流星ワゴン (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.82
  • (2163)
  • (2838)
  • (2959)
  • (282)
  • (39)
本棚登録 : 17800
レビュー : 2248
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749985

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 後悔の場面を適切なタイミングでやり直せたら、と思った経験は誰にでもあるのではないか。でも、戻っても良い方に向かう行動はなかなか出来ないだろうとも思う。この物語では、それでも分岐点の場面を知らないよりはましだという。知れば、今後の人生における覚悟ができるから。逃げずに腹をくくって今に精一杯立ち向かうことが、充実した人生を送ることになるんだと教えてくれる。主人公の中年男の一雄が、現実に戻り覚悟を決めて人生を踏み出す場面が心地よい。ところで、幻に導かれて過去に戻り、やり直しの人生を経験するという構造が、重松の「なぎさの媚薬シリーズ」と同じと気づいた。調べてみると、「流星ワゴン」の方が先に書かれていた。この流星ワゴンからあのシリーズが生まれたのかもしれない。実際、なぎさシリーズに似た場面も出てくる。

  • すでに起こった事実とその事実が起こる分岐点となった時点にタイムスリップすることによって確認し、自覚する旅。旅の引率者は、すでにこの世にない父子。
    分岐点に立ち戻っても、起こった事実は変えられないという現実を前に、主人公はどうするのか?

  • 一時期、よく重松作品読んでたな。

  • ずるい。面白かったけど、ずるい。過去に戻って未来を変えられる期待を抱かせてそれでもなにも変わらないけど前に進む、とか都合良すぎる。父親との邂逅とか、ずるい。案内役の親子も不思議すぎるし、悲しいし、ずるい。でも一気に読んでしまった。面白かった。

  •  なんともマンガチックで、懐かしい響きを持ったタイトルである。この「ワゴン」とは、幽霊父子が運転するワゴンカーであり、ワインカラーのオデッセイのことでなのである。そしてこのオデッセイこそ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でいうデロリアンであり、一種のタイムマシンなのであった。

     病床の父親とは、ほば絶縁状態。妻はテレクラに狂い、一人息子は受験に失敗し家庭内暴力に走る。そして会社が傾き、リストラの対象になる。・・・こんな最悪の家庭環境に追い込まれたとき、あなたならどうするだろうか?
     主人公のカズは、もう人生なんてどうでもよくなり、いっそ死んでしまいたい気持で一杯になる。そして目の前に止まったワインカラーのオデッセイに乗ってしまうのだ。これがこのお話の始まりである。
     前述した通り、このワゴンカーはタイムマシンであり、家族が破綻する以前の過去へと疾走して行く。どういう訳か自分と同年期の父親も、一緒にタイムトラべラーになっているのだ。
     それから、悲惨な自分の現在(未来)を変えようと、何度か過去を改竄しようと試みる。だがどうやっても、過去は絶対に変えられない。

     この小説でのタイムトラべルとは、過去の自分の体に、現在(未来)の自分の意識だけが憑りつくという方式であり、決して過去の自分に遭遇することはないようだ。そして現在(未来)に戻るつど、過去の自分にはそのときの記憶も、記録も全く残らない仕組みになっている。ただ稀にそれとなく、体験感覚が揺り戻されることがあるようだが、それが『デジャヴ』と呼ばれている現象らしい。
     いわゆる「リプレイ」ものなのだが、絶対に過去は変えられないため、パラレルワールドの存在もない。
     またかなり違和感を感じるのが、同時にタイムトラべラーとなる父親チュウさんの年齢である。息子のカズと同い年であるはずがないのだが、チュウさんは幽霊に近い存在と考えて、タイムトラべルと関連付けないほうがよいだろう。このお話はタイムトラべルと、幽霊を重ね合わせた物語なのだから・・・。

     なにせ466頁もあるブ厚い文庫本だが、ストーリーの中味は非常にシンプルで、どこにでも居そうな三組の「父と息子」を描いている。まずはオデッセイを運転する幽霊の橋本さん父子、そして主人公のカズとチュウさん、もう1組はカズと息子の広樹である。
     そしてこれだけの長編にも拘わらず、女性達はほとんど存在感がなく、父と息子の関係だけに終始しているのだ。この辺りの描き方は、女性読者には少し抵抗があるかもしれない。そこにこの作者の、父親に対する強烈な思い入れを感じた。
     
     さて私自身の父親は42才で鬼籍に入っている。出来ることなら、私もタイムマシンに乗って、若かりし頃の父と一献傾けたいものである。
     父子の愛憎とタイムトラベルという筋立ては、浅田次郎の『地下鉄(メトロ)に乗って』と良く似た展開である。ただ浅田次郎のように切ないエンディングではなかった。だからと言って、決してハッピーエンドとも言えない。
     過去にこだわらず、「未来に向かって力強く生きてこそ、幸福への扉が開かれる」と言いたいのだろうか。

  • 「やり直しの時間」を通じて、見つめなおすチャンスを得た主人公。
    死んだら楽になるのか、それでも生きていたらやり直しのチャンスがあるのか。
    最低の現実も、見方次第なんじゃないか。
    やり直しの時間でも、起こってしまったことは何も変わらなかったけれど、その事実に対する向き合い方が変わった。
    今まで、見えなかった角度から見えた。

    家族の、いつも傍にいるが故に、見えていない側面を見る、とか。

    離れている親の、自分と同い年の頃と「朋輩」になる、とか。

    現実にはそういうことはできないけれど、そんな風に立場を変えてみてもいいんじゃないか、と思えた。

    起こってしまったことは何も変わらない。
    でも、これからは。

    勝ち負けのルールは、自分で決めて良いんだぞ。

    子どもの心、親の心、そして自分。

  • 過去に戻ったとしてもそのあと起こる現実は変えられない。ではそのことになにも意味がないかというと違う。
    知らない方が幸せか。知った上で優しく受け止められるか。

    自分の人生に置き換えてみたり、色々考えさせられる物語でした。最後まで読んで不思議と前向きな気持ちになれました。

  • 重松氏の本はビタミンF以来。ビタミンFも父親の話で今回も主人公と家族の話。自分のせいで今があるとしても、奥さんは主人公のせいではないかな。非現実だけど。ラストをどうとらえるか。

  • あったかい本読みたい時は重松清

    西島秀俊と香川照之は多分あの役とあの役やったんやろなって思った
    ドラマ版は適役ってこと

    いつかドラマも見てみたい

  • もし自分と同じ年齢の親にあったら、とは人間誰しも一度は夢想することだと思います。親が親である前、一人の人間として友達になれるのか、ただの他人になってしまうのか。僕はそんなことしか妄想しませんでしたが、この小説の面白いところは、そんなありえない状況が人生の岐路に立たされた中年男性の身に起こること。子供の頃はずっと遠い存在だった父親の姿の中から、同い年になったからこそ見えるもの。それはあるいは知らない方が良いのかもしれませんが、主人公の持つ厳しく強いだけだった父親像が少しずつ変化していくのは、とても温かく救いがあると思えました。最近読んだ宮部さんの「ブレイブストーリー」と同じく、「変える」ことより「変わる」ことのすばらしさが伝わってくる物語でした。僕がもし父親になれた時には、もう一度赤ワイン色のオデッセイに乗り込んで、その時だけの景色を見てみたいです。

全2248件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

重松 清(しげまつ きよし)。1963年、岡山県生まれの小説家。早稲田大学教育学部卒業。
出版社勤務を経て、フリーライターとして独立。ドラマ・映画のノベライズなどを手がけたのち、1991年『ビフォア・ラン』で小説家デビュー。
1999年『エイジ』で山本周五郎賞、2000年『ビタミンF』で直木賞、2002年『流星ワゴン』で「本の雑誌年間ベスト1」、2010年『十字架』で吉川英治文学賞、2014年『ゼツメツ少年』で毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。
山本周五郎賞、講談社ノンフィクション賞選考委員を務める。2017年、早稲田大学文化構想学部客員教授に就任。
『とんび』、『青い鳥』、『流星ワゴン』をはじめ、多くの代表作がドラマ化、映画化されている。

流星ワゴン (講談社文庫)のその他の作品

流星ワゴン 単行本 流星ワゴン 重松清

重松清の作品

ツイートする