流星ワゴン (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.82
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本棚登録 : 19534
レビュー : 2324
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749985

作品紹介・あらすじ

死んじゃってもいいかなあ、もう…。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして-自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか-?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 人生には重大な岐路というものがある。
    「分かれ道はたくさんあるんです、でもそのときは何も気づかない」
    学校・職場での交友関係、家庭環境の形成、あらゆる場面において人は人生の岐路に直面し、その都度選択を迫られている。これを読んでいるこの時点でも何かしらの岐路に立たされているが、人はそれに気づかない。何か見落としているものはないですか、あなたの置かれている状況は本当に理不尽でどうしようもなかったものですか。
    人生は選択の繰り返しで後戻りはできない。しかし、後からそれを巻き返すことができるかもしれない。
    今なにかで悩んでいる人はラッキーです。あなたは橋本親子のワゴンによって未来から人生のやり直しをするためにやって来たんですから。
    人生への悲観に一点の光を灯してくれる作品。

  • 久しぶりに本を読んだ。
    年が明けてから、ダラダラと忙しくて、ワープロ仕事で目も疲れたしと、あれこれ理由をつけて、本を読む時間を確保しなかった。

    で、久しぶりの一気読み。
    やっぱり、重松さんは上手い。ギリギリの欲しいセリフを少しじらしたタイミングで言ってくれる。
    素直になるには、こじらせた時間の分だけ必要な時間がある。それを、周りの人は待たなくちゃいけないのに、そんな簡単なことが当事者になるとわからない。
    読んでいて、しまったと思うことがいくつもあった。


    受験の失敗から引きこもりとなり、家庭内暴力までするようになった息子と家を空けることが多くなった妻。
    自身もリストラされ、生きていることが億劫になった38歳のカズは、帰宅途中の最寄駅で、父子が乗ったオデッセイに出会い、深夜のドライブへ。
    その父と息子は交通事故で5年前にすでに亡くなっていた。遣り残した思いや現実を受け容れられず苦しむ人をその人にとって大切な時間を取り戻すために案内を続けているという。
    どこだかわからないが、2人はカズを大切な場所へ連れて行ってくれるというのだった。

    カズは家庭崩壊が兆した1年前のある日へ連れられて行き、そこで38歳の父親・チュウさんにも出くわす。
    意識不明で病院にいるはずのチュウさんが25年前の姿現れたのも、どうやらこのままでは死んでいけない強い思いがあるらしい。
    中学生の頃から父親とだんだんとうまくいかなくなっていたカズは、チュウさんとの関係をやり直し、また、家族との危機に立ち向かうことができるのだろうか・・・。

    少し前に、TVでドラマ化され、見るつもりで録画したものの結局消去してしまった。けれど、予告で見た香川照之さん演ずるチュウさんと、小説のチュウさんは印象がぴたりと重なっていた。
    香川さん、いい役者さんだなあ。
    いい役はもちろん、悪役でも人間の弱さが滲む深みのある演技が好きだ。
    勝手に香川さんの声でチュウさんに広島弁をしゃべらせて、読んでいく。

    連れて行かれた過去で最初は前回と同じ状況をなぞるにすぎなかったカズが、だんだんと自分がすべき対応やしたかった言動を主体的に選択するようになる。最後は、自分が言いたかったことを言い切ったと納得して旅を終える。
    まるでただ夢を見ていただけのように、旅の始まりの夜の駅前に戻ってきた。現実の世界は何も変わっていなかった。
    「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のように、うまくはいかない。
    けれど、深夜に帰り着いた自宅のマンションで、シンクに積み上げられた大量の食器を自分の手で洗い、片づけるのは気持ちがよかっただろう。
    たまった洗濯物を要領を得ないながらも、洗い上げるのはどんなにすっきりしただろう。
    バスルームの目地のカビも昨日は気づかなかった。
    でも今は、気になり、こすり洗いをする。
    朝になれば、自分でコーヒーを淹れ、朝食を用意する。

    人は変わろうと思えば、変われる。
    人を変えるのは難しくても、自分の行動や思考は変えられる。

    どうにも辛くて、明日が来ることを信じられないときにも、誰かに話を聴いてもらうことができて、自分を整理することができるのなら、自ら一歩を踏み出す勇気が湧いてくるだろう。最後に温かな余韻を残している。

  • 死んじゃってもいいかなあ、もう…。38歳の永田は家庭にも会社にも居場所を無くし、そう思い詰めていた。
    一人息子は中学受験失敗を機に家で暴れるようになり、妻からは離婚を切り出され、仕事はリストラされ…。病床にある父とも長年心の溝を埋められずに。

    そんな彼の前に現れた古い型のワインレッドのオデッセイ。何かに操られるように乗り込むと、中には5年前間抜けな事故でこの世を去った橋本親子。

    実の親子だから気が合うなんてことはない。ずっとずっと嫌いだった父。その父が自分と同い年の「チュウさん」「カズ」と呼び合う朋輩として現れたら…。

    悪いことなんて何もしていないのに、人並みに幸せだったはずなのに、いつの間にか全てを失いかけていて、もはやその取り戻し方も分からない。不器用な人を描かせたら、重松さんはピカイチだと思う。

    なんだか泣きそうになってしまった。だから重松さんは危険なんだ。

    • HNGSKさん
      ああ。何て素敵なレビュー。
      ぐるぐると、いろいろ考えてしまいますよね、この作品。重松さんには、黒いのと白いのがありますよね。これは、どっちか...
      ああ。何て素敵なレビュー。
      ぐるぐると、いろいろ考えてしまいますよね、この作品。重松さんには、黒いのと白いのがありますよね。これは、どっちかというと、黒いの?かな。だからこそ、泣いておっけーですよhetareさん。オールおっけーです。
      2013/06/26
    • hetarebooksさん
      ayakoo80000さん

      おっけー、ありがとうございます。あまのじゃく気質なので「泣ける!」みたいな評判を聞くと「泣いてたまるか!」とな...
      ayakoo80000さん

      おっけー、ありがとうございます。あまのじゃく気質なので「泣ける!」みたいな評判を聞くと「泣いてたまるか!」となるのですが、

      どうも親子ものには弱いようです…黒重松…他には「ナイフ」「エイジ」等かなぁ。白重松もざっくり突いてきますが…「なぎさの媚薬」のみ、ジャンルが…
      2013/06/27
  • あっという間に読み終えた。"死んじゃってもいいかな、もう…" と絶望の淵にいる主人公ほどではないけれど、私も少々落ち込んでいてすぐに物語に引き込まれた。

    内容は設定からして、ものすごくフィクションで作り話。けれど、その設定を使って筆者が描こうとしていることは現実の親子問題そのもの。

    私達は、自分と同じ歳の親には絶対に会えない。でももし会えたら、その人についていったいどれだけの発見や驚きがあるだろうか。友達として普通に話せたら、今よりどれくらいお互いの気持ちを伝えあう事が出来るだろうか。そして何より、親と子は家族であっても、自分とは全く別の人間なのだと気付くだろう。学校で出会ったクラスメイトと同じように、自分とは全く異なる性格で全く別の人生を歩んでいく生き物だと分かるだろう。

    その時、親に対して抱いていた反発心や抵抗、お互いに理解し合えないことに対する苛立ちなどの感情はきっと柔らかく変化するように思う。

    それほど簡単な事ではないかもしれない。けれどこの本を読むと、親や子どもに対する心の何かがきっと変化して、自分の毎日の行動も少し変わる。そんな本だった。


  • ラストでは胸が一杯になった。予測はついていたが。
    カズ、チュウさん、橋本さん、健太くん、広樹くんにいとしささえ感じる。美代子はちょっとわからないが。
    あなたが魔法を信じるなら、もしかしたら橋本さんに出会うかもしれない。最低の現実にうんざりして、もう死んだっていいやって思っているとき、不意に目の前にワインカラーのオデッセイが現れたら、それが橋本さんの車だ。・・そして連れていってもらえばいい。あなたにとって大切な場所に。って、読者に(私に)問いかけているようだ。その時の気持ちに向き合ってみようというんですね。
    思い通りにならないのは現実・・だから受け容れる(受け容れれるのであれば)、認める、と訴えてくる。そういうことだな、と心打たれました。

  • 本当に大事な分かれ道って、後になってみないと分からないんだよね。「戻れるならあの時に戻りたい」と願わずにいられないのが人間だけど。
    筆者が伝えたかったのは「後悔しない生き方をして欲しい」ではなく、「後悔してもいいから懸命に生きよう」ってことなのかなと思った。

  • 時空を超える不思議なワゴンに乗り、38歳自分と同い年の頃の父親と人生の岐路となった場所へ旅する。重松清さんの描く父親にはとても親しみと共感が持てます。不器用だけども子ども思いな父親。
    ドラマでは親父を香川照之さん、主人公を西島秀俊さんが演じたそうですが、その2人を想像しながら読むことでより一層楽しむことができました。

  • 今回のテーマは「家族」、特に「父と息子」です。
    3組の「父と息子」がそれぞれの思いを表現していきます。
    重松氏の作品は決して甘いハッピーエンドに終わるものではありませんが、現実を見つめ前向きに生きるヒントをくれます。
    今 一番好きな作家ですが、今まで読んだ作品の中でも今回読んだ「流星ワゴン」は代表作のひとつとなると思います。
    この作品は本当に読み応えのあるものでした。
    ずっと大切に持っていたい本になりました。

  • 電車の中で泣きました

  • 以前ドラマをみて、たまたま図書館で見つけて手に取りました。どちらも面白かったです。
    いずれも上手くいっていない父と子の模様が三家族分描かれてます。上手くいっていないにせよ、子ども想いの父親で。はて自分はどうだろうと思いながら。
    タイムファンタジーものですが、過去は変えられなくても、未来は変えられる、ということでしょうか。

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著者プロフィール

1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て、執筆活動に入る。1999年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木賞、2010年『十字架』で吉川英治文学賞、2014年に『ゼツメツ少年』で毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。小説作品に『流星ワゴン』『愛妻日記』『カシオペアの丘で』『赤ヘル1975』など多数。

「2020年 『ルビィ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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