄く靄のかかっているようで、私は半分眠っているかのような不思議な感覚のまま物語は進んでいった。

    実は、村上作品を読むのはこれが初めてだ。タイトルはもちろん、ともすればお話のあらすじまで各所で紹介されていしまいそうなほど有名な作品たち、そして作家でありながら、どこか避けていた。なんだか不思議な話を書くのだろう、などというあやふやな見識で自分の理解力の無さを包み隠していたのだと思う。読んで難しい、理解できないと分かるのが怖かったのかもしれない。可哀そうな自尊心だ。

    読み始めると、思いのほかお話は理解できた。(正しい意味の理解かどうかは定かではない)調子よく読み進んではいくが、前述の通り、どこか靄のかかったような、不思議な感覚のまま。

    しかし突然に痛みが走った。

    「そうだよ」と鼠は静かに言った。
    「救われたよ」と鼠は静かに言った。

    一般論の国では王様になれる僕と弱さや夏の光や僕と飲むビールがすきな鼠。

    届いた手紙と写真と小説、ブランデーとチーズ・サンドウィッチ。

    きっと作者の言いたいことは分かっていない。それでもこれは私にとっては悲しい物語なのには違いなかった。最後まで読んだ後、何度も何度もいろいろな部分を読み返している。

    上手く言葉にできない。昨日の夜から喪失感が消えない。
    そういえば、私は今ちょうど鼠と同じ歳だ。

  • 上下巻の感想です。
    最初から最後まで全く飽きることなく楽しめました。
    わたしにとっては、羊シリーズの中で最初に読んだ作品です。
    (お勧めされて、羊→ダンス→風の歌→ピンボールの順で読みました。これが大正解でした!!おかげで4作品全て楽しめました!)

    ストーリーはひと言で言うと題名そのまま、"羊をめぐる冒険"なのですが、都会で孤独に暮らす主人公と、旅の中で出会う人たちがとても魅力的です。
    そしてその出会いはすべて引き合わされたものであり、不思議な世界・謎解き・恐怖・愛情・友情にワクワクドキドキしながら進みます。
    人間を操ることができる羊は夢に出てきそうなくらい恐ろしい存在ですが、耳が素敵なガールフレンドとお互いを想い支え合いながら旅をしたり、ドルフィンホテルのオーナーや羊男など、どこか憎めない可愛らしいキャラクターも出てきます。
    もちろん最後はちゃんと真相に辿り着き、不思議な冒険を終わらせることができます。
    帰りの汽車に乗っていると、さっきまでいた山の方から爆発音が聞こえてきて、窓から煙を見ているラストシーンは、ようやく長旅が終わり、解放されてハッピーとは言えない、旅の終わりの疲労感、旅で失ってしまった数々のものへの哀愁を主人公と一緒に感じました。
    本当に主人公と一緒に冒険をさせてくれる本です。
    そして、こちらを読んだらそのまますぐにダンス・ダンス・ダンスを読むことを強くお勧めします!

  • 奥が深すぎて、よかった、としか言いようがない。
    この本に関してあれこれ説明をつけるのは、もったいないような気がする。ずっとこの世界に浸っていたい。
    羊男、いいなぁ。

  • 面白かった。
    人生2度目の読了でしたが、年齢を重ねてから読んでも読み終わったあとの気持ちは変わらなかった。

    少し不思議な物語と、オシャレな言い回しが村上春樹春樹の特徴とも言えるが、それは昔も変わらずな感じだった。

    若い頃に読んだ村上作品をこの歳でもう一度読み返してみたいという気分になった。

    • 柳下正次郎さん
      こんばんは
      コメントありがとうございます。

      若い頃から村上春樹さんが好きで読んでいます。
      (全部はよんでいませんが)

      今度ゆっくりりまの...
      こんばんは
      コメントありがとうございます。

      若い頃から村上春樹さんが好きで読んでいます。
      (全部はよんでいませんが)

      今度ゆっくりりまのさんの本棚をのぞかさてもらいます。次に読む本の参考にさせてもらいます!
      2021/07/25
    • りまのさん
      柳下政次郎さん

      そ、それは少し、恥ずかしいような、、、
      一年程前から、ブクログ参加させてもらってますが、数カ月前の感想など、自分でもとても...
      柳下政次郎さん

      そ、それは少し、恥ずかしいような、、、
      一年程前から、ブクログ参加させてもらってますが、数カ月前の感想など、自分でもとても恥ずかしいものなので……。変な感想が多いですが、どうか大目に見てください☆
      2021/07/25
    • 柳下正次郎さん
      いえいえ、

      参考にさせて戴きます。
      人の本棚は自分の知らない世界があるので見ていて飽きないです。

      また、よろしくお願いしますね。
      いえいえ、

      参考にさせて戴きます。
      人の本棚は自分の知らない世界があるので見ていて飽きないです。

      また、よろしくお願いしますね。
      2021/07/25
  • 哲学的なフレーズが好き。
    どこかニヒルな「僕」も好き。
    「僕」の観念的で非現実な生き方に引かれる。
    鼠の弱さって具体的に何を指しているのだろう。

    村上春樹は大事なことをいつも半分しか書かないような気がする。

  • 最後の鼠と僕の語らいの中にたくさんの真実がある。そこにたどり着くまで、五里霧中だった。

    彼女はもう君をひきつけることはないだろうね。
    消えたんだよ。
    でもそれは遅かれ早かれいつかは消えるはずのものだったんだ。

  • 妻が去っていった僕。
    写真の中の一頭の羊、そして街を出ていった親友を追って札幌から北の奥地に辿り着く。

    猫に関する描写が僕という人物を象徴的に描く。
    個人的にメンタルを削られずに読了できる本作はエンディングが理由かな。
    ファンだが読むには勇気が

  • 【2021年7冊目】
    圧倒的に後半が好きな物語だなと読了して思いつつ、でも前半のくだりがなければ後半もないのだろうなという気もする。

    背中合わせでの会話シーンがグッと来ます。「俺は俺の弱さが好きなんだよ」というのは強い人でないと言えない言葉だなと思うので、強い鼠か巨悪な羊を倒したんだなと。

    今回が2回目。時間をおいて何度でも読みたい物語。余談になりますが、羊男(挿絵)が記憶の中の羊男よりいかつかったので、人間の記憶って曖昧だなぁと思いました。

全744件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1949年 京都府生まれ。著述業。
『ねじまき鳥クロニクル』新潮社,1994。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』新潮社,1985。『羊をめぐる冒険』講談社,1982。『ノルウェイの森』講談社,1987。ほか海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、2009年エルサレム賞、2011年カタルーニャ国際賞、2016年ハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞を受賞。

村上春樹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
宮部みゆき
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×