新装版 闇の歯車 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749893

作品紹介・あらすじ

川端にひっそりとある赤提灯で、互いに話すこともなく黙々と盃を重ねる4人の常連。30過ぎの浪人と危険なにおいの遊び人。白髪の隠居と商家の若旦那。ここに4人を<押し込み強盗>に誘う謎の男があらわれた。そして、それぞれに関わる女達。誰が操るのか、皮肉なさだめに人を引き込む、闇の歯車が回る。

感想・レビュー・書評

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  • 闇の歯車「新装版」
    2005.01発行。字の大きさは…小。

    盗賊・伊兵衛と素人4人で、近江屋の金を盗むサスペンス時代小説です。

    伊兵衛は、盗みを働く時々に、必要な人数の素人を集めて押し込みを働き、終わると解散する方法で、今まで奉行所に捕まらずに押し込みを働いて来ました。此度も、金を必要とする素人4人を集めて押し込みを行いますが、その後に、次々と死んでいきます最後は皆死んでいくのか……と、思ってしまう成り行きです。

    【読後】
    藤沢周平さんの本を久し振りに読みました。
    最後まで読み手を飽きさせない描写に、ついつい引き込まれて行きます。
    2020.10.08読了

  • 久々の時代小説。

    飲み屋で顔を合わせるだけの関係だった4人が、ある人物に誘われ押し込みをすると言う江戸版ミステリー。
    読了後、切なさが残る。

    かなりの余談ですが、この本は主人の職場での誰かの忘れ物だったそうで(読んだ形跡はなかったので恐らく新品!)。
    3ヶ月経っても持ち主が現れないので処分してしまわれる所を、私にへと持ち帰ってきてくれました。
    私は本を紛失したことはないのですが、元持ち主の気持ちを考えると、物凄く切なくなってしまう。
    書店で購入し、読むことを想像しワクワクしていただろうに…。
    元持ち主さん、代わりにしっかりと楽しんで読ませて頂きました。

  • 初藤沢周平。人情もの的なイメージがあったので今まで読んだことはなかった。
    本作品は、ハードボイルド的な雰囲気があるとの事でチャレンジしてみました。

    島流しから帰ってきたプロの犯罪者が、素人を集めて押し込みを行うケイパー小説の時代版。
    素人達四人の事情を描きながら、それぞれの動機で犯行に至る。
    押し込みは成功するものの、その後に犯行とは直接関係のない、各々の理由の為に二人は死に、一人は半身不随になる。
    残った一人はそれなりのハッピーエンドと言えるだろうが、頭目が捕縛された為強奪金は手に入らなかった。
    押し込みの頭目、裏仕事の元締めともに多くの描写は無かったが、プロの犯罪者の凄味を漂わせ存在感は抜群であった。
    この二人を活かして、スピンオフ的な作品も書けたのではないだろうか?
    本作品をハードボイルドと呼ぶには、少しウェット過ぎ、口当たりが甘過ぎるような気がするが作品の完成度は非常に高い。

  • それぞれに闇の歯車に惑わされて翻弄されたラストになるけれど、最後は平凡な幸せを感じて落ち着くあたりが安定間の源かな?
    藤沢周平の年譜があり、身近な人の死や苦学して作家になった事など、人生経験からくる作風ってあるんだなと感じた。

  • 初藤沢。ちゃんとした時代小説は初。森博嗣先生の“ヴォイド・シェイパ”シリーズくらいかな、時代小説らしきものは。いや、普通に面白かった!江戸時代?の人々の暮らしや生活がちゃんと描かれていて、良かった。伊兵衛が呑み屋の常連四名を個々に悪事に加担させる様はとても読み応えがあった^^ これから少しずつ時代小説にも手を出していこう。そう思えた作品であった。

  • やっぱり、藤沢周平氏 時代小説良いね!
    浪人、遊び人、御隠居、老舗の跡取り息子、の4人が、身辺の問題から、悪の誘いの押し込み強盗に加担して行く事になる。
    少しずつ、「闇の歯車」が、回り出す。
    4人は、皆、お互いの素情も知らないが、お金が、必要の為に、伊兵衛の先導に従うが、読んでいると、この押し込み強盗が成功して欲しいような気にさせる。
    病気の妻を持つ浪人など、最後に、妻へ良い薬を与えたいと、思ったことであろうし、作者自体、若くして、妻を、病気で失くしているので、余計に、そう思って、読んでしまった。
    2人は、悲劇の終わり方だが、後は、まだ、生きているだけ幸せなのかも、、、、
    張本人の伊兵衛は、どうなったのか?押し込みで奪ったお金は、、、、?と、なぜか、続きは無いの?と、思ってしまった小説である。

  •  読了。

     酒亭おかめに飲みにくる同じ顔ぶれの四人の男。みなそれぞれ生活に苦労があり、ここで飲む一杯にそれぞれの思いがあった。その四人を押し込み強盗に誘う一人の男がいた。盗人で多くの金をたくみに奪い、同心の追跡をかわしてきた腕と頭を持っているという。「手伝ってくれれば百両づつそれぞれに。それで気分のいい、新しい生活が始められる。絶対に捕まることはありません」。言葉巧みに誘われた四人の男たち。そして、その男たちの妻、娘、婚約者達を巻き込み、歯車が回り始める。

     押し込みにいたった原因はすべて女がらみだが、四人の男の性格の「よさ」と「だらしなさ」のバランス感が、ことの顛末が皮肉な形になるにもかかわらず一種のすがすがしさを与えている。そのなかでも構成の中心になる佐乃助は雰囲気よく物語を読ませるために配された人物で、彼の「仲間」や女に対する視線は、感情移入をしやすい繊細さを見せ、この本を読みやすく楽しめるものにしている。

     娯楽時代小説っていいなぁと思わせる一作。ちなみに藤沢周平はこれがはじめて。もっと読みたくなりました。

  • 小さな飲み屋で顔を合わせるだけの4人の常連。
    浪人,遊び人,隠居,若旦那の4人は会話を交わすこともない。
    しかし,4人を押し込みに誘う男が現れ,闇の歯車が回り始める。
    江戸市井に暮らす人々の数奇な人生が巧みに描写されている。

  • ある一膳飯屋で閉店間際にたいてい顔を見せる常連の男4人。それぞれに金への不満と屈託を抱えながらもなんとなく顔見知りという程度の間柄しか持たなかった彼らに、不意に近づいてきた男。簡単に大金が稼げる仕事があると……あまり長くない話で、ちょっとあっさり終わるような気がするのですが、ほのかな終わりの光がさす読後感は悪くない。

  • 佐之助、弥十、伊黒、仙太、伊兵衛という5人の登場人物がある飲み屋で偶然に出会い、押し込み強盗に加担してゆく。

    それぞれ様々な思いから強盗に加担するわけだが、少しの綻びが歯車を狂わせ一枚、一枚と歯車が欠けてゆく。

    最後に救いを残している所がよい。藤沢周平さんの作品は女性が大きく包み込んでくれる作品が多いように思う。このあたりが男性のファンが多い理由だろうか。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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